東京喰種:re cinderella   作:瀬本製作所 小説部

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秘密の協力?

それは日付が変わった夜道のこと。

喰種収容所 コクリアから自分の家へと移動していた僕・佐々木琲世の前に肌が少し見え、薄い寝巻きに上着を着ていた志希ちゃんが立っていた。

 

「久しぶりだね、ササハイさん」

 

「.....」

 

志希ちゃんの返事を聞いた僕は何も答えず、沈黙してしまった。

何を話そうか考えてもいなかった。

彼女と話すのはあまりにも久しぶりだからだ(約半年ぶり)。

 

「まったく、そんな冷たい目で見ないでよ〜」

 

志希ちゃんは何もしゃべらない僕に何も気にすることなく淡々と話し、にゃははっとニコニコした顔で近づいた。

 

「いや〜、久しぶりにササハイさんの顔が見れて嬉しいよ。前は髪の色が黒寄りになっていたけど、今じゃ髪だけじゃなく容姿も真っ黒だね。やっぱり、楓さんの言う通りだね〜♪」

 

「....」

 

僕はそれでも沈黙を貫き、しばらくすると志希ちゃんの話を途中から耳を傾けず、ただ黙って足を止めていた。

そんな僕の素っ気ない姿でも志希ちゃんは何気なく普通にしゃべる。

 

「それで、ササハイさんは最近何やってるの?」

 

「...仕事だよ。さっきテレビで見なかった?」

 

しばらく志希ちゃんに話すことがなかった僕はやっと口を開いた。

理由は単純、さっさと僕の前から去って欲しかった。

だが、彼女はそう簡単は離れる人間ではない。

 

「テレビ?あんな洗脳器具を見るような人間じゃないから、見てないよ?何してたの?」

 

「高槻泉の最新作の発表。僕は彼女から同席を求められた」

 

「誰それ?タカツキ?楓さんのそっくりさんなのかわからないけど、その人はユーメージンなの?志希ちゃん興味ないからわからなーい」

 

「そうなんだね」

 

僕はただ興味が感じられない返事をした。

前の僕だったら志希ちゃんに一個一個の言葉に説明するのだが、今の僕は説明する配慮はない。

彼女の行動の一つ一つが鬱陶しいという感情だけ。

 

「それで記者会見での対応に追われ、高槻泉を23区の喰種収容所に収容して今、帰っていたんだ」

 

「へーそうなんだね。大変だねぇ〜お疲れ〜」

 

話の内容にあまり興味を抱いていないようで、軽く聞き流した程度で頷いた、志希ちゃん。

ここまで冷たく接していた僕でもニコニコとした様子で話していた彼女なのだが、ここから彼女の様子が変わった。

 

「...別にあたしに対してそんな目で話してもいいけど」

 

志希ちゃんはそういうと、陽気な雰囲気が冷たさにガラリと変わった。

ニコニコとしていた顔なのに、刃物を向けるかのように緊張した空気を放し、冷静な口調に変化した。

 

「他の子と話す時にさ、そんな目で会わないで。特に”卯月ちゃん”に対しては」

 

「.....」

 

志希ちゃんは釘を刺すように"彼女の名前"を強調した。

 

「なんでそんな真っ黒で冷たい性格になったかは、あたしはあえて聞かないよ。でも、もしそんな腐った目で卯月ちゃんたちと会話するんだったら、もう二度と姿を現さないで」

 

「.....」

 

「また、沈黙ね。その沈黙は何か言う言葉がないと言うより、どうでもよい話題を聞いている時に見えるけど」

 

「....」

 

『ねぇ、違うのかな?』とニコニコしつつ、無情な空気を出す、志希ちゃん。

この時の僕はまたしても口を開くことなく、黙っていた。

この時の僕は別に言い返す気力がなく、どうでもいいと思っていた。

次はどんなつまらない話が来るのか、半分呆れた様子で身構えていたら...

 

「まぁ、でも、あたしはキミにはついていくけどね」

 

「...?」

 

志希ちゃんはそういうと、先程出していた無情な空気が消え、少し口角を上げた。

 

「話せて良かった」

 

「...そう」

 

僕らの会話風景に他の人から見たら中途半端な会話に見えるが、志希ちゃんはそんなことはどうでもよく笑みをみせていた。

そして志希ちゃんの口から、妙に引っかかる話が出た。

 

「もし何かあった時、協力してあげるからね」

 

「協力....?」

 

「うん、協力」

 

「何をする?」

 

「いや、それはお楽しみってことで伝えないよ。意外なコトかもね」

 

「.....?」

 

何か意味ありげな笑いをした志希ちゃん。

何を言っているんだ?

 

「ちなみにこれはからかいじゃないよ?冗談でもないし、嘘でもない。本当の協力だよ。まぁ、どんな協力かは今は言えないけど」

 

「今は言えない?なんで?」

 

「早く答えを求めても、今はできない。キミが本当に必要な時に、あたしは現れるよ」

 

一体何を言っているのか?と思った、僕。

雰囲気からすると、いつものからかいに思えないのだが…?

志希ちゃんに一体なんのことだとこの時やっと自ら訪ねようとした時、彼女はその場からすぐに離れて、『じゃあねえ』と去って行った。

 

「....」

 

志希ちゃんが去り、再び夜中の路上で一人になった、僕。

先ほどまで口を開く気がなかった僕は、何か言えばよかったと言う後悔に似た感情を抱いた。

 

協力とはなんだ?

人間関係に関することか?

それとも?ーーー

 

「ーーーー意味がわからない」

 

僕はそう呟くと、自分の家へと帰った。

 

久しぶりにあったとは言え、短く、そして何を意味するかわからない話。

 

彼女は何を言いたかったんだ?

 

 


 

 

久しぶりに彼に出会った、あたし・一ノ瀬志希。

どうして彼の居場所がわかったのかは教えないけど(ヒント:テレビは見ていない)、半年ぶりに見れて良かった。

彼にあった理由はその時のあたしは美嘉ちゃんと会った後、ふと彼に会いたくなったから。

半年ということもあり、彼の姿は大きく変わっていた。

白と黒のツートンカラーだった髪が真っ黒となり、来ていた服は白黒から黒へ、そしておしゃれなかのかわからない丸メガネをしていた。

だけど容姿よりも気になるコトがあった。

 

(...ササハイさんじゃなかったなー)

 

彼を見た時の第一印象。

かつて出会ったあの彼と比べると明るさがあったササハイさんだったけれど、さっき出会った彼はそんな雰囲気を微塵も感じなかった。

雰囲気からして、ササハイじゃないとわかる。

別人だ。

 

(なにがあったんだろ?)

 

そう心の中で呟いた、あたし。

答えがわかるみんなは知っているかもしれないが(見てなかったらアニメか漫画で見よう!)、あたしも含め他のアイドルたちは知らない。

彼に何かあったのは間違いないのだが、原因がわからない。

ただ一つわかるコトがある。

 

(...なんかまた隠してるし、次は何をするのかなー?)

 

前に似たような経験をしたコトがある気がする(いや、ないか)。

これから”でかいコト”をするような気があるような、ないような。

とりあえず、彼はこれから何かアクションを起こすような空気があった。

 

(...まぁ、あたしがやれるコトと言えば、今後の彼の行動次第なんだけどね)

 

ちなみに先ほど彼に『協力』と言ったのだが、それは秘密だ。

一つ言えるコトは『彼と関係するコト』だけ言おう。

 

あたしは自分が住むアパートへと帰った。

 

 

 

さて、これからどんな展開になっていくのか?

 

みんなはこれから彼がどんな行動をしていくか、わかるよね?

 

まぁ、あたしたちの行動がどう動くかはお楽しみに♪

 

 


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