ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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たたかう受付嬢

教会が何やら騒がしくなっている。

エルナ村潜入部隊の1人、ボルドーは予想以上に速い敵の対応に焦りを感じていた。

本当は教会に潜入したのち、閂を破壊してこっそり帰って別動隊に襲ってもらう。そんな予定で動いていたにもかかわらず、忘れ物を取りに戻ったシスターに発見されるわ、口封じはできたものの実働部隊は6人から4人に減ってしまった上に肝心の退路がふさがれようとしている。

 

「クソッタレ、どうしてこうなっちまったんだ、ああ、最悪だ。正門行ったワーカントは何してんだ・・・」

 

本来の任務である物見櫓の制圧を放棄して教会に向かう。どうせこんな田舎の村、大して戦力を割いていまい。

 

「なん・・・だと・・・・・」

 

入口には仲間の一人、フェンの無残な死体が転がっていた。

 

「便所の蛆虫以下の糞虫どもが、皆殺しにしてやらぁ!!!」

 

逆上したボルドーは村の特産バルバトス杉の椅子の合間を縫って槌の音のする方、教会の地下倉庫に走り出した。

そして入口から2番目の椅子を過ぎたあたりで────────世界が横転した。

 

 

 

「殺す────────絶対に殺す。」

 

穴は大工職の村人たちに任せ、イヴリースは教会の2階に息をひそめて獲物を待ち続けていた。

教会という地形は待ち伏せ(アンブッシュ)(トラップ)に最適だ。薄暗く、通るルートは限られる。さらに入口と目的地が一つしかない。

ユウキ、あの突如現れた弟子が正門を守れるかは賭けだがあのアルファルドが選ぶのだ。相当な実力か見込みがないと勧誘はしないだろう。

ああ、思い出したら腹が立ってきた。なんでヤツはあんな少女を弟子にしたのだろう。自分なんて何度頼んでそのたびに断られたことか────────

 

「クソッタレ────────」

 

余計な思考は汚い罵声とともに闇に溶ける。

待望の獲物のご到着だ。そして馬鹿な標的は罠に気付かずに飛び込んでいき、そしてかかった。

1歩分の勢いをつけて『ジャンプ』する。窓からさす月明りと地下倉庫の照明だけが明りの暗い協会の闇の中に溶け込み、重力に引かれて断頭台の如く体ごと槍が落ちる。

竜騎士(ドラグーン)のごときジャンプは教会に本日2個目の大穴を穿った。踏みつけにされた獲物とともに。

 

「おい、なんか言うことはないかよ。」

 

「────────────────────────」

 

イヴリースの一撃はボルドーの心臓を穿ち、即死させた。問答など不可能。なぜなら答える余裕を与えなかったからだ。

 

「チッ。だんまりかよ。獣は獣らしくよォ、なんか吠えてみろよオイ。聞いてんのか、フィーネはどこだ!テメェらの仲間は何人いんだよコラァ!!」

 

槍の石突で傷口を抉る。敵の”天寿”を削れば削るほど情報は遠のく。そんなことは解っているはずなのに憎悪を抑えられずに殴る。殴る。殴る。

すでにとこ切れた相手を病的なまでに殴ってもイヴリースのフラストレーションすら解決しない。

 

「成程。この村に『青』がいるという噂は事実らしい。」

 

罵声が響き渡る教会に場にふさわしい落ち着いた声が響く。

いままでの汚らしい胴間声とは異なり、低いが品のあるアルトボイス。

フードをかぶっていてその正体は見えない。身長は165センほどか。

先ほどの男たちとは打って変わって武人のような落ち着きのある声色だ。

 

「誰だテメェは。今は機嫌がいいんだ。好きな死に方くらいは選ばせてやる。」

 

突如沸いた新しい獲物にイヴリースは歓喜する。殺せる。まだあの獣どもを殺すことができる。そう考えると胸が躍った。

 

「和が名はランファル。仲間の仇、討たせてもらおう。」

 

第2戦目が始まる。



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