クリムゾン・キングの宮殿   作:white river

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初期プロット「ボス(原作知識無し)」

やっとプロットの練り直しが済みました!つかれた……
サルシッチャ視点スタートです。

注意:後書きに挿絵います



≫14

警戒のあまり、J・ガイルとかいうやつに先を歩かせたのは、一周まわってあまりにも不用心だった。まさか、特定の地点まで誘導されているなんて、さっきまではこれっぽっちたりとも思ってもいなかったのだ。今回ばかりは、オレの勘も鈍ってしまったというわけだと、悔しさが自分の喉元にまでせり上がっていた。

 

いつまでたってもこんなふうなのだから、オレは詰めが甘いとペリーコロさんに言われるんだ。オレはそう感じた。しかし、今はそんなふうに自嘲している暇すらない。なぜなら己は今、一人で痛覚を持たない死人共に囲まれているのだから。

 

あいつによく聞かされた、この霧の能力。傷付けた相手の箇所を操るだけではなく、死体をも自由に動かせるそれは、前者も相当に厄介であることに変わりはないのだが、しかし。後者こそが本当に厄介であるとオレは考えている。

 

植物と違って、動物はスグに死ぬ。植物は枝を切り取っても、水にさすなどの適切な処理をすれば、しばらくは生き続ける。しかし動物はどうだ。腹から上を切り取れば、すぐに死ぬのが実態だ。

 

そして、死ぬということは生命活動を停止するということであり、付け加えるならば、成長することも老いることもなくなる、ということでもある。

 

つまり、オレのスタンドはこいつらに通用しないわけだ。オレは目の前の奴らを視線の先に据えた。オレと同じように、発掘に参加していたはずの故人。直感的に、死が貶められている。そんな気がした。それと同時にオレの中には、ふつふつと怒りが沸いてきたのだった。

 

緩慢な動きで歩み寄ってくる死体。武器は持っていない。全くの素手である。それが恐ろしい。

 

死んでいるのにも関わらず、動いている肉体。否、動“かされ”ている肉体を見て、彼らの死を辱める行為をほかならない自分が許してよいのか、という言葉が、頭蓋骨の中でぐるぐると駆け巡る。

 

「許せるわけがねえだろうがッ!」

 

そう己を奮い立たせるように叫んでからオレは、一人の死人に低い体勢で駆け、その足をスタンドの腕力と特別製のナイフではねとばした。しかし死人もタダでやらせるわけもなく、腕でつかみかかってくる。

 

オレはそれを振りはらおうとするが、その力はとても強く、スタンドを使って腕を捻りあげるハメになってしまった。死んだことで、脳のリミッターがいかれてしまったのだろう。思っていたより死人が厄介だと、オレはうつ伏せになっている足のない死人の首を踏み抜きながらそう感じた。

 

 

**

 

 

へし折り、踏み抜き、切って断つ。殴る蹴るの行為は、痛みを感じないヤツらにとってはほぼ無意味であり、必然的にこの三つを繰り返すことになってしまった。何遍やったかなんて忘れてしまった。しかし、きっとそう大した時間ではないのだろうが、オレにとっては無限にも等しい時間だった。

 

十人以上いた死人も、まだ動けるヤツらは片手で数えられる程度まで減らした。あともう少しで、マリオの援護に向かえるのだと思えば少し余裕が出来てきたので、そちらの方向を見るが、もう沈みかけている太陽の光が正面からさしてきて、つまり逆光によって様子がよく分からなかった。

 

しかし、先程から頭に引っかかって離れない、この異様な不安感はなんだろうか。何かを見落としてはいまいか考えるも、いまいちよくわからない。

 

死人の蹴りをスタンドで受け止め、アキレス腱を切り裂く。死人を全員仕留めれば、このいわれもない不安を拭えるのではと考えたオレは、気力を振り絞ってナイフを構えた。

 

その時、時間の割に生ぬるい風が、舐めるかのように通り抜けた。嫌な予感がする。そう感じたオレはその場をとびのき、辺りを警戒したが、何もない。気の所為だったのだろうか────

 

 

 

 

──────そしてオレは直感的に身体をひねった。下腹部に熱い感触がする。多少回避に成功したので致命傷ではないが、内臓は確実に傷ついただろう。遅れて痛みもやってきたが、そんなことは気にも留めず、オレは自身のナイフを抱え込み、溢れる血液を浴びせた。気が狂ったわけではない。

 

そしてそこに現れた、見覚えのあるスタンド、ハングドマンをオレは引っ掴んだのだった。

 

「く、くそっ。 オレは光速で動けるハズなんだッ!なぜお前は……!」

 

「は、そりゃあ、悪いことを…したな…ぐ、……っふ…。」

 

J・ガイルのスタンド、ハングドマンについてあいつから聞いていた情報に、「何らかの方法で、潜んでいる反射率の高い物体が閉ざされると、潜めなくなったスタンドがその場に現れる」というものがある。つまりオレは、それを利用してハングドマンを捕まえた訳だ。だが思っていたより傷が深い。出血で意識が飛びそうになるが、しかしこのJ・ガイルだけは完全に無力化しなければならない。

 

歯を食いしばって、ハングドマンを老化させる。自身の方にパワーを割く余裕もなく、己が若返るのがわかるが気にも留めない。

 

「なにがあろうと、この能力は解除しねー……。あいつの戦いに、ぅ…手出しさせる訳にはいかねえからなぁ…。」

 

血は止まらない。霧のスタンドで穴が空けば出血しなくなるだろうと思っていたが、穴はあかない。恐らくはJ・ガイルへのオート攻撃を避けるため、マニュアルに切り替えたのだろう。当てが外れてしまったが、意識をとばせば、こいつにかかった老化も意味をなさなくなる。たとえ腕を飛ばされようが足をもがれようが、スタンドを解除してはならないのだ。オレの誇りにかけても。

 

「謝るぜ、オメーに…ウソをついてたことはよ…。、こんな形じゃあなくて…別の形で知らせたかった、なァ……。」

 

あいつはどう思うだろうか。あれだけマンモーニだと言ったオレの方が、実は若かったなんて。

 

 

「喰らえ、オレの…グレイト……フル、デッドを………。」

 

無理に動いたせいで余計に血が流れ出て、既に血が足りなくなってきている。気絶してはいけない。もう視界もままならない。立つことすらできず、オレはその場に倒れ込む。致命傷は避けたものの、このままでは出血性ショックで死ぬなあと、思考の隅でそう思った。

 

歯を食いしばろうとするが、既に力は入らない。ボヤけた視界に見えるのは、暗紫色になった空だった。

 

 

**

 

 

「さ、流石はわしの息子じゃあ! あの気に入らない男を、自分で仕留めたのじゃ! 」

 

「……サルシッチャ…。」

 

「しかしまだ生きておる…。ならばこのわしが直々に殺してやるッ!」

 

 

 

「……貴様は、これが試練だと言ったな…。」

 

「確かにこれは試練なのだろう…。」

 

「貴様を殺して、サルシッチャの命を救うという、“試練”なのだ…。」

 

「だが、あまりにも選択が悪い…。」

 

「試練は吟味してから与えるべきだったのだ…。」

 

「貴様……逆鱗に触れたな。」

 

 

満身創痍の筈のディアボロは立ち上がった。

その手に土まみれの何かを握り、傍に精神のヴィジョンを侍らせている。

 

日は既に沈んだ。空はもう暗い。

 

 

 




ボスはこの話の主人公なので、つまりそういうことてす。

02/24挿絵追加
ラスト 立ち上がる直前
背景黒だとみにくいので、脳内補完よろしくお願いします

【挿絵表示】

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