Rebirth of the Flesh   作:utcm

1 / 3
プロローグ

2000年9月、京都。

ベッドの上で、一人の女が目を開けた。

 

年は若く、まだ20代。

特別彫りが深いわけでもないが、かといってアジア人とも言い切れない顔。その表情は穏やかで、どこか安堵しているかのようである。

 

 

そして、目を引くのは女性としては異様な身長―――2メートル30、いや40はあろうか。身につけた手術着から覗く腕の太さからも察するに、相当鍛え込んでいる。

 

 

女は白衣を着けた多数の人間に取り囲まれていた。彼らの表情はいずれも一様に喜びに満ちていた。

 

 

「ひとまずは成功・・・か」

 

 

穏やかさを残した声色で女が呟いた。それに反応して、白衣のうちの一人が声を上げる。

 

 

 

「本当に良かったです・・・これで様子もかなり変わるみたいですね」

 

 

「まぁそうだな・・・しかし良いのかねえ。脳死とはいえ、一度``死"を認められた人間の蘇生実験なんて」

 

 

「通常なら許されないのでしょうね。しかし我々はいま、あなたの人を超えた回復力を目の当たりにしている」

 

 

 

半ば感動すら混じった白衣の男の声に、女は静かに「そうかい」と返して上半身を起こした。

 

 

「駄目ですよ勝浦さん、まだ動いちゃあ」

 

 

白衣が慌てて止めにかかったが、その声は筋力に物を言わせて文字通りベッドから "飛び出した" 彼女には届いていなかった。

 

 

 

―――――

 

 

 

その部屋は、血と肉片にまみれていた。

床を、壁を、天井を、どこを見渡そうとも大量の血液と筋肉の破片、脂肪の成れの果てが付着していた。

 

 

部屋の中央に、少女が一人。その両手には剣が握られていた。

 

 

その場を見た人間なら、誰だってこう思うだろう。

彼女がその剣によって、室内で数人を殺害したのだ、と。

 

 

 

異様な巨躯を誇る女、(かつ)(うら)(あまね)は―――まさにその部屋の扉に手をかけていた。

 

 

「ストップ」

 

 

部屋の中から声がした。

 

 

 

「入る前に名乗りな。あと所属もだ」

 

 

「・・・後者は必要ないねえ。勝浦、といえばわかるハズだ」

 

 

 

そう言いながら勝浦は身をかがめて扉を潜った。

中央にいた少女は、即座に彼女めがけて飛びかかった。両手の剣は、正確に彼女の左鎖骨から右脇腹にかけて一直線に斬り裂く角度でロックオンされている。

一方勝浦は、自らに振るわれてくる剣を視認してからハエでも払うように左手を上に挙げた。

 

 

彼女の胴体を斜めに両断するはずの剣は、容易く払われて血まみれの床に転がった。

 

 

 

「・・・さすが、相変わらず弾かれる私の剣。五年のブランクが嘘みてぇだな」

 

 

()は毎日打ってもらった。維持は問題ないはずだよ」

 

 

「抜かりねぇ人だ」

 

 

 

そう言って剣を拾う少女に、勝浦は呆れたような視線を向けた。

 

 

 

「こんなに血肉撒き散らして・・・何やってたんだ、アリシア」

 

 

「試し切りだよ。あんたがいつ来たっていいようにな」

 

 

「あぁ・・・そうだったそうだった。久しく見てないな、おまえさんの素振りは」

 

 

「んじゃもっかい見てくかい、面白くもねぇと思うが」

 

 

 

アリシアと呼ばれた少女は、笑いながら剣を構える。すると、1メートルほど先の床から肉が生えてきた。

2秒ほどして肉が少女の背丈と同じほどに伸びると、彼女は目にも留まらぬ速さで剣を真横に振るった。肉の柱はそれに逆らえるはずもなく、切り落とされて床に落ちた。

 

 

 

「お見事。そっちも衰えてはいないようだねえ」

 

 

「そりゃどうも。あんたに褒められたって何も嬉しくねぇや、部長」

 

 

「部長ねえ・・・嫌ってワケじゃないが、その呼び名は相応しいのかねえ」

 

 

「間違っちゃいねぇだろうよ。あんたはまさしく``日本支部長"だ」

 

 

 

血と肉に囲まれて談笑するアリシアと勝浦。

彼女たちは今日を以て―――たった二人からなる機動部隊、MTFプサイ-0("野生の日々")を結成することとなる。


 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。