北養の旧ホテルフェントホープ跡地にアリナが立っておりアリナは連れてきたかりんを見るや険しい顔を浮かべた。
アリナ「・・・なんでアナタ達と一緒にフールガールはいるワケ?」
壮介「俺達はお前の目を覚ましに来た。かりんからは色々聞いたぜ。同じ学校の先輩後輩なんだってな。」
かりん「アリナ先輩!こんな事はもう止めてほしいの!」
アリナ「フールガール・・・アナタには関係ないワケ。部外者は引っ込んでて。」
かりん「もしかしてアリナ先輩・・・まだ「あの事」を思い出すの?」
アリナ「っ!?そんなんじゃ・・・ないカラ。」
壮介「・・・あの事ってなんだ?」
かりん「それh「シャラップ!!」アリナ先輩・・・!」
アリナ「そんなんじゃないって言ってるでしょ!?いい加減にしないと貴方もまとめて燃やすカラ!」
かりん「あの・・・アリナ先輩・・・」
アリナ「なに!?」
かりん「・・・怒りになって標準語に、戻ってるの。」
アリナ「っ!?」
壮介「図星か・・・一体彼女に何があった?」
かりん「・・・」
かりんはアリナの過去を話す。アリナが中学3年の頃、かつて同じ美術部に通う少年がいた。
名は「桂雪斗(かつらゆきと)」桂という少年は美術コンクールで最優秀賞をとったり海外へ飛んで絵の修行をしたりと回りから期待されていた。
だが、ある日を境に突如行方不明となり、数日後に北養の山中で首を釣った状態で発見されたそうで後に自殺と判断された。
アリナ「そうじゃないワケ・・・かりん、アナタは雪斗先輩の事を分かっていないワケ。」
かりん「どういう事なの・・・?」
アリナ「・・・・・・」
その話を終えるとアリナはかりんに分かってないと話し、自ら過去の出来事を話し始めた。
−1年前 栄総合学園−
アリナ「はぁ・・・」
1年前、まだ中学3年のアリナはため息を付きながら廊下を歩いていた。
理由は、スランプに陥っていたからで今回の絵も上手くいかずに3時間かけて作ったのに駄作となって賞を見送られた。
この頃のアリナはまだ標準語であり、今のようなカタコト英語じみた言葉を使うことが無かった。
アリナ「もう、疲れた・・・なんでスランプになったら絵が下手くそになるの・・・。」
若干涙目になりながらアリナは歩いていた。すると・・・
雪斗「おっ、アリナじゃん。」
アリナ「雪斗先輩・・・。」
アリナの先輩である桂雪斗が前から歩いてきた。雪斗は同じ美術部であり、後輩にも慕われている。
雪斗「あぁ・・・その顔、さてはスランプだな?」
アリナ「なんで分かったの?」
雪斗「アリナが大概気を落としてるときはスランプに引っかかってる時ってのがよく分かるんだ。俺も後輩達のそういった精神状態には長けてる方でな、よく相談されたりするんだ。何があった?」
アリナ「先輩・・・聞いてください・・・。」
アリナは雪斗に自分がスランプになって絵を書くことに生きがいを感じられなくなっている事を話し、雪斗はそれを頷きながら聞いていた。
雪斗「・・・なるほど、それで駄作になって賞を見送られたとアリナが描いた絵はどんな物なんだ?」
アリナは黙って鞄からその絵を取り出し、渡して雪斗は見る。
雪斗「・・・・・・」
アリナ「・・・・・・」
雪斗「確かに、きつい言い方にはなるがこの絵は駄作と言われても仕方ないな。」
アリナ「やっぱり、先輩も・・・」
雪斗「まぁ聞け。駄作と言ってもアリナの絵には他の後輩達とは違う点がたくさんある。まぁ要は駄作でもそこから上手く訂正を加えたりすれば駄作でも名作になるやつだってあるんだ。」
アリナ「どういう事?」
雪斗「アリナの絵を見てみると確かにこんな感じの絵は3時間もかけないと描けないのは確かだ。けどこの絵は訂正された部分が見当たらない。この絵を見た審査員もそこまで馬鹿じゃないからな。多分スランプになりながらも3時間ぶっ通しでやった事はすごいけどそこから何かしらを加えれば更に点数が上がって最優秀賞じゃなくとも何かの賞は取れただろうな・・・。因みに、この絵のタイトルは何て名前だ?」
アリナ「「無血族の顔」って名前・・・。」
雪斗「すごいネーミングセンスだな・・・アリナらしいけど・・・・・・あっ、ならさ!俺がこの絵の修整を手伝おうか?」
アリナ「えっ!?良いの先輩!」
雪斗「どっちみち俺も何だかムカついてきてな・・・!だったらお前が踏ん張った絵に更に努力を積み重ねた絵を完成させてその審査員共を見返してやろう!」
アリナ「でも先輩、美術展はもう終わって・・・。」
雪斗「大丈夫だ、アリナが参加したのは地域の美術展で、次があるのが国際中等学校美術展だ。そのためにもそこで最優秀賞とってやろうぜ。」
アリナ「先輩・・・!ありがとう!」
アリナは雪斗の教えで絵に追加で付け足していく。これを4日かけて描き直した。そして・・・・・
雪斗「どうだ?自分の思い描いた絵になったか?」
アリナ「はい!先輩ありがとう!!」
4日かけて描き直した絵は前とは打って変わってアリナが名付けた「無血族の顔」という名前にピッタリな絵になった。
数日後の中等学校美術展にはなんとアリナの絵は金賞は逃してしまったが「銀賞」という賞を送られた。雪斗とアリナはよろこびに包まれた。
アリナにとって雪斗は尊敬できる唯一の先輩になり慕うようになった。
しかしその数ヶ月後・・・
−数ヶ月後 栄総合学園内−
かりん「それでね〜アリナ先輩〜!」
アリナ「はいはい、分かってるから!・・・ん?」
かりん「アリナ先輩どうしたの?・・・あれ?雪斗先輩なの・・・。」
廊下を歩いていた二人は外に雪斗がいることを確認した。雪斗は4人ほどの少年に囲まれていた。
雪斗「くぅっ・・・・・・。」
少年「ちっ今日も金無しかよ、行くぞ。」
リーダー格の少年はそう雪斗に吐き捨てこの場を去った。
それと入れ違いにアリナとかりんが雪斗に近寄ってきた。
アリナ・かりん「「雪斗先輩!」」
雪斗「んぁ・・・アリナにかりんか。」
アリナ「何があったの!?その傷は!?」
雪斗「心配ねぇ・・・よ・・・ちょっと転んだ程度だ・・・。」
かりん「転んだだけでそんな傷跡はつかないの!さっきの人達に殴られたの・・・!?」
雪斗「・・・やっぱ隠し事は出来ねぇか。」
雪斗はかりんに雪斗は中等部時代からの連中に付け狙われている事を話す。
雪斗に対しいじめなどを平気で行い挙げ句の果てには雪斗のいない間にさっきの連中に絵画を破られた事もあった。
雪斗「んでさっきのは・・・俺の所持金が底を付きかけてるのを理由に言ったら他所の家から金目のものを盗んで来いとさ・・・笑える話だぜ・・・」
かりん「そんな・・・全く笑えないの!ひどすぎるの!」
アリナ「それを断ったから・・・こんなボロボロに・・・?」
雪斗「ああ、しかも奴らのリーダー格の奴は学園長の息子でコネで入ってきたらしい・・・インテリ気質な俺が余程気に食わないんだと。」
アリナ「じゃあ学園長に言えb「言ったさ」えっ?」
雪斗「もちろん言った。だが無駄だった・・・俺の言葉は届いちゃいなかった・・・。」
アリナ「そんな・・・!」
雪斗「どの学校でもそうだ・・・学校の校長や学園長ってのは自分の不都合な事があればすぐ蓋に閉じ込める・・・教育委員会に知られたくないのが垣間見えるぜ。」
アリナ・かりん「「・・・・・・」」
雪斗「そう苦虫を噛み潰したような顔すんなよ。・・・アリナ、かりん。」
アリナ「なに、先輩?」
かりん「先輩?」
雪斗「今日の事は忘れろ。さっきの奴らの下っ端が見てる可能性がある・・・。お前らまでつけ狙われたらまずい事になるし余計な被害を被っちまう。」
アリナ・かりん「「でも・・・!」」
雪斗「いいから忘れろ、俺は大丈夫だから。そういや二人ともこの後授業あるんじゃないのか?もうすぐ時間だぞ?」
アリナ・かりん「・・・あっ!」
雪斗「急げ急げ、傷は自分で治せるから。」
かりん「わっ、分かったの!アリナ先輩!合同授業だから急ぐの!」
アリナ「分かってる!先輩またね!」
雪斗「おう。」
そう言ってアリナとかりんは校舎内に入っていった。残った雪斗は、静かに呟いた。
雪斗「・・・あの世から見守ってるからな二人共、一流のアーティストになるんだぞ・・・。」
雪斗はそう言って学園から姿を消した。そして・・・・・・
アリナ「先輩!先輩!!」
警察官「こら!離れなさい!」
アリナはダッシュで救急隊員が引く担架に近寄る。
その瞬間アリナは警察官に取り押さえられ反動で担架に乗っている人物の顔に敷かれた布が落ちる。
乗っていたのは「静かに眠るように亡くなった桂雪斗」だった。
アリナ「あ・・・あぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アリナは自分を認め、互いに支え合った先輩を亡くした事でアリナのアーティストへの道は歪み、その性格が今へ繋がった・・・。