ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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闇の中

VRMMO世界でのアバター顔はデフォルメされたいたりリアルだったりビジュアル系だったりするが結局はアバターに過ぎないので『あの世界』を例外にして大抵は本人とは似ても似つかない。

つまりこの顔はユウキではあるが紺野木綿季ではない。

まぁ多少リアル寄りに修正されていたり肌が闇妖精(インプ)特有の影部分が紫がかった乳白色でなく肌色だったり耳の形が尖っていなかったりといろいろと差異はある。

だがそれにしてはこの顔はあまりにも”ユウキ”に酷似していた。パールブラックのロングヘアー、小柄で華奢な体格にくりくりとした大きなアメジスト色の瞳。

さらにはカチューシャのデザインまで一緒だった。これが偶然で済むものか。

 

「まさかコンバートされていたのかなぁ、いやだったらあまりにも似すぎているよね…」

 

メディキュボイドから動けないユウキをこの世界に拉致したものがなんなのかは不明だがそんな手合いならばアカウントを盗みだすことは可能だろう。

だがコンバート・システムはステータス等をザ・シード規格のゲームならばあかうアカウントを引き継げるシステムだがアバターをそのままコピーできる代物ではなかったはずだ。

事実何度もコンバートして多くのVRMMOを経験したユウキだからこそそれはあり得ないことがわかっていた。

いや、そもそもヒンノムがVRゲームなのかも疑わしい。ペインアブソーバー無し、HP表示はあのアクションがないと使えない。

ほかのプレイヤーだっていない。アルファルドも様子も自然にこの世界に存在していてNPCというより本当にこの世界の住人のようだった。

 

「前にクリスハイトが零していた次世代インターフェースなのかなぁ?でもそれだったらさすがに気づくよね…それになにもボクに伝えないなんて不自然すぎるよね…」

 

なにせ何の前触れもなくこの世界に転生したのだ。

それこそただの異世界転生って言われたほうが納得できる。

だがそれは水面に映る自身とアルファルドが当然のようにだしたステータス・ウィンドウがそれを否定していた。

 

「あーーー!!もうわかんないわかんないわかんなーーーい!!!!」

 

もとより頭の回転はあまり早くないほうだ。何の情報もなしに状況を分析できるわけがない。

理解が追い付かずに地団太を踏んでも状況は何一つ変わらなかった。

 

「そもそもどうしてボクはこんな世界に…」

 

自分の記憶をさかのぼってみる。

もしもこの世界が仮想世界ならどうしてこの世界にログインしたのか、少しは解ればなにかわかるかもしれない・・・・・・期待できないけれど淡い期待を載せて思い返す。

 

 

—————————

「残念ですがユウキくん、明日君のメディキュボイドとの接続を絶たせたもらいます。それまでにどうか、心の準備をしておいてください。」

日課のデータ最終実験が終わった後、たしか倉橋先生はそんなことを切り出した。

彼だってつらいのだろう。それでも事実を伝えるのが医師の仕事だ。

VRの体でもわかるほど、彼の手はきつく握りしめられていた。その後、いろいろな処理について彼は話してくれたけど正直頭に入らなかった。

なんとなくわかっていた。脳に直接信号を送っているのに視界がぼやけている。きっと情報がクリアでもそれを処理する脳が追い付いていないのだろう。

倦怠感もここ3か月日に日に増し、メディキュボイドの痛覚遮断が追い付かなくなっってきた。

 

—————————きっと、もう持たないってわかっていたんだろう。自分の死期ってのは案外自分でわかったりするんだって余計な関心を抱いたものだけど意外となんというか、怖くなかった。

 

 

 

嘘だ。

ただ、強がっているだけ。アスナも、スリーピングナイツのみんなも「ユウキは強いね」なんて言ってくれるけどそんなものは勿論虚勢だ。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

いつだって自分が死ぬかもしれないっていう恐怖と戦ってきた。だけど”死ぬかもしれない”と”もうすぐ死ぬ”は別物だ。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

気を紛らわすためにいろいろなことをしてみたけれどもちっとも効果がなかった。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

 

 

いくつかのシステム警告が流れるうちにボクの意識は暗転した。

 

***************************************************

 

——————————記憶はそこで止まっていた。今まではそんなことを考える余裕がなかったから気づかなかったがボクには()()()()()()()()()()()()()()

いや、記憶の最終更新状況からみてあの後のボクが3日以上生きていられるとは思えない。だったら死んだと仮定するのが合理的だろう。

今現在のボクは憎らしいほどに健康体だ。皮肉にもこんなにすがすがしい気分は久しぶりなほどに。

だったら今ここにいる「『ユウキ』は誰だ?何のために、どうしてこんなところに現れて紺野木綿季の記憶をもっているんだ?

 

何も生むことのない自問自答は最悪の結論を導き出す。

────────────────そうか、ボクは死んでいたのか。

お笑い種だ。自分が死んでいたのかさえ分からないなんてよくある怪談話の幽霊じゃないか。

じゃあ今のボクは一体何者なんだ?それともどうやってここに存在しているのか?そもそもここはどこで何のために存在しているのか?ワカラナイ理解しがたい。説明が欲しい。いや、死んでたらこんな思案できるはずない。

だったら今ここにいる、ここに映っている『ユウキ』は誰なんだ?

存在の証明が欲しい。生存の証明が欲しい。死への反証が欲しい。崩壊する存在証明。死んだことへの反証も生きていることへの証明もすべて悪魔の証明だ。できるわけない。それでもしなくちゃならない。だってだってそうしないとそう、ソウイキテルシンデルボクは死んでなんかいない。いや、違う。ヤッパリ生死生死生死生死生成セイ静止性精製済々聖性製紙—————————————————————————————————————————————

 

 

 

 

 

 

 

「おい!!しっかりしろ!!!ユウキ!!!!!」

 

突然肩を激しく揺らされて我に返る。目の前には焦燥の色を浮かべたアルファルドがいた。

体は冷たい汗でびっちょりで気持ちが悪い。ここは?どこだ?

 

「あれ……ボクどうして……」

 

「どうしても何もこっちが知りてぇよ。大丈夫か?少し休もう。」

 

意識とともに記憶が戻ってくる。

思い返すと自分の記憶をさかのぼっていたことまでしか覚えてなく、どうにも気持ち悪い。いや、この気持ち悪さはきっと正体不明のあれだ。

途端に志向が無限ループして悪いほう悪いほうに落ちていく謎の症状。

 

「・・・・怖いよ・・・・・・アルファルド・・・・・・・・・・・・・・・ぴゃうん!」

 

恐怖とは別の冷たいものが首筋を走り、とっさに振り向いた。

アルファルドが井戸水でタオルを濡らして首筋をなでてたのだ。

こちらが混乱していることをいいことにセクハラ案件。

確かに思考のデフレスパイラルからは免れたもののもうちょっとやり方を考えたほうがいいんじゃないか。

 

「もう!なにすんのさ!」

 

井戸水でぬれた手を服で拭きながらアルファルドは弁明する。

 

「いやあ、悪い悪い。随分とらしくない顔をしてたもんでな。そんなに怖いことがあんなら相談してくれ。あてになるかどうかはわかんねぇけどよ、言ってくれなきゃ伝わらねぇんだぜ。」

 

そういって彼は笑う。

 

「お前がぶつかってる壁は一緒に殴って砕いてやる。だから顔を上げてくれ。お前にそんな顔は似合わねぇ。」

—————————それは、いつか誰かに言った言葉に似ている気がした。

 

「っあはははははははは」

「なにも笑うこたぁねぇだろ」

「いやだって、あんまりにもキザなセリフいうもんだから」

 

そういうとアルファルドは少し顔を赤らめ、頬を掻いた。自覚はあるようなので天然たらしにはちょっと遠い。

 

「うん。そうだね。—————————実はさ」

 

先に井戸で体験したことを正直にアルファルドに話した。

アルファルドは眉間にしわを寄せながらそれでも黙って話を聞いてくれた。

どう考えてもありえない話であったが笑わずに聞いてくれた。こんな荒唐無稽な話を。

 

「マジか。なんかの幻術か精神攻撃系の魔術の一種か?」

 

第一声はまあ当たり前の一言だった。幻術とかそういった攻撃、この世界にもあるのか。

 

「ぼくも何が何だかわかってないけどね」

 

何せ出現トリガーが不安だ。だけど怖いからもう一度確かめる気にはなれない。

鏡やナイフ、水面にガラスなど様々なものをアルファルドは持ち込んでは試したが結局正体は不明。

引っ越しとかもするわけにはいかず、問題は未解決となった。

 

「結局何もかも闇の中か・・・・・・大見え切っておいて情けねぇな俺。」

 

アルファルドは頭を掻きながら自嘲する。確かに彼は話を聞くだけで何の解決も対策も思い浮かべることはなかった。

それでもアルファルドはこんな荒唐無稽な話を信じて、力を貸してくれた。それがボクにとっての一番の救いだった。

 



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