ソードアート・オンライン Alter Heaven   作:留確惨
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練習試合

例の現象の調査が収穫なしに終わった後、アルファルドは村のはずれにある練武場に連れて行ってくれた。

「こちとらスカウトした身なんでな。相手の実力を知っておきたくてね。」

 

なんて嘯いていたけど本当は体を動かしていたほうが気がまぎれるだろうと気遣ってくれたんだろう。

ユウキの獲物は片手直剣型の木剣、対してアルファルドは短剣に近いものだった。

ユウキは木剣を中段に構え、半身のいつもALOでデュエルの時使う構えをとった。

対してアルファルドは自然体でどこからどう打ってくるかわからない態勢。

 

「いーから構えなよ、待っててあげるからさ」

 

「んな必要はないんだよ。俺にはこれが一番合ってんだから、ーっさ!!」

 

そんなことを言いながらアルファルドは自然体からおぞましい勢いで下段から短剣を突き込んできた。無構えからの不意打ちじみた必殺を狙う一撃。

一瞬で間合いを詰めて急所を狙うそれはあまたのVRMMOを経験していたボクの記憶中でも最速の初撃だった。

『黒の剣士』、『閃光』の一撃すらパリングしてのけるユウキすらぎりぎりでしか反応できずに背をそらして体勢を崩しながら避ける。

顎の先に剣がかすって摩擦で熱くなる。

これでソードスキルのシステムアシストもステータスの補正もかかっていないのだから驚異的だ。

初撃を外されたアルファルドは突き抜いて完全に伸び切った右腕をそのままに短剣を逆手に持ち替えて上から短剣を引くようにして切りに行く。

それを身をひねって何とかかわし、そのひねりを利用して横薙ぎに剣を振るう。

木剣が服をつかむ感覚だけ残して苦し紛れの反撃は空を切った。

続いてアルファルドは床に手をついて地面をなめるようにユウキの足元を蹴り払いにかかる。

それを全力で片足でジャンプして間合いから離脱しあう。

 

「まったくとんでもない反応速度だな。あれは外したら終わりだってのに」

 

「そういいう君は追撃が甘いんじゃないかなぁ、あれ完全に終わったと思ったよ。」

 

お互いに構えを戻して向かい合う。二人の思惑が間合いの外から絡み合い、第2ラウンドの前哨戦になる。

 

・・・(かなり奇抜な手段をとってきてるけど攻撃は速いし2撃目3撃目の繋ぎも悪くないね。今までよけられていたのは運が良かった。

純粋な剣技や反応速度はテッチやタルケンみたいなスリーピングナイツの前衛組くらいかな。

それよりも厄介なのは不意打ちとか足元狙いとかなり剣士らしくない行動だね。

次に何をしてくるのか全く予想がつかないのがすっごい厄介だ────────)

 

・・・(恐ろしいほどの反射神経と戦闘センスだ。

初撃から追撃まで放った攻撃は全て必殺を期したものだったのにそれをすべて対応された。

同じ手は二度と通じない。アレも一回限りの手品みたいなものだ。後手に回れば敗北は必須。次はどう動くか────────)

 

「今度はこっちからいっくよー!」

 

例の速攻をさせないために先に動く。

絶剣(ぜっけん)』の二つ名にふさわしい一切の無駄のない袈裟に切る攻撃、アルファルドは軌跡を読んで防御するがカウンターを狙うより先に追撃が迫る。

続く胴を狙った突き、派生の切り上げ、返す刀で切り伏せ。流れるように繰り出される連撃を繰り出す。

それらを何とかかいくぐりアルファルドは切り返しの隙をついて服をつかみにかかる。

それをギリギリで躱すユウキに向かってアルファルドは体を前傾させてタックルを入れに行く。

剣士らしからぬ行動。間合いの更に内側に入られ、接近戦ならぬ接触戦に持ち込まれればアルファルドの有利になってしまう。

そう悟ったユウキは逆に斜めに前進してアルファルドとすれ違うようにタックルを躱す。

タックルを躱されて勢いを殺せないアルファルドはそのまま勢いに乗って間合いから離脱。

だが背中をユウキにさらしてしまい、その隙は『絶剣(ぜっけん)』を相手取るにはあまりにも無防備すぎた。

イメージは突撃系ソードスキル『ソニックリープ』。すると木剣は浮遊城のものと同じように緑色の光に包まれてアルファルドを追尾する。

アルファルドも負けじと青いライトエフェクトと短剣にまとわせて反撃する。

 

「せーっの!てりゃあ!」

「負けるかよ!!」

 

剣と剣がぶつかり合って火花を散らす。体勢の不利か。剣を受け止めても勢いは殺せずにアルファルドは床に背中から倒れる。

 

その倒れたアルファルドの喉元に剣を突き付けて勝利の証にする。

満面の笑顔でVサイン。いままでデュエルしてきた相手と比べて非常にトリッキーで楽しい相手だった。

アルファルドのは困ったように笑って口を開いた。

 

「まいったな、想像以上だ。俺の負けだよ。────────────────────────なんつってなぁ!」

 

アルファルドは剣を落として降参したと見せかけてポケットから何か粉末状のものを取り出して投げつけてくる。

砂だ。いったいどこで仕込んだのだろうか。

練習試合で弟子相手に目潰しというあまりにプライドのない攻撃に虚を突かれた。

とっさに腕でガードしたもののその結果視界がふさがる。

 

「ちょ、それは卑怯────────」

 

木剣を失ったアルファルドは剣を持つほうの腕を掴んで引き、足をかけて転ばしにかかる。

 

「教訓その1だ。そのセリフは大体最後のセリフになるからなァ!!」

 

倒れそうになる上体をさらに勢いをつけて下げる。

そのまま両手で着地してカポエラのような連続蹴りを放つ。邪道には邪道だと言わんばかりの戦術は功を奏し、アルファルドの両腕はガードに回る。

邪魔な剣を捨ててすぐさま前転して距離をとると、落ちていた短い木剣を拾って切り返しでアルファルドに突撃する。

狙うは短剣カテゴリーの単発突進ソードスキル『リラピッドバイト』。この木剣ならソードスキルが使えることは織り込み済みだ。

対してアルファルドも狙いは同じだった。さっき放棄した剣を拾って細剣ソードスキル「『リニアー』を放つ。

得物を交換した二人の剣先はこれもまた同じ場所を狙ってぶつかり合い、再度木剣には出せないはずの火花を散らす。

 

「はあああああああ────────!」

「おおおおおおおお────────!」

 

数秒の拮抗ののち、二人の剣は弾かれ、回りながら後方へ飛んで落ちる。

 

「引き分けだね。」

「いいや。お前の勝ちだよ。」

「じゃあボクの1勝1分けってことにしようか。えへへ。」

「そうだな。」

 

「「はははははははははは!」」

 

二人は笑いながらお互いの健闘を称えあう。

戦いこそ容赦ないものだったものの、二人の気分はとても晴れやかなものだった。

 

勝負はその後も続いたが初戦を引き分けた時点でアルファルドの勝機はなかった。

初撃こそ素早いものの流石に()()()()()()()と分かっていれば回避なりパリングなりはそう難しいものではない。

トリッキーな戦い方故、回数を重ねるごとにアルファルドの勝ち目は薄くなり、17戦した結果成績はボクの16勝1引き分け。

結論から言ってアルファルドはこの戦場で純粋な剣士としてはそれほど強いわけではなかった。

それなりに戦場を駆け抜けてきたのでだろう彼は驚異的な剣技を持っているわけではない。

初撃こそすさまじい一撃だったが剣の正確さ、スピード、反応速度などはALOプレイヤーと比較しても突出して速いほうではない。

ボクの中で最強の象徴でもある姉ちゃんやALOでも指折りの強さを持っていたアスナと比べても一歩以上譲ると言わざるを得ない。

 

「・・・・負け惜しみを言わせてもらうと俺そこまで近接戦闘が得意ってわけじゃないんだよ」

 

そういえば初めて会った時も大仰な剣を下げていたわけではなかった。

剣での近接戦闘が得意ではないって傭兵稼業としては致命的ではないのか、それ。

 

「君どーやって戦ってきたの?その様子だと正面から正々堂々となんて相当珍しいでしょ。」

 

「大抵は遠距離から魔術ぶっこむか待ち伏せ(アンブッシュ)で奇襲位だよ。変装して油断したところをブッスリなんかも常套手段さ。」

 

「うわぁ外道。」

 

「ほっとけ。殺し合いで最も効率がいいのなんて射程外から殴るか不意打ちで一撃必殺を狙うかしかないじゃないか」

 

実際そのほうがいいのは確かだ。実力差があったって運だったり倒したはずの相手が起き上がって・・・みたいなことだって起こりうる。

このペインアブソーバー無しの世界では剣で一撃を食らうことは相当痛いだろう。

いや、痛いですむはずがないだろう。それを考えるとアルファルドの思考はひどく合理的だ。

 

「まるでSAOだね・・・」

 

そう。この世界での”死”が一体どういう扱いになるのか分かりかねるのだ。

普通のVRMMOなら当然のように復活できる。SAOだってHPバーが0になったら死という明確な条件がついていた。

————————だが、この世界ならどうだ?いったいこの世界でLIFEを切らしたら一体どうなるのだろうか?

 

「しっかし恐ろしいほどの技量だよな。お前一体どこでそんなん覚えてきたんだよ」

 

「いやぁ、それがほぼ我流でさぁ、君は何か習ってたの?そんなトリッキーな技教えるような道場とかあるの?ヒンノムには。」

 

「俺は・・・」

 

一瞬何かを考えたような様子だったがアルファルドの返答はスムーズだった。

 

「親父に教えてもらったもんだ。ろくでなしの親父の最初で最後のプレゼントだったよ。」

 

口こそ悪かったもののその顔は少し誇らしげだった。

 



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