ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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剛と速

最悪のタイミングで最低の敵が最強の状態でぶつかってしまったユウキたち一行。

ギンギンに勃起したアガメムノンの剣を止められるものは数秒といえランファルの抜刀時のみ。

そもそもが”引き斬る”刀と”叩き斬る”バスターソードでは相性が最悪だ。

それも折れかけの刀では次にぶつかったら瞬殺されるだろう。

無論、彼は次からは寸止めできる勢いで打つはず。

付け入るスキがあるとすればそれだけ。

 

「ウィン、ジョー、ユウキ、できるだけ多くの仲間を連れて逃げてください。奴の狙いは私です。」

 

ランファルは時間稼ぎのために残ろうとする。

目的が救出である以上彼女の判断は間違っていない。

ただし彼女に時間稼ぎは実現不可能な点を除いては。

 

「お嬢!」「しかし・・・」

 

部下二人は命令に従うのに躊躇して硬直する。

彼らには知る由もなかったが上位命令であるランファルの指示と自分たちの加勢したい感情に板挟みになり軽度のロジックエラーが発生していた。

しかしそれも即座に解除される。ロジックエラーが発生するはずのないものによって。

 

「たぁ!」

 

この場の空気を完全に無視して速攻でアガメムノンに袈裟に斬りかかる。

防がれはするがソードスキルは未使用なので技後の硬直がない。

即座にサイドステップで回り込んで横薙ぎ、躱されても懐に入り込んで切り上げに繋げる。

連携、連撃技。一度攻勢に入ってしまえばパワータイプは攻め手を失う。

足を止めたらそれでおしまいだ。角度と視野を限界まで広げて多角的な方向から斬りつけにかかる。

敵の強さを限界まで抑えて自分のフィールドに持っていき、敵の隙はどんな手段を持ってでも衝いて勝利を我が物とする。

すべてALOでのユウキにはない、アルファルドが教えたこと。戦場で生き抜く傭兵の戦術(ストラテジー)

 

 

カイナ町の道中、アルファルドの言っていたことを思い出す。

「俺は弱いからな。そんでお前は強い。でも戦場で殺し合えば多分俺がお前を殺せる。それが何故かわかるか?」

「うーーん、戦術?それとも性格の悪さ?」

「何気酷いこというな。正解は俺が背後や死角からぶっ刺しに行くからだよ。」

「そんな身もふたもない・・・」

 

アルファルドの答えは確実にユウキの背後を衝くことが前提にしている。果たしてそんなことが戦略といえるだろうか?

 

「何せ俺たちの戦いは遭遇戦やゲリラ戦が多い。敵の死角を突く方法なんていくらでもあるからな。」

 

そう言って懐に手を伸ばすと手にしたナイフをその辺の木に一本投げる。するとなぜか木には()()()()2()()()()()()()()

 

「え!?すっごっ!今なにしたの?」

「答えは簡単。2本目は俺じゃないからだ。」

 

よく見ると刺さった角度が違う。振り返ればランファルが申し訳なさそうに笑っていた。

 

「ひっどいなー!ズルじゃんそれ!」

「ズルすんのが技術なんだよ。そういった小さなズルを重ねて俺は生き延びてきたんだ。だからお前に生きてほしいからズルしてほしいんだよ。こういった視線誘導(ミスディレクション)があれば戦場では楽に戦える。なにせ相手は別の敵にお熱だからな。いともたやすくぶっ倒せる」

 

悪い顔と黒い思考回路。戦場はそれほど過酷で傭兵はそれに生き残れるほど容赦がない。

ゲーム感覚で正々堂々と戦ってきたボクにはない発想。

 

 

 

アルファルドの教え通りランファルを利用して視線誘導(ミスディレクション)して先手を取り、連撃で攻め続ける。

今の装備はアルファルドの日ごろの整備が行き届いているのか、耐久値は十分にあるし切れ味だってなかなかだ。

その連撃はアガメムノンの頑強な装甲を少しづつ切り裂いていった。

だが決定打が足りない。相手の鎧の強度を貫通するにはソードスキルが不可欠だ。

だけどソードスキルを使えば足が止まって機動力を失ってあの力に捕らえられる。

状況は圧倒しているように見せかけて実際のところボクの機動力が落ちるか鎧の耐久値が削りきられるかという消耗戦になっていた。

 

「はぁ!やぁ!せい!」

 

一見ユウキが優勢と見るやジョーとウィンがアガメムノンを挟み撃ちにする。

窮地に追い込んだのが逆にまずかった。

肉を切らせて骨を断つ。アガメムノンはユウキの横薙ぎをわざと腕で受けて止める。

剣が鎧に食い込んで中の骨まで達する感覚が返ってくるが、容易く抜けなくなってしまう。

そしてアガメムノンは片手でバスターソードを力任せに振り回す。

 

「俺の愛を食らえい!」

 

剛を極めた性剣が碧の光を纏って逆巻く風を巻き起こし、3人の体を両断せんと迫る。

しかし、一撃でユウキたち全員を両断せんとする豪嵐は山吹色の剣閃にぶつかる。

ランファルが全身全霊、文字通りの最後の一撃で一瞬だけすべてを両断する剛の剣を受け止める。

片腕の一撃だったのがランファルを救った。

刀は中ほどから無残に折れ、宙をクルクルと舞い上がったものの剣は主を守る使命を全うし、ランファルは衝撃を受けて吹っ飛び、切断を逃れる。

稼いだのは刹那の時間。しかしその時に限りその刹那は何倍の意味がある。

ジョーとウィンはその刹那に単発系ソードスキルをもって碧色の破壊の嵐に立ち向かって二人がかりでそれを止める。

これで剣は止まり、アガメムノンは無防備を晒す。

狙うは股間から飛び出た最大の剣を納刀する鞘。アガメムノンの剛力の文字通り根源たる男の象徴。

刺さった剣を手放してユウキは腰に帯刀したスペアの剣を抜く。

それはアルファルドの短剣でスペアの小太刀にして二刀目の愛刀!!

刀身は淀みない曲線を描いて抜かれ、そのまま振り下ろされる。

 

 

アルファルドすら行わない外道手段が特注の勃起した一物を入れる鉄製のホルダーの根元に突き刺さり、アガメムノンのエクスカリバーを切断した。

 

「ア゛────────────────ッ!!!!!!」

 

地を揺らすほどの絶叫が響き渡り、敵将は落ちた。

 



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