ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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はじまりのむら

結論から言うと村までの距離は思ったより近かった。

徒歩にして約15分、全力ダッシュすれば迎撃せずとも村まで間に合っていたという事実は想像以上に凹む。

 

「ボクの努力って…」

「まぁ村の位置が把握されたら最後、女子供が狙われるからな。そういう意味ではナイスだ。」

「ボクだって女の子でいちおう子供だよ……」

 

ちなみに十五歳。この世界での成年が何歳なのか分からないけど少なくとも最前線で戦うような歳ではないと思う。

「ああ、もうすぐ成年か。残念だったな、今年の丸太祭りはちょっとばかし過激らしいぜ」

 

成年は16らしい。ソードスキルの存在から推理するにしてここは仮想世界の1つと仮定する。

おそらく暦も現実世界と同様グレゴリオ暦であることを祈る。さすがにどんな仮想世界でも地球の上にっサーバーが置いてある限りそこに違いはないだろう。

無論、この世界が仮想世界であるという前提だが。

日本語が通じるのも異世界転生にありがちな自動翻訳とかではなく、最初からここは()()()()()()()()()()()()()なのだろう。多分。

ボク個人の願望だとホントに異世界転生したほうが嬉しい。そりゃあ突如世界に降り立って右も左もわからないなら話は別だが今はこうして頼れる協力者候補がいる。

ここが仮想世界なのだとしたら何者かの思惑が絡むのは間違いないからだ。

 

「着いた、男一人暮らしで汚いが、まぁ我慢してくれ。」

 

そうこうしているうちにアルファルドの家に到着したらしい。

一人暮らしにしては珍しい持ち家だ。木材でできた家屋は無駄な装飾がなく、壁はなぜか黒く焦げている。

同じ木の家でも22層のアスナの家とは月とすっぽん、いや水と油だ。この場合アルファルドの家が油なのは違いない。

壁には黒く塗られたナイフや剣、革製のジャケットが掛けてあり、床はおそらく整備用の油で滑る。

木製の机と椅子はシンプルな形で快適性よりも実用性を意識して作られた感じだ。

そこら中に乱雑に脱ぎ捨てられた衣服は結構リアルというか生々しい。てかはっきり言って綺麗とは言い難い家だ。パンツ脱ぎ捨ててあるし。

 

「一応座ってくれ。いまお茶でも出すから」

 

そう言ってアルファルドは台所に行く。

 

「システムコール・サーマルエレメント・ジェネレート」

 

魔法の呪文なのだろうか。それにしては夢のない呪文だ。

せめて『滲み出す混濁の紋章 不遜なる狂気の器 湧き上がり・否定し・痺れ・瞬き・眠りを妨げる爬行する鉄の王女 絶えず自壊する泥の人形 結合せよ 反発せよ 地に満ち己の無力を知れ』とか出来ないんだろうか。

いや、長ったらしくて不便だからこっちのほうが嬉しいかも。

 

「バーストエレメント」

 

小規模な火が起き、それが藁に、枝にと着火していき暖炉に火が灯る。

 

「なにそれ?魔法?」

 

「魔術だ。こんなのは初歩の初歩だからすぐ覚えられる。この上位に“魔法”ってやつがあるらしいが見たことないから眉唾だな。ってかそんなことも知らないのか?」

 

「いやー、実は記憶もなくってさー、実はここがどこで何がなんなのやら。ちなみに今日は何日?」

 

5W1Hのうち4つがもう既に欠けてしまっている。冷静に考え直すと今の現状はかなり危機的状況にある。

いつさっきのような連中が現れるかわからない以上野宿は避けたいし、この世界は少なくとも『ゲーム』でないことは確かなのだ。

この世界での死は一体何をボクにもたらすのかは分からないがあの時首を絞められた痛みは確かに本物だった。

だからアルファルドから話を聞くことのできるこれはチャンスだ。

少なくとも自分の足場のことくらいは把握しないと話にならない。

そんな何も知らないボクにもアルファルドは丁寧に教えてくれた。

 

「マジかよ、記憶喪失って本当にあるもんなのか。まあいい、まずは場所と日にちから。ここは国境近くのエルナ村、日付は林月(りんげつ)の17日だ」

 

林月というのは解らなかったが多分この世界の暦上の月のことだろう。

後で聞くところによると林月は元の世界でいう4月に当たり、暦は名称が変わっているだけでグレゴリオ暦に準拠していた。

 

「君は記憶喪失というが、ならどこまで覚えてる?家族、友人は?他に頼れる知り合いとかはいないのか?」

 

「いないよ。気づいた時にはあの森で一人だった。」

 

少なくとも嘘はついていない。元より天涯孤独の身だ。そのうえこの世界なら友達もだれも居ないだろう。

いてくれれば少しは心強いのだが来られたら来られたで少し複雑だ。

 

「分かった。宿を探すにも先立つものがいるだろう。君が良ければしばらくここを自由に使ってくれて構わない。」

 

「え?ゑ?そそそそそそれっていわゆる────────」

 

同棲ってやつだ。初対面の男の人と同棲なんて結構ハードでドキ☆ドキ展開だけど天下一品の1文無しが野宿するよりは100倍マシだ。

アルファルドの提案は有難いことこの上ない。乙女心的にアウトよりなのは間違いない。

 

「まあ安い宿屋も知ってるし紹介はするけど君、お金あるの?」

 

「ありません・・・・・・」

 

「宿なし金なし記憶なしのトリプルナッシングは相当きついぞ。まず誰にも信用してもらえねえ。スパイ扱いされて門前払いが関の山だ。」

 

う”・・・・ぐうの音も出ない。

 

「職なしもあったか、さっきの連中倒した報酬はもちろん君に相当取り分があるし、ギルドから融通されるけどそれも1か月で全部溶けるぞ。」

 

「分かった、わかったよぉ!」

 

ある意味においてはリアルニートだともいえたボクだがそこまで社会的アウトの烙印は押されたくない。

それに、定職に就ければ生活基盤は安定するだろう。

 

「お世話になります・・・・」

 

「素直でよろしい。まあもちろん俺としてもタダ飯タダ宿というわけにはいかねぇから働いては貰うぜ。働かざるもの食うべからずだ」

 

そのことわざ、この世界でも存在するんだ、と関心はするが、アルファルドの要求は気になる。

まさかあんなパターンやこんなパターンではないだろうか??

わりと恋愛脳の傾向が強かった姉ちゃんがよく貸してくれた漫画を思い出す。あれはハードというかなんというか・・・全年齢対象のはずなのにRがつくほど過激だった代物が何故か多かった・・・

アルファルドがそういう要求をしてくる可能性は0ではない。年頃の男なんてケダモノよ、とは母が時々言ってた。

 

「それで、ボクの仕事っていうのは?」

 

覚悟を決めて本題に切り込む。

 

「ちょっとばかし俺の仕事を手伝って欲しいだ。君の腕を見込んでのことだ」

 

 

 

 

無条件の親切は無し。タダより高いものはないって言うのは多分どの世界も同じなんだろう。

────あれ?でもこの人の仕事、傭兵という物騒極まりないものじゃなかったっけ?



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