子供だからといって侮ってはいけない
レム「ツバキくん、ツバキくん…起きてください、ツバキくん」
ツバキ「レム…頼むから、あと5分でいい…」
レム「ダメです、ツバキくんはお寝坊さんですから。もう一度寝てしまうと起きませんから」
ツバキ「う…確かにそうだけど…しゃーない、起きるか…」
レム「レムは台所へ行きますので、姉様を起こしてきてくれますか?」
ツバキ「うーい、りょうかーい…」
レム「ではツバキくん、また」
ツバキ「おう、またな」
ツバキ「あれから、もう3ヶ月か…」
ラムの部屋への道を辿りながら俺はふとそんな事を思った。
俺がこの世界に召喚されてから3ヶ月が経過した。
最初の1週間だけでなく、それからもいろんなことがあった。
エミリアが正式に王戦立候補を表明して忙しくなったり、エミリアの騎士代理で俺が行く話が出てたり、村の子供のペトラという娘がロズワール邸で働く事になったりと色々とあった…。長くて、でも何故か過ぎてしまえばあっという間に感じて…レムやラム達との距離もだいぶ詰まってきたし、この世界でやっていけてると思う。
これからしばらくは王戦に関する具体的な動きはまだ無いものの、しばらくするととても忙しくなったり、俺とラムとレムとエミリアで王都まで行って式典とやらに参加しなければならないらしい、先の事を見据えると、まだまだこれからだ…という感じだ。
ラムの部屋へ行くとちょうどラムが部屋から出てくるところであった。
ツバキ「今日は早いんだな、いつもだったらあと30分ぐらい遅いのに」
ラム「ラムをいつまでも同じに思わない事ね、ラムは日々学んでいるのよ」
ツバキ「じゃあせめて、料理上手くなってくれません?」
ラム「蒸かし芋なら任せなさい、ラムは得意よ」
ツバキ「だろうね、だってそれ3ヶ月前も言ってたよね?」
ラム「そういう無駄な記憶力だけは褒めてあげるわ」
ツバキ「無駄って言ってる時点で褒める気ゼロなんだよな」
ラム「ラムが仮にツバキを褒めるなんてそんなおぞましい事があれば世界が滅ぶわ」
ツバキ「滅ぼさせねぇよ!そんなことで世界滅んでたまるか!」
3ヶ月たったが、ラムの言うことの理不尽さは日に日に増している気がする。うーん…俺ほんとにこの人の事好きか?。いや諦めるのはやいぞ!、ラムさんは心優しいし普通の女の子と一緒で寂しがりなんだ。
ツバキ「はぁ…仮にも俺、ラムに告白したのになんでかなぁ…」
ラム「あれがラム個人へのだったら…ラムは考えたかもしれないわね」
ツバキ「いや…だって…ね?、あれだよ…2人をほっとけないからあの場でああいう事を言ったのであってね?」
ラム「今のでラムがツバキに振り向くのはラムが死んだ後に先延ばしされたわ」
ツバキ「ちょっとー?おかしいよ!?」
ラム「何もおかしくないわ、ラムの公平なる寛大な価値観で決めたのよ」
ツバキ「公平なる寛大な価値観で決められたのが全部俺にとって不都合でラムにとって好都合なわけですが…不正を…」
ラム「ツバキ、あなたは今日レムの手伝いなしで買い物に行きなさい」
ツバキ「分かりました、これ以上言わないので許してください!」
ラム「靴を舐めなさい、それで許すわ」
ツバキ「そこまでしねえよ!」
ラム「冗談よ、許すわ」
ツバキ「さいでっか、それじゃ厨房で朝食で作るとしますかね…」
レム「流石ツバキくんです、手捌きが素晴らしいです」
ツバキ「レムありがと、今日は…買うものどれくらいあったりする?」
レム「そうですね、今日はしばらく行っていなかったので多いと思いますよ」
ツバキ「そうか、分かった」
ラム「足でまといになるなら竜車を使いなさい」
ツバキ「毎回思うんだけど、なんで移動の時俺が引かなきゃなの?なんで竜車じゃないの?」
ラム「決まっているじゃない、ツキが苦しんでいる所を見るためよ」
ツバキ「ドS…」
レム「レムはいつだって姉様の味方です!」
ツバキ「それ今言うととんでもない事になるからやめて!」
レムは姉様大好きフリスキーだからね、しょうがないよね、可愛いもんね。
ツバキ「よーし、終わった!」
朝食を作り終え少し疲れた様子のエミリアを心配しつつ、俺はレムを乗せた二輪車を引っ張り、王都への道を辿った。
レム「ツバキくん、怪我の様子はもういいんですか?」
ツバキ「さすがにもう平気、レムは?」
レム「ベアトリス様が定期的に見てくださったおかげで完治しました」
ツバキ「なんだかんだ優しいよな…ベアトリス」
レム「そうですね、ベアトリス様もツバキくんが来てから少しだけ変わったように感じます」
ツバキ「俺が来てからって言うよりは、白狼が来てからって言う感じだけどな…」
レム「そうでしょうか?」
ツバキ「実際多分屋敷のメンバーで話した時間が1番少ないのはベアトリスだぞ、俺は」
レム「確かに、扉渡りを頻繁に諦めているツバキくんは話した時間は少ないかもしれませんね」
ツバキ「ちょっとー?さらっと人をディスらないで?」
だってしょうがないじゃん!向こうはこっちが苦労しているのを楽しみながら優雅に紅茶飲んでるんだよ!?
レム「安心してください、レムはツバキくんの味方です!」
ツバキ「そう…よかった」
レム「何か、騒がしいですね…」
ツバキ「人が集まってるな…何事だ?」
王都の市場へついで買い物で回っているとなにやら騒がしい喧騒が聞こえてきた、怒鳴り合う喧騒は激しさを増していた。
レム「あれは…」
ツバキ「子供…じゃないか?」
レム「子供が…山賊に…」
見た感じ、ナイフを持った子供が山賊3人と相対していた。
レム「ツバキくん…あれは…」
ツバキ「あの子は…」
ナイフを持った子供のすぐ後ろにはぐったりとした様子の子供がいた。頭から血を流して倒れていた。出血量は大したことなさそうだが…酷すぎる。事態は良くならず、悪化していった。山賊が容赦なく3人がかりで子供に襲いかかる。これ以上は見ていられなかった。
ツバキ「レム、子供を頼む!」
レム「はい!」
レムが子供二人を庇うように立ち、その前に俺が立ちふざかって山賊達が止まる。
山賊「なんだァ!てめえ!邪魔なんだよォ!」
ツバキ「大の大人が子供一人相手に武器持って3人がかりで襲うとは…」
山賊「そいつを殺せば大金が入るんだ!どけ!」
ツバキ「断る!」
山賊「ならてめえごと!」
山賊の1人が手斧を俺に振りかざす、俺は左手に魔力を集中させ、斧を指で受け止める。
山賊「は?」
ツバキ「砕け散れ!」
俺は指で斧の刃を粉々にし、山賊の腹に雷の一撃を打ち込んだ。山賊は痺れながら倒れた。
山賊「なに!?」
ツバキ「寝てろ、賊」
雷の高速移動は普通の人間の反射の限界を超え、残りの山賊は気づいた時には既に地に倒れ伏していた。
ツバキ「…大丈夫か?」
ナイフをもった子供は呆気に取られた様子でこちらを見ている。
ツバキ「とりあえず…子どもがこんなもん持つんじゃない」
俺はそういい、子供の手からナイフを取る。手のひらに雷のエネルギーを集中させるとナイフは粉になって風に流れた。
子供「れ、礼は言わないからな!」
ツバキ「そんなのは後でいいし、とりあえずあの小さな子を治さないと…」
子供「なら…ついてこい」
ツバキ「…分かった、レム」
レム「分かりました、レムも同行します」
ツバキ「よし…」
俺は心声で白狼に語りかけた。
ツバキ[白狼…聞こえるか…」
白狼[聞こえるわよ、なに?]
ツバキ[ちょっと面倒な事になった、帰るの遅くなりそうってラムに伝えてくれ]
白狼[私は行った方がいい?]
ツバキ[いや、いい。そのまま待機しててくれ]
白狼[了解、必要になったら声掛けて]
ツバキ「よし、いくか」
子供「こっちだ」
ツバキ「な…なんだこれ…」
目の前にはロズワール邸と同じかそれ以上の大きさの屋敷が3個ほど立ち並んでいた。
なにやら執事のような人達が子供を出迎えた。
執事「フェルト様、おかえりなさいませ」
執事「そちらの人達は…」
フェルト「私を助けてくれた、例の奴らからな。小さな子供を手当してやってくれ。それと男と女を丁重にもてなせ」
レム「フェルト…まさか…」
ツバキ「レム?」
レム「彼女は…エミリア様と同じく王戦に出るお方です…」
ツバキ「な…」
フェルト「自己紹介が遅れたな、私はフェルトだ。よろしくな」
彼女と出会いが今後、俺とレムをとんでもない事に巻き込まれることになることを俺達はまだ知らなかった。
次回予告コーナー
ラインハルト「今回は僕、ラインハルトと」
ツバキ「ツバキでお送りします…」
ラインハルト「どうしたんだい?浮かない顔をして…」
ツバキ「なんで未登場キャラを次回予告で出すんだよ…」
ラインハルト「次回出るからじゃ?」
ツバキ「そういう事か…さて次回は?」
剣聖、ラインハルト・ヴァン・アストレア
ツバキ「まんまだな…」
ovaは作って欲しい?作るとしたら?
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ラム afterstory
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お酒タイム ラム編
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お酒タイム レム編
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作らずにfateはよ