東京喰種:re cinderella   作:瀬本製作所 小説部

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ヤツは私と同じく同業者だ



ヤツも主人に使える使用人なのだが、ヤツの主人は一度も確認したことがない



ヤツは口では使用人と言うのだが、本当にそうだろうか?









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カナエSide

 

 

 

先ほどまで生きていた食材が骸に変わり、私しかいなかったはずの立体駐車場に以前出会った喰種が前に現れた。

 

Weiß(ヴァイス)(白)、貴様が生きていたとはな」

 

「なんだ?私を心配していたのか?」

 

私は白仮面を被るヤツをWeiß(ヴァイス)(白)と呼んでいる。その理由は無個性な白い仮面を被っていることから由来し、もちろんそれがヤツの本当の名ではない。ヤツは私の名を知っておらず、私を『お前』呼ばりをする。最後に私の推測だがWeiß(ヴァイス)(白)の性別はおそらく女で、少なくとも匂いからして人間ではなく喰種だ。

 

「貴様を心配してどうする。マダムがお亡くなりになったオークションで生存した喰種はほんの一握りしかいなかったのだ」

 

「おお、そうか。大半が死んだのか。哀れだな」

 

Weiß(ヴァイス)(白)は喰種オークション界では大物であるビックマダムが亡くなったにも関わらず、まるで他人事のように言葉を吐き捨てた。Weiß(ヴァイス)(白)とはオークション以来の半年以上の出会いで、ビックマダムが亡くなったオークションで逃げ切れた喰種は今把握できているのは私が所属している月山家を除くと片手の指で数えれるほどなのだが、Weiß《ヴァイス》(白)が前に現れたことでまた一本指を折った。

 

「...それにしても、貴様がオークション以外に出会うとは珍しいな。私の前に現れ何しに来た?」

 

私はWeiß《ヴァイス》(白)に理由を聞くと、「ああ、そうだったな。私はここに現れたのは理由があったな」とわざとらしく振る舞った。

 

「ここ最近、お前の主人だけがオークションに出ているな」

 

「なんだ?それがどうしたんだ?」

 

「現当主は出ているのに"次期当主"は最近見ないな?どうしたんだ?」

 

「...貴様には関係ない」

 

私はWeiß(ヴァイス)(白)の言葉に、即座に拒絶反応を表に出してしまった。

 

「関係ない?そんなことないだろ。お前の次期当主はずいぶん前まではオークションで姿を出していたのだが、今では全く生存していないのではないかと思われるほど姿を見ないな。それに今お前が殺したその食材以下の骸は次期当主に捧げる食材か?」

 

「聞こえないのか?貴様が知る価値のない物だ」

 

「そんなことないだろ。そこに血を流している骸はなんだ?その骸の損傷は明らかにいい加減に攻撃を加えている。明らかに自分用に頂くつもりはないだろ?」

 

「だからこれ以上言及をーーー」

 

私がそれ以上Weiß(ヴァイス)(白)に言及されないよう止めようとしたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

『お前は主人のために働く使用人になっているか?』

 

 

 

 

 

 

 

「...は?」

 

私はWeiß(ヴァイス)(白)の今出た言葉に怒りがこもった声で反応を示してしまった。先ほどまで私はWeiß(ヴァイス)(白)の言葉を相手にはしなかったが、今Weiß(ヴァイス)(白)の口から出た言葉に怒りを覚えた。

 

「お前は主人に仕える者のはずだ。主人に対して良からぬものを渡すのではなく良いものを渡せ。それが使用人としての仕事だろ?お前は使用人として失格じゃないかーーー」

 

「ーーーっ!!!」

 

私はWeiß(ヴァイス)(白)が淡々と喋っていた瞬間、私は感情をぶつけるが如くバラのつるのように伸びた私の赫子をヤツの身体を突き刺すようまっすぐと放った。このまままっすぐ向かえば、Weiß(ヴァイス)(白)の胸に穴が生まれてしまうのだがーーー

 

 

 

 

 

ーーーしかしWeiß(ヴァイス)(白)は、そのまま赫子を貫かれるような喰種ではなかった。

 

 

 

 

 

「ーーーやれやれ」

 

Weiß(ヴァイス)(白)は呆れた様子で呟くと体をわずかに傾け、間一髪で赫子を避けた。私が放った赫子はWeiß(ヴァイス)(白)の後ろに止まっていた高級車に突き刺さり、損傷した車からセキュリティーシステムが鳴り始めた。

 

Scheiße(シャイセ)!!貴様に言われる筋合いはない!!」

 

「私の言葉程度で痺れを切らすとは、全くみっともないな。お前は赫子で攻撃する前に、言い返すぐらいの頭はないのか?そこらへんの能無しチンピラと変わらんぞ」

 

ヤツは息を切らすことなく、余裕の声で私をあざ笑う。普通ならば大抵の人間や喰種は私の攻撃を避けることなく赫子が体を突き刺すが、Weiß(ヴァイス)(白)は予測していたかのように少し笑い、体をわずかながら移動し攻撃を交わした。

 

「私はいつでもお前と戦えるが、今はそんな時間はない。今、お前が突き刺した後ろの車がお前との戦いの時間を奪っているからな」

 

ヤツの言う通り、赫子で穴があいた車から作動したセキュリティーシステムが立体駐車場という響きやすい建物が外に大きく響き、あとは誰かが来るのが時間の問題だ。

 

「私はお前と話ができて、いい暇つぶしになった」

 

「そうか。私にとっては暇つぶしではなく、無駄な時間にしか思えないな」

 

Weiß(ヴァイス)(白)は「そうか」と憫笑すると私に背を向け、立体駐車場から去ろうとしたその時だった。

 

「待て、Weiß(ヴァイス)(白)」

 

私はWeiß(ヴァイス)(白)にあることを聞こうとヤツを呼び止めた。Weiß《ヴァイス》(白)は嘲笑がこもった声で「なんだ?」と足をピタッと止めた。

 

「貴様はどこで食材を得ている?」

 

「食材?今更そんなことを疑問に感じたのか?」

 

「私は貴様がオークションで一度も商品を得た姿を見てない。貴様はなんのためにオークションにいるんだ?それに貴様はどこで主人に捧げる食材を調達している?」

 

前にWeiß(ヴァイス)(白)の口から聞いた話だが、ヤツがオークションに顔を出している理由は自分のためではなくヤツの主人のためと聞いているのだが、ヤツがオークションで商品を得た姿は一度もなく、ただ落札されている商品を眺める姿しか私は見ない。

 

「最初の質問なら答えよう。それはただの社会勉強だ。時代は常に変わり続ける。新しき時代の流れを知り、その流れに乗らなければ置いていかれ、犬死をするからな。だから私は主人を古いことに定着し過去にすがりつくような頭の硬い愚者にはさせず、新たな挑戦に挑み続ける賢者へとさせるべく、私は主人の代わりにオークションへと顔に出しているのが答えだ」

 

「じゃあ最後の食料調達場所は?」

 

「後者の質問はお前の想像力に任せる。もしかしたらお前が想像できない場所で手に入れているだろうな?」

 

「想像できない場所?」

 

「ああ、そうだ。それはお前が生きているうちに知れるのかわからないが、またどこかで出会おう」

 

ヤツはそう言うと、街の光が輝く立体駐車場の外に飛び込み、ビル3階ほどの高さからそのまま地面に落下をした。人間がこの光景を見れば自殺行為だと思うだろうが、私はそうは思わない。なぜなら飛び降りたのは人間ではなく喰種だからだ。喰種はある程度の高さならそのまま着地することができ、さらに高いところだと赫子を体から出し、壁に当てればなんとか助かる。

 

(早くここから脱出しなければ…)

 

私はWeiß《ヴァイス》(白)が目の前から姿を消したことで、最初は面倒ごとを押し付けられたかのように抱き苛立ちが生み出されたが、今私の目で見える二つの面倒ごとはどちらも自分が起こしたことには変わりがなかった。

 

 

私は地面の温度に冷やされた不味い死体を置き去りし、誰かが来るだろう立体駐車場から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

また、今更の話なのだが

 

 

 

 

 

 

私はWeiß《ヴァイス》(白)を喰種だと伝えたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

それは私の鼻だけで判断したことであり

 

 

 

 

 

 

 

Weiß《ヴァイス》(白)が喰種の証である赫眼と赫子は私の目では一度も確認したことがない

 

 

 

 

 

 

 

先ほどWeiß《ヴァイス》(白)が飛び降りた高さは約ビル3階と言ったのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

赫子を使わずにそのまま降りてしまえば喰種でも足を怪我するほどの高さだ

 

 

 

 

 

 

 

 

私が外に出た時は赫子で使った跡がまったく見つからなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

Weiß《ヴァイス》(白)はどうやって降りたんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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