ロクでなし魔術講師とチート転生者と禁忌教典   作:おがとん

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遅れてすいません。他の作品読んでたら遅れました。反省してますので許して下さい!
あ、あと今話から第二巻に入ります。



魔術競技祭編
魔術競技祭開始!!


魔術競技祭

 

魔術競技祭とは、文字通り魔術を使い競い合うお祭りである。本来、学生の身分で使える魔術は限られている。そのため、その中でもどう魔術を使いこなし、より勝利へ近づけるかというこの競技は、一般市民や魔術師に関わらず高い人気を誇っている。しかし近年では、成績優秀者の層で全種目で使い回すという、学生達からしてみればなんとも面白くない風潮が暗黙の了解となりつつある。さらに、今回は女王陛下がご来賓になるとのことで、成績的には優秀に入る者達ですら萎縮してしまい、参加を見送りつつある。

 

これが、現在のシスティーナのクラスの現状である。

 

「はーい、『飛行競争』の種目に出たい人、いませんかー?」

 

壇上に立ったシスティーナがクラス中に呼びかけるが、誰も応じない。

 

「・・・じゃあ、『変身』の種目に出たい人ー?」

 

やはり、無反応。

 

「ねぇ、皆。せっかくの機会なんだから、思いきって出てみない?」

 

ルミアがそう呼び掛けても、誰も何も言わない。気まずそうに視線を合わせようとしない。

 

「セイヤ君は出てみない?」

 

「俺か?まぁ、出てもいいけど条件がある」

 

「条件?」

 

ここでクラス全員の視線がセイヤの方に向く。セイヤの言う「条件」とやらが気になるからだ。中には『参加する代わりに、ルミアは俺と付き合ってもらおうか!』などと言い出すのではないかと疑っている者(システィーナがその筆頭)もいるが、セイヤはそこまで鬼畜ではない・・・・・はずだ。

 

「・・・魔術競技祭に、クラス全員で参加すること。これが俺が参加する条件だ」

 

「「「はぁっ!?」」」

 

その出した条件に、全員が反応する。そのほとんどが『こいつ何言ってんだ!?』という意味合いを含んでいるのだが。

 

「・・・やれやれ、何を言い出すかと思えば。君は自分が言ったことの意味をわかってるかい?」

 

ギイブルが呆れ果てた様子で聞いてきた。さすがにこんな条件を言ってくるとは思っていなかったようだ。

 

「ん?そんなの当たり前だろ?お前こそ何言ってんの?」

 

「なら、なぜ態々全員なんだ?僕やシスティーナのような成績上位者で出るのが普通だろ?」

 

「・・・はぁ~やだやだ。こういう勘違いがいるのって」

 

「なんだと・・・ッ!?」

 

俺が肩をすくめてそう言うと、ギイブルが露骨に反応してくるが、今は置いとこう。

 

「そもそもさ、これは魔術競技"祭"。お祭りなんだよ。なのに勝つことが第一!みたいなことを考える時点でおかしいのに気づけよ。なぁ、ギイブル君?」

 

「くっ・・・ッ!?」

 

「はーい。というわけで俺が各競技とそれに出場する生徒を決めちゃいます。てわけでシスティーナ。競技種目のリストをくれ。ルミアは今から言う名前と競技名を順番に黒板に書いてくれ」

 

「えぇ。わかったわ。はい、これね」

 

「うん、わかったよ」

 

システィーナが期待した目でリストを手渡しきて、ルミアはチョークを構えた。

 

そのまましばらく、セイヤはリストを見つめて考え込んだ

 

「・・・よし、大体決まった。まず一番配点が高い『決闘戦』   これはシスティーナ、ギイブル、そして・・・カッシュ(・・・・)、この三人が出てくれ」

 

えっ?と。その時、クラス中の誰もが首を傾げた。

競技祭の『決闘戦』は、三対三の団体戦で実際の魔術戦を行う、最も注目を集める目玉競技であり、各クラス最強の三人を選出するのが常だ。

だが、成績順で選ぶならば、システィーナ、ギイブルの次に来るのはウェンディのはずなのだ。なぜ、ここで成績的にはウェンディに劣るカッシュがでてくるのか。全員が理解できていないのだ。

 

だが俺から言わせて貰えば、これが最も勝率が高いメンバーだ。異論は認めん!

 

「えーと、次・・・『暗号早解き』。これはウェンディ一択だな。『飛行競争』・・・ロッドとカイが適任だな。『精神防御』・・・これはルミアしかいないだろ。それから『探知&開錠競争』は  『グランツィア』は  

 

この時、クラスの全員が本当の意味で理解した。セイヤが冗談でも何でもなく、本当に全員が参加して勝つつもりでいるんだ、と。しかも、セイヤはそれが負けに繋がるとはまるで考えていないように見えるのだ。

 

「で、『変身』はリンに頼むとして。最後に残った『呪文詠唱』は、まぁ俺が出ればいいかな。よし、これで全部の出場枠が埋まったな」

 

この男は、本気で全員で優勝を狙うつもりらしい。それがひしひしと伝わってくる編成。だが、これに納得していない者もまた多くいるのだ。

 

「さて、なんか質問ある?」

 

「私は納得いたしませんわっ!」

 

生徒達がざわめく中、いかにもお嬢様然としたツインテールの少女、ウェンディが早速、言葉荒々しく立ち上がる。

 

「どうして私が『決闘戦』の選抜から漏れてるんですの!?私の方がカッシュさんより成績がよろしくってよ!?」

 

「それについては簡単さ。ウェンディは確かに呪文の数も魔術知識も魔力容量(キャパシティ)も凄いけど、時々呪文噛んじゃうことあるでしょ?」

 

「そ、それは・・・」

 

「だから、使える呪文は少ないけど、運動能力と状況判断のいいカッシュの方が『決闘戦』をやるなら強いと判断した。気を悪くしたらごめん。ただ、『暗号早解き』。これはウェンディの独壇場だからね。ウェンディの【リード・ランゲージ】の腕はクラス一だから、是非ここで点数を稼いでほしい」

 

「ま、まぁ・・・そういうことなら、仕方ありませんわね・・・」

 

怒るに怒れず、反論もできず、ウェンディはすごすごと引き下がる。他にも、どうして自分がこの種目に選ばれたのか、疑問に思った生徒達が次々と手を挙げ、セイヤに問いかける。

 

「そりゃ【レビテート・フライ】も【グラビティ・コントロール】も結局は同じ重力操作系の黒魔術だし、黒魔術は運動とエネルギーを操る術ということでどれも根底は同じだからね。カイ、君ならいけるはずさ」

 

「テレサ、君はこの前、錬金術実験で誰かが落としかけたフラスコを、とっさに【サイ・テレキネシス】で拾ってたよね?テレサは自分で気づいていないだけで、念動系の白魔術、特に遠隔操作系の術式に相性がいいんだよ」

 

「『グランツィア』は、個々の能力云々よりチームワークだ。いつも三人仲良しの君達がやるのが一番良いと思うよ?それに同調詠唱(シンクロ)も上手いしね」

 

だが、それらの疑問にセイヤはそれなりに筋の通った答えを返し続ける。

 

(ホント、こういう所があるから、憎めないんだよなぁ・・・)

 

生徒達の疑問に応対するセイヤの姿を、システィーナは少し微笑ましく見つめていた。

 

   さて、他に質問はある?」

 

セイヤが辺りを見渡す。もはや、セイヤの考えた編成に誰の反論もない。

 

「じゃあ、これで決まりってことでいいかな?」

 

内心安堵しながら、セイヤは問いかける。

 

(ふぅ~、なんとか、上手くいったかな・・・)

 

実は、セイヤは今回の編成を考えるにあたりかなり神経を使っていた。なぜなら、原作ではこの辺りは全てグレンが考えていたからだ。それをグレン先生が来る前に決めてしまうのなら、二年次生が始まる最初から生徒達をよく観察しておかないといけない。なんせ、原作で種目が明かされている生徒は結構少ない。そのため、一から観察していないと誰がどの種目で力をより発揮できるかなどわからないからだ。

 

そのため、セイヤはグレンが学院に来る前から、生徒達が何が得意で、何が苦手でなどの情報を事細かに調べあげた。その中には生徒達の性格、特徴、果てはどんな食べ物が好きなのかという情報まであるのだから、大層恐れ入る。まあ、最後の情報が役立つかはともかくとして、だが。

 

と、そんなことを思い返していたその時。

 

ドタタタタタタタァァアアアアアア

 

バァンッ!

 

「話は聞いたッ!ここは俺に任せろ、このグレン=レーダス大先生様になーーーッ!」

 

開け放たれた扉の向こうには、人差し指を前に突き出し、不自然なほど胸を反らして、全身をねじり、流し目で見得を切る、という謎のポーズを決めたグレンがいた。

 

(((((・・・ややこしいのが来た)))))

 

この時、クラス一同の心情は見事に一致した。なんとも悲しい統率力だ。

 

「まぁ、なんだ。なかなか種目決めに難航しているようだ……な?」

 

そう言いかけながら、グレンは黒板に書いてある生徒名と競技名を見て、呆けた顔を晒している。

 

「・・・なぁ白猫」

 

「・・・もしかしなくても、私のことですよね?」

 

「この編成、誰が考えたんだ?」

 

「?編成を考えてくれたのはセイヤですけど・・・」

 

「ほーん、セイヤが、ねぇ……」

 

システィーナに編成作成者は誰なのか答えを聞いたグレンは、ニヤリ、となんだか悪い顔をしていた。それこそ、セイヤの直感が今すぐ逃げろと言うくらいには。 

 

その直感に従い、即座に教室を出ようとセイヤは扉に手を伸ばし    

 

「ちょっ~と待とうか、セイヤ?」

 

ガシッ、と肩を捕まれ動けなくなってしまう。

 

「・・・何でしょうか、先生?」

 

セイヤは嫌そうに、それはもう本当に嫌そうにグレンの方へ向き直り、問いかける。

 

「なに、少~しばかり、手伝ってほしいんだよ」

 

「・・・クラスの勝利への貢献に、ですか?」

 

「よくわかってるじゃないか!もちろん、協力してくれるよな?」

 

「・・・まぁ、構いませんよ。元々このクラスを優勝させる以外、考えていませんでしたからね」

 

二人はなんの合図がなくとも互いの手を握り合い、不敵な笑みを浮かべた。

 

ここに、特別賞与目当てのロクでなし講師と、純粋にクラスを優勝させたいと思う規格外(イレギュラー)の、『優勝以外眼中に無し』同盟が結成された。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

場所は変わって中庭。魔術競技祭中の授業は三コマになり、放課後は担当講師の監督の下、魔術の練習をしてよいことになっている。そんな中、セイヤは芝生の上で寝ようとしていた。最近は固有魔術の開発で忙しく、まともに睡眠を取ったのは二日前なのだ。それに『呪文詠唱』の競技内容を聞いてからは負けがないと確信しているから、寝ても問題ないと考えているためこうして安心して寝ているのだ。

 

「あ!やっぱりサボってる!」

 

「え?」

 

「サボりは感心しないなぁ~」

 

「いや、これはサボりじゃなくて・・・」

 

「ふーん、だったら何してたのかな?」

 

やべー、ルミアの背後に般若の姿が見え隠れしてるんですけどッ!?どう答えればいいんだよおいッ!?

 

えぇーいッ!?こうなりゃもうヤケクソだッ!!

 

「あー、あれだ。・・・寝てた」

 

「・・・え?」

 

まさか堂々と居眠り宣言されるとは思ってなかったからか、ルミアはちょっと呆然としている。

 

「だから、寝てました」

 

「・・・なんでかな?」

 

「いや、呪文改変しようにもほとんど呪文は考え終わってるし、練習しようにも相手がいないし・・・」

 

「じゃあ私が手伝うからさ、一緒に練習しよ?」

 

くっ・・・無理だ。逆らえるビジョンが見つからない。

 

考えてもみろッ!!相手は学院一の美少女と名高きルミアさんですよッ!?しかも学院中で大天使なんてあだ名持ってるあのルミアさんですよッ!?逆らえるわけないだろがーッ!?どうやったらあの笑顔に勝てるってんだよッ!

 

「わかったよ。じゃあ練習するかな」

 

「うん!」

 

なぜそこで嬉しそうな顔をするんですかねルミアさん?

 

「さっきから勝手なことばかり・・・いい加減にしろよ、お前ら!」

 

騒がしいのでその方向を見てみると、どうやら俺達のクラスと他のクラスの生徒の何人かが言い争っているみたいだ。

 

「ルミア、練習は後回しだね」

 

「うん、何があったのかな」

 

放置しておくわけにもいかないので、俺とルミアはその場所へ向かった。

 

すると、どうやら魔術競技祭に向けての練習場所について揉めているらしいのだが、グレン先生がそれを強引にではあるが仲裁しこの話は終わり。となるはずだったのだが、その話し合いの途中で揉めたクラスの講師のハ……ハ、ハーレム?先生が割り込んできたのだ。そしてよりにもよって

 

「はっ!戦う前から勝負を捨てたか?負けた時の言い訳作りか?それとも私が指導するクラスに恐れをなしたか?」

 

などと宣ったのだ。この時点で俺はキレる寸前だったのだが、ルミアが今は堪えてと言ってくるのでなんとか怒りを抑えた。まぁ、あんな自信の塊は実際に負けさせないと分からないだろうからな。

 

だが次の言葉は、完全に俺を怒らせた。

 

「勝つ気のないクラスが、使えない雑魚同士で群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ!わかったらならさっさと失せろ!」

 

 

 

ブチッ

 

俺の中で、ナニかが音を立ててキレた

 

 

 

 

「・・・あんまふざけてんじゃねぇぞ。ハゲ」

 

 




ヒロインってどうしましょうか?

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