ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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第1章 星下の決戦
暗中の3人


「おい!!フィーネはいるか!!」

 

夕食を終え、明日の作戦決行の段取りを話している最中、イヴリースが家に飛び込んできた。端正な顔に焦燥が浮かび、息は荒く、体中汗だらけだった。おそらく町中を探し回っていたのだろう。

 

「落ち着けイヴリース。一から事情を説明してもらわんことには何も動けん。」

 

「これが落ち着いていられるかよ!!アイツは・・・アタシが守ってやらなきゃいけねェのに!!」

 

イヴリースはアルファルドの胸ぐらをつかみにかかる。が、すぐに冷静さを取り戻して謝罪する。

 

「・・・すまねェ。熱くなった。」

 

「分かればいいよ。それで?状況は?」

 

アルファルドは冷静に状況把握に努めながら戦の準備を始める。直剣を帯刀し、革製のジャケットを羽織り、それに小瓶やら野球ボールのようなものを仕込んでいる。

 

「アイツ、いつもは日没前に帰ってくんのに今日は何故か帰ってこなかったンだ。それで、教会にいったら地下倉庫の床に穴が開いてて・・・」

 

「その穴は塞いだか?」

 

「いや、まだだ。」

 

「わかった。そこから連れ去られたとみて間違いないだろう。ユウキは門に行ってくれ。イヴリースは穴をふさいでから家々を回ってこい。物置小屋から厩まで全部だ。俺はフィーネを探しに行く。」

 

「どうしてだ!!捜索隊は出さねェのかよ!!このままじゃ・・・」

 

「地面を掘って侵入した以上組織的で時間をかけた犯行と見て間違いないだろう。だったら連中がシスター一人拉致して済むとは思えない。大部隊が外で待機しているはずだ。そいつらが押し寄せてきたらひとたまりもない。いますべきは侵入者の炙り出しと村の防衛だ。」

 

「────────っ」

 

イヴリースは反論できず、沈黙する。

 

「まかせたぞ。こっちは最低でも足取りくらいはつかんで見せる。」

 

後ろは任せた。そういわんばかりの迷いのない走りでアルファルドの姿は闇に溶けていった。そしてユウキもすぐにその背中を追った。

 

 

ユウキが門についたころにはアルファルドの読み道理、門の閂は破壊されていた。いまのところ開けられた様子はないがそれも時間の問題か。周りを見渡すが閂の代わりになりそうなものが見当たらない。否、破壊されていた。

 

「それならこいつでどうだ!」

 

剣を引き抜いて閂に代わりにする。これなら多少の時間稼ぎはできるだろう。

だが肝心の閂があれでは時間稼ぎにしかならない。なにせ店売りの剣だ。折れてしまうのは想像に難くない。だがこれでユウキは丸腰。得物の再回収と閂の代用を求めて戻ろうとした矢先、

 

「ちっ、気づかれてやがったか。だがまあいい。ここでお前を消せば万事解決だ。」

 

────────そう簡単にはいかない。とばかりに闇の中から悪意が出現した。

 

 

イヴリースは暗闇を駆ける。本当は今すぐ穴に入ってフィーネを探したいところだが、感情を殺してその衝動を叫びに変える。

 

「敵襲だァ!!ビーストの野郎どもが教会に穴開けて侵入してきやがった!!」

 

村人たちが一斉に騒ぎ出し、家から出てくる。幸い、住人たちはまだ完全に寝静まっていなかった。詳しい説明は省いてまずは住人への被害の確認と穴をふさぐことをしなければならない。

動揺して穴を放置したミスを取り戻さなければ。

かつてギルド関係者として、学んだ戦術(マニュアル)を思い出して今やるべきことを整理する。

小さい村とはいえ住人全てを確認するにはあまりにも時間が足りない。確認作業を村の青年団に任せて、幾人かの農夫や大工を起こしたのち、穴をふさぐよう伝達すると家に向かって走り出す。

こちらも幸運なことに武器の類は盗まれていなかった。愛用の槍を持ち出して男衆を送り込んだ教会に向かう。

全速力で教会に到着すると入口に見知らぬ死体が転がっていた。

────────アルファルドの仕業だな。

今は別行動している仲間の迅さに感嘆し、屍を乗り越えて礼拝堂を超えて奥の地下倉庫に向かう。

────────トン。カン。トン。カン。と釘を打つ音が聞こえる。

その音が敵に居場所を知らせているとは知らずに。

 

 

アルファルドは現状の見方戦力に不安を覚えていた。現状この村で戦力になるのは3人、いや2人。ユウキは現状遭遇戦のみの1回しか実戦経験がなく、イヴリースは冷静とはいいがたい。村の農夫や木こりたちも力自慢ではあるのだが野盗と互角に戦えるとは思えない。

教会のトンネルは25メル程で地上に出た。

村の西側は大森林でしかも異常に固い木々がうっそうと茂っているため高級木材の一種ではあるのだが、いかんせん切り倒すことの費用対効果が悪い。

つまりここは完全に未開発地域。

このド田舎で未開発の地域は潜伏、逃走に適している地形だった。

月明りのみを頼りに森を走る。ランプや松明など問題外、そんなもの敵に位置を教えているようなものなので持ってきていない。

ラッキーなことに敵は足跡を残していってくれた。方角は西へ。が、その足跡は300メルほどの追跡ののちに途切れていた。

 

「止め足だな。古典的な手を使いやがって。」

 

わざと偽の足跡を残し、その足跡を踏んで戻って隣の藪に飛び込む。野生動物も行う典型的な手だ。

────────ここまでは想定内。人を抱えた相手に暗闇でも追い付く可能性はなくはない。

が、深追いは逆に木乃伊取りが木乃伊になりかねない。出口の穴は塞いだため早急に正門に戻って村の防備を固めなければ────────

周囲から殺気を感じる。恐らく敵は複数。

とりあえず殺気がした方向の暗中にナイフを投擲する。暗剣(アンケン)と呼ばれる特製の代物だ。漆黒に塗られたナイフは手元を離れると即座にに闇に溶けて刹那の後に標的の臓器に音もなく入り込む。間抜けな悲鳴とともに位置を教えた男にさらに追加のナイフを投擲、これも命中する。

その後投げた方向と逆の藪に退避。仲間の死に気付いた敵は闇の中ざわざわと声を荒げる。

 

「やってくれたな。まずはお前らから相手してやる。」

 

視界は最悪、敵の数は不明。静謐が破られた森の中、三人の戦いがが始まった。

 



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