翌日、健太達は南凪区の海浜公園で総乃助が来るのを待っていた。ただ、待つのが嫌いな藤村は今にもしびれを切らしそうになっていた。
通「なぁ、健太。」
健太「どうした?兄貴?」
通「ホンマにここで合っとんのか?一向に来る気配無いで?」
健太「合ってるよ。そりゃ誰だって都合があるだろ。」
悠太「そうだぞ通。健太の言うとおり少しは持久心を持てよ。」
通「俺は待つん嫌いなんや!来るんならはよ来いや!」
悠太「騒がしい兄弟だな。」
十六夜「全くだ。だが藤村の性格は本来はこんなものだろうし仲睦まじいものだ。」
すると、向こうの方から和服の人物が歩いてきた。
健太「お、来たな。」
いろは「健太さん、あの人が?」
健太「あの人が総乃助さんだ。」
総乃助「健太さん以外の皆さんはじめまして、松井一族分家家長と毬来期造船会社の社長を務めている毬来期総乃助です。」
やちよ「あなたが、松井一族の・・・。」
うい「思ってたより若いです・・・。」
総乃助「ありがとうございます。健太さんから話は伺っているとは思いますが私の造船会社は表向きの会社であり裏では神浜市内全域の監視システムを稼働し、犯罪を取り締まる事をしています。」
悠太「健太から話を聞いた限りだと一連の襲撃事件の犯人を特定したそうだが・・・。」
総乃助「ええ、ですが今この場所では話せないので私に付いてきて下さい。」
健太達は総乃助についていく。そして会社の入口のメインホールにつく。
総乃助「ここで待っていてください。」
そう言って先のオペレーターになにか話していた。そして総乃助がこっちに向かってきた。
総乃助「少し地面が揺れるから気をつけてね。」
全員「?」
その直後、一瞬だけ地面が揺れ皆が驚いた。
健太・壮介・ももこ「うわっ!?」
いろは・うい・さな「きゃっ!?」
鶴乃「なになに!?」
やちよ「何事!?」
俊「な、何ですか!?」
悠太・十六夜「これは・・・!」
通「何か、下がっとるで!?」
地面が揺れ、その場が地下へ降りていく。そして地下に到着するとものすごい光景が飛び込んできた。
健太「何だこりゃ!?」
目の前に現れたのはいくつものモニター画面、その下で総乃助の部下達が熱心にパソコンを使って神浜市内全域を監視していた。
通「なんちゅう数のモニターや・・・。」
ももこ「凄すぎて言葉が出ないや・・・。」
十六夜「あのおガキ様ならウハウハだろう。」
悠太「膨大な数の画面だ・・・これで神浜の全てを監視しているのか。」
総乃助「いかがかな?僕のメインルームは。」
壮介「すげぇなあんた!こんな所にこんなでっけぇ監視室があるなんて!」
俊「確かにこれなら犯罪の抑止になりそうですね。」
やちよ「でもこれだけ監視カメラがあったらプライベートも見られてそうね。」
総乃助「その辺は安心していい。僕だって人様のプライベートを覗くのは好きじゃないから。僕が見るのは怪しい動きをする人物だけさ。」
健太「本当に総乃助さんがまともで良かったっす・・・。」
通「せやなぁ、似ても似つかない弟さんや・・・。」
総乃助「ありがとう、そう言われると嬉しいよ。さて、本題に入ろう。今回の一連の事件の犯人についてだけど…」
健太「ああ、何かわかったんすか?」
総乃助「監視カメラに映ったコートの犯人をそれぞれ特定し、解析を進めた結果、犯人は3人いることが分かった。」
健太「3人・・・。」
総乃助「まずはこれを見てもらいたい。」
そう言って総乃助は前の3つのモニターに昨日の襲撃時の画像が映し出された。
総乃助「これは昨日に君たちが襲撃を受けた際の時間だ。それぞれ時間は夕、夜と分かれている。」
悠太「ああ、夜は昨日俺と通達が襲撃を受けた所だ。」
通「せや、突然前から現れていきなりやったからびっくりしてもうたわ。」
総乃助「宇佐美さんと藤村さん達が襲撃される前の時間を健太さんが電車に乗っていた時間帯と同じ時間に合わせるよ。」
総乃助は時間を巻き戻し、昨日健太が電車に乗っていた時間帯に合わせる。
健太「・・・ん!?」
壮介「どうした?」
健太「壮介、よく目を凝らして見てみろ。」
壮介「・・・あっ!」
通「二人ともどないしたんや?」
健太「兄貴、同じ時間帯でコートの奴が3人映ってるぜ!」
通「なんやと!?」
悠太「コートの奴がまるで俺たちがこの場所を通るかの様に待ち伏せしていたのか!」
鶴乃「それだけじゃないよ、時間帯もそこに行くことを想定して刃物を準備してるよ!」
壮介「健太達を殺す気満々じゃねぇか!」
健太「それで、あの場所をそれぞれが通って襲撃を受けた・・・。」
総乃助「そうなるね。それでコートの者を見てるとどこか操られてるようにも見えるよ。」
やちよ「操られてる?」
総乃助「これは僕の仮説だけど、仮に操られてるならきっとどこかに術者がいるはずだ。だけど、どの監視カメラを見ても術者らしき姿はない。それでだ、僕はこの3人の顔を解析し特定した。だが、その犯人を見て僕は驚愕したさ。」
健太「驚愕した?知り合いっすか・・・?」
総乃助「いや、僕の知り合いでは無いが、宇佐美さん、藤村さん、七海さん、十咎さん、由比さん、そして和泉さんにとって悲しい事実を突き付けなければならない・・・。」
通「俺らに悲しい事実やと・・・?」
悠太「どういう事だ?」
やちよ「もしかして、私達の知り合いなの?」
鶴乃「知り合いなら尚更早く止めないと!」
ももこ「けど、あたしらにそんな悪いことをしてるやつなんて聞いたことないけど・・・。」
十六夜「だったら特定した犯人の画像を見させてもらおうか。」
総乃助「君たちに、犯人の顔を見る覚悟はあるかい?」
通「唐突にえらい真剣になったのぉ・・・。」
悠太「余程の事だ、何かあるのは必然的に見えるが・・・」
やちよ「私達は覚悟は出来てるわ。」
十六夜「このまま悠長にしていたら民間人にも被害が出る事になってしまう。」
ももこ「あたしも覚悟は出来てるさ!」
鶴乃「総乃助さん!その犯人の顔を見せて!」
総乃助「・・・分かった。」
そう言って、解析した犯人の画像が画面に映し出された。その犯人を見て健太達は驚愕した。
健太「なっ!?」
壮介「おい、嘘だろ・・・!?」
俊「確か、この人達・・・。」
さな「やちよさんの友達だった・・・!」
フェリシア「おいどうなってんだよ!?」
鶴乃「そんな、まさか・・・!」
やちよ「嘘よ・・・嘘よ嘘よ・・・!!」
通「どないなっとんのや・・・!?あいつらはだいぶ前に逝きよったはずやろ・・・!?」
悠太「信じたくはなかったが・・・やはりか・・・。」
十六夜「・・・・・・」
解析した監視カメラに映し出された犯人の画像は・・・・・。
死んだはずの「中川立明」「雪野かなえ」「安名メル」それぞれ3人の顔だった。