METRO FRONT LINE   作:ブルボンおじさん

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いわゆる番外編です。
本作では404小隊ともう1人の主人公が行動を共にするストーリーで、ラストライトを意識した内容にしています。


SideOps 自由を求めて

△月□日

 

今日で漸くこの赤どもとおさらば出来る。

今まで溜めに溜め込んだこの気持ちを全て日記に記そうと思う。

俺は昔、とあるPMCで働いていたが『蝶事件』で会社は倒産(物理)しやがるわ、必死こいて戦ってたら仲間はみんなヘリに乗ってトンズラして孤立する、ハイエンドモデルとタイマン張るわ、etc…。

 

結局、街は鉄血達に包囲され生き残った奴らはみんなこの穴倉(メトロ)に逃げ込んだ。次なる核戦争に備えてか無駄に頑丈な扉で閉ざされ、鉄血達の進行も抑えられて安心かと思いきや崩壊液(コーラップス)で変異した『トンネルのクズ(ノサリス)』達が現れ上も下もてんやわんや。

 

漸く落ち着いたと思ったら会社から持ってきた紙幣は使い物にならなくなるし、ファシストとかいう自分の無能さを棚に上げて周りに害悪しか撒き散らさない迷惑集団の出没でメトロに住まう少ない人口はどんどん減らされていった。

 

金なし、職なしとこのままでは駅のホームに彷徨う浮浪者と同じ末路を辿りそうになったがその時、『レッドライン』という組織が現れた。『レッドライン』は過去に提論された共産主義とかいう平等な社会をメトロに広めようとする集団でファシストと良く揉めあっていた。

 

最初は馬鹿馬鹿しいと思ったがとある兵士の話を盗み聞きすると戦闘毎に『弾薬』が支給されるらしい。やはりどれだけ耳障りのいい言葉を並べようとも理想だけではついてくる者も少なく、金で兵士たちを釣っているようだった。

俺はそれを聞いてすぐさま志願し、レッドラインへと入団した。そして兵士の話ていた通り戦闘毎にI.O.P社の弾丸が60発ほど支給された。

 

しかし、ファシストとの戦いは決して楽なものではなかった。嵐のように飛び交う弾丸と人道なきファシスト達の人間爆弾などある種の地獄が広がっていた。汎用弾も弾切れになり、支給された弾丸も使い、最終的に手元に残るのは10発程度だった。

 

リスクが大きい分、メリットがあまりにも少なすぎるというのに組織内部は隊員達が密告しあい、常に監視されてるかのような空気を漂わせている。だがそれでも俺は己の自由の為に戦い続け、優等生のフリを続け、漸く纏まった金を手に入れることができた。

あとは組織からこっそりと抜け出すだけだ。

 

何が平等な幸せだ

俺は根っからの資本主義者だ

 

△月□日

 

上司から『ファシストの基地に潜り込み、『例の噂』の真相をを確かめろと命令された。よりによってファシストの基地に潜り込めとか頭沸いてんのかこいつは?

しかも相棒はよりにもよって共産主義に染まりきり、規律にうるさいカルメンとタッグを組まされた。

 

今回はいつもの地下鉄のトンネルではなく、鉄血達が彷徨く地上からの潜入しろとのご命令だ。

『連中もまさか地上から来るなどと思ってもいないだろう!』と自信満々に語るがそれを実行するのは俺達だというのに、最終的な手柄はこいつのものになるらしい。

マジで撃ち殺したい。

 

△月□日

 

結局、上司の命令に逆らえず地上からファシスト達の本拠地へと向かう中、4体の戦術人形と遭遇した。カルメンは『例の噂』を本気で信じているのか人形達に対して問答無用に発砲した。すぐさま止めに入ったが時すでに遅く、地上を監視していたファシスト達によって居場所がバレて即捕縛された。

 

ついでに近くにいた人形達の内の眠そうな顔をしたやつがファシストが仕掛けたであろう鉄血捕獲用の電磁網のトラップによって仲間を巻き込んで引っ掛かり捕まっていた。

 

文句を言うなら俺ではなく、カルメンに言え

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

HK416が意識を取り戻すと、薄暗いジメジメとした部屋の中にいた。周りにはさきほど発砲してきた男とその取り巻き。そして他の面々の姿もあった。

少し離れた場所で2人のスキンヘッドの男が何やら話しているのが聞こえた。

 

「少佐殿!彼らをオフィス街の近くで彼らを確保しました。何かを探っていたようですがか、無関係だと一点張りで…」

 

「なるほど…大方の事情はわかった。だがその件は後だ、こいつか?」

 

「変異が疑われます」

 

視線の先には手を縛られ、怯えた様子の男がいた。

変異と言っていたが男はE.L.I.D(広域性低放射感染症)を患っている様子はなく、至って普通の人間であった。

 

「馬鹿を言え!俺は普通だ!ほら、腕が2本、脚が2本、指も10本だ!分かったろ!俺はただの行商人だ!」

 

行商人と名乗った男は自身が人間であると主張するが、彼らはそんな言葉に耳を傾けない。

 

「黙れ!ここはマーケットでなければアーモリーでもない!お前は汚染遺伝子をばら撒いている疑いがある、これは裁判だ!お前の頭蓋骨がまともなサイズであれば釈放する。でなければお前は化物とみなされる、これぞ科学だ!」

 

「そ、そんなの無茶苦茶だ!」

 

行商人は反論するがスキンヘッドの男の近くにいた部下が取り押さえ、計測器を取り出し頭蓋骨の大きさを計ろうとする。その光景を見ていた416に隣から小声で話しかけられる。

 

「…おい、起きてるか?」

 

声をかけたのは彼女達を撃ってきた男の連れであることがわかる。彼の縛られている手元に目を向けるとあることに気づく。

 

「…俺がやろうとしてること、わかるな?」

 

416は黙ってコクリと頷く。他の者にも軽くアイコンタクトで目配せし、いざという時に動けるように準備をする。

 

「どれどれ…318mm…こっちが…302mm…表に照らし合わせてみよう。ほほう、おめでとう!君はミュータントだ!」

 

まるで死刑宣告のように挙げられた言葉によって行商人の顔は絶望に染まっていく。

 

「そんな…やめて…頼」

 

行商人は命乞いをするが言葉は最後まで紡がれず、スキンヘッドがいつのまにか手にしていた拳銃は行商人の心臓へと撃ち、そのまま物言わぬ死体となった。そしてスキンヘッドが次に向かったのは例の二人組だった。

 

「簡単な質問だ。貴様らは人形達と何をしていた?」

 

「地獄へと堕ちろ!ファシストめ!」

 

しかし男は答えず罵声を吐き、尚も抵抗の意思を見せる。

 

「3つ数えるぞ…1つ…2つ…」

 

スキンヘッドの男は痺れを切らしたのか拳銃を男の額に突きつける。

 

「レッドラインに栄光を!ファシストに災いあれ!」

 

男は叫ぶと同時にスキンヘッドの放った銃弾は頭を撃ち抜き、そのまま動かぬ死体となり、男の連れにも銃口を向けトリガーを引こうとするが…

 

「わ、わかったよ…話す、話すからそんな物騒なもんは降ろしてくれ」

 

彼は怯えた様子で降参の意思を示す。スキンヘッドは鼻を鳴らし、今度は416達の方へと近寄り、銃口をこちらに向ける。

 

「本来、帝国はお前らに干渉しないが共産主義者そしてPMCの人形が同時に捕まった。どういうことだ…口を割る気がないのなら貴様らをバラバラにして直接コアに聞いてやる」

 

部下もこちらに視線を向けた瞬間、彼は動いた。

 

「そいつを抑えろ!」

 

「ッ!?貴様!」

 

彼の手を縛るロープは切れていた。あの時、416は彼が袖に隠し持っていたポケットナイフで切っているのを目撃したため、何をするのかを容易に想像できた。

彼は近くに立っていた部下にナイフで腹を刺し、無力化を計ろうとするがスキンヘッドの男はすぐさま撃ち殺そうと拳銃を向けるが416は縛られた手を男の首に回して羽交い締めをする。

 

「な、ぐお!?」

 

思わぬ妨害にスキンヘッドが放った銃弾は明後日の方向へと飛んでいく。彼は部下との取っ組み合いの末に首元にナイフを刺してトドメをさし、振り返りざまにそのままスキンヘッドの心臓へと突き刺す。男は小さな悲鳴を上げてそのまま力尽きるように倒れ伏した。

 

「お見事ね、中々の腕前よ」

 

「そりゃどうも…ほら、ロープを切ってやるよ」

 

彼は自分のナイフで全員のロープを切り解放する。そして近くのロッカーから回収されていた自分達のの小銃や装備品を取り出しそれぞれに手渡していく。

 

「ねえお兄さん、ここって何処なの?」

 

「ここか?イかれた思想を掲げた妄信者達が集まる1つの地獄さ」

 

心からの本音を吐くついでに盛大な溜息も吐き出した彼の姿にUMP9もここはとんでもない場所なのだろうと感づく。

 

「とりあえずは此処から生きて抜け出すのには協力が必要不可欠だ。まあ余所者同士、仲良くやっていこうじゃないか。道案内はしてやるよ」

 

「…わかった。今はあなたを信頼するわ」

 

「OK、そうこなくっちゃな…。俺はハロルド、よろしくな」

 

ヘラヘラと笑いながら名乗った彼はこの部屋からの脱出するため、ドアへと近寄る。調べると遠隔式のドアロックであることが分かり、おまけに強固な作りになっているため中から開けることは不可能だったが、しかしここである事に気づく。

 

「そういえばダストシュートがどうとか言ってなかったか?」

 

スキンヘッドの言葉を思い出し、部屋の中を見回すとぽっかりと空いた穴があることに気づく。ライトで先を照らしても闇が続いているが奥から風の流れる音が聞こえる、どこかに通じているのだろう。

 

「道はここしかないな。俺が先行するから後に続いてくれ」

 

ハロルドはそう言うと、穴の中を坂を下るように滑って行く。暫くすると穴の先から水の音が反響と共に悪態の言葉が聞こえてくるがどうや無事である事はわかったらしい。

 

「スマートにとは行かなかったけど、ガイドマンもついたのは幸運だったね」

 

「…暫くは彼に着いて行くわ。彼なら『D6』について何か知っているかもしれない」

 

45と416はそう呟き、4人も彼に続いてダストシュートの中へと飛び込んだ。

 




今回はここまでです。
404小隊の目的は一体?
D6とはな何か?次回にご期待ください

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