東京喰種:re cinderella 作:瀬本製作所 小説部
たましても、私は引いてしまった。
あの女とは、逆の運命を。
卯月Side
やるべき仕事が終わり、事務所内にまだいた、私。
もう帰っていいのだけど、私はある人に話したいことがありました。
「へぇ、佐々木と一緒に食べるんだね」
「はい!やっと二人になれるんですよ!」
今、私が会っているのは、ちょうど同じくお仕事を終えたばかりの凛ちゃんです。
流石に佐々木さんと一緒に食事をすると言う話を大きく広めるのは危ないことであるとわかっています。
だからこうして凛ちゃんや未央ちゃんのように佐々木さんを知っている人しか話していません。
「佐々木と食べに行くって、あいつが忙しいそうな時期によくあいつと予定を組めたね」
「え?忙しいそうな時期ですか?」
「あれ?佐々木に聞かなかったの?」
「いえ...最近はメールぐらいしかやらないので、詳しくは聞いてないのですが...?忙しいってどういうことですか?」
確かに凛ちゃんの言う通りかもしれませんが、最近佐々木さんとの連絡はメールしかなく、電話でじっくり聞くと言う機会が減っているのは確かです。
「なんか最近ある捜査を任されてしばらく話す機会が減ると私に言ってたんだけど、どうしてなんだろう?」
「多分あれじゃないですか?メールだから返しやすかったかも」
「ああ、多分そうかもね。今度殴りに行こう」
「殴るようなことじゃないですよね!?」
凛ちゃんは佐々木さんと連絡する時、いつも電話をしています。
メールとかで済ませれるのに、なぜか凛ちゃんは電話にこだわります。
「それでこの前、私はあいつに電話をしたんだ。ネットで公開されてたひどい動画のことを聞きにね」
「それって...この前にCCGのホームページで公開された動画ですよね?」
この話は先週のお話で、CCGのホームページで話題を呼んだ動画でした。
私は見ていないのですが、結構残酷な動画だったと耳にしています。
具体的に言えば、ある捜査官が喰種を痛めつけ、その痛めつけている喰種の仲間を投降するように呼びかけていた動画らしいです。
「もしかしたらと思って私はあいつに電話をしたんだけど、あいつはまったく関わってないと言う返事を聞けてよかった。むしろあの動画に反発している感じがあったよ」
「それはよかった....佐々木さんが関わってなくて...」
佐々木さんが喰種を痛めつけていた捜査官とは違い、ひどい人ではないことにほっとした、私。
「...あいつは絶対にそんな卑劣なことをしない人間だと、私は信じてるよ」
人間という言葉を強調するように言った、凛ちゃん。
その顔は心配事をなくしたと言うよりも、どこか悔しそうな顔。
それはまるで彼を失ってしまったことへの悔しさに見える。
佐々木さんは彼と同じく優しい人。
そう、彼のように悪い人なんかじゃない。
凛ちゃんもきっと同じく考えているはず。
「あの...凛ちゃんに聞きたいことがありまして...」
「聞きたいのこと?」
「はい!佐々木さんはどんなものが好きだと思います?」
「好きなもの...?」
「佐々木さんと食べるので、何を注文すればいいのかわからなくて...」
いつも佐々木さんに好きな食べ物を聞くと、ほとんどがコーヒーと言うのです。
コーヒ以外に好きな食べ物を聞くことは一度もありません。
ちなみに私は生ハムメロンが好きです。
「それだったら卯月が好きな物を頼めばいいんじゃない?」
「自分の好きな物...?それっていいのでしょうか?」
「うん、別にいいと思うよ。というか、あいつがコーヒーと水以外の食べ物を口にする光景は見たことがない。この前の誕生日会もそうだし」
「確かに言われてみれば...」
私の頭の片隅に一つの懸念があります。
まさか佐々木さんは彼と同じく人間ではないかということです。
確か喰種は人間の食べ物を食べることができないと言われていて、まさか佐々木さんは...?
「あと、卯月はお酒を頼まないでね」
「え?なんでですか?」
「だから、絶対にお酒を頼まないで、本当に」
「は、はぁ...?」
いつも周りの皆さんは私に絶対を酒の飲まないように注意してきます。
別に私は未成年ではなく20歳以上なので、問題ないはずなのですが...?
「とにかく、佐々木の前でお酒を飲まないように。もう時間だから、またね、卯月」
「じゃ、じゃあね、凛ちゃん...」
最後まで私にお酒を飲むなと注意をした凛ちゃんは帰って行きました。
一人取り残された、私。
私は翌日に佐々木さんと一緒に食事を取ると言う予定。
もし第三者が私を見たならば、おそらくデートをすることが決まって嬉しそうな女の子と思うかもしれない。
しかし、私はそんな可愛い理想を抱いていなかった。
考えるだけでもワクワクする幸せと胸の奥底にある不確かな不安が混じり合う、状況。
不安が現実に現れないことに、私はひそかに願っていました。
文香Side
ついにやってきた、佐々木さんとお会いする日。
私は一足先に集合場所である都内の大通りに待っていました。
私は佐々木さんと会うまで本を開いていましたが、本の内容についてはまったく読んでいませんでした。
何を話そうか、私は佐々木さんと会うまでたくさんの話題を探していたのです。
新しい本の話題。
最近の流行り。
この前に事務所で起きた出来事。
佐々木さんが務めるところの質問。
佐々木さんが今読んでいる本。
彼の私生活を知る質問。
彼の好きな人。
そして、彼をもっと知るための質問。
私は彼ともっと一緒にいるために、あらゆるものを用意しました。
しばらく本を見ているふりをしていると、だんだんと私の元に近づいてくる白黒の髪色をした男性が現れました。
佐々木さんがやって来ました。
「こんにちは、文香さん」
「ど、どうも...さ、佐々木さん」
私は佐々木さんの姿を見ると、自分の心が震えていたことに気がついた。
佐々木さんと離れて一週間という長い時間からやっと耐え抜いたという思いが報われる、と。
「きょ、きょ、今日は...ど、どんなお話をしましょうか?」
今更のことだが、私は声も震えていた。
自分が不気味に見られかねない行動を彼が心の片隅に異変を感じるくらいに。
私は不気味と思える自分の行動を必死に抑えているのだが、無意識がそうしてくれない。
「...あの文香さん」
「は、はい...?」
「少し移動しませんか?」
「え...!?...あ、は、は、はい...わ、わ、わかりました...!」
口下手に答えた私は佐々木さんについて行くように移動を始めたした。
明らかに以上等も言える挙動不審の私に佐々木さんは指摘することはなかったのですが、佐々木さんは変に冷静でした。
(どうしたの...?私...何か変なことをしたの...?)
佐々木さんは私の不審に感じてもおかしくない様子を指摘しない。
その時の私は最初自分の挙動に佐々木さんは冷淡を抱いたのではないかと思いましたが、しばらく考えるとそれではないと気がつきました。
そして大勢の人が行き交う大通りから、誰もいない電車が通る高架橋近くに来ると、私の顔を振り向かずに歩いていた佐々木さんはピタリと足を止めた。
「ーーー今日はたくさんの時間を設けました」
「...え?」
突然、佐々木さんは不可解な言葉を言いました。
「時間を設けた..とは、ど、どういうことでしょうか?」
「いつも僕たちが会う時、何かしらの不都合があるのはご存知のはずです」
「え、ええ...確かにそうですよね...」
いつも私が佐々木さんと会う時、必ずと言ってもいいほど、どちらかに不都合が起きます。
それが起こるたびに、私は苛立ちを覚える。
神様が私の行動を否定するように感じてしまう、と。
「それで今日、文香さんに聞きたいことがありまして」
「き...聞きたいこと...?ど、どんなことでしょうか...? 」
佐々木さんがこれから何を聞いてくるのかわからなかった、無知な私。
彼の口からある言葉を聞くなんて、この時の私は知らなかった。
『"カネキケン"をご存知でしょうか?』
真剣な眼差しでまっすぐと私を見る佐々木さんの口から出た、彼の名前。
名を聞いた瞬間、私は確信的な証拠を突きつけられた犯人のように頭が真っ白になった。
犯人でもないのに、なぜこんなに恐怖が湧き上がるのだろう?
罪を犯した?
罪を起こそうとした?
私は彼をこれから危害を加えようとしたのか?
私はわからない。
わからない。
これはさっき言っていた、不都合なのか?
佐々木さんが知っていないだろうと思っていた名前を聞くことが、不都合、なの?
私は、また、ハズレを、選んでしまった、の?