ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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最初の挨拶

「大丈夫か?、立てないならおぶって行こう。」

 

青年が手を差し伸べてくる。

その手は血まみれで、彼がどれ程の激戦をしていたのかがわかってしまう。きっと、ボクより何倍もの人数を相手にしていたのだろう。が、着いているのは全て返り血で、彼は一滴も血を流していない。

 

「怪我は…まぁ大事に至らなくてよかったよ。心配したんだぜ」

 

ふと、緊張の糸が切れたのか目から熱いものが流れる。それは止まらずに、流れ続ける。仮想世界の感情表現は現実世界よりリアルで、取り繕うのが難しいものだが、この世界のそれはごくごく自然で、それ故にこの感情は、どこまでも本物だった。

 

「………怖かった。」

「ああ。お前はよく頑張ったよ。」

「怖かった!怖かった!!怖かった!!!」

 

思わず初対面の青年に抱きついてしまう。

だってそうだろう。気がついたらどことも知れない森の中、これだけでも十分に恐怖なのにさらに追加の人攫いの集団だ。

本当に死ぬかと思ったし、いつ死んでいてもおかしくなかった。

────────今までもいつ死んでもおかしくなかったし、その覚悟はあった。

それでも、これは無い。最悪だ。なんでボクがこんな目に合わなきゃいけないんだ。

気が付いたらなんも分からない世界に放り込まれた挙句、開幕でやばいやつに遭遇して殺されかけるなんてどう考えたっておかしい。出てこいボクを呼んだ奴は、冗談じゃない、ふざけんな!!

湧き上がる感情をおさえきれず、ボクは彼の腕の中、泣き続けた。

 

 

 

 

 

「…………落ち着いたか?」

「う、うん。」

ホント、スゴイ恥ずかしい。初対面の名前も知らない青年の腕の中に抱かれて小一時間泣き続けたのだ。

穴があったら入りたいし、なんなら無くても掘りたいくらいだ。

 

 

「…ところで、聞いてる?」

「は、はひ!なんれしょう!」

噛んだ。もはや恥の3重塗りだ。もうどんな顔で彼と話せばいいんだろう。

 

「さっきも言ったと思うが村まで行く。幸い結構近くにギルドのある村があるからそこに行く。歩けるか?」

「うん。」

 

とにかくいまは少しでも情報が欲しい。いくら恥ずかしかろうとこの青年に頼るしかないのは当然の結論だった。それに戦闘力も高そうだからこういう世界では頼りになる。

 

「了解だ、行こう」

 

そう言って彼は血濡れの手を差し伸べる。

────その手は、少し冷たかった。

 

 

「そう言えば俺ら、お互いの名前知らなかったな。」

 

あ゛。

 

いままで色々ありすぎて忘れていたが、確かに彼の名前は教えて貰ってないしボクだって悩んでいない。

この世界だとどういう風に名乗ろうか、と逡巡する前に青年は先に名乗っってくれた。

 

「俺はアルファルド。姓は無い。一応仕事はこの近くの村で傭兵やってる。」

 

 

それにボクもそれに答える。

どの世界も、きっとここから始まるのだろう。

 

 

「ボクはユウキ。ただの『ユウキ』だよ。よろしくね!」

 

 

 

 

アルファルドとユウキは笑ってお互いの手を握る。

 

 

 

 

 

────────多分、この瞬間世界の終わりは始まったのだと思う。

 

 



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