東京喰種:re cinderella 作:瀬本製作所 小説部
あたしが楽しんでいるときに限って奴らが邪魔をしてくる
あの低能集団と関わってたまるか
志希Side
「あ」
目を開けた時、あたしは真っ暗な自分の部屋でそうつぶやいた。あたしがつぶやいた理由は寝ていたところがふかふかのベッドではなく、冷たい床にべったりと張り付いていたことに気がついたからだ。ベッドにあった枕と毛布は全部床に落ちていて、まるで地震が起きてのではないかと思っちゃうほど散らかっている。あたしはゆっくりと体を起こし、部屋の周りを見渡すと目を閉じる前の時と変わらず真っ暗だ。
「....?」
まっくらな部屋をしばらくみていると、めちゃくちゃに書類が置かれている机に、微少な光が見える。あたしは大量に置いてある書類をまとめることなく横にどかすと、スマホがでてきた。スマホを手に取り画面を見ると、残りの電源が20%未満の警告が表示されていて、電源を表す電池のマークが真っ赤に染まっている。いつもあたしはスマホを充電せずほったらかすから、毎回あたしのスマホは悲鳴をあげるように警告マークが表示している。
ここ最近、あたしがスマホをいじる時間が少なくなった。スマホをいじるのは友達との連絡か、何かを少し調べるぐらい。スマホは便利で時間を潰すのはいい道具なのだけど、やり過ぎてしまうと自分を見失ってしまう搾取する道具でもある。スマホをいじるなら、あたしが夢中になれる研究に没頭した方が幸せだ。
(おや?美嘉ちゃんからだね)
電源が少ないことを警告する通知を消すと、数時間前にきた美嘉ちゃんからの返信が一通だけあった。前まではあたしのお世話役でもあった親友は、今は会う時間が少なくなっている。でもこれは悪いことじゃない。美嘉ちゃんは美嘉ちゃんで自分が目指すべき道を進んでいるのだから、これはいいことだ。
『志希、最近仕事に出ていないの?』
美嘉ちゃんの久しぶりの返信は、あたしが最近仕事に出ていないことだった。美嘉ちゃんの言う通り、あたしは最近アイドル活動が少ない。別に楽しくないからやってはないのではなく、前まで好きだった研究がさらに好きになってしまったから、わざと減らしている。
『研究がここ最近楽しくてね』
あたしがそう返信すると、2分も経たないうちに美嘉ちゃんの返信がきた。こんな真夜中なのに、美嘉ちゃんの返信が来るとはあたしは少し驚いた。
『また研究?まったくいつも何やっているのよ?』
今の時間帯は美嘉ちゃんは寝ているはずなのだが、美嘉ちゃんの返事がくるなんて思わなかった。
『いろいろだよ〜♪』
『いろいろ?香水?』
『香水とかいろいろ〜♪』
『そのいろいろはなんなのよ!』
美嘉ちゃんの返信を見たら、あたしは思わず暗い部屋で笑ってしまった。久しぶりに美嘉ちゃんをからかってみるとやっぱり面白い。頻繁に会ってからかうより、どこか心地がいい。
『まったく...志希は相変わらずよくわかんないよ...』
『でも美嘉ちゃんがこんな時間帯に返信がくるなんて思わなかったよ』
『まぁ、確かに普段のアタシなら返信はしないよ。でも久しぶりに志希と話しているからね。本当なら早く寝るべきだけど、やっぱり返信がしたくなっちゃったよ』
『でも今寝ないと仕事に支障が出るよ?』
『そうだね。志希の言う通り、そろそろ寝ようかな?』
『いいよ〜♪十分に楽しめたし』
『でも志希、あんまり研究室で引きこもらないでね。ずっと引きこもったらアタシが連れ出すよ』
『はい、ありがとね〜♪』
あたしが美嘉ちゃんとちょうど話が終わったその時だった。
「....」
送信ボタンを押した瞬間、誰かからの連絡がやってきた。その返信者の名を見たあたしは思わず舌打ちをし、苛立ちが生まれる。まるで夢から現実に叩きつけられたように。
『いつもお疲れ様です、一ノ瀬志希さま。〜==〜=〜です。私たちは貴女様の腕を非常に評価しています。ぜひ我々との研究にご協力できないでしょうか?貴女様がお望みになる報酬をご用意しますので、ご返事の方をおねがいします』
また奴らからの連絡だ。しかも何百回も同じ文で、コピーアンドペーストをしているぐらい同じ文。
あたしはスマホを充電器にさすことなく書類がたくさん置いてある紙の山に放り投げ、ベッドに再び寝転んだ。
奴らからの勧誘は本当にうんざりさせられる。自分たちでは実現できないことをあたしにおしつけるように何度も連絡をしているみたいに連絡をするから、あたしは奴らとは関わりたくない。何度もメールを無視すると奴らは直接あたしの前に現れる。あたしは奴らが目の前に現れるたびにいつも言う決まり文句を奴らに言って立ち去る。『お前らはお前らで研究してろよ』っと吐き捨てるように言って立ち去るのがお決まり。あたしは奴らに数え切れないほど言った自信があるほど奴らは私の前に現れる。
あたしはあたしで研究しているんだから、邪魔をしないでほしい。
あたしは自分のペースで研究をするのだから、今から再び寝る。
日が明けたら、あたしが試した実験の結果が出るのだから
不知Side
ナッツクラッカーが目の前にいるのに、天井から突然鋭い赫子が俺の後ろから突き刺した。俺の腹を貫いた赫子から赤い血が床に垂れ落ち、体も同時に落ちる。普通ならそのまま床に倒れて死んでいるんだが、俺は普通のヤツとは違う。
(な、なんだよ...!?)
俺は天井に現れ体を突き刺した赫子が腹から完全に離れた瞬間、すぐさま体勢を整え死体のようにくねりと曲がった体勢で倒れずに床に着地をした。赫子で空いた俺の腹は徐々に塞いでいく。俺はクインクス手術で人間でありながら、人間よりも能力が高い喰種の力を持っている。それに普段から街中で喰種と戦い、赫子で突き刺されまくったからナッツクラッカーの攻撃には驚かされたものの大きなダメージにはならなかった。
「気をつけろ、三等!奴は尾赫と甲赫、分離型の赫子を持っている!そのうち尾赫は分離させてトラップの様に使うことができるらしい」
「さ、先に言って下さいよ!!」
「うるさいっ!焦ってたんだ!」
俺たちよりも階級が高く経験のある林村サンでも焦っていた。なぜなら先ほどAレート出会ったナッツクラッカーがSレートへと変更されたんだ。理由は林村サンがいた班がナッツクラッカーによって全滅となってしまった。俺よりも経験がある捜査官を殺せるほどの力がある喰種となるといつもの捜査よりも気が抜けねぇ。
「いくぜっ!!!」
俺は背中から赫子を出し、赤い弾幕をナッツに向かって放った。俺の赫子は羽赫で、遠距離攻撃が活かせ弾幕を発する能力を持っている。才子は「いったれ、シラギンーー!!」と声をあげたのだが...
(防ぎやがった...!)
今まで放った中では命中率が断然に上がったのだが、ナッツは腕には生えた赤い盾みたいな赫子で全弾を防いだ。その光景を見た俺は大きく舌打ちをした。
「不知!」
林村サンはナッツに近づき、ブレード型尾赫クインケ"セニング"で攻撃をし、俺に赫子を再び放つが、ナッツは一ミリも顔を動かすことなく平然と赤い盾をした赫子で受け止める。やはり数をぶちこんでも、結局一弾一弾の火力がなければ話にならない。そう考えるとこの前に戦った"オロチ" の言葉が思い返される。
(どこかスキを見つければーーー)
俺はそう考え、前に踏み出したその時だった。
「ーーっ!!」
踏み出した右足に"何か硬いもの"を踏んでしまい、床に大きく体勢を崩してしまった。
「気をつけろ!三等!!」
俺の体が床に倒れ林村さんの声に気がついた時、先ほど林村サンと戦っていたはずのナッツがいつの間にか俺の真上にいた。俺の真上にいたナッツは右足を曲げ、俺の股間にめがけて大きく足を振り下げた。
「うおおおッッッ!!!」
俺はナッツにあそこを潰され声をあげたのではなく、間一髪でナッツの攻撃を回避でき、そしてあまりにも恐ろしい攻撃を思わず声をあげてしまったのだ。ナッツは再び俺のあそこを踏みつけようとしたその時、幸いにも林村サンが攻撃を惹きつけ、腰を抜かした俺から離れさせた。
「ヤベ...マジでシラコになるところだった」
俺はナッツに男のあそこをぶち壊されるところだった。ナッツが履いている靴は黒光りのハイヒールで、あの後ろの尖ったヤツが俺のあそこに潰されることを考えるだけでもとんでもなくおそろしい。
(..たく、なんであんだよ!!こいつ!)
俺は気を取り直し、姿勢を崩すきっかけを作った踏みつけたものを手で拾った。俺がつまずいたのは、鼻に着く様な匂いを出していた"理科室で使う細い試験管"だった。モニター室でこんなのが転がっていると考えてると変に感じ、怒りの感情が現れた。俺は危うくこいつでナッツに殺されるところであった。俺は感情をぶつけるように、思いっきり試験管を壁にぶつけた。
その時だった。
「おう!?」
すると試験管が当たった壁に、先ほど天井で現れた赤い赫子が壁から現れた。
(なんだよ!!またナッツがーー)
そう思った俺はすぐにナッツの方向を見たが...
(...?)
ナッツは俺を全く見ておらず、林村サンと戦っていた。
「...」
俺はあることを考えた。
もしかしてナッツは壁にある赫子を完全に操作しているのではなく、俺たちを壁に近づけて反応させてやっているのではないか?