FAIRY TAIL 孤独の女剣士の物語   作:じゃじゃ丸
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同郷者

……完敗だった。それ以外の何ものでもない、そんな気持ち。己の力は全くと言って良いほどに届かず、ただこちらがやられるだけやられただけに過ぎない。

 

 

主力たる三人のジュラ、エルザ、一夜のうち、何故か二人が来ない。それもそうだろう、すでに片方の一夜はトイレで気絶し、ジュラはそれを迎えにいったのだから。

 

 

しかし、こちらの彼らはそれを知らない。さらにはエルザと同等、またはそれ以上の実力を持っているはずのモナークすらも来ない。

 

 

その上にこちらの作戦はすでに相手側たる六魔将軍たちには伝わり、それを逆に利用されてこの有り様だ。戦えないウェンディとシャルル、それにハッピー以外は全員が敗北した。

 

 

それが今の連合軍の有り様だ。なんとも空しく、ただ出てきて速攻でやられただけの出オチでしかない。

 

 

そして目の前では彼ら六魔将軍のリーダーたるブレインが止めを指さんとしていた。一同はただ思う。「ここまでか……」、あるいは「畜生……」のどちらかだ。

 

 

たった5人にやられた10人の妖精と蛇姫、天馬と化猫。ただ這いつくばる他ならなかった。終わりを迎える光の者たち、ただ誤算が一つだけあった。

 

 

そこに天空の巫女がいたということだ。ブレインはニヤリと悪趣味な笑いを浮かべ、その少女を連れ去った。……ついでに青猫一匹も。

 

 

用が済んだらしき彼ら六魔将軍。ブレインは今度こそナツたち連合軍へ止めの一撃を見舞おうとした。

 

 

────だが、その時は来なかった。

 

 

となりの草むらからボロボロの状態で現れた六魔将軍(オラシオンセイス)の一人、エンジェル。すでに満身創痍の彼女の姿はブレインたちに衝撃をもたらした。

 

 

その後から現れたのは、傷一つ付いていないモナークだった、だがその眼は紅く染まっていた。

 

 

「……なにこの有り様。ナツ、グレイ、ルーシィ、エルザ。アンタ達はその程度なの?」

 

 

そう仲間すら見下すかのように冷たく冷酷な声がモナークの口から発せられる。それにカチンと来たらしきナツとグレイは突っかかろうとしたが、あることに気がついた。

 

 

自分たちの知らない魔力の強大さ、微かだが地面が揺れているということ、その二つに。そのあと二人は無意識に身体が震えていることに気がついた。

 

 

それからすぐに理解する。目の前にいるモナークがどれほど強大な力を持ち、それを遺憾なく発揮させようとしていたことに。

 

 

すると、モナークは再び口を開く。

 

 

「アンタ達……ウェンディをどこにやったの?」

 

 

ただそれだけしか言っていないのにナツたちの身体には途方もないプレッシャーが突き刺さり、身体の震えが増していく。そんな中で、エルザが苦しげに言った。

 

 

「そこに…いる…ブレインに…ウェンディは…」

 

 

「……へぇ、そうか…」

 

 

それだけが伝わっただけなのにモナークはもう聞く気がないようにブレインたちに向き直る。

 

 

「やぁモナーク、見ない間に姿が変わったね」ブレイン達の後ろから声がする。

 

 

「その姿は……、人間の真似事かい?そんな格好になったって、貴女は人では無いのにね……」そう言いながらブレインの横に現れたのは……

 

 

「インヴィンジブル……」

 

 

「ブレイン、あの娘は私にやらせてちょうだい」

 

 

「ふん、好きにするがいい」

 

 

「じゃあ遠慮なく」と、瞬時に剣を引き抜きモナークに斬りかかる、その速度はブレインにも霞んで見える程速く、レーサーのスピードなど、比べる必要も無い程遅く見えた。モナークは反応こそしたものの、受けきる事が出来ず、2撃目を右横腹に受けてしまった。

 

 

すかさず追撃をするインヴィンジブル、剣が当たった感触がしたが、剣はモナークの手前で止まっていた。

 

 

「そんな簡単に元に戻れるなら速く戻ればよかったのに」

 

 

土煙がはれると、そこには少し姿の変わったモナークが立っていた。頭には先の黒くなっている狐のような耳が生えており、腰の部分にも髪と同じ色のふさふさとした尻尾が生えていた。

 

 

「ハイペリオン!!」そうモナークが叫ぶと手元には今まで持っていたミスリルソードでは無く、刀身が透き通っている水色の二刀の武器だった。

 

 

少し驚いた顔をしながらも、右手にある大型の剣を構えるインヴィンジブル。

 

 

2人は同タイミングで動き出した。インヴィンジブルの上段切りを両手の剣で受け止め、弾き返す。インヴィンジブルはすかさず追撃を仕掛けるが、一歩速くモナークの強撃がインヴィンジブルに命中した。

 

 

「はぁ……はぁ……流石最強の名を意のままにした程の事はあるわね……でも……」

 

 

ドクンッ!!!

 

 

「うぐっ……あっ……!ああっ!!!」突然モナークは苦しみだし、心臓の当たりを抑えて倒れ込む。

 

 

「突然力を使った影響ね、貴女は20年もの間その姿にはなっていない。突然力を使えばどうなるかよく分かってるわよね?」少しずつ倒れているモナークに近づきながら話す。

 

 

動けないモナークを剣で切り上げる。モナークの身体は空高く吹き飛び、そのまま崖の下へと落下していった……。

 

 

「ごめんなさいね、モナーク。これも仕事なの。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六魔将軍、仮説拠点にて

 

 

「きゃあ!」

 

 

「うわ! お、女の子には優しくするんだぞ!」

 

 

ウェンディ達は、仮説拠点に着いた途端、放り投げられる。

 

 

「ブレイン……此奴等は何なのだ?」

 

 

「ニルヴァーナに関係あるのか?」レーサーとコブラからの問いかけにブレインはウェンディを見つめ……

 

 

「此奴は天空魔法……治癒の魔法を使う」と言った。その言葉にコブラたちは目を見開き驚く。

 

 

「治癒魔法っ!? この娘が!?」

 

 

「これは、金の匂いがしますね……」

 

 

「もしかしてこいつに……」コブラたちの視線を受け、ブレインは頷く。

 

 

「あぁ……奴を復活させる」

 

 

「奴って誰だ!?」

 

 

「よく分かりませんけど……私、悪い人たちになんか……手は貸しません!!」

 

 

身体を少し震えさせながらブレインを睨みあげるウェンディ。だが、そんな睨みに怯む訳もなく……ブレインはニヤリと笑う。

 

 

「貸すさ……必ず。うぬは必ず手を貸す……そして、奴を復活させる……」

 

 

「はいはい、そんなに女の子を怖がらせないの」

 

 

「インヴィンジブルか、奴は始末したのか?」

 

 

「あの娘は放っておいてもその内死ぬわ、そうだ、レーサーが来るまでの間、この子と話しててもいいかしら?」

 

 

「好きにしろ、余計な真似はするなよ」そう捨てるようにブレインは言い、奥のほうに歩いていった。

 

 

「さて……ウェンディちゃん、だっけ?」怯えるウェンディの前にかがみながら話しかけるインヴィンジブル。

 

 

「は、はい…」

 

 

「大丈夫、私はインヴィンジブル、モナークの友人、まぁ同郷者ね」

 

 

「お姉ちゃんの……お友達…?」

 

 

「そう、あなたはモナークの義理の妹ってところのようね」

 

 

「あ……あの!お姉ちゃんの事……知ってる事を話しててくれませんか……その……お姉ちゃんの事何も知らないので……」

 

 

「良いわよ……でも、その前にモナークと私の正体を話さないとね。」目を瞑りながら話し始める。

 

 

「私とモナークは人間とは違う、獣人と呼ばれる種族なの」

 

 

「獣人……?」

 

 

「獣人は人の形をしているけど、耳が生えていたり、尻尾が生えていたり、嗅覚が人間より優れていたりするの、それと、人間より寿命が遥かに長いのも特徴ね、後は……一人一人能力を持っている事ね」

 

 

「モナークは獣人の中でも珍しい部類の狐の獣人、それ故に最初はあまり信頼されなかったのだけれど、仕事を成功させていく内に、周りには人が集まっていたの。そうしてモナークは獣人世界でそれなりに良い地位に立つ事が出来たの。」

 

 

「お姉ちゃんは昔『私…実は王女になるかもしれなかった』って言ってたんですけど……、それって何か知ってます?」

 

 

「知ってるわ、あの娘は獣人世界に慣れて、交流関係も広くなったの、そんな中当時獣人界の王子であるルシュトゥンテントが、モナークに一目惚れしちゃったのよね、んで、暫くしたあと、2人は付き合い始めた。」

 

 

「以外……モナークって恋とか興味無さそうだったのに」すっかりリラックス状態のハッピーが言う。

 

 

「実はああ見えて、結構女子なのよ、甘い物とか大好物だし!えっと、話がズレたね。付き合い始めた2人は結構仲が良かったらしくて、噂では、夜の営みも……」とインヴィンジブルが少し悪い顔をしながら言うので、すかさずウェンディが

 

 

「そ、そういうのはいいです!」と先を話そうとするインヴィンジブルを制止した。

 

 

「でも……ルシュトゥンテントとモナークの関係を快く思わない連中がいたの、ルシュトゥンテントの事を狙っていた貴族のお嬢様だったの、そのお嬢様がモナークに色々難癖付けたり、遂には水を掛けたりの重度の嫌がらせに発展していったの。」

 

 

「そして、事態は急変するの、2人で街を歩いていると、周囲を何かの兵団に囲まれて、モナークは結界によって閉じ込められるの、兵団の中からお嬢様が出てきて、無抵抗のルシュトゥンテントを斬り殺したの、それも残酷なやり方で。」

 

 

そんな……と反応するウェンディと酷いや!と反応ハッピー。

 

 

「実は私はその様子を遠目から見ていたのモナークは……」と話の続きを話そうとすると、そこに……

 

 

大きな棺桶を運んできたレーサーが帰ってくる……。

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

「参ったぜ……思ったより時間かかっちまった……こんなに重けりゃ、スピードも出せねえよ」汗だくになり、呟くレーサーの肩を叩くブレイン。

 

 

「何を言うか……主より速い男など存在せぬよ」

 

 

「……あ、れは」

 

 

棺桶を見つめるウェンディ

 

 

「ウェンディ……貴様にはこの男を治してもらう」

 

 

「わ、私……! 絶対、やりません!!」その言葉に……クククと笑うブレイン。

 

 

「いや……お主は必ず治す……治さねばならぬのだ」

 

 

そう言い、ブレインが魔力を棺桶に送ると……その蓋が溶けていく……。

 

 

 

「……え?」

 

 

「な……に?」

 

 

棺桶の中から出てきたのは……

 

 

「……ジ、ジェラー……ル?」

 

 

眠りにつく、ジェラールそのものだった……。






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