インフィニット・ストラトス 桜踊りし希望の剣   作:神近 舞

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検定嫌だぁ...。

助けてくれぇ...。


Chapter Ⅳ【004】考察

4つの人影が現れた瞬間、アルちゃんが翼を広げ、上空へと翔んでいった。

 

空の彼方へと昇っていったアルちゃんを見届けた私は、再び人影達に注目する。

 

私よりも背が高く、学校の制服を着た黒髪黒目の少年。

 

なんとなく見覚えのある銀髪蒼目の女性。

 

白髪赤目のアルビノと思われる男の子。

 

私よりも少し背が低く、学校の制服を着た茶髪茶目の少女。

 

...個性的な人達だなぁ...。

 

そんなことを考えていると、少女が開口した。

 

「あのぉ...貴女も...亡くなった方...なのですか?」

 

その言葉を聞き、私と彼女達は同類(亡者)であると分かった。

 

「...うん。 私はシャーロット・エインズワース。 転生後も同じ名前なんだ。 宜しくね?」

 

私はその言葉を発すると同時に、そっと友好の証(右手)を差し出した。

 

「あっ...はい! 宜しく...お願いします!」

 

そして、彼女は返事をすると共に私の右手を強く握った。

 

その光景を見ていたのか、残りの3人も友好的な表情を私に向ける。

 

...って。

 

「オリヴァー先輩!? 貴女もですか!?」

 

「シャルちゃん...うん。 私も死んじゃった」

 

メアリー(Mary)オリヴァー(Oliver)

 

私の勤めていた会社の先輩で、銀髪蒼目が特徴の女性だ。

 

私がチームリーダーとなったときに、私と共に協力してくれた人だ。

 

私が冤罪をかけられた時も、最後まで抵抗して下さった人だ。

 

私はその時の出来事を鮮明思い出していると、突然先輩が自身の両手を叩き、自身を注目させる。

 

「さて、此処でずっと無言ってのも何だし、自己紹介でもしましょうか」

 

先輩の提案に誰も反論しなかった。

 

「じゃあ、私からね。 メアリー(Mary)オリヴァー(Oliver)よ。 死亡時の年齢は40。 転生後はアリス(Alice)エインズワース(Ainsworth)という名前で、2014年7月1日に生まれる予定よ」

 

恐らくだが、先輩が転生後の情報まで開示したのは、他の皆に対して敵意がないことを伝えているのだろう。

 

...って、エインズワース?

 

「じゃあ、次は俺が。 俺の名前は神崎(かんざき) 悠人(ゆうと)。 17歳で死んだ。 2023年11月18日に、(すめらぎ) 龍馬(りょうま)として転生する予定だ」

 

制服の着た少年、神崎君にも敵意は無い模様。

 

「僕にも自己紹介を。 ヴァレリー(Valéry)セリーヌ(CÉLINE)です。 11歳で死にました。 2024年2月14日に、ユーリ(Youri)ドラクロワ(DELACROIX)として転生する予定です」

 

アルビノの特徴を持つ男の子、セリーヌ君にも敵意は無い...と言うより、悪意というものを知らなさそうだ。

 

「次は私が...。 成瀬(なるせ) (きょう)...です...。 16歳で...死にました...。 2022年7月12日に...夜竹(やたけ) 舞華(まいか)...として...転生予定」

 

茶髪茶目の少女、成瀬ちゃんも問題無いみたい。

 

おっと、私が残っていたか。

 

「最後は私だね。 私はシャーロット(Charlotte)エインズワース(Ainsworth)。 享年37。 2020年9月15日に、今と同じ名前で転生する予定だよ」

 

「エインズワース? もしかして、シャルちゃんと私は姉妹になる可能性がある...ってことなの?」

 

「それは...まだ断言出来ませんね...。 出生地を聞いていますか?」

 

「えぇっと...確か、イギリスのエクセター市だった気がするわ」

 

「あれ? 私と同じ出生地...?」

 

...姉妹という可能性が濃厚だな、コレは。

 

そんなことを考えていると、突然私の体が発光した。

 

...もしかして、コレが転生の合図なのだろうか?

 

そう思った刹那、私の視界は自分が発した光に塗り潰された。

 

 

 

 

 

Side Others

 

時は、シャーロットが残りの転生者と対面する前にまで遡る。

 

4人の転生者は同じ場所に集められ、天神―――アルシエルの意見を最初から聞いていなかった者―――がアルシエルの説明とほぼ同様のものを行った。

 

そして、最後にこの言葉を付け加えた。

 

『シャーロット・エインズワースという大罪人を赦すな』と。

 

天神達にとって、シャーロットの存在はとても目障りであった。

 

何故なら、彼女の存在は天界の腐敗を払拭出来る唯一の材料となるためである。

 

言うなれば、彼女は天界に於ける改革派―――天神達による天界の統治という旧体制を崩すことを主張する者達のこと―――を支える柱である。

 

先程の言葉の意図はとても簡単だ。

 

改革派は彼女を希望の象徴としている。

 

ならば、彼女を見せしめとして、深い絶望の底に叩き落とせば、改革派は心の支えを失い、勢力の縮小及び弱体化が可能なのではないだろうか。

 

そうなれば、改革派を一掃することができ、自分達による天界の統治が続く。

 

また、彼女の魂を完全に消滅させることによって、改革派の残党が現れる可能性を限りなく低くすることが出来るだろう。

 

天神達にとって、人間の魂を完全に消滅させるのはとても容易い。

 

しかし、人生改変は却って改革派の怒りを買う愚策である。

 

自分達が下界に降り、自らの手で彼女を消し去るなど論外。

 

よって、彼らは残りの転生者に期待した(・・・・・・・・・・・)のだ。

 

転生者である彼女が、他の転生者によって殺される。

 

このことに意味があるのだ。

 

何故なら、転生したという自覚のある転生者は基本的に良識者(・・・・・・・)なのだ。

 

すなわち、自覚ある転生者は正義である。

 

その正義によってシャーロットが殺されるということは、シャーロットが悪であることを示す。

 

正義の主張に負ける主張は、悪の主張以外に他ならないからである。

 

今まで信奉し続けていた存在が悪であると知れば、改革派は自分達の考えが悪であると知り、絶望し、自然な形で消滅するだろう。

 

そして、彼女の死後、自然な形で天神達の下に彼女の魂を呼び寄せ、完全に消し去る。

 

こうすることで、自分達が正しいことを証明する。

 

それこそが、『大罪人を赦すな』発言の真の意図である。

 

...だが、しかし。

 

天神達は彼らに対して、あまり期待していなかった。

 

あの4人は元々、超が付くほどの善人である。

 

その為、先程の発言だけで殺人を犯すような人間であるとは思えなかったのだ。

 

故に彼らは保険(・・)を用意していた。

 

自分達の計画を確実に成功させるために......。

 

Side Out




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