魔法少年 ケンタ☆マグス 古の血を継ぐ者   作:マイスリッド

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第12話

健太といろはと戦い、松井夢乃は吉信とレイゴウがいたであろう洞穴へ向かっていた。

 

夢乃「(私はいつも失敗してばかりだった。私は、松井一族の未来を守るために・・・吉信を倒すために一人孤独に戦い続けた。私は、龍君を・・・総乃助さんを巻き込まない為に闇を歩き続け死んだ・・・。)」

 

そう思いながら洞穴へ向かっている最中、前方から一人の魔法少年とすれ違う。

 

夢乃「っ!」

 

龍二「っ!?」

 

紛れもない松井龍二本人だった。夢乃はそれを無視し洞穴へ向かうが龍二はすぐさま夢乃を追いかけてきた。

 

龍二「待てっ!!」

 

夢乃「・・・・・・」

 

龍二「待てと言っているんだ!!」

 

そう言って龍二はウワサの腕を召喚し夢乃目掛けて掴もうとするが夢乃もドッペルで弾き返す。

 

龍二「なっ!?ドッペルだと!?」

 

夢乃「ごめんね・・・龍君・・・口寄せ・鴉!」

 

夢乃が口寄せを発動して鴉を発動し龍二を止める。

 

龍二「ぐぅっ!!くそ!待て!夢乃ぉ!!」

 

夢乃「・・・・・・」

 

龍二の言葉を無視し近くの洞穴を見つける。この場所が二人の潜伏場所である。

 

夢乃「くだらない結界ね・・・はぁっ!!」

 

夢乃はドッペルで崩れかけていた壁を壊しその先に進むと、吉信がそこで待っていた。すると夢乃を追いかけてきた龍二も合流する。

 

夢乃「……思うようには、いかないわね。」

 

龍二「何故だ・・・何故、あんたがここにいる!?あんたはあの時、確かに魔女に食われ死んだはず!」

 

夢乃「今の私は死者蘇生の陣よ。」

 

龍二「死者蘇生の・・・という事はこの場所は!?」

 

吉信「そのとおり、私のアジトですよ。私の術で彼女は再び現世に舞い戻ったんです。もっとも、術が跳ね除けられるとは思ってませんでしたがね。」

 

龍二「貴様・・・吉信!?」

 

夢乃「・・・貴方、吉信じゃないわね。」

 

龍二「なに?」

 

吉信「・・・どういう事でしょう?」

 

夢乃「そのままの意味、貴方は、吉信じゃない。」

 

吉信「・・・・・・」

 

龍二「夢乃姉さん、何を言っているんだ…、吉信はすぐ目の前にいるだろうが、誰かが化けてるとでも言うのか?」

 

夢乃「そうね、なら、彼の・・・いや「彼女」の術を解いてあげるわ。」パン!

 

するとこの洞穴の結界が崩れると吉信の姿が変わり、目の前にかつての部下「天津岬」がいた。

 

岬「ありゃりゃ~バレちゃった・・・」

 

龍二「っ!お前は・・・!」

 

夢乃「やはり、あなたの術ね。」

 

岬「どぉして分かったの?結構ごまかせると思ったんだけどなぁ。」

 

夢乃「本物の吉信はあんな脆い結界は張らないわ。それに、本物の吉信は既に他の戦場でマギアユニオンと交戦してると聞いたわ。」

 

岬「ふぅ〜ん、吉信様は既に戦ってるんだぁ。」

 

龍二「天津・・・貴様も吉信とグルだったのか。」

 

岬「そうだよ、今の私は吉信様から力を貰って戦争を牛耳る存在なんだよ!」

 

夢乃「生も死も操り、神にでもなった気でいるなら大間違いよ。その死者蘇生の陣には弱点がある。」

 

岬「弱点?」

 

夢乃「えぇ、術の弱点とリスクは…この私の存在よ。」

 

龍二「夢乃・・・・・・」

 

夢乃「あなたの言いたいことはわかるわ。だけど、それに答えるにはこの戦いが終わり、死者蘇生の陣を解いたあとよ。」

 

龍二「・・・あんたは、いつもいつも一人で全て抱え込んであげく死んだ。だが、今度は約束を果たしてもらうぞ?夢乃姉さん。」

 

戦闘BGM「La gis sulva za celow」マギアレコード

 

     「VS 吉信一派 天津岬」

 

岬「じゃあ、見せてあげるよぉ!私の力をねぇ!!」

 

すると岬は結界を発動し魔女を召喚する。

 

龍二「奴め・・・魔女を召喚する技を!?」

 

夢乃「龍君気をつけて!!」

 

龍二と夢乃は魔女の攻撃を交わしつつ魔女と岬を攻撃していく。そして

 

岬「ふぅ〜ん・・・中々やるね・・・でも私に効かないよぉ!」

 

夢乃「大した回復力ね、流石死者蘇生の陣・・・。」

 

龍二「・・・どうする?」

 

夢乃「私に任せて、彼女を「瞳術」にはめるわ。」

 

龍二「「瞳術」?一体何を?」

 

岬「ねぇねぇ!悠長に話してる暇あるのぉ?」

 

龍二・夢乃「っ!」

 

すると魔女は二人めがけて触手で攻撃してくる。二人は触手の攻撃をかわし背中を合わせる形となる。

 

夢乃「龍君!」

 

龍二「ああ!」

 

二人は触手に囲まれると龍二は革命のウワサ、そして夢乃はドッペル「反逆のドッペル」を発動し一気に蹴散らす。そして砂煙で見えなくなる隙を突き、龍二は岬めがけて片手剣を投げる。

 

龍二「ふん!・・・ちっ!」

 

岬「無駄だよぉ?感知能力が凄まじいからねぇ。だから甘いよ!」

 

しかし片手剣は空中で止まる。そして煙の中から夢乃が不意をついて岬を攻撃しようとする。しかし龍二が投げた片手剣で夢乃の体を貫く。しかしその瞬間に夢乃の体が鴉となりそしてまたしても不意をついて攻撃し、当たる。

 

岬「良いねぇ、流石姉弟だねぇ!でも・・・」

 

そう言って岬は手の印を組み技を発動する。

 

岬「混元鐘江!!」

 

その瞬間にエリア全体に衝撃波と甲高い金属音が二人の脳裏に響き渡る。

 

龍二「ぐぁああああ!!!?」

 

夢乃「うぅっ!なるほど、光と振動で動きを止める術ね!!」

 

岬「だけど私は対策を施してるんだよねぇ・・・だからぁ!!」

 

夢乃「くっ!させないわよ!!」

 

そう言って岬は龍二めがけて走る。それを予知していた夢乃は直前にドッペルで龍二を守る。

 

夢乃「あなたの行動パターンは読めたわ・・・これからは、私が操る。」

 

岬「操る?」

 

龍二「さっき言った「瞳術」か、一体何をする気だ?」

 

夢乃「この「瞳術」は松井一族の中でも「最強」であり「最凶」にもなる術!」

 

そう言って夢乃は岬に進み鍔迫り合いになる。

 

夢乃「この「瞳術」は松井一族の中でも「最強」であり「最凶」にもなる術「叢雲之瞳」よ!!」

 

鍔迫り合いに押し込んだ後一度距離を取り夢乃は龍二に片手剣を返す。

 

岬「何か策を考えてるんだろうけど、今の私には無意味だよぉ〜!!」

 

夢乃「龍君、私から離れちゃだめよ!」

 

岬「無駄だよぉ!!」

 

そう言って夢乃と龍二はひたすら連撃を続ける。そして隙を見つけた夢乃が片手で二本の指を立てる。しかし…

 

夢乃「頃合いね・・・っ!!」

 

龍二「っ!?」

 

岬「はぁっ!!」

 

岬は不意をついて夢乃に攻撃する。

 

岬「あはは!惜しかったねぇ!!」

 

龍二「くそっ…!!」

 

龍二は片手剣を岬めがけて投げつけるが防がれる。それを見越していた龍二はウワサの手で叩きつけるがかわされる。そして砂煙の中から夢乃は攻撃岬めがけて攻撃する。

 

夢乃「あなたの運命は既に私の手に握られた。この「瞳術」は松井一族の中でも「最強」であり「最凶」にもなる術「叢雲之瞳」よ!!」

 

そして再び鍔迫り合いになり一度距離を取る。

 

夢乃「龍君、私から離れちゃだめよ!」

 

岬「まるでデジャヴだよ・・・もう見飽きたけどね!!」

 

そう言って岬は夢乃めがけて攻撃を仕掛ける。夢乃もまた同じ攻撃をずっと繰り返している。そして岬はそれにある違和感を覚える。

 

岬「何これ・・・ずっと同じ行動を・・・・・・」

 

夢乃「貴方は、私の瞳術にはまった。」

 

岬「そんな・・・くぅっ!松井夢乃ぉぉぉ!!」

 

そう、岬は既に夢乃の瞳術に最初からはまっていた。そして本物の岬と夢乃は・・・・・・

 

岬「・・・・・・」

 

夢乃「彼女はもう、この輪廻から逃れられない。運命を決める瞳術、それが「叢雲之瞳」よ。(私の道にようやく終わりが見えたわ。)」

 

こうして姉弟と天津岬の戦いに終止符が打たれた。その後夢乃は岬を動かして死者蘇生の陣解術の印を結ばせる。

 

夢乃「これ以上は私の術で動きがない・・・これで全てね。」

 

龍二「無限に続く輪廻、それが「叢雲之瞳」か。一体いつ仕掛けた?」

 

夢乃「天津さんが最初に私を攻撃した時よ。」

 

龍二「(あの時か)」

 

夢乃「輪廻にはまった天津さんは身動きが取れない。私の術で解術の方法を問いただした今、解術すれば神浜市の各地にいる死者蘇生体は完全に成仏し、抗争も終わりが近付く。」

 

龍二「なら姉さん・・・アンタも・・・。」

 

夢乃「松井一族の松井夢乃として、私はこの神浜を守ったから、この世に未練はないわ。」

 

龍二「何故だ!?何故、あんたを殺した一族の為になんでまた姉さんが!姉さんが許せてもこの俺が許さん!一族が壊滅しても、日に日に俺は一族に対する恨みや憎しみがふつふつと湧いて出てくる!この世に未練はない!?俺をこんな風にしたのはあんたなんだぞ!?」

 

龍二は今まで溜め込んでいた怒りが遂に爆発し感情的になりながら話す。それを静かに夢乃は聞いていた。

 

龍二「はぁ・・・はぁ・・・」

 

夢乃「貴方を変えられるのは、私じゃない。だからせめてこの術を止めることが今の私にできること。健太君に託したことを蔑ろにしないためにも。」

 

龍二「っ!?」

 

夢乃は岬の体を使って解術を発動する準備をする。

 

龍二「もう、何を言っても無駄なようだな。あんたといると、昔を思い出す。あんたとともにした日々は忘れやしない。だが、俺の両手は悪の物になった・・・。だからこそ俺達のように仲が良かった俺達に近づけば近付くほど理解すればするほどに恨みや憎しみが湧いて出てくるんだ・・・。」

 

夢乃「・・・・・・」

 

龍二「あんたの言いたいことは、よく分かってるつもりだ・・・。あんたは俺の姉のような存在だからこそ俺を否定するだろう・・・だが俺もあんたの弟のような存在だからこそ、歩みを止めるつもりはない・・・さよならだ。」

 

解術が成功すると神浜市全域に静かな衝撃が広がり、光の線が空に繋がるように現れる。それは天津岬、松井夢乃も同じだった。

 

龍二「(姉さん・・・)」

 

夢乃「まだ間に・・・あう・・・。」

 

龍二「っ!?」

 

すると夢乃は最期の力を振り絞り、龍二に手を差し伸べる。

 

夢乃「龍君、私は・・・いつも貴方に嘘をついて・・・巻き込まない為に貴方を遠ざけていた。」

 

龍二「姉・・・さん・・・」

 

夢乃「貴方を巻き込みたく無かった・・・。けど、今はこう思うわ・・・貴方に真実を、話していれば・・・もっと貴方と対等に、同じ目線に立っていれば一族を変えられたかも、知れないって・・・。」

 

龍二「・・・・・・」

 

夢乃「失敗した私が、今更貴方に上から多くを語っても、伝わりはしない・・・だから今度こそ・・・本当の事を・・・」

 

龍二「っ!?」

 

力を振り絞り差し伸べた手を龍二の頭を抱え、互いの額をくっつける。

 

夢乃「貴方は私の事を許さなくていい・・・だけど、これから貴方がどうなろうと・・・私は、貴方をずっと愛してるわ・・・!私の、大切な弟として・・・。」

 

龍二「っ!」

 

その瞬間、全ての力を出し尽くした夢乃は死者蘇生の陣の体が崩れ、霊体となって、空へ向かっていく。

 

夢乃「(これで、最期よ・・・。本当にありがとう、龍君・・・!)」

 

そして夢乃は消える寸前に満面の笑みで龍二に伝える。

 

夢乃「(私は・・・貴方と出会えて本当に良かった・・・。貴方の姉として生きることが出来て、幸せだったわ・・・)」

 

そう言って、夢乃はこの世を去った。この戦いで龍二は何を思うのか。

 

 

 

       第19章 開戦 完


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