IS──インフィニット・ストラトス 宇宙空間での活動を想定し、開発されたマルチフォーム・スーツ。開発当初は注目されなかったが
【白騎士事件】 によって変わった。それにより注目された女性にしか使えないその力は一夜にて良くも悪くも、正しくも歪にも世界の在り方を力のバランスというものを変えてしまったのだ。
5年前
少年は星を見ていた。否、見ざるを得なかったのだ。
廃工場の中、地に伏せ、小さな自らの血の海の中、今にも弾けてしまいそうな命は虚ろな目で星を見ていた。
その近くには少年を貫いたであろう、レイピア形状の武器を持ったIS。
「わかるぅ? あなたって見放されたのよぉ すっごい
ケラケラとIS操縦者の女は笑った。
「かわい...そう」
可哀想。この言葉ほど彼を表すコトバはなかった。
生まれつき病弱であり、それでも日々を一生懸命生きていたつもりだった。 少なかったけれど[友達]もいた。
だが、奪われてしまった。 己が姉、篠ノ之束に。篠ノ之束が創り出したISのせいで【白騎士事件】のせいで家族とも引き剥がされた。孤独の中、何度も引っ越しさせられ当然、友達なんて出来なかった。
そして今、誘拐され9歳という短い人生というものがエンドマークを打たれようとしている。
この少年──
「お姉.......ちゃ...ん......」
息も深く眼を閉じ最後に見たものは、夢見たものは、信じる神は──────。
ただそこにあった幻の星を───
少年が抱えていた幻の夢を───
決して存在しない幻の神を───
薄れ行く世界の中、手を伸ばした空が輝いて見えた
現代
世界の数多ある戦場の一つ。
そこにISはあった。 薄汚い人間の欲望は当然、ISという強大な力を振るう。条約など守っている国などあるか。どの国もその事実を把握しながら糺す国などありやしないのだ。知ったものはこの世から消せば良いのだから。 そこに【正義】などは力の象徴でしかない。
だが、決して【正義】はこの世から消失したものではない。
【正義】を示す鎧は迫り来る悪を断つために現れた。
揺るぎない勇気を持って、誰かの笑顔を守ってみせるため、見果てない夢をかなえるため。
そして、かけが得ない宝物を渡さないために。
対峙するは3つの鎧。 星しか見えない闇夜の中でも紅、蒼、玄の輝きは色褪せずにあった。
一つは鎧武者を思わせる、赤い鞘をした日本刀を模したモノを持つ紅の輝き。
一つは忍びを思わせる、左腕に特殊な形状のクロー型武器を持つ蒼の輝き。
一つは山伏を思わせる、これまた特殊な形状をした二問の射撃武器を持つ玄の輝き。
それぞれ共通しているのは全身を覆うようなそれぞれの色を模した外套と右胸に印籠を模したものがつけられていることだろうか。
突如現れた闖入者に先ほどまで虐殺を行っていたIS操縦者は嘲笑を浮かべた。
───何が現れようがこの世界最高の力は決して負けない。人も戦車も戦闘機も
「
錯乱、狂乱、狂気? どれでもないがどれでもある。 そのような高揚をぶつけるように手に掲げたライフルの照準を3体の中心にいた武者に向ける。
「どうでもいいわ、邪魔よ、邪魔するなら大人しく私に、この子に殺されなさいッ!」
「──やはりか」
「何……?」
「やはり貴様らはこの世界にあってはならない。人の身に余る力・・・許さず」
紅の武者が吐き捨てる様に呟いた。 鎧により表情は読み取れないがその言葉には得体も知れない憎悪と殺気が宿っていた。
「もぉー、どうでもいいでしょ? どーせここで終わるんだから」
蒼の忍者は武者を嗜めるように話す。
「…………」
玄の山伏は何も語らず、前を見据えていた。
「ごちゃごちゃと!何者よアンタ達は! どこのデータにもそんな姿は無かったッ!どこの軍ッ!」
ISのコアネットワークで検索をかけ目の前と一致するモノがデータベースに存在しないことを知ると怒気を強くするIS。
「そう? 知りたい? ならば皆よし行くよっ! 私達はー」
「ジャスティライザー!」
「グレン」
「カゲリ!」
「ガントッ」
「見参/参上!/推参ッ」
その日、世界からISが一つ消失した。
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