時間軸としては雄英体育祭前。
雄英体育祭まであと一週間。
登校してすぐ、相澤先生に呼び止められた。
なんでも、ヒーロー学として“仮面ライダー”について教えて欲しいらしい。
その為、俺のあのファイルの中の資料をコピーさせて欲しいと言われた。
俺は快く承諾し、ファイルを手渡した。
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午後、ヒーロー基礎学の時間だ。
さて、ここで質問だ。
「何故俺が教壇に立つことになってるんですか!!」
「“仮面ライダー”について最も詳しいのはお前だろう。資料を眺めても俺にその本質はわからん」
寝袋に入りながら面倒くさそうにそう言う先生。
畜生・・・・・・。ハメられた・・・・・・・・・。
この教師、最初からこれが目的だったな・・・・・・。
座っているクラスメイトの方へ視線を向けると、一人、キラキラとした少年の目でこちらを見ている人物がいる。誰であろう? 切島くんである。
ああ、もっと先を考えておくんだった。
・・・・・・・・・諦めよう。
「じゃあ、始めます。と、言っても、仮面ライダーの中にはその戦い自体が不明になっている者もいるので、そこら辺は許してくれ。じゃあスマホの準備。それで調べられるような出来事もあるからな。まあ、それも資料に乗っているけど一応のためだ」
俺がそこまで言った所でクラスメイト達から一斉に質問の嵐が飛ぶ。
「まず仮面ライダーって?」
「名前の由来ってどこから来てるの?」
「仮面ライダーがヒーローの原点ってなんで?」
「複数いるの?」
「オールマイトと比べるとどれだけ強いの?」
「僕って格好いいよね☆」
「んんん~~~~、聖徳太子ィィイ!!!」
つい、オールマイトみたいな反応をしてしまった。
そして青山、何関係ない事を言っているんだ。
「お前ら! 人が話をしている途中で質問をぶつけてくるな!! 少しは待て!!」
俺がそう言うと、皆静かになってくれた。
決して俺がガシャコンバクヴァイザーの銃口を向けて一発発砲したからではない。
「・・・・・・まず、仮面ライダーってのは日本の元号が“昭和”だった時に現れだした都市伝説だ。その時代の情報はネットが普及していなかった事もあってあまり正確な情報が無いから割愛する。ただ、昭和という時代に“仮面ライダー”が現れたとだけ考えてくれ」
俺はそこまで言ってファイルをパラリとめくる。
「平成に入ってから初めて記録に残った出来事と言えば1999年に渋谷に突如落ちた『渋谷隕石』が最初と言えるが、それによって仮面ライダーが生まれたのはもう少し後の話になるから少し飛ばす。
平成最初に確認された仮面ライダーは『クウガ』。
クウガの物語は2000年に長野県の九郎ヶ岳にあった遺跡に封印されていた未確認生命体“グロンギ”が目覚め、人を襲い出したことが始まりだと言えるだろう。
これに関しては警察にも記録が残っているはずだから、今度調べてみると言い。絶対に見せてくれないから。
え? 何で見せてくれないか、だって? そこまでは知らねえよ。
と、話を戻そう。
グロンギは“ゲゲル”というゲームを始める。簡単に言えば決められた期間内に人間をどれだけ多く殺せるかっていうゲームね。
それを止める為に戦ったのがクウガ。
クウガに変身していた青年は優しい人でね、誰かを気付つけるのが嫌だった。無論、グロンギすら傷つけたくなかった。
それでも彼はグロンギと戦い続けた。誰かの笑顔を守るために自身の笑顔を壊し続けた。そういうヒーローだ。
最後はゲゲルを開催した張本人であり、究極の闇と呼ばれる最強のグロンギ、“ン・ダグバ・ゼバ”と戦い、クウガの力を失った。
だが、それによってグロンギによる“ゲゲル”は終了し、グロンギによる事件は終結した」
皆、俺の言葉を聞きながら資料に目を通している。
「さて、ここから記録に残っている仮面ライダーと残っていないライダーがいるが気にしないでくれ」
俺はそう前置きし、話を続けた。
アギトの話についてはかなりぼかしたがG3など、人間がどう抵抗していったかをメインに話した。
龍騎は一般的に不明点が多いため、かなりぼかす結果になった。
ファイズに関しては“オルフェノク”を中心に話した。皆の顔色がコロコロ変わって何か面白かった。
ブレイドはオンドゥル語を多用し話した結果、皆資料ばかり見ていた。解せぬ。
響鬼はぼかしにぼかし続けた。話辛いよ。
カブトになってやっと渋谷隕石についてを話した。皆驚いていたが、まあ気にしない。
電王は正体不明のライダーとして話した。時間を超えたライダーとか説明難しいわ。
キバについてもまた然り。
ディケイドについては異世界がある事を前提として話をした、異世界がある事に皆は衝撃を覚えていたようだが特に気にせず、異世界を旅した写真家の話をした。
ダブルはミュージアムがばらまいたガイアメモリについての話をメインにエターナルが起こした事件に繋げた。やり方は間違っていたが、それでもエターナルも“
オーズは彼の持つ辛い過去とそれによって彼がどういう存在になったのか、人間とグリード、命とは何か、そして、彼らの最後の戦いについてを話した。手が届かなかった者。命を欲した者。切っても切れないあの二人の話をだ。クラスメイトの中には涙を流す者もいた。
フォーゼの話は皆の驚きは今までの域を超えた。“天ノ川学園高校”の名前を出した結果だろう。この世界での天ノ川学園高校はヒーローを何人も出している名門校だ。そこでの出来事だと言われて驚かない者はいないであろう事を失念していた。失敗失敗。
ウィザードは絶望を希望に変え続けた誰かの希望になる事について、絶望に打ち勝った魔法使いについての話をした。誰かの希望になろうとする男、たった一人の娘の為に大勢の人たちを犠牲にした男。この二人の思いについて、俺が分かる限り話した。
鎧武に関しては登場人物のほとんどがクズだという事を前提として話をした。鎧武の身勝手でわがままで我を押し通そうとし続けたフリーターの話を。大勢の人を救うためにその身を懸けた大バカ者の事を・・・・・・。
ドライブの話はかなり面倒くさかった。重加速粒子の説明が一番難しかった。重加速の説明を終えた後は警察としてその命を懸けた男の話をした。いや、あの人一度死んだけど・・・・・・。
ゴーストは生き返るうんぬんの話はバッサリカットし、人々の思いや願いを繋いでいった青年の話をした。(ガチ目に)命を懸けた、この世界を懸けた戦いをし、人間の持つ無限の可能性を掴んだ彼の話を。ちなみに、その戦いをしていたのが高校生であったことを伝えたら驚かれた。
エグゼイドの話は最初にバグスターウイルス感染症についての話をした。皆には出してもらっていたスマホでバグスターウイルス感染症についてを各自調べてもらった。現在ではワクチンもあり、まず発症することがないが昔は
「ずいぶん長い話になったけど皆疲れてはいないか? ・・・・・・・・・OK。話を続けよう。
仮面ライダービルドは物理学者だ。
彼の事を表すなら、ナルシストで自意識過剰で記憶喪失な正義の味方、というのが的確だろう。
ディケイド同様、ビルドもこの世界の仮面ライダーではない。
その世界・・・・・・まあ、世界Aと呼んでおこう。
世界Aの日本は火星から回収された正体不明の物体、“パンドラボックス”が引き起こした“スカイウォールの惨劇”によって三つに分かれてしまった。
え? どう分かれたか、だって? ウォールという言葉で分からないかな? パンドラボックスから巨大な壁が出現して物理的に日本を三つにしたんだ。
そして、東都、北都、西都で戦争が起こされる事になる。そして、その裏ではある組織が暗躍していた。
みんな知っているだろう? この前からメディアで大きく取り上げられていた“ファウスト”がそれだ。
非道な人体実験を繰り返し、多くの人々を傷つけていた。
東都、北都、西都の間で戦争を起こさせ最終的に日本を乗っ取った。
しかも敵は最凶最悪。星を破壊するほどの力を持つ地球外生命体だった。
え? どこから地球外生命体が出て来たか、だって? 火星で発見されたパンドラボックスがその地球外生命体の物でその力を得る戦いを仕掛けさせたのもソイツだ。
ファウストの“ブラッドスターク”の正体がその地球外生命体だ。
仮面ライダーたちは全力で戦ったが、全く敵わなかった。
だが、“とある方法”を使えば勝てる可能性が出て来た。それは、地球外生命体の力を使って平行世界である世界Bを世界Aと合体させ、悲劇の起こらなかった世界を
最終決戦はそれはもう激しいものだった。一人、また一人と仮面ライダーが命を落としていった。
だが、それでも仲間が命を懸けて作った大きな隙をつき、平行世界を合体させ、悲劇の起こらなかった新世界C・・・・・・つまり、この世界を作った。
そして、天才物理学者は悲劇のなかった世界を相棒と共に歩んでいった。かなり端折ったが、これが仮面ライダービルドの戦いだ。
ちなみに、ビルドは新世界を作る前に世界を超えて色々な仮面ライダーたちと共に戦った事もある。
そこでは色々な仮面ライダーが各々の戦う理由を、本当の力とは何かを叫んでいたよ。
ある者は『誰一人見捨てないために』。ある者は『世界中の
この言葉だけでもヒーローとは何かと考えさせられるよ。
ああ、そうだ。皆、スマホで調べて見な。『仮面ライダービルド』を。
・・・・・・・・・・・・・・・おお、良い反応だ。データが残っているだろう? 彼らの戦いが。
・・・・・・・・・なぜそれが残っているか、だって?
ビルドは新世界で自分たちの戦いを49のエピソードに分けてデータ化したんだよ。
それが残っていたんだ。暇だったら見てみなさい。
良い切っ掛けにはなるだろうから。
最後に、『見返りを求めたらそれは正義とは言わないぞ』。この言葉を覚えていてくれ。仮面ライダービルドの言葉だ。
この次は仮面ライダージオウの話をしたいところなのだが、ジオウは全くと言っていいほど記録が残っていない。キバや電王もそうだったけどな。だから、話そうにも話せないからそこは許してくれ」
俺が話し終えるとほぼ同時にクラスメイトの何人かはスマホに視線を集中させていた。
ああ、読んでいるな。
・・・・・・・・・よし。
「ここまで聞いて何か疑問でもある人~?」
俺が軽くそう言うと、
「ハイ!!」
と真っ直ぐ手を上げる飯田くん。
お~、比喩表現じゃなくてガチ目に真っ直ぐだ。
定規にでも使えそうだな。
「ハイ、飯田くんどうぞ」
「仮面ライダーにはそれぞれ戦う理由があったが、それでなぜ仮面ライダーがヒーローの原点であると言えるのですか!? 先生!?」
「今は先生(仮)だけどいつも通り呼んでくれていいよ、飯田くん。まあ、いい質問だ。皆、考えてくれ。超常が起きる前、言ってしまえばみんな無個性だ。そんな時に正体不明の
俺がそう言い終わると同時に授業終了のチャイムが鳴った。
思ったよりも長い話になってしまったようだ。
「はい、お疲れ様。HRはやらないから各自、帰るなり残るなり好きにしな」
相澤先生は流れるように寝袋から出た後、そう言い残して教室を後にした。
あまりに自然体過ぎて誰も止めることはできなかった。
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「相澤先生、資料は?」
「これです」
「ふむふむ。・・・・・・なるほどね。この資料をコピーして
「いいのですか?」
「うん。この資料の中に“人間を超えた仮面ライダー”についても書かれていた。・・・・・・もしかしたら、今後現れる可能性もあるからね」
これによって、エンデヴァーは“仮面ライダー”について知っていた。
この作品のヒロインって……
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白神神姫
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使原弓
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紅華炎
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暗視波奉
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赤口キリコ(安藤よしみ)