予想より展開が遅いので、前に宣言した残り話数より長くなりそう。
執筆速度あげなきゃ。
あと、ユージェンの加入ミッションでダークエルフが軽く1000年以上に生きても見た目が変わらない描写がありますが
この作品では当初の予定通り、寿命は数百年のままいきます。
都市へ偵察に訪れたデーモン達に道案内をしたあと、彼らはとある森の番人の家の前にいた。それはティーの家である。
都市近郊に住む雌デーモンとそれと共に住む一家については噂になるほどなので、調べればすぐに場所がわかった。
ではなぜ、ジャックらがここへ来たのか。
「で、ここにお前のいう『ぶちのめして欲しい奴』と『代わりの雌』がいる場所か?」
「ああ……」
彼がデーモンと行った契約である『女2人の解放と、代わりの女2人の交換』と『気に入らない奴をぶちのめすことの対価に道案内をする』を執行するためだ。
すなわち、ぶちのめして欲しい奴とはアベルのことであり、代わりの女とはティーと雌デーモン(バロウス)のことである。
正直なところ、ジャックにも良心はある。それにダークエルフを裏切っているという後ろめたさもある。
だからこそと言うべきか、彼が強いと思える者のところに来たのだ。認めるのは癪だが、アベルは普段から自分を煙に巻くようになったし、雌デーモンも単純に戦力として申し分ないだろう。
脅迫してきたデーモン3体は、どうせ相手はダークエルフだとたかを括っているのもあり、油断しているのは明らかだ。ならばアベル達だけでも勝てるのでは?という打算があった。
それはそれとしてアベルが嫌いというのも理由であるのは間違いないのだが。
「じゃ、さっそく乗り込むか。雌は殺すなよ」
デーモンの1体がそう言うと、家に近づいてドアを蹴破った。派手な音を出してドアは粉砕され、パラパラと木屑が舞う。
しかし家の中からはなんの反応もない。
「ん~? 反応がねぇな。留守なのか?」
「隠れてるだけじゃねーの? 下等生物ってのは正面から正々堂々やっても勝てねぇからコソコソしてるもんだって、相場が決まってるんだよ」
好き勝手いいながら1体を見張りに残して、デーモン2体はドカドカと無遠慮に家のなかに入っていった。
ジャックはそれを見ていることしかできなかったが、どうも様子がおかしい。先程から家の物を破壊する音とデーモンの怒声しか聞こえてこないのだ。
そうなると焦りも出てくる。もしも誰もいなければ、デーモン達がどういう行動にでるのかわかったものではない。となれば、彼が自ら探索に出ようとするのも当然のことだった。
見張りのデーモンにジロジロ見られながらも、家の周辺を調べていく。すると入り口とは反対側に、大きな足跡が見つかった。形と柔らかさから、できて間もないデーモンのものだろう。
これが家から裏口を通って出た足跡はそのまま一直線に森の中へと向かっているのだ。見知らぬデーモンの足跡であるにも関わらず、だ。
ジャックは確信する。間違いなく、自分達がこの家に来たことを察知して、隠れるように逃げ出したデーモンがいる。
しかもこのデーモンはダークエルフと友好的なのだろう。家のなかは荒れてはいなかった。つまり、探していた雌デーモンもしくはその仲間ということに予想がつく。
なぜ1体分の足跡しかないのかは不明だが、手がかりであることに違いない。
肝心の、この足跡がどこへ向かっているかだが……彼にとっては幸運なことに、ここ最近のアベルとの追いかけっこのお陰で上がった追跡能力がある。しかもデーモン特有の魔力の残滓も残っている。
追跡は容易だった。
文句を言うデーモン3体を引き連れて痕跡を追うとすぐにその巨体は見つかった。ダークエルフの女が先導しつつ、見知らぬデーモンが何か……遠目だとわかりずらいが、人の形をしている……を、抱えて森の中を走っていた。
女は森に慣れた様子だが、デーモンは抱えている人物を気にしてか、走る速度が遅い。
あのデーモンは誰だと、ジャックは3体に問う。しかしわからないらしく、全員が首を捻った。
「まぁ……デーモンについてはともかく、アイツらがさっきの家にいた奴等で間違いないと思う。となると、アイツらは目的の女か、それに関係するやつらだ」
「なぁに。要は取っ捕まえてボコればいいんだろ? おい、いくぞ」
細かいことを考えるデーモン達ではないため、とりあえず襲撃することにして襲撃組の2体は走り出した。相手方に同族がいようが関係ない辺り、デーモンのドライさが伺える。
「オラオラ! へへへ。そこのお二人さん! 止まんな!」
「うわっ。なんだこいつら!?」
「くっ……もう追い付かれたのね」
逃げる2体の前にデーモン2体は躍り出た。直ぐに追いかけたジャックともう1体のデーモンとで挟み撃ちの形になる。
「おい、探してるのはコイツらでいいのか?」
「……いや、女は違う。こんな年増じゃねぇ。でも顔つきは似ているから母親かもしれねぇ。
あのデーモンの方は絶対違うが……抱えているのは雌の……デーモン? か?」
「……確かにあの雌もデーモンの魔力だな。見た目は角と翼以外、デーモンっぽくねーけど。
お前の話ならあの雌デーモンは、雌の交換先の1体ってことでいいんだな?」
「ああ。なぜか意識がないようだし、ちょうどいい。ダークエルフの女の方も何かに使えそうだから生かしておけよ」
「まかせな。生け捕りなんてわけねぇ。
しかし、お前もノリノリだなぁ」
「……約束は守れよ」
逃げている2人……プルプレアとヘンタイは苦い表情をしつつ、この場の全員に聞こえる大きさで会話するデーモンとダークエルフの男の話を聞くことしかできなかった。
半刻ほど前のことだ。
ウンランがデーモンの動向とその企みについてプルプレアとヘンタイに報告し、またティー達のもとへ戻っていった後から、彼女らはバロウスの看病をしていた。
ヘンタイは少しは悲しんでいるのか、普段見せない沈んだ表情をしていた。しかし床に伏すバロウスを見ては、時おり恍惚の笑みを浮かべたかと思うと、ハッとして、頭を地面にぶつけながらよくわからないことを叫び悶絶するといった奇行を繰り返していた。
プルプレアには彼が何を考えているのかわからないが、どうせまた変なことだろうと生暖かい目を向けていた。
「うわああああ! い、今の姐さんならっ……! 無防備っ……! 普段、あんなに暴君なのに……! 黙ってりゃっ……かわいいっ……!!
ボロボロで……無抵抗っっ……!! あああああ!」
……プルプレアには見守る(監視する)ことしかできなかった。
それはさておき。
看病をしていると、外にある感知用の罠に反応があった。窓の隙間からそっと外を覗いてみると、見慣れないダークエルフの男とデーモンが3体、そして捕らえられたダークエルフの女2人がこちらへ向かってきている。
当然、プルプレアは不審に思う。このタイミングでデーモンが来るというのは、明らかにおかしい事だ。ダークエルフと一緒にいるのも訳ありな気がする。ひとまず、ヘンタイを呼んで状況を整理することにした。
「聞いてヘンタイくん」
「え? なに?」
「外に誰かいるわ。もしかしたら敵かもしれないから、バロウスちゃんの傍にいて」
「あー、ついに来ちゃったか。俺にやられによぉ!」
「あら、4体1で勝てるのかしら?」
「お、おうよ!……ダークエルフなら!」
「外にいるのはデーモン3体とダークエルフ1人……無理ね」
「うげっ……。いや、俺が特攻してお前が不意撃ちすれば勝てるんじゃね?」
「たしかに、少しは、可能性はあるわね。でも、彼らの目的がバロウスちゃんならどうする? ヘンタイさんが特攻して動けなくなったら、逃げることも不可能なのよ」
2人はせわしなく会話をしつつ、状況を整理していく。
「えーと……じゃあ、どうすんだよ」
「……今すぐ逃げるわよ。バロウスちゃんを抱えて来て。裏手から出るわ」
結論として、彼女は逃げることに決めた。ひょっとしたら敵意のない一団かもしれないが、その可能性がかなり低いだろうことは、想像がつく。
ヘンタイは、未だ眠り続けるバロウスに負担がかからないようにしつつ抱き上げ、プルプレアは緊急用にまとめておいた装備を持ち、2人は静かに裏口から脱出した。
「でもよ、逃げたはいいとして、どこに行くんだ?」
「都市へ行くわ。……本当は、余計ないざこざが生まれるかもしれないから、行くべきではないのだけれど。この際仕方ないわ」
ひとまずバロウス宅に行くという手もあるが、距離が大して離れていないため見つかるのも早いだろう。となれば他に行くことが出来るのは都市しかない。
しかし、元々隠密には向かないヘンタイがバロウスという荷物を抱えているのだ。移動速度は格段に落ち、痕跡を消す余裕も少ない。プルプレアが悪路を避けて先導してはいるが、整備されていない森の中では限界がある。
だから、いつかは追い付かれるとは思っていた。
「オラオラ! へへへ。そこのお二人さん! 止まんな!」
「うわっ。なんだこいつら!?」
「くっ……もう追い付かれたのね」
誤算だったのは、予想以上に早く追い付かれたことだった。背後から追いかけてきたデーモン達に行く手を阻まれてしまう。
前方では回り込んだ2体のデーモンがニヤニヤしながら仁王立ちし、後方ではダークエルフとデーモンが彼女らを捕獲する算段の話をしていた。
「あなたたち、何が目的?」
「俺らの目的はそこの雌デーモンだ。
あと、アンタにはいろいろ聞きたいことがある。大人しく投降するならアンタには乱暴しねぇよ」
プルプレアが問うと、ダークエルフの男が返事をした。
それは含みのある言い方だ。プルプレアは傷つけないと敢えて明言するのは、裏を返せばデーモン2体には容赦せず乱暴するということなのだろう。
もちろん、彼女はそのことを許容しない。
「お断りよ。あなたがどういう理由でデーモンの仲間になっているのか知らないけれど、2人に何かするなら見過ごすわけにはいかないわ」
「はぁ……アンタ、状況わかってて言ってるのか? 足手まといを抱えて、数でも負けるってのに、抵抗して何になるんだよ」
「どうにもならなくても、譲れない一線っていうのはあるものよ」
「バッカみてぇ」
ジャックの吐き捨てた言葉を合図に、両者は構える。
しかし……その瞬間プルプレアの頭部に強い衝撃が走った。
「悪いね」
意識が暗転する直前に彼女か聞いたのは、すぐ側から発せられた声だった。
新要素の英傑の塔、楽しいです。
有用なユニットが揃ってたら楽なんでしょうけど、それだけ揃う人は報酬も要らないくらい育成リソースあるんでしょうね。
私は雑魚なので四苦八苦してますが。楽しい。