個性『英雄』   作:ゆっくりシン

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これでラストだぁぁぁああああああああ!!!!

もう二度と『大宮さとしの物語』なんて書くものかぁぁぁあああああ!!!!!


72話 『大宮さとしの物語㉔ 終了 もう書いてたまるか』

 監禁3日目。

 俺は凍えることなく朝を迎える事が出来た。

 この部屋自体、廃墟の中ほどにあり、隙間風などもない為にそこまで冷えることがなかったのが幸いした。

 体中に力を込めて半強制的に血流を促進させたことにより発生した熱気があれば十分一晩を過ごせるほどの温かさになった。

 これが『ズル』のうちの一つ。

 っといってもめちゃくちゃスタミナ使うからあまりやりたくはないけど・・・・・・。

 俺は少し息を整えて精神を落ち着ける。

 そして、力を籠める瞬間、

 

「さ~と~し~ちゃん♪」

 

 部屋の扉が開かれた。

 マッズイ。

 昨日は室温を上げることに神経を使ってたが故に拘束を解く方へ力を使えていなかった。

 もう少し安藤が来るのが遅ければほんの少しでも拘束を解くための準備ができたっていうのに。

 俺は少し焦りつつもそれを表に出さずいつも通りの口調で言う。

 

「よぉ、安藤。・・・ったく、今の季節を考えろよ。昨日は寒くて大変だったぜ」

 

「あっ・・・。ご、ごめんね」

 

 安藤はびっくりした表情を浮かべ、慌てて服を脱ぎだs

 

「何やろうとしとんじゃボケェ!!!」

 

「ひ、人肌で温めようと」

 

「雪山で遭難した際の最終手段にでも取っとけ」

 

 まあ、雪山で遭難した場合は慌てず通報が出来れば通報をし、素早く雪洞を作って一晩を明かし、明るくなってから人目に付く場所へと行って救助されるのを待つのが良い・・・とどこかの本に書いてあった。

 なので、人肌で温めあうってのはそこまで最善手という訳ではない・・・らしい。

 ただ、俺自身雪山に行った事や遭難した事なんてないので正確な事は言えないってのが現状である。

 

「・・・・・・あれ? 室内、さとしちゃんの匂いで溢れてるね」

 

「なんでンな事分かるんだよ。犬か、オイ」

 

 そうため息を吐く俺を余所に安藤はパタパタと足音を立てながら近づいてきてボタンを付け始めた。

 いや、マジでなんで昨日やってくれなかったの?

 そんな疑問を持ちながらも、この日もずっと安藤からの猛攻(性的)を全力で避け続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 監禁4日目。

 俺は少しげんなりとしながら言う。

 

「何やってんの、お前」

 

「白玉団子を作ってるの。さとしちゃん、変なものが入ってるってずっと文句言ってるから、目の前で作れば文句ないかな~って」

 

「だからって、何だよそのチョイス」

 

「私が素手で愛情とかを練りこんだ物を食べて欲しくて」

 

「ああ、うん。そうっすか」

 

 もはやツッコミを入れる気力すらなかった。

 俺は安藤の動向をボーッと眺めている内に白玉が完成した。

 安藤はあんこも手作りしており、料理の苦手な俺からしたら良くできるモノだと感心すらしてしまう。

 

「はい、あ~ん」

 

「自分のペースで食いたいから拘束を解いて欲しいんだがな」

 

 俺はそう文句を言いながらも白玉を口に入れる。

 安藤は嬉しそうにニコニコと笑顔を浮かべている。

 

「どう? おいしい?」

 

「甘い。砂糖入れ過ぎだ」

 

「ここしばらく何も食べてなかったでしょ? だから糖分取った方がいいと思って少し多く入れてみたの」

 

「なるほど。気遣いあんがと」

 

 多少だがエネルギーを摂取できたのは大きい、と思う。

『ズル』の方も順調であり、もしかすれば今夜にでも・・・・・・、

 

「それじゃぁ、私も食べるね」

 

 安藤はそう言って俺の首元に噛みついて来た。

 俺は、痛みを訴えるよりも前に、叫ぶ。

 

「テメェは吸血鬼か!!」

 

「さとしちゃんとずっと一緒にいられるなら私は吸血鬼(バケモノ)でもいいかな」

 

「ハッ。きっと吸血鬼は良いもんじゃないぜ」

 

 俺がそんな軽口を叩いている間も、安藤は俺の血を舐めていた。

 ・・・・・・ってか、血って飲むと嘔吐感が出るんじゃなかったっけな?

 そんな疑問が浮かんだが、調べたりできる状況でもないので後で調べようと頭の片隅に置いて、俺は機を伺うのだった。

 

 

 

 

 

 

 監禁5日目、夜。

 ブツッと言う鈍い音と共に俺の手の拘束が千切れた。

 時間はかかったが、監禁されてからずっと負荷をかけ続けていたのがやはり良かった。

 三重にされてかなり力が分散されていたのがキツかったが、少し『ズル』をすればなんとか行けた。

『ズル』っとは、呼吸法によるリミッター解除である。

 人間・・・・・・いや、すべての生物の体にはリミッターが存在しており、限界値なる物が個々に定められている。

 俺は呼吸法で精神を落ち着かせ、血流を安定させて無理矢理肉体のリミッターを外したのだ。

 今まで様々な事件で、こんな普通の一般人が戦えていたのにはそういった『ズル』があるからである。

 精神安定による強制リミッター解除。

 この方法が使えなければ俺はとっくの昔に死んでいただろう。

 ただ、当たり前だがこれはドラゴンボールで言う所の『界王拳』に近い所がある。

 端的に言えば体への負荷が露骨に出てくる。

 1月に入院するよりも前だってリミッターを解除して無茶苦茶しまくっていた。

 特に、12月なんて拳銃を持った戦闘のプロ二人を相手に藤原が逃げる時間を稼いだりもしているのだ。

 かなり時間が経った為、体へのダメージはなくなっているが、それでもあまり良いモノではない。

 当たり前だが、肉体への疲労は確実に蓄積されているだろう。

 ただ、今はンなくだらない事に意識を割くほどの余裕なんてない。

 俺はスッと立ち上がり、凝り固まった体を解す。

 そして、部屋から抜け出し、窓に板が打ち付けられているこの廃墟の唯一の出入り口である玄関へと向かうために廊下の曲がり角をまg

 

「ッッッ!!!?」

 

 瞬間、左腕に鋭い痛みが走った。

 視線を向けると、二の腕に深々とナイフが突き刺さっていた。

 

「やっぱり、他の(ブタ)の所に行こうとしてたんだ」

 

 そう言う安藤に俺は呼吸法で精神を切り離し、肉体へのダメージを無視しながらつぶやく。

 

「監禁されりゃ誰だって逃げようとするに決まってんだろ」

 

「なんで、私のキモチを分かってくれないの? こんなに、こんなにも好きなのに。他の(ヒト)ばかり見て、私と一緒にいてくれないなんて、私イヤダヨ」

 

「そうかよ。だがな、事件の匂いがするんだ。この五日間、この街で何が起きているか、なにが起きたかを俺は知らない。もしかしたら困っている人がいるかもしれない、助けを求めている人がいるかもしれない。なら、行かないと」

 

「だめ。さとしちゃんは私と一緒にいよう。そうすればもう傷つくことはないもん」

 

 安藤はそう言ってソッと距離を詰めて来た。

 

「もしも、他の人がさとしちゃんを殺すなら、それよりも前に私がさとしちゃんを殺すの。そうすれば、さとしちゃんはずっと、ずっとず~っと私だけのモノだもん」

 

 安藤はそう言って俺の腕に刺さったナイフを掴み、ギチギチギチッと捻りだした。

 さすがに、精神を切り離し続けることはできず、痛みに絶叫を上げる。

 

「大丈夫だよ。私もすぐに黄泉路に向かうから。そうすれば寂しくないよ」

 

「そう、かよ」

 

 俺はそう答えると空いている右手で安藤を抱くように寄せる。

 そして、

 

「ごめんな」

 

 それだけを言うと俺は安藤の顔めがけて思い切り頭突きをくらわした。

 安藤は目を回して倒れる。

 俺はしっかりと意識を奪えたかを確認せずに玄関へと向かう。

 だが、途中で足が動かなくなった。

 理由は明白。

 血を、流し過ぎたのだ。

 壁に手を受け、覚束ない足で何とか立ち上がる。

 そして、扉まであと数メートルの所で完全に足が止まり、体の重心がズレ、倒れてしまった。

 もう、指も動いてくれない。

 そうして、意識が落ちてゆく。

 何よりも、暗い闇の中へと。

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと俺は助かった。

 安藤にナイフを捻られた際に上げた悲鳴を近隣住民が聞いていたらしく、通報を受けた警察が駆けつけて来てくれたのだ。

 俺は病院へと担ぎ込まれ、手を俺の血で真っ赤に染めた安藤は殺人未遂の容疑で現行犯逮捕された。

 そして、俺が入院している間に容疑が固まり、少女少年院へと収監されることになった。

 マスメディアは安藤の事を何も知らないというのに視聴率のタネと言わんばかりに勝手な事を騒ぎたて、事実と異なるという事がネット上で暴かれた瞬間に報道と止めた。

 間違えを認めずに何も答えず高齢層を騙していくいつものパターンだ。

 だからマスゴミと言われるのが分からないのか・・・。

 そんなことを思いながら俺は特に装飾のない一室に設置されたソファーに座り、窓の外の景色を眺める。

 しばらくすると部屋の扉が開き、監視員と安藤が一緒に入ってきた。

 

「よぉ、安藤。窶れてんじゃねぇかよ。しっかり睡眠は取っているのか?」

 

 俺はいつものペースでそう問いかける。

 だが、彼女からの返事はない。

 いつもの事だ。

 これでここに訪れるのは二桁を超えたが、何度話しかけても安藤が答えてくれることはなかった。

 それでも、俺は話しかける。

 前みたいに、あの事件なんてなかったかのように。

 だけど、安藤は無表情のままずっと下を向いている。

 その顔は、とても寂しそうに見えた。

 

 

 

 

 

 

 その日もリハビリの帰りだった。

 安藤に突き刺された腕は神経をやられており、マヒが残ってしまった。

 ただリハビリが順調に行っている為、多少動きは鈍いが前みたいに動くようにはなっている。

 医者曰く、

 

「こんなに早く経過が出るのはおかしい。異常としか言えない」

 

 らしいが、知ったこっちゃない。

 怪我の回復が早いのが取り柄だからな。

 そんなくだらない事を考えながら歩いていると、スマホに着信があった。

 出ると、長谷川さんからだった。

 またいつものくだらない確認かと思ったが、様子がおかしい。

 

「大宮。落ち着いて聞いて欲しい」

 

「何か、あったんですか?」

 

「実は、」

 

 長谷川さんはそう前置きをしてから告げた。

 

「先ほど、安藤よしみが自殺した」

 

 耳を疑った。

 嘘だと思った。

 だけど、長谷川さんの真剣な声が、それが事実であることを告げていた。

 

 

 救えなかった。

 助ける事が出来なかった。

 

 

 

 やっぱり、俺は無力だった。

 無力でしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、現在。

 

「お前を救える方法がようやく思いついた」

 

《フルボトルバスター》

 

「・・・・・・行くぜ」

 

 

「来て。今度こそ私のモノにするカラ」

 

 縁は繋がり、また、俺の前に壁として聳え立つ。

 

 

 

 さぁ、実験を始めようか。

 

 

 

 前世の後悔を無くす為の、そして、目の前の少女を救う為の法則を立証するために。

 




やっと、終わった
ε-(-ω-; )ハァ…

この作品のヒロインって……

  • 白神神姫
  • 使原弓
  • 紅華炎
  • 暗視波奉
  • 赤口キリコ(安藤よしみ)

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