ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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性力

ここでのアガメムノンの登場は大局的、人間vs獣人での戦いには何の意味もない。

彼はただ自分の奴隷を回収するためだけにここへ来たのだ。

 

帳を切り裂いて下卑た薄笑いを浮かべながらアガメムノンは頬を紅潮させる。

興奮は冷めず、屹立して限界まで血流が流れた肉棒は彼の巨根と性癖のために特注して作られた鎧の中でさえ暴れまわり、その存在感を外に表している。

状況が状況でなかったら誰だってこの男を見たら同じことを言うだろう。

「へ、変態だーーーー!」と。

 

その変態極まりない圧倒的な存在感にユウキたちは動けなかった。

ただ一人、ランファルを除いて。

瞬時に間合いを詰めると神速にして強烈な居合を放つ。

かつての浮遊城での刀単発ソードスキル『辻風』、鞘から引き抜かれた刀は流れるように袈裟に敵を斬らんと空を斬るがそれは当然のごとく迎撃によって阻まれた。

 

「くっ・・・・」

 

渾身の一撃をこともなく弾かれて後退するランファル。

この世界での剣技、ソードスキルの威力は筋力、体格にも左右されるが何よりも意志、己の剣を通さんとするイメージの強靭さに左右される。

その点でいえば抜刀後の斬撃に限定して修練を重ね、それに特化したランファルの剣術に仲間を犯された憎悪と殺意を存分に乗せた一撃は生半可な防御すら貫通するほどの一撃だったはず。

それを防げた理由は単純。相手のほうが力と意志つまり”心意”が強かったからに過ぎなかった。

 

「効かねえな。お前じゃ俺には勝てねぇそんなことは解らせたはずだったんだがまぁ、調教し甲斐があるからよしとするかね。」

「それにしてもランファル、お前最高の女だな。まさかお楽しみの後にデザートまで用意してくれるとはな。そんなに俺のモノが欲しかったのか?この欲張りさんめ。」

 

現代なら視線だけでセクハラ行為になりそうな下卑た視線がセクハラ発言とともにユウキにも向けられる。

 

「貴様にくれてやるものなど最早何もなくなった!今ここで死ね!」

 

激昂したランファルがもう一度間合いを詰め、『辻風』を放つ。

しかしこれでは前回の焼き直しどころか敵に手の内が見抜かれている以上さらに事態は悪化した。

上段に構えた体勢からアガメムノンは両手剣ソードスキル『アバランシュ』を放つ。

剣閃と剣戟がぶつかり合い、夜の帳に激しい閃光をまき散らす。

ただでさえ力負けしているというのに下段と上段の不利まで加わり、ランファルの剣は次第に押し戻されていく。

だが二人のソードスキルが終了する前に決着は付こうとしていた。

原因は武装の差。ランファルたちハーフの一族はその性質上、自ら武器を作ることはできず、武装の確保を敵の中古品に頼っている。

そのため武装の整備状態が悪く、武器の耐久値、この世界では命値が最大値を大きく下回るなまくらを使用している。その上イヴリースとの連戦、武器の命値は限界に近づいていた。

それに対してアガメムノンは装備全般が特注品、剣を摩耗させやすいパワータイプの二人の攻防は当然のようにアガメムノンの勝利に終わる。

横槍さえ入らなければ。

 

ピキィ

 

という異音が聞こえる一瞬前、ユウキは二人のソードスキルのぶつかり合いに剣を挟み込み、半ば強引に横に軌道を捻じ曲げた。

逸らされた大刀は地に大穴を穿ち、衝撃を周囲に撒き散らす。

 

「危ねぇ危ねぇ。ついうっかり殺しちまう所だった。ありがとな、お嬢ちゃん。」

 

先のアガメムノンの一撃は殺すつもりで放たれたものでは無かった。

彼の目的はランファルの凌辱。そのためには彼女を生かして捕らえるしかない。

故にあれはまだ本気ではない。それなのにイヴリースを吹き飛ばす程の威力を持つランファルの居合が2度も敗北した。

 

「くっ…そんな、村の襲撃時でもここまでの力は無かった筈だ…」

「そりゃああん時は3人ほど相手してもらってからだったしな。でも今回は一日半もシコんの我慢してっからよぉ、もうギンギンなんだっての」

 

先述の通りこの世界では意志の力がソードスキルの威力に直結する。

ユウキが仮想世界で培った経験値、ランファルは居合に限定した修練と研鑽を剣に乗せているとしたらアガメムノンは性的欲求が力のルーツになっている。

性的欲求が剣の力というと間抜けに聞こえるが、性欲は人間の三大欲求の1つ。シンプル故に最もヒトの本能に近く、出力を引き出しやすい根源的な力だ。

中途半端な誇りやプライドならその力の前に砕け散るだろう。

最悪な事にランファルはアガメムノンのストライクゾーンど真ん中。

彼の性的興奮は絶頂にも近く、今までで1番強い状態でユウキ達は彼に鉢合わせてしまったのだ。



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