公安のヒーロー   作:サー
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年末年始、忙しすぎーーー。


第2話

いつものように、朝食を作る。

私の好みで納豆と味噌汁、白米という和食なメニューだ。完成した頃に寝室から俊徳が起きる気配を感じた。

あれ? 何かを忘れている気がする。なんだっけ?

 

えーと……。

 

あ! 顔の落書き!

 

あの人は起きてすぐに顔を洗いに行く。このままだとバレる……,

 

「なっ!」

 

遅かったか……。

 

「……俊典、どう私の傑作は?」

 

洗面所に行くと、俊典が濡れタオルで顔を擦りながら私を見た。半分呆れているような目で、静かに言う。

 

「………………油性は、やめて、」

 

「……ごめん。」

 

俊典はこの程度で怒るわけがない。

一緒になって、十数年。私は彼に数々の悪戯をしてきた。その結果、彼の懐はかなり大きくなったのだ!

 

すいません、完全に色々と諦められているだけです。だからといって悪戯をやめる気はないが、

 

それはさておき、顔の落書きを落とした後、私たちは朝食を食べた。

BGMの代わりにテレビもつけており、政治家の不倫なんかが報道されている。

 

「……成子、今日は休みなのか?」

 

「うん、久しぶりにゲームでもやろうかなって思ってる。 俊典はまた弟子君のところ?」

 

「午前中はね。午後からはテレビの収録。それにしても、彼は凄いよ。 毎日休まずに全力で頑張っている。ヒーローとしての素質は、きっと、私以上かもしれない。 自分に自信がない事が欠点だけど、、、」

 

楽しそうに、私がまだ見ぬ弟子君について語る。

ベタ惚れか。なんだか、その弟子君に嫉妬してしまう。しかし、そんなことを言っても仕方ないのでグッと堪えて、俊典の弟子自慢を適当に頷く。

そして、朝食を食べ終わると、俊典は普段着に、私は部屋着のスウェットに着替えた。

 

「じゃあ行ってくるよ」

 

そう言うと、俊典は家から出た。

さて、ゲームをやろうとは俊典に言ったが、うーん、やる気が起きない。しかし、暇だ。

そもそも、たまな休日くらい遊んでくれてもいいのに、いつも、弟子弟子って、酷いよね。

そんなに弟子君が好きなら、弟子君んちの子になりなさい!

 

しかし、アレだ、誰かに愚痴を言いたい。

こういう時に友だちがいないのが悲しくなる。

 

あ!

 

そうだ、弟子君に会いに行こう!

そもそも、彼の弟子、それはつまりは、次期平和の象徴だ。弟子君に接触して、相応しい人物かを見極めよう。

その時、()()()()()() ()の関係者として会えば演じるかもしれない。俊典も顔にでるから、内緒で行こう。

 

そうしよう。

 

 

眼下にはバス停の時刻表を確認している俊典がいる。それを私は7階建のマンションの屋上から見る。

弟子君の居場所なんて知らないし、俊典に内緒に行くとなると、尾行するしかない。私の尾行技術を駆使すれば、いかにNo. 1ヒーローでもバレることはない。

 

「多古場海浜公園経由、NR田等院駅行きです。」

 

バスが停まり、運転手が案内の声を流す。俊典はそれを確認すると乗った。

バスは普通のストーか……、単独の尾行調査員は嫌がる事が多い。前払いだと、対象が降りるバス停を把握しないといけない。降りるバス停が、混んでいると順番に降りていくため、見失う可能性が高い。逆に空いていても()()()()()()()と印象に残りやすくなってしまう。

だが、私の場合は違う。屋根伝いにバスを追えばなんの問題もなく尾行が可能だし、対象は外に対する死角は多くなるため、見つかりにくいと言う点ではかなり楽なのだ。

そうして移動すること数十分、海浜公園に到着した。

この海浜公園はゴミに埋め尽くされた悲しい公園だ。観光雑誌で近くに海浜公園があると書かれていたので、ここに引っ越してきた初日に俊典と2人で来た時の落胆は記憶に新しすぎる。

それはともかく、50メートル程離れた場所からゴミに隠れて観察する。私の五感は普通の人よりも優れているので、これくらいの距離ならば問題なく見れるし聞こえる。

 

「お待たせ、緑谷少年」

 

すでに、弟子君は着ていたのか俊典は軽く挨拶をした。それに応えると、すぐに弟子君はゴミの片付けをし始めた。おそらくだが、ここのゴミを片付ける事によりって全身の筋肉を鍛えているようだ。日常の動きで強くなるとか、何処かの映画みたいだ。 そのうち、車のワックスがけや、ジャケットを掛けたり落としたりとかやり始めるのだろうか?

しかし、弟子君は頑張るなぁ。

みたところ、増強系の"個性"ではないうえに、あまり筋肉のある方ではない。それなのに、その他にも俊典が考えたメニューがあるだろうに、少しも手を抜く様子はない。

普通は指導官の目の届かない場所に行ったらサボりたくなるものだ。私なら絶対にサボる。

 

それはともかく、俊典テンション高いなぁ。

なんだか、初めて例のランドに行った時の事を思い出す。最寄駅で「レッツ夢の国!」とか叫びながらマッスルフォームになったから軽いパニックになったけ。

まぁ、ともあれ、楽しそうで何よりだ。結婚した時期を考えれば私たちの間に彼くらいの子どもがいてもおかしくはない。もしかしたら彼は息子が欲しかったのだろうか?

 

「緑谷少年! 申し訳ないが、私はこれで!」

 

しばらくすると、俊典は弟子君を1人残して立ち去った。彼は午後からテレビの仕事があると言っていたから、それに向かったのだろう。

ならば、接触するのならココからだ。しかし、どうやって接触するかだ。

いきなり、「こんにちはー」は、レベルが高い。まぁ、なくはないが、微妙だ。

 

よし、ならば、、、

 

膝を抱えて体育座りで俯いていよう。

ヒーロー志望なら話しかけること間違いなしだ。

かけられなかったら、いきなりこんにちは作戦で行こう。

 

「あの、どうかなさいましたか?」

 

思惑通り、弟子君は話しかけてきた。

顔上げると、小型の冷蔵庫を抱えており、少し汗臭い。

 

「いや、少し考え事をしていただけだよ。ありがとう。 見たところゴミ掃除をしているようだけど、ボランティアか何かかな?」

 

立ち上がり、少し微笑んで見ると、

 

「いえ、そういう訳では……、掃除しているのは事実ですが、身体を鍛えるためで……。」

 

少し顔を赤らめながら答える弟子君。

私の見た目は彼と同年代か少し年上くらいだ。しかも、とびきりの美少女ときた。意識しない男子はB専くらいだろう。

 

「身体を鍛えるため、ね。 もしかして、君、ヒーローになりたいの?」

 

「……はい、そうです。」

 

目を伏せながら、彼は言う。だけど、自信なさげだ。自信の無さは向上心の原動力となるが、それが酷すぎると実力が出せなくなる。

せめて、自分の目標くらいハッキリと言えるようにならないと、、。

だけど、俊典はどうして彼を選んだのだろう? 彼が選んだのだから間違いはないと思うのだけど、理由がわからない。

もっと他に候補はたくさんいるのにね。

 

「ヒーローになる自信が無いの?」

 

「…………はい、とある人にヒーローになれると言って貰えたのですが、期待に応えられるか分からないんです。」

 

重症だなぁ。

普通、No. 1ヒーローにそんなことを言われたら自信になると思うんだけど。もしくはプレッシャー。

だけど、それより先に自信の無さが先に出てしまっている。後々の課題だな。

それより今は、申し訳ないけど、君のヒーローとしての素質を試させて貰うよ。

 

「それじゃあ頑張るしかないね。けど、たまには休みなさいな、オーバーワークは良くないよ。」

 

私はそう言うと、弟子君に背を向けて歩き始める。そして、数歩進んだ所で、わざと小石に躓いく。チラリと後ろを向くと弟子君は驚いたような表情をしている。

さて、ここからが、本番だ。私は右横にあるゴミ山に手を伸ばす。まるで、転んで咄嗟に手を伸ばしたように見えるだろう。

そして、ゴミ山の一番下の机をずらす。そのことによりゴミ山の微妙なバランスは崩れ、その上にあるブラウン管テレビが落下する。

 

さぁ、君はどうする? 後継!

 

「危ない!」

 

しかし、迷いなど無かった。

ゴミ山が崩れ落ちるのとほぼ同時に彼は飛び出し、私の背中を押し出した。

試した私が恥ずかしくなるほどの反射だ。

彼には助けないと言う選択肢がないのかもしれない。そう言うレベルの反応。さすがは、俊典の後継だ。

だが、感動し続けている訳にはいられない。私を押し出したことにより、弟子君は落下しているテレビの下になってしまった。死にはしないだろうが、私が試して怪我でもされたら俊典に怒られてしまう。

それに、公安として罪のない人を理由なく傷つける訳にはいかない。

 

左脚を踏ん張り、重心を立て直す。

 

肩を右回りに回して弟子君の方へ向き直る、

 

そして、右脚で地面を蹴る。

 

さて、ここがポイントだ。特に私の場合は何かを叫ぶ必要なんてこれぽっちも無いし、任務中は技名なんて考えてない。

しかし、たまには俊典みたいにやってみたい。

 

「すまっしゅ!」

 

テレビに向け、掌打を放つ。パンチでも良いが、アレは拳が痛いからあまり好きじゃない。そして、テレビを吹き飛ばし、弟子君を見ると、慌てて私を押した為か地面にうつ伏せに倒れていて、顔だけを私の方に向けていた。

 

「ごめんね、怪我はない?」

 

右手を差し出すと、弟子君は少し顔を赤らめて手を取った。

やはり、意識しているのか。女の子の手を握るくらい今の子なら普通にやっているイメージだったのだが、私の思い違いなのかもしれない。

 

「……はい、ありがとうございます。 すいません、助けようと思ったのですが、、、。」

 

目をそらす。

そりゃまぁ、助けようと思ったのに逆に助けられるとか恥ずかしいよね。うん、私も何度か経験あるけど、ありゃ、気まずい。昔俊典を助けようとして、いらぬお世話だった時はあのエンデヴァーに肩を叩かれた事がある。それくらい気まずいし、恥ずかしいのだ。しかし、それを乗り越えないと真のヒーローにはなれない。

 

「いえ、私こそごめんね。けど、さすがは、オールマイトの弟子、次期、ワンフォーオールの継承者。」

 

立ち上がった弟子君にそう言うと、彼は固まってしまった。

そりゃ、いきなり秘密を暴かれれば固まるのも当然だけど、こうもあからさまだと、腹の探り合いとか無理だろうな。これも、要練習だ。

 

「いえ、あの、な、な、な、ななんの、ことですか?」

 

分かりやすすぎる。

 

「HAHAHA!分かりやすいな。心配しなくても良い。君が、……オールマイトの教え子だったことは分かっている。もちろん、彼の身体のことも。 ああ、申し遅れたな。私はこう言うものだ。」

 

そう言って、警察手帳を弟子君に見せた。しかし、ここには偽名と偽の役職が書かれている。無論、偽物ではなく、警察庁から直々に貰った本物だ。役職は警部で、名前は《肉府 ユリ》となっている。

 

「け、警部? でも、なんで警察が……。オールマイト はそんなこと一言も……。」

 

警察手帳を見せると信用したのか弟子君は慌てながらそう言い始めた。信用しすぎだよ、と、思うが私自身が疑い深いので、コレが普通なのかもしれない。しかし、俊典も秘密を共有する人くらいは教えておくべきなのでは?

 

「ま、警察も一部の人間は知ってるさ。そうでなきゃ、No. 1ヒーローなんてあの身体で続けられるわけがない。 」

 

「……たしかに……、あの身体を隠すためには仲間は必要ですけど……。でも、なんで……」

 

頭の回転も早いのかな?

まぁ、猪突猛進タイプかもしれないけど、少なくともバカでは無い。

 

「なんで、はじめから声をかけなかったか、でしょ? ま、君を試すためだよ。さっきの事故は私がわざと起こした。見ず知らずの人が目の前でピンチになったらどうするのか見るためにね。ごめんね、試しちゃって。」

 

「いえ、そんなこと……。」

 

と、それから1分ほど立ち話をした。まぁ、気弱そうだが、悪い子では無いだろう。俊典の考えた練習メニューも見せてもらったが、結構な仕上がりだ。

そう思った後、何の気なしにスマホで時間を確認すると11時半を過ぎていた。

そろそろ良い時間だ。昼ごはんでも食べよう。

 

「そういえば、昼ごはんはどうする予定なのかな? もし良かったら一緒に食べない? 勿論、私が奢るよ。」

 

「いえ、そんなの悪いですよ! 」

 

と、そういう弟子君の首根っこを掴む。

弟子君の意見なんて聞いていない。パワハラかもしれないが、もう少し彼と話したい。

俊典に憧れているみたいだし、結構面白い話が出来ると思う。

 

「遠慮なんてしなくていいよ。人を試すなんてことしちゃったしね。お詫びだと思って奢らせてほしい。」

 

そう言って、弟子君を担いで地面を蹴る。

俊典ほどのスピードは出ないが、民家の屋根の上を走り車より速く移動できる。

さて、奢るとは言ったがどこに行けば良いのか……。たしか、俊典の考えた練習メニューには食事に関しても書かれていた。

どこに行けば良いのだろう?

 

「ってぇぇえええ!!」

 

って、弟子君すごい顔だなぁ。

バラエティに出れるよ、君。

店選ぶのもめんどくさいし私の家で良いか。料理には自信があるし。

 

「ねぇ、弟子君、食べれないものある?」

 

「なぁあ、いいでぇすぅううう!」

 

はは、この子面白い。

さて、ひとっ飛びで、家に着いた。

私と俊典の家は庭付き、3階建ての一軒家だ。まあ、私も詳しくないので表現の仕方が間違いかもしれないが、38LLDKだ。

38の中には、トレーニング室や、防音室など、色んな部屋がある。

共働きで、子どもなし、趣味無しの夫婦だから金だけはあるのだ。

 

「広いッ!」

 

家に着いた瞬間の弟子君の反応はこれだった。

まぁ、そうだろうな。玄関はホテルロビー並みだ。家中をキョロキョロしている弟子君を観察しながらダイニングに通した。

そこで、すぐに弟子君は親にご飯は要らないことを連絡して居た。私も一応代わったほうがいいかと思ったが切られてしまった。

 

「あ、そうだ、弟子君、食べたいものある?」

 

「いえ、特に無いですけど……、あの、僕の名前は……」

 

申し訳なさそうに訂正しようとする。弟子君。

しかし、申し訳ないが変な癖がついたしまった。俊典から名前を聞いていたが、脳内で弟子君と呼び続けてしまった弊害だ。

 

「ごめんね。出久君、俊典……、オールマイト から名前は聞いてたんだけど、頭の中で呼び方がついね。嫌だった?」

 

「別に嫌というわけでは……、自己紹介をして居なかったので、名前がわからないかと思いまして」

 

たしかに、俊典から聞いてて割と知った気で居た。あとは、自分の目で判断するだけ、みたいなつもりで、初対面ということを忘れていた。

だけど、初対面だ。まぁ、今更だが

 

「そうだった。申し訳ない。 ま、今からご飯作るから……」

 

「って、まさかとは思ってましたが、手作りですか?! 」

 

そりゃ、奢ると言ったら外食だよね。だけど、そのツッコミは家に着いてすぐするものだ。

ツッコミスキルの低さが伺えるぞ弟子君。

 

「そうだね。普段は夫にしか払わないから腕がなるよ。じゃ、適当に待っててね。そうだ、としオールマイト のファンなんだよね?」

 

「は、はい!」

 

なら、この家は退屈しないだろう。

なんせ、半分はオールマイト でできている。少し待ってて、と、言い残して部屋を後にする。そして、物置として使っている部屋から1つの段ボールを持って持って戻る。

 

「じゃ、これ見てて。たぶん、1日潰せるから」

 

この中には今では手に入りづらいオールマイト グッズが入っている。ファンならたまらない一箱だろう。

 

「こ、コレは! ヒーロー列伝フィギュアのオールマイトの初回版! コスチュームの模様が違くてすぐに直されて今じゃもう入手がほぼ不可能なのになんで?!」

 

弟子君のテンションはうなぎ登りだ。喜んでくれて持って来た甲斐があった。だけど、メインは昼食だ。出来るだけ美味しいものを作りたい。だけど、俊典が決めた食事のルールにのっとり調理を進める。

30分強かかり完成して弟子君のところに持って行くと、彼はブツブツと呟きながら箱を漁って居た。

 

何これ怖い。

弟子君を元の世界に戻して昼食を食べる。

 

「どう? 」

 

「はい、美味しいです。 」

 

そう言って彼はたくさん食べてくれた。

こういう時は遠慮するよりも、たくさん食べてくれるほうが嬉しい。

 

「「ごちそうさまでした。」」

 

さて、昼食を食べ終わり、食休みが終わった。

弟子君の午後の特訓だ。

オールマイト のメニューによると午後は走り込みや基本的な筋トレだ。走り込みも距離ではなく時間で決められている。

全力ダッシュを決まった時間まで延々とか辛すぎる。どこの体育会系だよ。

 

「じゃあ、上にジムがあるからそこでやりなよ。いつも同じ場所じゃつまらないでしょ? さすがに、夕飯まで奢らせてもらうのは親御さんに悪いから、それまでは自由に使っていいよ。」

 

「え!ジムまで……、いや、流石にそれは申し訳ないですよ。」

 

流石に遠慮するよね。

これくらいの年頃の男の子と普段絡まないから、楽しいんだけど。

しかし、ただの善意とは怖いものだ。おそらく弟子君は私がどうしてここまで良くしてくれているのか分からないのだろう。

まだ若い弟子君には分からないのだろう、若い子に話を聞いてもらえるだけで年寄りは楽しいのだ。そのためなら、どんなもてなしでもするほどにね。

というか、弟子君に帰られると暇なんだよね。

 

「いや、申し訳なくないよ。私にとって君は、ある意味息子みたいなものなんだ。つまり、こういうことだよ。」

 

スマホを操作して結婚式の日に部下に撮ってもらった写真を弟子君に見せた。タキシードを着たマッスルフォームの俊典と、ドレスを着た私の写真だ。

 

その瞬間、彼は固まった。

 

まさに目が点だ。

 

ククク、この顔が見たかった。黙ってた甲斐があった!

 

たのしー!

 

「別におかしな話じゃないでしょ? 彼だっていい歳だし、私も俊典、オールマイトよりも年上だ。」

 

「いや、確かにありえない話しじゃない……。オールマイト も少なくとも40歳を超えているし、結婚だってしても、、、。肉府さんだって、"個性"のせいで見た目と年齢が噛み合わないことなんて良くあること、というかどうして黙ってたんだ?…………ブツブツブツ……」

 

おーい、帰ってこーい、

 

「というわけで、夫の弟子は私の息子みたいなものさ。遠慮なく使ってくれ。」

 

そう言うと、弟子君はなんやかんやでうちのトレーニング室を使ってくれることになった。いやはや、嬉しい限りだ。

さて、俊典が考えた弟子君の特訓だが、かなり綿密に練られている。雄英高校の入学式に最高の状態にする計画だ。だが、間違いだ。

普通の人ならこれがベストだ。だか、まだ数時間しか話していないが、彼にはあってない。いや、そもそも彼に合う練習メニューなどかなり難しい。

 

何故なら彼は、絶対にオーバーワークをする。

 

断言できる。

今まで数百年の間、様々な人を見てきたが、この弟子君は張り切りすぎて身体を壊すタイプだ。

だが、まぁ、そそう言うのは、私、嫌いじゃない。

彼がオーバーワークをするのなら、そんなもんできないメニューを考えてやろう。毎日毎日、死ぬ寸前まで、ボロ雑巾のように詰め込んで、その日は寝ることしか出来ないほど搾り取る。

そんな練習メニューを考えてやろう!なに、受験日に全快してれば良いんだろ?

 

と、まぁ、そんなこと彼の師匠がいなきゃ何にも出来ないのだが、、、。

 

「弟子君、俊典の練習メニューでは、すでに休憩時間のはずだけど? 休まないの?」

 

「あ、はい。」

 

そんな感じに彼の特訓を見ていると、午後四時過ぎて俊典が帰ってくる気配がした。それを感じると、すぐにインターホンと彼の声が響いた。

 

「わー、たー、しー、がー、帰宅した!」

 

マッスルフォームでの帰宅だ。相変わらずうるさい。って、なんで弟子君は感動している?!

それはそうとして、俊典は家の中を移動している気配を感じられた。そして、今いるトレーニング室に入ってきた。

 

「成子、 お土産買ってきたぞ。おお、緑谷少年もいるのか! 一緒に……って、緑谷少年!なんでいる!」

 

トゥルーフォームになって吐血した。

おお、いい反応! 吐血するとは思わなかったけど、このリアクションは面白い。

 

「臨海公園から連れてきた。」

 

「なんと! 色々流石だな!成子!」

 

流石で済まされてしまった。そして、俊典が弟子君の前に移動していた。

 

「それより、緑谷少年、うちの成子が世話になった。」

 

私が世話したのだけど?

 

「いえ、お世話はされたのは僕の方なのですが……。それより、成子って?」

 

そりゃそうだよな、弟子君に見せた警察手帳には偽名が書かれてたのだから、混乱するに決まっている。

まぁ、そのことに関しては私が説明したほうがいいな、

 

「あの警察手帳に書かれているのは偽名だからね。私の存在は警察内部でも特殊でね偽の警察手帳を持たせられてるんだ。()()は八木成子ってらなっている。」

 

私の仕事は主に闇の部分、暗殺なんかも含まれる。しかし、どうしても捜査する際、警察という立場が必要で、証明するには警察手帳が手っ取り早い。そのため、(ヴィラン)や犯罪組織が警察手帳の名前から私にたどり着けないように偽名が書かれている。

また、いざ、私の存在が世間にバレた時、『彼女が持っていたのは偽物で我々警察組織とは関係ない』と、言えるようにしているのだろう。

 

「特殊って?」

 

弟子君のその言葉に応えられるものはこの場にいない。

いくら弟子でもこれ以上は話せない。一応は私の存在は極秘事項なのだ。

 

「これ以上は話せないよ。ま、私の本名は八木成子っていうんだ。」

 

この名前もある意味で偽名なんだけど。

こうして、私と弟子君は出会った。この日を境に特訓メニューを変更して、オーバーワークなんて出来ない程の、もう、家に帰ったら寝るだけ、みたいなハードークに変更した。また、彼の学力に合わせた勉強のノルマや、私直々の格闘訓練なども組み込んだ。

しかし、それでも勝手に練習量を増やす事があるから、物理的に休ませた事が度々あったけど……。

また、将来に関わることなので、彼の保護者にも挨拶もした。

流石に、ワンフォーオールの事は話せないので、私が警察関係者である事を伝え、『彼に"個性"が発言する』 ことと『ヒーローの素質がある』と話した上で私が鍛える事も許してもらった。

だけど、弟子君の母親ってどっかで見たことあるんだよね。どっかで会ったことあるのかなぁ?

それはそれとして、私と出会った時と比べ物にならないほど強くなった。

そして、ついに雄英高校の入試当日になった。

ワンフォーオールを受け継いで1週間経ったけど、制御は未だに出来ない。アレは代を重ねるごとに強くなるし、"個性"を持ってないない私にはなんのアドバイスも出来ない。彼自身がどうにかしないといけないことだ。

 

とりあえず、試験頑張れ。と、心の中でエールを送った。彼は今頃入試に勤しんでいるに違いない。

 

そして、私は絶賛、死にかけていた。

 

周囲には銃剣を構える人が数十人。年齢性別はバラバラで、未だ二桁も行かない幼女から、三桁に行くかではないかと思われる翁までいる。彼らは私を目線だけで殺せるほど睨み、たった1人の童女を庇っている。服装は皆、(多分)法衣を着ており、(おそらく)仏門に入っている事が分かる。

 

「巫女様、撃ちますか?」

 

老婆がそういうと、巫女様と呼ばれた童女は楽しそうな笑みを浮かべた。流石の私も、脳幹を撃たれれば即死だ。そうでなくても大量出血は普通に死ぬ。

 

それに、後ろに控える童女はやばい。

 

仕方がなく、両手を挙げて降伏の意思を示す。

彼らは、数年前に解体された人理教団など、"個性"を根絶やしにしようとする、過激派宗教団体の親玉的な組織だ。そして、目の前にいる巫女と呼ばれる童女こそ、長年、公安が追っている存在だ。

(つわもの) 冬美(ふゆみ)見た目は12歳ほどの童女。しかし、四捨五入すれば私と同い年という私の同類である。毎度毎度、ゴスロリや、()()の着てる服(名前忘れた)、チャイナドレスなどの、コスプレをしているが、今日は巫女服を着ている。

 

「巫女様ね、前回は聖女様だった、毎度のことだけど、アンタの宗教観どうなってるの?」

 

今回はただの潜入捜査の予定だったんだ。他のヒーローは待機していない。一般警察じゃ、勝ち目がない。無用の犠牲者を出すだけだ。

どうしよう。

 

「ま、日本人だならね。 お宮参りして、七五三、教会で式を挙げたと思ったら、葬式はお寺でしょ? 昔から節操がないのよ。いろんな考え方に寛容なようで、排他的。独特な文化が発展する一方で、()()()()()。よくわからないでしょ? だから、私はこの国が好きなんだ。」

 

ハ、よく言う。

好きなら犯罪犯すなって言いたい。けど、彼女の場合は好きだから壊すんだよね。

ああ、嫌だ。これだから、戦争は……。

 

それより、どうしよ。詰んだわ。




肉府ユリ

とある長官が名前の由来。しかし、特に意味はない。





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