ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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再会

「ふぁ~~~~~あ。」

 

静寂と闇が支配する深い森の中、場違いなあくびが響く。

村から出て20分が経過した。

現在午前0時15分。午後8時のランファルたちの夜襲からリカードのお説教、ランファルの尋問と特濃にもほどがあるほど濃い一日だ。これでこの世界にきて3日目なのだから勘弁してほしい。

精神力には自信があるユウキだったが流石に疲れた。

自分で選んだ道とはいえこのままだと徹夜コースは確定。

ランファルの隠れ家が村から徒歩で30分ほどの距離にあるらしいが、夜道だとさらに時間がかかる。負傷したランファルを連れたペースでいくと帰還したら夜が明けるだろう。

 

「これが終わったら豪勢な飯にするからあとちょっと頑張れ。徹夜明けのごちそうってのは体に悪いが脳みそには最高なんだ。」

「うう・・・消化のいいものがいいな。」

 

このパーティーで唯一アルファルドだけが元気だ。彼も連戦の疲れはあるだろうに全くそのそぶりを見せない。

実戦経験の差、もしくは肉体的な鍛え方の違いか。最も激しい戦闘(彼の場合は戦争クラス)をしたのは間違いなく彼なのに最も消耗していない。恐ろしい男だ。

 

「了解した。パンとスープくらいしか用意できないけどな。」

 

 

村から30分ほど歩いただろうか。針葉樹林だった世界は一変して竹林へと姿を変える。月明りが差し込みやすくなり、いくらか視界がよくなる。

現実世界のものとなんら変わりのない竹林だ。背の高い竹がいくつもランダムに並び、足元には笹薮が生い茂っている。

ちなみにこの世界の月は現実世界と変わらず1個で満ち欠けの周期も同じらしい。

星に関しては現実世界よりは圧倒的によく見えるが並びの法則性はつかめない。

例えばオリオン座や北斗七星といった分かりやすい星座は見つけられなかった。

竹林をしばらく進むと4mほどの崖が道を塞いでいた。その崖の一部にランファルは近づき、地面を掴んだ。

ランファルの腕が引かれると、地面にカモフラージュした布がめくられ、地面だと思っていた部分から横穴が現れた。

 

「なるほど、これが隠れ家か。見たところ天然ものじゃないな、人力か魔術で掘ったのか。すげえな。」

 

さしものアルファルドも感心している。地面にカモフラージュさせた秘密基地。斜めに穴が掘り進められ、奥までは見えない。穴はかなり奥深くまで達していて、確かにあの実行部隊全員なら何とか収容できそうだ。

だが居住性はかなり悪そうだから定住するのには向かない。足元にはダンゴムシに似た何かやムカデっぽい生き物がわんさか蠢いている。

あのカモフラージュがあれば誰にも気づかれない極めて隠密性の高いアジトだ。

 

「ええ、その通りです。我々、脱走経験者が多いため穴を掘ることは得意なんですよ。」

 

横穴を2mほど進むと石の壁が行く手を塞いでいる。奥から衣擦れの音や明りが漏れているのでこの奥にフィーネとランファルの仲間たちがいるのだろう。

ランファルが石壁を拾った石叩くと奥から声が聞こえてくる。

 

「金に」

「半月」

「空に」

「ニワトリ」

「星の数だけ」

「毛が抜ける」

 

よくわかんない暗号らしきやり取りが終わると石の壁が動き出し、半獣人が出迎える。

そこまで大きくはない痩せぎすの男だ。年は30くらいで頭頂部にはイヌのような耳がついている。

戦士というには少しばかり頼りない体格だが、決して弱弱しさは感じられない。

 

「おかえりなさい、お嬢。ってなんですかこいつらは!っていうかほかの皆は・・・」

「ただいま、ジョー。気持ちはわかりますが抑えてください。これから大事な話があります。彼らを通してください。それと、人質の解放を。」

「了解でやんす。」

 

聞き分けよくジョーと呼ばれた男が奥へと向かう。ランファルに続いて進むと猿ぐつわと縄から解放されたフィーネがアルファルドに抱き着いてきた。

 

「アルファルドさん!私、私────────っ」

「無事でよかった。ケガはないか?」

「はい。でも、でも────────────────」

 

声にならない嗚咽を漏らし、フィーネは端正な顔をぐちょぐちょに濡らしてアルファルドの胸に顔をうずめる。

────────やっと取り戻せた。

アルファルドはフィーネを慰め、ユウキは感動の再開の場面に涙を流した。

これでエルナ村の襲撃事件はすべて解決した。人的被害は0。物的被害は少々あったものの(大体アルファルドのせい)エルナ村は完全に守りきれた。

 

そしてこれからは二人のエクストラステージだ。

借金の返済という理由としてはだいぶ情けない方向へと格下げになった。

それでもこれは敵も味方も救ってみんなでハッピーエンドになるための戦いだとユウキは確信していた。

 

 

────────────────

「お嬢!それは・・・」

「ジョー、それでも私たちは手段など選べるはずがないのです。わかってください。」

「くっ・・・ですが・・・」

 

感動の再会の中、ランファルは二人のハーフの男に事情を説明していくれていた。

二人は煮え切らない様子だったが、ほかに方法がないとランファルに従ってくれている。

彼らだって同胞を殺した敵の力を借りることなど絶対にしたくないだろう。実際にユウキ以外の戦闘メンバーは一人ずつハーフの人を殺している。

そこにアルファルドが入り込んだ。相当空気読まないぞこの人。

 

「事情はランファルから聞いてるな。儲け話を耳にしてあんたたちに協力することになったアルファルドだ。よろしく。」

「私が言うのもなんですけど今まで殺し合ってきた相手によくそんな簡単に握手とかできますよね・・」

「生憎殺し合ってきた相手と一緒に飯を食うなんて日常茶飯事でね。それに負けてすぐ寝返る君が言うのかそれ」

 

ランファルの突っ込みもどこ吹く風、アルファルドはその分厚い面の皮をはがすことはなく友好的な態度で声を荒げたジョーと呼ばれた男に手を差し伸べる。

 

「お前のような得体のしれん男に・・・っぐえ!」

 

強硬な態度をとるジョーだったが、横からランファルの折檻があったのか間抜けな悲鳴を上げたのち渋々アルファルドの手を取る。

 

「ジョー・マックマートだ。まぁ、なんだ。よろしく頼む。」

隣の半獣人の男も続いてアルファルドに応える。

「ウィン・レイラムです・・・よろしくお願いします。」

 

「ああ、ありがとう。期待してるぜ。」

 

握手が交わされ、同盟が結ばれる。

それはこの世界で初めての獣人と人間の共同戦線だった。



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