魔法少年 ケンタ☆マグス 古の血を継ぐ者   作:マイスリッド

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第5話

時刻は夜7時、影信は高坂一族で最後の飯を食べていた。いつもは配給係が持ってくるがこの日は影信が好きなものを選んで食べていた。

白米に焼肉、焼き魚にサラダそして味噌汁という献立だ。

 

影信「はむっ・・・はふっ・・・。(いくら宗雄さんが養うとはいえ俺も恵理子を守らなきゃならない。そのために腹は満腹にしておかないと。)」

 

影信は恵理子を守りたいという思いが強い。だからこそ深夜にここを離れ、3人で生きていくという覚悟があった。

 

影信「俺はつくづくとんでもないとこに産まれちまったな・・・。」

 

そう思いつつ影信は晩飯を平らげる。飯を平らげ皿を片付けにいった後にこの部屋に戻った。すると恵理子が既に居た。

 

恵理子「あっ、影信さん。」

 

影信「ん、来てたのか。」

 

恵理子「うん、一応のためにと宗雄さんから言われて来たわ。」

 

影信「あの人も覚悟は出来てるみたいだな。」

 

恵理子「ええ、いつもの宗雄さんとは違って顔が険しくなってたわ。」

 

影信「だろうな・・・まさか上層部の連中が松井一族とドンパチする気だとは・・・。」

 

恵理子「これ以上高坂一族の人達に神浜の領有権を取らせたくないために戦争をするなんて・・・戦争なんてしたらそれこそ無関係の一般人まで犠牲になるわ・・・。」

 

影信「全くだ・・・上層部の連中は命をなんだと思ってやがる・・・」

 

恵理子「そういえば、影信さんはこんな魔女の名前を聞いたことある?」

 

影信「ん?なんだ?」

 

恵理子「ワルプルギスの夜っていう魔女・・・。」

 

影信「聞いたことないな・・・なんだそのワルなんとかっていう奴は?」

 

恵理子「私はキュゥべぇ様からしか聞いたこと無いけど、どうやら災厄級の魔女らしくて下手したら街が壊滅するくらいとんでもない魔女らしいの・・・。」

 

影信「マジか・・・!?だが今になってどうしてそんな話を・・・?」

 

恵理子「さっき影信さんの部屋に来る途中に上層部らしき人が話してて、なんでも「あれの儀式」を呼ぶ準備がどうとか言っててそのときにふと思いだしたのよ・・・。」

 

影信「・・・・・・」

 

恵理子「影信さん・・・?」

 

影信「今はまだ可能性が低い。そのワルなんとかが来る儀式ってのも確証がねぇ・・・。だが、神浜をでる俺達には無関係だ。」

 

恵理子「そうね・・・。」

 

影信「さて決行時間に備えて仮眠でもしておこう。」

 

そう言って影信は布団を二人分引いて電気を消す。

 

影信「とりあえず0時くらいまで仮眠する、おやすみ。」

 

恵理子「おやすみなさい。」

 

そう言って二人は目を瞑り、暗闇に身を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       −午後11時半−

 

 

 

 

 

影信「・・・・・・・んっ?」

 

眠ってから4時間が経過し、影信は右腕になにか違和感があり、目を覚ました。

 

影信「・・・・・恵理子。」

 

腕の違和感はさっきまでもう一つの布団で眠っていたはずの恵理子が影信の側で眠っていた。

 

恵理子「・・・か・・・のぶ・・・さん・・・スゥスゥ・・・。」

 

影信「・・・起こすのが悪くなってくるな。」

 

寝言を言いながら眠っていた恵理子を見た影信はこたつで丸くなる猫のイメージを浮かび上げた。

 

影信「ポケベルの連絡が来るまでこのままにしておくか。」

 

恵理子「スゥスゥ・・・あ・・・さ・・・。」

 

影信「ん?」

 

恵理子「・・・おか・・・あ・・・さん・・・お・・・とう・・・さん・・・。」

 

影信「・・・・・・・・・」

 

影信は恵理子の寝言を聴き、思う。

恵理子は産まれて間もないときに両親を交通事故で亡くし、親戚から松井一族へ送られた。

影信もまた親が分からないまま産まれてすぐに親から引き離され、キュゥべぇにより魔法少年となった影信は外の世界を知らずにいた。

二人は互いに親がいないという繋がりがありそれと同時に二人は宗雄を親と認識したからこそ宗雄の前では本当の自分を出すことができると影信は思い覚悟と不安の両方が心にある。

 

影信「・・・よく考えたら12年も立って外に出してもらえないってのはおかしいな・・・家庭教師がたまに来て勉強に関しては問題はないが・・・俺は、正直不安で仕方がない・・・けど俺は恵理子を守らなきゃならない・・・たとえこの身に変えてもたった一人の肉親であり恋人だから。」

 

影信が決意した直後、ポケベルから連絡がなった。それで恵理子も目を覚ました。

 

恵理子「宗雄さんから!?」

 

影信「ああ、ついに来たな。」

 

恵理子「ええ!」

 

影信「静かに出るぞ、恐らく警備がいるから離れずに手を繋いで行こう。」

 

恵理子「分かったわ!」

 

二人は静かに部屋を出る。部屋から出て廊下を進んでいく。すると案の定警備が巡回していた。すぐに壁際に隠れたために見つかることはなかった。ここで影信はある事を思いついた。

 

影信「警備が巡回してんな・・・。」

 

恵理子「どうするの・・・?」

 

影信「ここで待っててくれ。」

 

恵理子「えっ?」

 

影信は一人飛び出し警備に近寄る。次の瞬間背後から警備の足を蹴って膝を着いたと同時に首に掴みかかり、ゴキッという鈍い音を立てて気絶した。

 

影信「よし・・・。」

 

恵理子「影信さん、さっきの人は?」

 

影信「少し気絶させた。しばらくしたら目も覚ますだろうし早く行こう。」

 

恵理子「うん・・・!」

 

廊下を音を立てずに歩き続ける。東門まではあと少しだが、ここでもまた警備が巡回していた。

 

影信「ちっ!またかよ!?」

 

恵理子「影信さん、行ける?」

 

影信「また気絶させてくるわ。」

 

そう言って影信は再び警備の不意をついて気絶させた。恵理子と共に歩き続け、ようやく東門が見えた。そこに宗雄の姿もあった。

 

影信「よし!このまま走るぞ恵理子!」

 

恵理子「うん!」

 

そう言って走り出す。宗雄もそこでしっかりと待っていた。

 

宗雄「よくバレなかったな・・・お前たちが無事で何よりだ。さぁ車へ急ごう。」

 

影信・恵理子「はい!」

 

こうして影信、恵理子、宗雄は高坂一族を離反、そして吉信もまた松井一族を離反した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         −現在−

 

宗雄「これが、健太達の両親の過去だ。」

 

健太「俺の親父が・・・一族の後継者だったとは・・・。」

 

いろは「しかも健太さんのお母さんが松井一族の奴隷・・・。」

 

由美「ママにそんな過去があったなんて知らなかった・・・。」

 

やちよ「健太君と龍二君の一族は一度同盟を組んでいた訳ね……。」

 

宗雄「ああ、互いの一族は松井一族に多額の金銭を渡し、高坂一族に奴隷を渡していたんだ。」

 

健太「なんだよそれ!!人道もクソもねぇじゃねぇか!!」

 

宗雄「そうだ、だからこそ俺や影信、恵理子は一族を離反した。あんなとこに缶詰になる必要もないからな。」

 

悠太「宗雄さん、あんたに一つ聞いてもいいか?」

 

宗雄「なんだ?」

 

悠太「吉信の事でな、少し疑問になったとこがある。」

 

宗雄「・・・・・・」

 

悠太「奴は数十年前からずっとあのような感じなのか?病気で年を取らないとはいえ、流石に魔力の減少等は現れるはずだが・・・。」

 

宗雄「奴は、そもそも病気ではない。」

 

悠太「何?病気じゃないだと?」

 

宗雄「・・・奴は松井一族から禁術の書物を盗み出し自身の年を取らず、更には不死となる禁術を自身に掛けたんだ。」

 

悠太「なっ!?」

 

健太「じゃあ吉信は30年以上前から年を取らずにあのままなのかよ!?」

 

宗雄「そうだ、奴は自身を不死にすることで今後の計画を企てるための算段だったんだろう。」

 

鶴乃「吉信は、30年以上前から神浜を滅ぼすための計画を企ててたんだ・・・。」

 

宗雄「その際に、影信と恵理子も深く関わっている。」

 

健太「どういう事なんすか・・・?」

 

宗雄「お前は昔、両親が死んだのを目の当たりにしたな?」

 

健太「ああ、あの光景は今でも忘れねぇ・・・。」

 

宗雄「その事で俺はずっとお前に隠していた事があるんだ・・・。」

 

健太「隠してた事?何なんすか・・・?」

 

宗雄「そう、あの日の夜、お前の両親を殺したのは・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

        宗雄「俺なんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健太・通「「・・・・・・・・はっ?」」

 

由美「えっ・・・?」

 

いろは「嘘・・・。」

 

やちよ「師匠が・・・健太君の両親を殺した?」

 

フェリシア「おい、どー言うことだよじいちゃん!?」

 

俊・さな「・・・・・・」

 

うい「宗雄おじいさん・・・」

 

ねむ「これは、僕も予想外だね。」

 

灯花「どういう事なのお爺様!?説明してよ!!」

 

桜子「I・・・・・・I」

 

ももこ「おっちゃん・・・。」

 

かえで・レナ「・・・・・・」

 

十六夜「どういう事か、説明をしてくれないか。」

 

みたま「宗雄さん・・・」

 

悠太「・・・・・・」

 

令「健太君の親をどうして・・・」

 

郁美「宗雄さん・・・」

 

壮介「でも、宗雄さんが何の理由も無しに殺したわけじゃ無いだろ・・・?」

 

宗雄「・・・・・・」

 

通「なんで黙っとるんや!はよ答えろや!」

 

健太「待ってくれ兄貴。」

 

通「健太・・・。」

 

健太「おっちゃん、あんたはずっと俺や姉貴を育ててくれた・・・だからおっちゃんが簡単に親父やお袋を殺しはしないだろ。だから理由を教えて欲しい・・・。」

 

宗雄「・・・これは数年前になるが・・・」

 

宗雄は健太の両親何故が殺されなければならなかったのか話す。


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