ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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地上の地獄で

「なに・・・これ・・・」

 

いざ助け出さんと向かった先でユウキたちを待っていたのはヒンノムにごまんとある地獄のうち一つだった。

異臭のする大気に穢されるだけ穢されて打ち捨てられた少女たち。

その異様な光景にユウキはベン・ヒノムの谷を連想した。

目の前にある光景重なる旧約聖書につづられた幼児犠牲が行われ,また後に町の汚物や動物・罪人の死体が焼却されたエルサレムの城壁の南にある谷。

後に地獄(ゲヘナ)の同義語となったその他には皮肉なことに()()()()とも呼ばれていた。

余りのおぞましさに吐きそうになる。

隣でらランファルは実際に嘔吐していたがそれを気にすることができるほど余裕のあるものはここにはいなかった。

 

「お嬢・・・私たちに構わず逃げてください・・・」

 

地獄の具現のような光景の中、一人の男が意識を取り戻す。ウィンよりさらに痩せこけた体におびただしい数の青痣が浮き出ていて、言葉を発するだけでも苦悶の表情を浮かべている。

 

「ライ!動けますか?早くここから脱出しますよ!今しかないんです!」

 

一度は戦意を失いかけたランファル一行であったがライと呼ばれる男の言葉で失いかけた己を取り戻す。

すぐさまライを抱え、助けようとするランファルであったが、しかしライは彼女らの助けを拒んだ。

 

「私はもうここを動ける余力はありません・・・お嬢たちだけでもここから逃げてください・・・それにヤツの狙いはお嬢です。ここにいてはいけない・・・」

 

「助けも呼びました。ここから逃げられればそれでみんな助かるのです!立って、立てなければ私が────────────────」

「奴が、奴が来ます。奴が・・・ちくしょう、止められなかった・・・俺たちは何もできやしなかった・・・!」

 

無力感と自責で動けなくなるライを背負ってその場を離れようとするランファル。

ジョーとウィンも抱えられるだけの人を抱えて逃げようとするが、そうは問屋が卸さなかった。

爆発で一瞬だけ照らされることでテントに映る黒く巨大な影。

テントを貫き落ちてくる、ジョーの首を落とさんと迫る肉厚の鋼の刃。

骨組みや繊維を切り裂き、それでも勢いは止まらずに振り下ろされるその刃をユウキがすんでのところで止めていた。

 

幸運なのか不幸なのか、紺野木綿季の性知識はエイズを本格的に発症して入院してから1度も更新されていなかった。

粘膜接触による感染を恐れて触ろうともする人がいなかったことと年齢と病気の関係でに知る必要すらなかったことがより一層彼女の性知識を乏しいものにしていた。

それがジョーの命を救った。

眼前の地上の地獄をユウキが()()()()()()()()()()()()()ことがほんのわずか早く精神的ショックから戻り、意識外からの奇襲に対応できる時間を作り上げた。

 

「良い反応。んーーー勃起♡」

 

テントを切り裂き姿を現したのは重厚な鎧を身にまとった大柄な獣人の男。

今までにあった敵兵より上等な装備をしていることから幹部クラスに見えるその男は彼女たちを穢しに穢し尽くした首魁、アガメムノンだった。

 



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