魔法少年 ケンタ☆マグス 古の血を継ぐ者   作:マイスリッド

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第6話

        −1996年 見滝原−

 

高坂一族から離反してから数年が立ち影信は22歳に、恵理子は20歳になっていた。

宗雄は44歳になっていてそろそろ壮年期に入る頃になっていた。

 

影信「神浜東西戦争からもう10年も立つのか・・・。」

 

恵理子「ホントね・・・。」

 

高坂一族から離反してすぐに高坂一族と松井一族は神浜で衝突し、幸い影信達は神浜市外から出て一時的に見滝原に潜伏していたから事なきを得て恵理子のお腹には「新しい命」が宿っていた。

 

恵理子「ふふ、この子も早く出て来たがってる」

 

影信「ふっ、その性格は俺に似たのかもな。」

 

恵理子「まだ早いとは思うけど、名前は決めてある?」

 

影信「ん、一応「通」という名前にしようかと思っている。」

 

恵理子「あら、以外と一文字だけなのね。」

 

影信「シンプルだし、それに・・・。」

 

恵理子「それに?」

 

影信「・・・真っ直ぐ前に突き進んで貰いたいっていう意味で通と選んだんだ。」

 

恵理子「貴方らしいわね。」

 

影信「まぁな。」

 

この時の影信はボランティア活動や高坂一族で得た少しの術で怪我人を治したりという活動で生計を立てていた。

恵理子も影信の手伝いをしていたがお腹の子の為に休んでいるが近所の人からは仲睦まじい夫婦として有名になっていた。

宗雄は仕事をしながら影信達を狙う高坂一族の刺客が来ないか見滝原市内を組まなく監視していた。

離反してから高坂一族と松井一族が交戦し神浜市でワルプルギスを発動した後高坂一族は壊滅、属していた人間は散り散りになり松井一族は「スサノオ(後の革命のウワサ)」によってワルプルギスを撃破したが壊滅寸前にまで陥った。

そのために宗雄は両方の一族から刺客が現れないかを監視していた。

その際吉信は宗雄にある事を話す。

 

吉信「影信君と恵理子さんはボランティア活動をしているそうですね。」

 

宗雄「ああ、それで生計を立てているそうだ。」

 

吉信「そうですか、だが、あまり目立ち過ぎると返って逆に刺客の目に止まりそうですが。」

 

宗雄「お前も、二人を心配しているんだな?」

 

吉信「彼らは「仲間」ですよ。心配するのは当然です。(それに、彼らには死んでもらっては困りますからねぇ。)」

 

宗雄「何か言ったか?」

 

吉信「いえ、何も言ってませんよ?」

 

宗雄「そうか。」

 

そう言って二人は仕事に戻り宗雄はこの時から吉信に不信感を抱いていた。

吉信は二人を「獲物」のような目で見ていたことに気づけなかった。そして月日は流れ・・・

 

 

 

 

 

 

          −1999年−

 

 

 

影信と恵理子の間に第一子となる「高坂通」が産まれた。

更に病院の診断ではあと二人が恵理子のお腹に宿っているらしい。

その3年後の2002年に「高坂健太」が産まれ、2004年に「高坂由美」が産まれる。

そして1999年の同時刻、宗雄は吉信の部屋に訪れる。その際、宗雄はあるものを見た。

 

宗雄「ん・・・あれは?」

 

宗雄が静かに扉を開けると、誰かと電話をしていた。

 

吉信「ええ、ええ、分かっていますよ。計画の実行まで後6年くらいはかかります。ええ、了解しました。」

 

吉信は誰かと電話をしておりそれを盗み聞きした宗雄は何か嫌な予感を覚える。

それから一年立った2000年、影信と恵理子は宗雄にある事を話す。

 

影信「・・・通をお願いできますか?」

 

宗雄「本当にいいんだな?」

 

恵理子「はい、この子の未来のために、お願いします。」

 

二人は宗雄に頭を下げる。

理由は宗雄は見滝原市内に刺客が入ったと情報を伝え、影信と恵理子もまた大阪から来た人と知り合いになっており、身の危険を感じた際に通を知り合いに預けるよう言ってくれた。

まだ小さかった通を守るために苦渋の決断を強いることになってしまったが大阪の知り合いが責任を持って育てると話し、預ける事を決めた。それから数年が立ち・・・

 

 

          −2009年−

 

雨の降る夜、宗雄は二人の家へ全速力で走っていた。宗雄の嫌な予感が的中してしまったのだ。

吉信は密かに松井一族の人間と繋がりがあり、影信と恵理子を殺すタイミングを探っていた。

そして今日、吉信は二人を殺すために刺客を送ったらしい。

吉信は更に健太や由美をも殺そうとしていたのだ。

 

宗雄「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・!!」

 

宗雄は勢いよく玄関を蹴破って中に入る。

 

宗雄「はぁ・・・はぁ・・・影信!恵理子!無事か!?」

 

中に入ると、二人は静かに正座をしていた。宗雄はそれに驚いた。

 

影信「ああ、宗雄さんが来たのか。」

 

宗雄「なっ、なにをしているお前達!?早く逃げろ!!」

 

恵理子「・・・ごめんなさい宗雄さん、それは出来ません。」

 

宗雄「なに・・・?」

 

影信「俺達は、覚悟を決めたんです。俺達はもう自分の運命からは逃げない。」

 

宗雄「なにを馬鹿な事を言っているんだ!?早く逃げろ!」

 

影信「・・・宗雄さん。」

 

宗雄「っ!?」

 

すると影信と恵理子は自分の前に日本の包丁を置いた。宗雄はそれがなにを意味するものかハッキリと分かった。

 

    BGM「父と母」ナルト疾風伝

 

影信「吉信に殺されるくらいなら、宗雄さんに殺された方がマシだ。」

 

恵理子「私もです。」

 

宗雄「なっ、なにを言っているんだお前達は!?お前達が死んだら健太と由美はどうなる!?ましてや通はまだお前らの顔を覚えていないまま預けたままなんだぞ!?」

 

影信「俺は悟ったんですよ。これ以上、俺達の下らない運命に未来を生きる子供を巻き込む訳にはいかないんだとね。」

 

宗雄「っ!お前達・・・!」

 

恵理子「私達はまだまだ未熟者です。けど、あの子達を巻き込んでしまえば、将来苦しい目に合うことは分かっています。」

 

影信「だから俺達が死んだら、健太達をお願いします。」

 

恵理子「ひと思いに突き刺してください。」

 

宗雄「・・・くぅっ・・・!」

 

宗雄は歯を食いしばる。

実の息子と娘のように育ててきた影信と恵理子をこの場で殺さなければならない事に悲しみと絶望、そして怒りが混じる。そして・・・

 

宗雄「・・・分かった。」

 

宗雄は二本の包丁を手に取り、二人の心臓めがけて突き刺す。

 

影信「ぐぅっ・・・」

 

恵理子「うぅっ・・・」

 

宗雄「すまない・・・影信、恵理子・・・!!」

 

影信「良い・・・んだ・・・む・・・ねお・・・さん・・・。」

 

恵理子「けん・・・た・・・と・・・ゆみ・・・をお願い・・・します・・・。」

 

宗雄「・・・約束する・・・!必ずお前達が遺した者は俺が守る!」

 

影信・恵理子「あ・・・りが…と・・・・・・。」

 

二人の息は完全に止まった。宗雄は遺体となった二人を抱きしめ、涙を流す。

 

宗雄「うぅっ・・・うぅっ・・・うああああああああ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

         −現在−

 

 

 

 

 

 

宗雄「これが、健太の両親が死んだ本当の理由だ。」

 

全員「・・・・・・」

 

通「親父とお袋は、最後の最期までワシらを吉信から守ろうとしてくれとったんやな・・・。」

 

壮介「となると、健太の両親が死んだのも元を辿れば吉信の仕業・・・!!」

 

俊「酷すぎますよ!どうして何もしていない藤村さんや健太さん、そして由美ちゃんが吉信に狙われないといけないんですか・・・!」

 

宗雄「大方、吉信は影信と恵理子、そして通や健太、由美が生きていれば今後の計画に支障が出ると悟ったんだろう。」

 

健太「じゃああのとき、由美がいなかったのは」

 

宗雄「ああ、俺が先に由美を救出しその頃から情報屋として活動していた「総乃助」に由美を匿ってもらっていたんだ。」

 

健太「総乃助さんが、由美を!?」

 

さな「それ、本当なの由美ちゃん?」

 

由美「うん、私を匿ってもらっていたのは総乃助さんだよ。」

 

宗雄「当時の総乃助は一族を離れ、情報屋としての活動も少なかったから吉信の目を欺くにはうってつけだと判断したんだ。総乃助はそれを承諾してしばらく匿ってもらっていた。」

 

健太「そうだったのか。」

 

宗雄「それでだ、影信と恵理子を殺した俺は自分自身の戒め、贖罪のためにお前を育てると共に吉信の野望を止めることを選んで俺は吉信の行方を追い続け、その最中に弟子が現れてはこの世を去る者もたくさんいた。そして吉信は神浜にいる事を知った俺はみたまが今使っている調整屋として拠点を構えた。」

 

十六夜「ではみたまはその時に貴方から教えてもらったという事か?」

 

宗雄「いや、俺はみたまには間接的な事しか教えていない。みたまにそういった能力を教えたのはある「女性」が教えていた。」

 

かえで「女性?どんな人なんですか?」

 

宗雄「女性からは名前は伏せてほしいと言われているために詳しいことは話せんな。だが、その女性も今どこかで他の魔法少年少女達の治療をしているだろうな。」

 

宗雄は深く息を整え健太にあることを伝える。

 

宗雄「本題はここからだ。神浜で拠点を構えた俺は吉信の行方を追い続けていた。そして約1年前に再び「神浜東西戦争」が起きた。」

 

悠太・通「っ!」

 

健太「また、神浜東西戦争が…?」

 

宗雄「今度の東西戦争はある「少女」の死によって起きてしまった戦争だ。そうだろ?悠太、通。」

 

悠太「ああ。」

 

通「せや、あの血生臭い戦争の光景は未だに忘れられへん。」

 

健太「少女って誰のことなんだ兄貴?」

 

通「「有山優花」ワシらと一緒に魔女を狩ったりしていた戦友や。」

 

悠太「優花はその戦争が起きる直前に殺害されたんだ。」

 

健太「えっ・・・?」

 

みふゆ「私も、優花さんの事は覚えています。今だからこそいえますが、犯人は優花さんに恨みを抱いていたから東西の戦争の引き金を引いたんです。」

 

悠太「あの東西戦争はその犯人の手によって起こされ、それを見抜けなかった俺と通で血みどろの抗争になってしまった・・・。」

 

通「ホンマに酷い有様やった・・・しまいには戦争に何も関係ない東西の魔法少女まで被害被ってしもたからな。」

 

悠太「つまり、あの神浜東西戦争も...何かの陰謀だと言うことか・・・?」

 

宗雄「ああ、その東西戦争に吉信も深く関わっていたんだ。」

 

通「なんやと?」

 

悠太「どういう事だ?」

 

宗雄「優花は東西戦争に裏があると真っ先に考え、その際に吉信が真の黒幕であることを知ったんだ。」

 

健太「っ!?じゃあ優花さんが殺されたのは・・・!」

 

宗雄「優花は吉信の事を深く知り過ぎたせいで吉信の部下だった犯人に消された。」

 

悠太「っ!?」

 

通「嘘やろ・・・」

 

十六夜「もはや外道だな…。」

 

壮介「そんなゴミクズがいたマギウスでよく殺されずにすんだな灯花達は・・・。」

 

月咲「吉信に一番近かった私達・・・。」

 

月夜「今思い返すと、恐ろしいでございます・・・。」

 

宗雄「奴が次の行動に出たのは、マギウスという組織を作ることだ。吉信は当時まだいろはやういの記憶がなかった時の灯花とねむに接触したんだ。」

 

健太「なにっ・・・!?」

 

うい「灯花ちゃん、ねむちゃん、本当なの…!?」

 

灯花「うん、あの時確かに私とねむに近づいて「魔法少年少女の救済」を手伝うとか言ってたね。」

 

ねむ「当然その時の僕達はまだ本部を建てるとかいった技術はなかったけど吉信はどこから得たのか分からない数百万は入ったアタッシュケースのお金を見せてくれたんだ。」

 

宗雄「恐らく奴は何らかの方法で金を作ったんだろう。吉信の場合裏社会の金だろうがな。」

 

鶴乃「それで北養の森の中に巨大なホテルが・・・。」

 

宗雄「フェントホープは大幅はウワサによって出来ているが、イブがいた地下聖堂は吉信の手によって作られたものだ。吉信がそこを拠点に活動していると知った俺はすぐにフェントホープへ足を運んだ。」

 

健太「あの時に調整屋から姿を消していたのって吉信を追うためにって訳か。」

 

宗雄「あの時、俺はお前達より一足早くフェントホープへと向かって吉信と交戦したが……。」

 

悠太「負けてしもたんか・・・。」

 

宗雄「ああ、奴の魔力は尋常ではないくらいの量でな。なんとか戦力としては拮抗してはいたが…足の太ももを撃たれて、海斗の援護射撃もあって逃げるしかなかった。それに奴の、吉信の目的はこの国の「国家滅亡」を企んでいるんだ。」

 

健太「国家の滅亡・・・。」

 

宗雄「なぁ健太。」

 

健太「ん?」

 

宗雄「お前には辛い思いばかりさせてきちまった俺が言えた義理じゃないがこの街を守ってくれないか・・・?」

 

健太「・・・・・・」

 

宗雄「もし、このまま吉信の悪行を放置していれば神浜は確実に滅ぶ。そうなってしまえば吉信の思い通りの世界になってしまう・・・だから、頼む・・・!!」

 

健太「・・・俺、ずっとこんな日を待ってたんだ・・・!俺は今までずっと神浜や多くの人達に守られてきていつか恩を返さないとって思ってたんだ。」

 

宗雄「健太・・・。」

 

健太「安心しなおっちゃん、俺は元からそのつもりだ。吉信のくだらねえ野望に神浜を巻き込むわけにはいかねぇ。だから親父やお袋が遺したもんは俺が守ってみせる!今度は俺がこの街に恩を返す!」

 

宗雄「・・・ありがとう、健太。」

 

健太「へへ!それに俺は昔みたいに一人じゃねぇ、今はみんながいる。皆の力が俺の生きる意味みたいなもんだ。吉信は絶対に止めてみせる!」

 

宗雄「・・・強くなったな、健太。みんなも協力してくれるか?」

 

皆「はい!/ああ!/うん!」

 

皆が一斉に返事をした。すべてを聞いた事で皆が吉信を止めることに賛同し健太は絶対に吉信を止めると誓った。


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