IS ~世界は私達4姉妹を中心に回っている~   作:とんこつラーメン
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まだまだ比叡視点は続きます。

一応、四姉妹全員が主人公ですから。






鈴 拍子抜けする

 放課後になり、私は予定通りに自分が部長を務めているテニス部へと顔を出していた。

 部員の子達はコートの傍で柔軟をしていたが、私が来た途端に目を輝かせて動きを止めた。

 

「比叡お姉さま!」

「今日もなんて凛々しいの……♡」

「私……テニス部に入って正解だわ……♡」

 

 今年になってテニス部に入った子達の大半が、私目当てらしく、こうして時折姿を見せるだけでテンションが一気に上がる。

 単純と言えばそれまでだが、こっちからしたら御しやすいのは都合がいい。

 

「こっちに来るのも久し振りね。比叡部長さん」

「無理に『部長』って呼ばなくてもいいわよ」

 

 同じクラスの子がやってきて、茶化すように部長と呼んできた。

 確かに私は部長ではあるが、同い年の子に言われると流石に恥ずかしくなる。

 

「ゴメンゴメン。でも、本当に忙しそうにしてるわよね」

「まぁね。一応、私達って色んな国と交流してるから、代表候補生を蔑には出来ないし、例の男子君の事もしないといけないから」

「あ~……彼の事ね。私も少し見たけど」

「どう思った?」

「別に。顔はイケメンかもだけど、かと言って恋愛対象には発展しないでしょ。そもそも、私って年下よりも年上の人の方が好みだし」

「初めて知った」

「初めて言ったからね。てなわけで、誰かいい人知らない?」

「そう言われても、急には思いつかない」

「だよね~。なら、思い出したら教えて。即行で合コン組むから」

「合コンって……」

「なんなら比叡達も来る? 絶対に四姉妹で独占されそうだけど」

「じゃあ呼ばないでよ」

「なんとなくよ」

 

 前世でも今世でも、合コンなんて一度も行った事が無い。

 そもそも、私達全員が俗世間的な事に対する興味が薄いんだけど。

 

「二人共、話が完全に脱線してるから」

「おっと、そうだった」

「今からどうするの?」

「少しだけ後輩に指導してから、彼が訓練してるアリーナに向かうつもり」

「そう。着替える?」

「簡単にするだけだから、そこまではしなくてもいいんじゃない?」

「それもそっか」

 

 それから私は、30分ほどに渡って後輩ちゃん達を指導してから、その場を後にした。

 これは私達四姉妹共通なんだけど、部活は私達が息抜きできる数少ない時間なのよね。

 だからこそ、可能な限りは顔を出すように努めていたりする。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「………………」

 

 精神を極限まで集中させ、無言で引き金を引く。

 薬莢が排出されると同時に硝煙の匂いが辺りに充満する。

 銃声と共に弾丸はターゲットを射抜き、周りが再び静寂に包まれる。

 

「ふぅ……」

 

 耳宛てとゴーグルを取ってから、私は一息ついた。

 私が今いる場所は、IS学園内にある射撃演習場。

 ここでは本物の銃を使っての射撃の訓練が行える。

 実際に使用している人間はかなり少ないが。

 

 タイミング的に向こうの訓練が終わる頃にやってきて、例の鈴ちゃんに偶然を装って接触しようと企んだのだが、思っているよりも早く部の方を抜けてきたため、まだ時間が余っていた。

 そんな時、ふと目に着いたのが、この射撃演習場だったというわけだ。

 実は私、一年の頃からここに通っている常連さんだったりする。

 

「相変わらず、射撃の腕は超一流よね」

「サラ………」

 

 いきなりやって来たのは、私と同じ二年生で、セシリアと同じイギリスの代表候補生である『サラ・ウェルキン』

 ISの腕は申し分ないが、その代わりビットがセシリアよりも低く、結果として専用機を受領出来なかった過去を持つ。

 その事で昔はセシリアと少しだけ確執があったが、私達四姉妹が仲裁に入る事によって、今では普通に接するようになっている。

 いずれは彼女も専用機を持つ事が出来るとは思うのだけど……。

 

「ホント、どんだけ努力すれば、こんな芸当が出来るようになるのかしらね?」

「こんな芸当って……」

 

 サラが近くにある機器を操作して、私が撃ち抜いたターゲットの紙をこっちに引き寄せて、止め具から引きはがした。

 紙には銃痕と見られる焼け焦げた穴が一つしか開いていない。

 

「0コンマ数ミリのズレも無く、全ての弾を全く同じ場所に撃ち込むなんて神業、国家代表選手でも絶対に不可能でしょ。マジでどうなってるのよ」

「私に聞かれても困るんだけど」

「やった本人がそれを言う?」

 

 と言われてもな~。

 これぐらいなら、歳が一ケタの頃から普通に出来てたし。

 その気になれば、目隠しをした状態でも出来るし、後ろを向いた状態からの振り向きながら撃って、全く同じ場所に当てるなんて事も可能だけど、ここで言ったらまらサラの癇癪が始まるから止めておこう。

 

「比叡もそうだけど、四姉妹全員が間違いなく代表候補生は愚か、国家代表すらも凌駕する実力を秘めているのに、実際にはどこにも所属していない」

「こっちにも事情があるの」

「でしょうね。じゃなかったら、ISを所有する全ての国がひっきりなしに勧誘合戦をしてるだろうし」

 

 それを危惧して、私達は予め先手を打っていたりする。

 何事も先手必勝。小西家の家訓の一つだ。

 

「サラも撃ちに来たの?」

「ううん。比叡がここに入っていくのを遠目から見かけたから、追いかけてきただけ」

「アンタはストーカーか」

「比叡限定なら喜んでストーキングするけど」

「お願いだからマジで止めて」

 

 仲のいい同級生にストーキングされるとか、どこのヤンデレホラー劇場よ。

 

「これから用事があるから、そろそろ行くわね。サラはどうする?」

「そうね。折角だし、私も少しだけ撃っていこうかしら」

「それじゃ、お先に失礼~」

 

 銃を借りに受付まで行くサラを見ながら、ゴーグルなどを返却して射撃演習場を出ていった。

 アリーナに行く前に、何か買っていこうかな?

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 第三アリーナのピット入口。

 予想以上にピッタリのタイミングで鈴ちゃんと出くわした。

 

「比叡先輩。こんにちは」

「こんにちは。鈴ちゃんも様子を見に来たの?」

「えっと……そんな所です」

 

 彼女が手に持っているバッグには、二人のスポドリとタオルが入っているに違いない。

 今回は篠ノ之さんが金剛お姉さまを追いかけて部に行っているので、入っているのは二人分か。

 

「ここでこうしててもアレだし、さっさと入ろうか」

「はい」

 

 ドアの傍にある開閉装置を操作すると、自動で扉が開く。

 もう既に訓練は終了しているようで、ISスーツ姿のセシリアと織斑君がステージの方からやってきていた。

 

「疲れた……」

「あの程度で音を上げるとは情けない……」

「いやいや。オルコットさんの訓練って、かなりのスパルタじゃんか……」

「私が比叡お姉さま方に受けた訓練に比べれば、何百倍もマシですわ」

「あの四姉妹……どんな訓練をしたんだよ……」

 

 なんか話してるけど、私達がセシリアに行った訓練の内容は、読者の皆のご想像にお任せしよう。

 

「「お疲れ様」」」

「鈴。それに比叡先輩も」

「比叡お姉さま~♡」

 

 訓練で疲れている筈なのに、セシリアはまだまだ元気が有り余っているみたい。

 それでこそ、鍛えた甲斐があったってもんだ。

 

「鈴ちゃん。ほら」

「そ……そうね。一夏!」

「なんだ?」

「タオルとスポドリを持ってきてあげたわよ。良かったら使って」

「マジでっ!? サンキュー! 助かるよ!」

 

 気持ちよさそうにタオルで汗を拭きとって、手渡されたスポドリを美味しそうに喉に流し込む織斑君。

 まるで砂漠で迷子になった放浪者のような飲みっぷりから、相当に喉が渇いていたことが予想出来た。

 

「い……一応、アンタの分も持ってきてあげたわよ」

「ありがとうございますわ」

「これはついでなんだからね! 勘違いするんじゃないわよ!」

 

 ツンデレ&テンプレ乙。

 

「はいはい。そうですわね」

 

 精神的にも成長しているセシリアは、鈴ちゃんのツンデレ攻撃を軽くスルー。

 出会ったばかりの女の子には効果は薄いよね~。

 

「私からはコレを」

 

 ここに来る途中で購買部で買ってきた10秒チャージのゼリー。

 勿論、程よい温度に調整してある。

 

「お腹空いてるでしょ? かと言ってガッツリと食べたら夕飯に支障が出るから。これぐらいなら問題無いと思って」

「例の10秒チャージのやつですね。丁度、何かを食べたいとは思ってたんですよ。ありがとうございます」

「比叡お姉さまからのプレゼント……♡ 一生大切にしますわ♡」

「「いや、ここで食べなさいよ」」

 

 まさかの私と鈴ちゃんのダブルツッコみ。

 

「にしても、鈴と比叡先輩が一緒に来るとは思わなかったな」

「扉の前で偶然にね」

 

 本当は偶然を装っただけなんだけど。

 

「一緒に………はっ!? まさか……鈴さんも比叡お姉さまを……!」

「なんでそうなるのよ。確かに先輩には道案内をして貰った恩はあるし、話しやすくて気さくな人だとは思うけど。それだけよ」

「本当ですわね……?」

「こんな事で嘘なんて言わないわよ。第一、私はちゃんと異性が好きな女の子だから」

「それなら安心ですけど……」

 

 でも、人の心っていつ、どこでどんな風に様変わりするか分からないからね。

 転生した私達が言っても説得力無いけど。

 

「ん? 箒からメール?」

 

 織斑君がゼリーを飲み込みながら携帯を触っていると、篠ノ之さんからメールが届いたみたい。

 なんとなく想像はつくけど。

 

「箒って、あのポニーテールの子? なんて言ってるの?」

「『自分は剣道場のシャワーを使うから、部屋のシャワーは先に使ってもいい』だってさ。これまた助かるわ」

「……………は?」

 

 ここで鈴ちゃんがフリーズ。

 数秒してから再起動した。

 

「い……一夏! まさかとは思うけど、あの箒って子と同じ部屋なのっ!?」

「そうだぞ。いや~、幼馴染が一緒の部屋で助かってるよ。これが初対面の子とかだったりしたら、最低でも数週間は気まずい空気の中で生活してたな」

「幼馴染……一緒……」

 

 断片的な単語だけを呟いて、鈴ちゃんはまたもや完全停止。

 絶対にアレを企んでますな。

 

「だったら……いいのね……」

「はい?」

「幼馴染だったらいいのよね!?」

「いや何がっ!?」

 

 これは彼じゃなくても理解不能かも。

 幼馴染だったら何がいいのやら。

 

「また後でね! 比叡先輩、お邪魔しました!」

 

 早足で去って行きながらも、キチンと私への挨拶は忘れない。

 粗暴なのか礼儀正しいのか。

 

「はぁ……一体何が言いたかったのかしら……?」

 

 この場で一番空気と化していたセシリアの溜息が大きく聞こえた。

 

(これは念の為に私も行くべきかな)

 

 もう既に色んなバタフライエフェクトが発生している以上、ここで無視は出来ない。

 何かがあってからでは遅いから。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

「そんな訳だから、部屋変わって」

「はぁ?」

 

 数時間後。一年寮の織斑君&篠ノ之さんの部屋の前。

 案の定、鈴ちゃんがいきなり押しかけて篠ノ之さんに退去通告をしていた。

 当事者である織斑君は状況が上手く飲み込めなくて呆然としている。

 

「一応の為に来ておいて正解だった……」

「ひ……比叡先輩っ!? なんでここにっ!?」

「こんな事になるような予感がしてたから」

「流石は比叡先輩。見事な慧眼だ」

「ご迷惑お掛けしてすいません」

「あれ? なんか私が悪い流れ?」

「「明らかに悪いだろ」」

「うぐっ!?」

 

 見事なツープラトン。

 因みに、今回の事は金剛お姉さまから私に一任されている。

 任されたからには、きっちりとこなしてみせる!

 

「別に私自身は、この部屋を出ていくのは一向に構わないぞ」

「へ?」

「お互いにそろそろ潮時だと話し合っていたしな」

「マジで?」

「おう。千冬姉達も部屋割りを考えてくれてるみたいだし」

「あ……あれぇ~?」

 

 鈴ちゃんは、ここで篠ノ之さんが部屋を出ていくのを渋ったり、それに対して怒ったりすると思っていたに違いない。

 だが残念。彼女は日々、金剛お姉さまと特訓を重ねることで心身共に成長している。

 今では完全無自覚で懐いてるけど。

 あれはもう、くっつくのは時間の問題じゃないかな?

 

「と言うか、その話をここでするのは間違ってない?」

「比叡先輩の仰る通りだ。その手の話はまず、一年の寮長に通すべきだろう」

「い……一年の寮長って?」

「「「織斑先生」」」

「はぅわっ!?」

 

 予想はしていたけど、考えたくはなかった。

 そんな心境が丸分りになる悲鳴だった。

 

「あの人と交渉とか完全に無理ゲーじゃない……。レベル1の勇者が布の服と檜の棒で魔王にタイマンを挑む事と同義よ……」

「それ、絶対に本人の目の前で言うなよ。グラウンド1000周とかさせられるぞ」

「そんな命知らずな真似、死んでもしないわよ」

 

 昔馴染みだからこそ理解出来る恐ろしさか。

 基本的に織斑先生が家族以外でデレるのは金剛お姉さまだけだしな~。

 

「どうする?」

「お……大人しく引き下がる以外の選択肢が無いじゃないのよ……」

「常識的に考えて、今すぐに部屋を交換とか普通に不可能だがな。荷物の整理だけでも数時間は掛かるぞ。来たばかりのお前とは違って、こっちはもう完全に私物などを部屋に置いているのだからな」

「そ……そうだった……!」

 

 恋は盲目と言うけど、ここまで猪突猛進なのも珍しい。

 ちょっと頭を冷やせば簡単に気が付くでしょうに。

 

「そ……そう言えば一夏。昔、私とした約束って覚えてる?」

「約束?」

「そう」

「えーっと……昔のことな上に、ここ最近は覚えることが一杯あり過ぎて、断片的にしか覚えてないぞ……」

「え……?」

 

 例の『中華版味噌汁プロポーズ』のことか。

 

「鈴の料理が……なんだっけ? 酢豚が関係しているのは確かだと思うんだけど。あ~……喉まで出かかってるのに思い出せない~! なんかモヤモヤするぞこれ……」

 

 誰もが一度は経験する感覚よね、それって。

 テストの時とかに同じ現象に見舞われると、めっちゃ焦るわよね。

 

「………もういいいわ。騒がしくして悪かったわね。おやすみなさい」

 

 途端に大人しくなって部屋を後にする彼女を見て、流石に放置は出来ない。

 二人と軽く言葉を交わした後に、鈴ちゃんの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から、比叡が鈴の攻略開始。




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