ダンガンロンパミラージュ~絶望の航海~   作:tonito

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・・諸注意・・

 
この作品は、現在発売されておりますPSP及びPS vita用ゲーム、ダンガンロンパシリーズの非公式二次創作となっております。二次創作が苦手な方、また理解の無い方の閲覧は御遠慮ください。

『ダンガンロンパ』『スーパーダンガンロンパ2』等シリーズのネタバレが含まれております。

 モノクマを除き登場するキャラはオリジナルキャラとなっておりますが、他の作品と肩書き等が被ってしまっている可能性があります。人によっては気分を害してしまう恐れがありますが予めご了承ください。

 流血や殺人等、グロテスクな描写を含みます。苦手な方はご注意ください



チャプター3 非日常編 ③

「犯人は……あたしよ」

 凛とした声が心臓に響く。

 振り返るとそこには女王様のような出で立ちのハミちゃんがいて、三日月のような瞳でボク達を見下ろしているようだった。

「ど、どういう意味?」

「そのままの意味よ玉村さん。遊木君を殺したのも、雅を殺したのも、あたし。全部あたしがやったの」

「あねご……サン?」

「ハミちゃん、花子ちゃんを庇いたい気持ちはわかるけど……」

「そんなつもりはないわ。あたしは自白しているだけ」

「ハミちゃんがやったって証拠はあるの?」

 ボクが訊くと、ハミちゃんは一度だけ鼻で笑ってから威勢よく胸を張る。

「もちろんよ都築君。昨日の晩、あたしはランドリーで遊木君を殺した。そしてそれを見られたから雅を殺したの。さっきの髪の毛が何よりの証拠よ。あたしの髪の色や長さと一致するはず」

 そういうとハミちゃんはバレッタを外して普段はまとめていてわからなかった長い髪を顕にする。雰囲気が変わったように見えるのは急に髪型が変わったからなのか、自白した事で肩の荷が降りたからなのかはわからない。

「ね? 同じでしょ」

「確かに。これはハミちゃん様と同じようですね」

「待って生田君。ハミちゃんはランドリーで検死をしていたんだよ? その髪の毛はその時に落ちたものかもしれない」

「残念だけど深海さん、検死をしている時のあたしは髪をまとめていたし、布も被っていたわ。検死中に髪の毛を落とす事はないの」

 答えを聞いても信じられないのか、唇を噛みながらハミちゃんの顔を見る深海さん。

 周りが疑惑に包まれる中、それを掃うように花子さんが必死に声を上げる。

「タイムデス! それちがうデス! あねごサンやってません! あねごサンはんにんなら、ダイイングメッセージ、わたしライティングしないデス!」

「そうだよな。わざわざ余計な事する必要はねえ」

「でも庇ってるのが花子さんの可能性もあるよ」

「あ?」

「ハミちゃんが犯人だって知っているからこそ、花子さんがわざとダイイングメッセージを残したって事。そうだよね都築君」

 そうだ。花子さんが共犯なのかどうかはまだ断言出来ないけれど、直接手を下したわけじゃないのなら、ダイイングメッセージを書く理由はない。

「ハミちゃん、どうして君が二人を?」

 <しゃらーっぷ!>

 

 

「おはなし、おわってないデス。あねご、はんにんノーデス!」

 

「花子さん、君はハミちゃんを……」

 

「ノー! わたしがやったデス! たちぬまサンにクライムかぶせるため、ダイイングメッセージをライティングしたデス! デス!」

 

 まったく話を聞こうとしない。これじゃあまるで駄々をこねる子供と同じだ。けれどどうにかして切り返さないと!

 

『ゆーきサンコロしたのわたしデス!』

 

『みやびチャンコロしたのもわたしデス!』

 

『あねごサン、はんにんちがうデス! ヘアーなんてショーコならんとデス!』

 

『わたしがやったデス! このフィンガーのブラッドがショーコデス! しあたサンいってたデス!』

 

『つづきサンなんてきらいデス! ビッグきらいデス!』

 

『デスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデス!!』

 

『デスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデスデス!!』

 

「話を聞いて花子さん! ハミちゃんを庇いたい気持ちはわかるよ。あのダイイングメッセージも君がこっそり書いた物だ。でも君は二人を殺してはいない!」

 

『デスデスデスデス! くだんねーデス!』

 

『わたしふたりコロしたデス! なんどリピートすればゴリカイできるデス!?』

 

『とくべつにワンモアだけリピートしてやるデス! わかったらゴーホームしてマーマのおっぱいしゃぶってスリープしな! デス!』

 

『わたしはゆーきサンをナイフでぶっさしたデス!』

 

『みやびチャンのくびをロープでしめたんデス!!』

 

 <その言葉、断ち斬らせてもらうよ!>

 

 

「で、デス?」

「花子さん、君は捜査中に云ったよね。ランドリーでは乾燥機を使ったって」

「それがどうしたデス? かんけーしデス!」

「関係あるよ。君はその時こうも云った。物干しロープってなんデス? ってね。捜査の段階で物干しロープの事を知らなかった君には指原さんの首を絞める事は出来ないんだ!」

「い、いってないデス……そんな、こと」

「いいえ。俺は確かに聞いていましたよ小さき花女神」

「フフフ、ワタシも聞いていたわ」

 夢見さんと生田君が証言する事で嘘を通す事が出来ないと悟ったのか、真っ白に燃え尽きたかのように膝から崩れる花子さん。

 やっぱり彼女は二人を殺していない。ダイイングメッセージもハミちゃんを庇ってこっそり書いた物だったんだ。

「話は済んだかしら」

 辟易とした声のする方を振り向くと、ハミちゃんは長い髪を揺らしながら腰に手を当て、その姿からは信じられないくらい事務的に事実を告げる。

「わかったでしょ? 二人を殺したのはあたしよ」

「やっぱりハミちゃんなの? そんな……どうして」

「ここから出たいからに決まっているじゃない。脱出用の船がもらえるのよ? やらない方が馬鹿でしょ」

 ハミちゃんの冷たい言葉に深海さんの顔色が沈む。

 なんだろう。今、少しだけ嫌な感情が沸いた気が……いや、冷静にならないと。

「ちがうデス……あねごサン、そんなレディちがうデス……!」

「まったく、あんたが余計な事をしなければこんな事にはならなかったのに」

「あねごサン……?」

「その姉御ってのやめてよ。もうごっこ遊びは飽き飽きなのよ」

「そんなこといわないでほしーデス。わたし、しってるデス。あねごさんはアンイージネスなとき、いつもウエストにハンドあてるデス」

「……」

 図星だったのか、花子さんの縋るような視線から目を背けるハミちゃん。

 だがすぐに腰に当てていた手を胸の前で組むと、今度はキツイ目つきをより強くして大きな声をあげた。

「とにかく犯人はあたしなの! わかったら早くあたしに投票しなさい! もう疲れたのよ。あんた達みたいな馬鹿と暮らすのもね!」

「テメェ……見損なったぞ垣子!」

「あんたに見損なわれたって痛くも痒くもないわ」

「チッ!」

 証言台を蹴り飛ばし、無言で投票ボタンを構える太刀沼君の顔にはやり切れないと云わんばかりの感情が滲み出ていた。他のみんなも同じ気持ちなのか、投票ボタンを見つめるその顔はどれも暗い。

『もういいの? それじゃあ少し早いけど、投票を始めちゃおうか!』

「ちょっと待って」

『……また君かい紫中クン。もしかしてボクのこと嫌いなの?』

「好かれていると思ってたの?」

 同意せざるを得ない反論をモノクマにすると、紫中君はボク達に向き直りゆっくりと口を開く。

「その髪の毛がある限り、この事件の犯人はハミちゃんなんだろうね。他に手掛かりがあれば別だけど、捜査中に集めた物をまとめても、覆しそうな物はなにもないから」

「フフフ、だから今から投票をしようとしているのでしょう?」

「そうなんだけどさ。皆このまま投票しても納得出来ないんじゃない?」

「何が云いたいミトコンドリア」

「まだ、謎は残ってるって事だよ。本当にハミちゃんは指原さんや遊木君を殺したのか。もし殺したのなら、どういう経緯があったのか」

「わけわかんない。あたし以外犯人はいないんでしょ? ならそれでいいじゃない。発言が矛盾しているわよ紫中君。それに、そんなのコイツが許すわけないでしょ?」

「まだ時間はあるよねモノクマ」

 唐突に尋ねられるとまるで有名な像のようなポーズをとって考えるモノクマ。でもその答えは尊厳あるポーズの割にあっさりとしたものだった。

『なくもないよ。まあボクとしてもこのまま終わるのは少し物足りないからなぁ。まだまだ議論するならやっちゃってよ!』

「だってさハミちゃん」

「……勝手にしないさい」

 なんだかどんどん話が進んでしまった。でもモヤモヤしていたのは事実だし、紫中君に感謝しないと。

「それじゃあ再開するね。さっそくだけど、どうして指原さんは夜中にランドリーなんかに行ったのかな」

「そんなの……あれ? そういえばどうしてなんだろう?」

「ね? 今度はこの事について議論をしてみない?」

「そうだね。ここまで来たらトコトン議論してみようよ。自分達が納得出来るまで」

「麗しき人魚姫のお望みとあらば!」

「云っとくけどあたしは何も云わないわよ」

「わかってるよ。ハミちゃんはそこで見ていて」

 なんなのまったくと愚痴りながら腰に手を当て顔を逸らすハミちゃん。

 なるほどね。不安な時は腰に手を当てるっていうには本当みたいだ。

 

 

 議論開始!

 

 紫中舞也

「どうして指原さんはランドリーに行ったのかな?」

 

 生田厘駕

「洗濯に行ったと考えるのが妥当だろうが、果たしてどうなのか」

 

 太刀沼幸雄

「遊木と違って水被ったわけじゃねぇだろ?」

 

 夢見縛

「フフフ、きっとチャクラを高めに行ったのよ」

 

 玉村晴香

「チャクラ?」

 

 深海紅葉

「動機が発表された日の夜にヨガなんてしにいかないよ」

 

 太刀沼幸雄

「誰か殺そうと凶器を探してたんじゃねぇか? その時に遊木を殺ってる垣子と鉢合わせしてそのまま首を絞められたんだ!」

 

 玉村晴香

「そうなのかなぁ?」

 

 紫中舞也

「指原さんが誰かに呼び出されたって可能性はどうかな?」

 

 深海紅葉

「誰かって……誰?」

 

 太刀沼幸雄

「モノクマだろ」

 

 生田厘駕

「なぜそうなるクラミジア。この場合はハミちゃん様だろう」

 

 夢見縛

「フフフ、遊木君という可能性もあるのではなくて?」

 <それに賛成だよ!>

 

 

「きっとそうだ! 指原さんは遊木君に呼び出されたんだ!」

「糸目について行く理由がわからんな。ハミちゃん様や小さき薔薇乙女ならともかく、何故愛しきウェヌスが奴に呼び出されホイホイ付いていく?」

「指原がビッチだったからじゃね?」

「太刀沼君ちょっと黙ろうか」

 深海さんの黒い笑顔に怯む太刀沼君にホトホト呆れながらボクは話を続けた。

「ほら、指原さんは昨日遊木君にお茶をこぼしちゃったよね。それで遊木君からの呼び出しを断れなかったんじゃないかな?」

「申し訳なくて断れなかったってこと? まあ、雅ちゃんは気が弱いから断れないっていうのはわかるけど」

「それもあると思うけど、一番の理由は遊木君が困っているなら力になりたいって思ったんじゃないかな?」

「話が見えねぇぞ都築」

 太刀沼君に茶々を入れられるも、スルーしながらもボクは話を続ける。

「みんなに思い出してほしいんだけど、昨日の指原さん、明らかに様子がおかしかったと思わない?」

「え? いつも通りだったと思うけど」

「いいえ、いつもより肌が荒れていましたしまばたきの回数も57回増えていました。それに歩く速さも0,11秒速くなっていましたしシャンプーの香りも弱かったです。食事の時咀嚼する回数も少なかったので愛しきウェヌスは少し気が張っていたと見受けられます」

 空気が一気に冷えたのを肌身に感じる。

 多分、今この場にいるみんなが生田君に対して同じ感想を抱いている事だろう……。

「あ~、うん。生田君の話は置いておくとして、確かに雅ちゃんの様子はおかしかったよね。なんというか必死だった」

「そうなんだ。昨日の指原さんは少しでも誰かの役に立とうと必死だったんだ。この絶望的な状況の中、自分を変えようと必死だったんだよ」

「やる気が空回っていたみたいだけどね」

「うん。紫中君の云う通りだよ。失敗ばかりで落ち込んでいる時に、自分が迷惑をかけた遊木君がわざわざ声をかけてきてくれたんだ。指原さんのその時の心情を考えたら呼び出しに応じちゃうと思わない?」

「フフフ、指原さんからしてみれば、まさに蜘蛛の糸だったのでしょうね」

 艶っぽい唇に指を添え、悪だくみをするように瞳を横に流す夢見さん。

 自分の発した言葉に興奮しているようだけど、今はそこにツッコミを入れている暇はない。

「雅ちゃんが一生懸命なのはわかったよ。でもどうして遊木君が指原さんを呼び出す必要があるの?」

「それは……」

 ついに来た。

 ボクの推理が正しければきっと……でも、云っていいのか? これが間違っていたら、ボクは遊木君に対してすごく失礼な――

「都築君。何を心配しているのかは知らないけど、遊木君はもうこの世にいないんだよ」

「紫中君……ごめん」

 やっぱり紫中君には全部お見通しか。でも不思議と不快感はない。また助けられちゃったな。

「遊木君は……最初から指原さんを殺すつもりだったんだ」

「そんな……!」

 信じられないとばかりに口を手で覆う深海さんを尻目に、ボクは話を続ける。

「捜査中に遊木君の客室を見たんだけど、客室は酷く荒れていたよ。最初は誰かと争ったのかとも思ったけどあれは……物に八つ当たりした様な状態だった」

 そう、梶路さんがオシオキされた後のボクのように。

「きっと遊木君は初めて目が覚めた時から不安で仕方がなかったんだ。誰よりもこの船から出たくてしかたなかったんだよ」

「そんな時に現れた動機が、脱出用の船だった。当時の遊木君の心中を察すれば、喉から手が出る程欲しい代物だっただろうね」

 足りない言葉を補うように紫中君が発言すると、腕を組んだ生田君が鼻で笑う。

「ただの臆病者だったというわけか。実にくだらんな」

「遊木君は指原さんをランドリーに呼び出して殺そうとした。けれど、逆に殺されてしまったんだ」

「ハミちゃんにだよね」

「待って。都築君は逆にって云ったよね? それってつまり……雅ちゃんが遊木君を?」

「なん……だと……?」

「いやいや無理だろ。あの指原だぜ? 殺されるならともかく殺すってそんな馬鹿なことあるわけねぇだろ?」

「もちろん、そのまま遊木君を返り討ちにしたわけじゃないよ。そうだよね? ハミちゃん」

「……なんのことかしら」

 ボクの言葉から逃げるように顔を背けるハミちゃん。やっぱりそういう事か。

「ランドリーに髪の毛が落ちていたけど、あれって遊木君に髪を引っ張られたり、掴まれたりしたからじゃないの?」

「どうしてそんな事云えるのよ。あれはあたしが遊木君を殺した時にたまたま落としたものよ。髪の毛の一本や二本、普通に生活してたって自然に落ちてるものよ」

「違う。君は指原さんを追ってランドリーに来た。そして遊木君に襲われる指原さんを助けようとしてそして――」

「勝手な事云わないでッ!」

 強い口調でボクの言葉を遮ると、ハミちゃんはさらに怒りの籠った言葉を畳みかける。

「随分突拍子のない妄想ね! 都築君あなた物語を作る才能ないわ! 今までの流れでどうしてそんな話になるわけ!? あまりに荒唐無稽よ!」

「荒唐無稽なんかじゃない。話を続けるよ? ハミちゃんが遊木君に襲われている時……そうだね。例えば馬乗りになって首を絞められていたりした時に、ハミちゃんを助けようとした指原さんが背後から遊木君を刺し殺した。そして自分のやった事に耐えられなくなった指原さんは自分で――」

「うるさいッ!!」

 顔を真っ赤にしたハミちゃんが再びボクの言葉を遮る。

 でもボクは怯まずに、さっきから証言台の上で涙を堪えて震える花子さんの胸をさらに壊すような言葉を投げつける。

「ねえ花子さん。君は知っていたんじゃない? 直接事件に関わってはいなくても、ハミちゃんと指原さんの間にこういう事があったって事。だから君は急にダイイングメッセージを作った。ハミちゃんを助けるために。」

「う゛ぅ……うぅうぅうぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「違うって云いなさいお花。あなたはなにも見てない。なにもしていない。なにも聞いてない」

「わた……わたし゛は……」

「花子さん。正直に云ってほしい。このままハミちゃんを悪者にして、一方的にオシオキされていいの?」

「紫中君まで何云ってんのよ。いい加減にしてよ! お花、違うって云うの。悪いのは全部あたし!」

「……そうデス」

「そうよお花! わかったでしょ? 悪いのは全部あたし。二人を殺したのはあた――」

「雅チャンは……しにました。くびをつって」

「お花ァッ!!!!」

 ハミちゃんの怒声が暴風のように響く。

 何かあるとすぐに怒るハミちゃんだけど、ここまで大きな、明確な怒声を聞いたのは初めてだ。ボクの推理は当たってしまったんだ。決して当たってほしくなかったこの推理が……。

「おい都築どういう事だよ。実際どっちが本当なんだよ……?」

「もうわけがわからないよぉッ!」

「まずはゆっくり教えて。どうして遊木君を殺したのが指原さんで、その指原さんは自殺したの? ハミちゃんはどうして自分が殺したって云うの?」

 深海さんがボクの顔をじっと見る。額にはわかりやすく汗が浮いていて、眉をひそめている。

「そうだね。それじゃあ最初から振り返ろうか。この事件の真実を……」

 

 

 

 クライマックス推理!

 

「事件が起きたのは昨夜。指原さんは遊木君に呼び出された。

 殺されるかもしれないと思いながらも、誰かの役に立ちたいと思っていた指原さんは意を決して呼び出しに応じた」

 

「そして遊木君は自動販売機で凶器を手に入れた後ランドリーで待っていると指原さんがやってきた。

 遊木君にはわかっていたんだろうね。今の指原さんなら絶対に呼び出しに応じるって。

 最初に遊木君は共闘して誰か殺さないかとか云って誘ったんだと思う。でも指原さんはその誘いを断った事で遊木君に腹部を刺されてしまったんだ。

 指原さんを誘ったのは断られた時に一番殺しやすいって理由もあったのかもしれない」

 

「でも遊木君にとって誤算だったのは犯人の存在だ。

 指原さんと遊木君の異変に気付いた犯人は二人を追い、殺されそうになった指原さんを助けようと遊木君を突き飛ばすか殴るかして襲ったんだ。

 これに逆上した遊木君は今度は犯人を殺そうとしたけど、その隙を突かれて逆に殺されてしまったんだ。指原さんにね」

 

「一階の客室からシーツを持ってきて指原さんの応急処置をした後、犯人は遊木君の遺体に凶器のナイフを突き立てて、洗濯機に詰める事で遺体と凶器を一時的に隠した。

 それから指原さんと別れたけど、犯人はどうしても指原さんの事が気になって客室に向かい、中に入ったんだ。

 でも時すでに遅し。指原さんは浴室で、ランドリーから持ってきた物干し用のロープで首を吊って亡くなっていたんだ」

 

「それを見た犯人は急いで指原さんを下ろして救命措置を取ったのだろうけどもう手遅れだった。花子さんはこの時にたまたま目撃して、全てを悟ったんじゃないかな?

 そして二人で指原さんの遺体の後処理をした後、犯人は物干し用のロープをランドリーに戻し、その隙に花子さんはこっそりとダイイングメッセージを残したんだ」

 

「わざわざ指原さんを助け、短時間で遺体の後処理が出来る人物。それが出来るのはハミちゃん、君しかいないんだ。これが事件の真相だよ」

 

 

 ボクの告げる最悪な真相にみんなが動揺を隠せない中、冷静に話を聞いていた生田君が反論する。

「待てプランクトン。吉川線とは、首を絞められて抵抗する事でつく傷だぞ。もし首を吊って自殺したのなら……いや、そうか。そういう事か……」

「なに? なにがわかったの厘駕くん!」

「愛しきウェヌスは、自殺に失敗している」

 生田君の口から洩れた残酷な真実。

 それは、今までにないくらいの動揺という渦にみんなを巻き込んだ。

「どういうこと? ああ、頭が……これは、まさか虚ろなる者の生み出した霧」

「失敗ってなに!? なんなの!?」

「そうだぜ!? 指原はちゃんと死んでんじゃねぇか!」

「とことん馬鹿だなキサマは。いいか? 首吊りは自殺の中でも比較的楽で苦しまずに逝ける方法だ。だが普段から自殺癖があるならともかく、素人がその場の勢いで行って成功する程簡単な物ではない」

「もっと、詳しく教えて」

 吉川線の時とは違い、真剣な表情で生田君に尋ねる深海さん。

 生田君は後悔しないかと云わんばかりに一瞥するも、すぐに目を伏せてゆっくりと口を開いた。

「首吊りとは、頸動脈洞を圧迫された事で起こる頸動脈洞反射により急激に血圧が低下する事で意識を失うものです。これにより僅か数秒で意識を失う為に苦しまずに出来る方法と云われているのですが、実際苦しまずに死ぬには余程高所から飛び降りる等強い衝撃を与えないといけません。ですが何かの拍子に角度がずれたり、紐の縛りが緩かったりすると途中で意識が戻る事があるのです。

 愛しきウェヌスの体重は身長に比べて軽く、また自殺をしたのは滑りやすく不安定な浴室。しかも大量に出血もしていて意識は朦朧としていた事を考えれば、締まりが悪く途中で意識が戻ってしまってもおかしくはありません。そうなった場合、自然に紐が緩めば良いですが、逆に紐が強く絞まったりしたら――」

「ああああああああああああああああああああああああッ!!!!」

 ダムが崩壊したかのように泣き叫ぶ花子さんの声がボク達の心を掻き毟る中、ただ独り、重く口を開く人物がいた。

「まだ……まだよ」

「ハミちゃん!」

「ありえないのよ……なにお花の話を真に受けているわけ? 雅が自殺? そんなわけない! あの子はそんな弱い子じゃないッ!!」

 今にも泣きそうな顔で必死に声を振り絞るハミちゃん。

 何が君をそこまでさせるんだ……。こうなったら、とことんぶつかり合うしかない!

 

 

 

『雅が自殺? わけわかんないんだけど!』

 

『あの子はあたしが殺したの。随分慕ってくれてたから殺すのは楽勝だったわ! あれなら期末テストの方がよっぽど難しいわよ!』

 

『それにね都築君。あの子は本当に強い子なの。この中の誰よりも強い子なのよ! そんな子が自殺なんて選択を選ぶわけがないのよ!』

 

「指原さんは確かに強い女の子だ。それはボクもわかってる。でもねハミちゃん。指原さんが自殺したっていう証拠はちゃんとあるんだ」

 

『証拠が何よ!? あたしが証拠よ!』

 

『姐御のあたしがあの子の事を一番わかってる。これ以上の証拠はないわ!』

 

「ハミちゃん。君は指原さんの事を庇っているんだろ? だからそんな強がりを云っているんだ!」

 

『あんたバカぁ!?』

 

『何が強がりよ! あたしの事なにも知らないくせに! 雅の事なにも知らないくせにぃッ!!』

 

『あたしは誰も庇ってなんかない!』

 

『あたしが雅を殺したのッ!』

 

『だから首を吊った証拠なんてどこにもないの! この手で直接首を絞めたんだってばぁッ!!』

 <それは違う!>

 

 

「ハミちゃん。君は今証拠は無いって云ったね?」

「そうよ!? だから何よ!?」

「浴室のテンションポールにあったんだよ。まるで何かで擦ったような、小さな傷がね」

「ンう……ッ!?」

「それに浴室の床が濡れていたんだよ。指原さんは夜中のうちに亡くなっていたはずなのに、まるで朝方掃除をしたようにね」

「そ、それは……」

 あからさまに身をよじるハミちゃんにボクは最後の言葉を刺す。

「指原さんは浴室で首を吊って亡くなっていた。それを早朝に見つけたハミちゃんはすぐに指原さんを下ろして救命措置をしたけど手遅れで、せめて自殺した証拠だけでも消そうと浴室を掃除をした。爪が綺麗だったのは身体を綺麗にしてあげたからだよね。違うかな?」

 ボクが尋ねるとハミちゃんは血が滲む程強く唇を噛み締めるも、それ以上何も言葉が浮かばなかったのか、腕を組む足を組むでも腰に手を当てるでもなく、まるで糸が切れたかように肩を落とした。

「そうよ。都築君の云う通り。あたしを助けようとして雅は……遊木君を殺した。そして、自分で命を絶ったのよ」

「おい待てよ。それなら、垣子は別に悪くねぇじゃねぇか」

「フフフ、遺体の後処理をしたから自分が犯人だなんてありえないわ」

「ハミちゃん、自分を責めるのはやめよう? ハミちゃんのせいじゃないよ。気持ちはわかるけど、自分の命を投げ出すような事しちゃ駄目だよ」

 みんなの云い分は尤もだ。

 ハミちゃんはなにも悪くない。悪くないんだ。でも――

「違うのよ。雅は……あたしが……あたしの言葉のせいで自殺したのよ……!」

 

 

 昨日の夜、あたしは無性にお腹が空いて1階の自動販売機に向かったの。今思えば、あれは危険を察知するサイレンみたいなものだったのかもしれないわね。

 自動販売機に行くとそこには遊木君がいて、声をかけようとしたらナイフのような物を持っているのが見えたから、あたしは咄嗟に近くの壁に隠れたの。

 その時の遊木君の様子はあきらかにおかしかったし、このまま殺されると思った。

 でも彼はあたしの方には来ないで、何故かランドリーの方へ向かったの。そしたらその後を追うように雅がやってくるじゃない。全身に汗が滲んだわ。

 正直そのまま逃げたかった。きっと勘違いだ。明日になれば二人はいつも通りにレストランにいるに違いないって……でも、あたしの足はランドリーに向かっていたわ。

 

「あの、私に用事ってなんでしょうか? も、もし夕食の時の事でしたら謝ります。すみません」

「あぁそれはええんや。ちィと聞きたいことがあってな」

「聞きたい事……ですか?」

「指原自分……誰かの役に立ちとォ思ってるってホントか?」

「あ、はい。こんな私でも、何か出来る事あったらって……その、変わりたくて」

 

(変わる? なにを話しているのあの二人……)

 

「ほお? それはまたなんでや」

「私、自分に自信がなくて。ブスだし、トロいし、冷え症だし、数学も得意じゃないし、生理は重いし……でも、姐御さんや花子さん、それに皆さんと触れ合えて、少しでも変わりたいって思ったんです。さ、先の見えない絶望的な状況の中でも、一生懸命に生きようとする皆さんと少しでも一緒になれたらって」

 

(雅……あんたそんな風に思ってたの? バカねぇ……あんたは十分強いわよ。あたしが太刀沼君と揉めたとき、必死になって止めたのはあんなじゃない)

 

「なるほどなぁ。それはええ心がけや」

「あ、あ、ありがとうございましゅ! でも、結局今日も失敗ばかりで……ああ! 遊木さんの御召物をすみませんすみませんっ!」

「だからそれはええ云うとるやろ。せやなァ、それなら丁度ええなぁ」

「あの、それはどういう……?」

「なぁ指原。誰でもええ。ここに連れてきてくれへんか? そしたら一緒に連れてってやってもええで」

「す、すみません。話がよくわかりません。やっぱりダメですね私。遊木さんのお話も理解できないなんてやっぱり――」

「ならわかりやすぅ教えたるわ。わいの殺人に手ぇ貸せ。そしたらあの船に自分を乗せたる。自分かてこんなとこ早ォ出たいやろ?」

 

(あいつ何云ってんの!? 雅を共犯にしようだなんてそんな事……!)

 

 すぐに飛び出したかったけど、あたしの足は云う事を聞かなかった。情けない事に怖気づいて皆を呼びに行く事すら出来なかったわ。

「そ、そそそそそそそんなの無理ですよぉ! ど、どうしたんですか? なにか、悩みがあるなら聞きますよ? わた、私に何が出来るか、わかりませんけどぉ……と、とにかく、だだだ誰かを殺すなんてだ、だめ、ダメですよぉ!」

「そうか。やっぱりあかんか……」

「そ、そうです! や、やめましょう? 私、今日の事は黙ってますから。違う形で、今度遊木さんのお手伝いしますから」

「なら死ね」

 

(……ッ!)

 

 隠れてて見えなかったけど、遊木君の持っていた凶器が雅を刺したのはすぐにわかったわ。聞こえてくるのよ。痛い……怖いって……。でも、あたしは動けなかった……。

「はは、はははは! ホンマにアホやなぁ指原ァ! あのまま媚売っとればこないな目ェに合わな済んだのに!」

「どうして……どうして……」

「出たいからに決まっとるやろ? こないなキラキラした洋風な場所、わいは好かんのや。温い布団で寝たいんや。ガキ共の笑顔が見たいんや。御袋の作る味の薄いうどんが食いたいんや。もう一度日本文化に触れたいんや……。もうずぅ~っと我慢してたんやぁあ。

 それなのに、事件はどんどん起きる。しかも事件を起こしたのは成宮と梶路やろ? 殺される側や思うとった奴らが事件を起こしとんのに、わいは機会を逃してばかり……おかしいやろこんなの? なあ? おかし思わへん?」

「痛い……熱い……ひっく……どうしてぇ」

「そりゃ刺されたから決まっとるやろ。でも安心せぇ……今、楽にしたる」

「…………助けて」

「雅から離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」

「ッふう゛!?」

 動けなかったはずなの……はずなのに、気付いたらあたしは、遊木君を突き飛ばしていたわ。どうやって飛び出したのか未だにわからないけど。

「あねごさん……?」

「大丈夫よ雅! ほら、肩を貸すから早く逃げましょう! 皆を起こして助けを呼ぶの!」

「させるかボケェッ!!」

「きゃっ!」

「姐御さん!!」

 あたしは遊木君に押し倒されて首を絞められた。死ぬと思った。意識は朦朧としてきたし、体の中が痺れるような感覚も覚えてる。もうダメだって思った時、急にあたしの首を絞める手の力が緩んだの。見るとそこには、泣きながら遊木君の背中を刺し続ける雅の姿があったわ。

「離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……」

「やめなさい雅……やめなさい……」

「離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……離れろ……」

「やめなさい! 指原雅ィッ!!!!」

「……姐御さん? 私……あれ? あ、あ、あ、ああ……あの、これは違うんです! これは……あの!」

「わかってる。ありがとう雅」

「姐御さん……う、う、うぅわぁああぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」

 

 

「とりあえず手当は済んだわ。応急処置だけど」

「いえ、ありがとうございます」

「遊木君の遺体はとりあえずこの中に隠しておくとして、問題はその後ね」

「すみません。私が、私のせいで……」

「いいのよ。後はあたしに任せておきなさい」

「わ、私も手伝います!こうなったのは私のせいですし、それに!」

「いいからッ! ……雅は休んでなさい。あんたはなにもしなくて良い。何もしないでいいのよ」

「でも私……変わりたくて……誰かの為に……なりたくて……。お、お願いします! あ、そうだ! わ、私自首します! そうすれば姐御さんはなにも――」

「何もしなくて良いって云ってるでしょ!? 変わらなくていいのよ。あんたはそのままで良いの。お願いだから……何もしないで」

「…………はい。わかりました。なにもしません。私は…………もうなにもしません。すみません。すみません。すみません。すみません」

 それから現場の血やら凶器やらを片づけて、あたしは雅を客室まで送って自分の客室に戻ったわ。

 シャワーを浴びて血の匂いを落としてから横になったけど、胸騒ぎがして眠れなかったの。あんな事があったばかりだから興奮しているのかと思ってたけど、胸騒ぎがどんどん強くなっていくのに気付いたあたしは急いで雅の客室に行った。

 ドアを開けようとした時に鍵がかかっているのを確認した瞬間、胸騒ぎは警鐘のように鳴り響いた。無理やり鍵を壊して客室の中に入ると、雅は、浴室で首を吊って亡くなっていたわ。

 その時気付いたの。雅は……あたしの心ない言葉のせいで自殺したんだって。

 

 

「ね? だから悪いのはあたしなの。あたしが、雅の心を殺したのよ……」

 真実を聞いた今だから思う。こんな悲劇があっていいのだろうか。

 あれだけ仲の良かった三人が……こんな、こんな悲しい結末を迎える事になるなんて。そんな事あって良いのだろうか。ボクはとんでもない事を――

「ンなわけあるかッ!」

 高波のように広がる轟音。

 それは証言台を飛び越えハミちゃんの胸ぐらを掴む太刀沼君の物だった。

「何言ってんだテメェ!? そんなもん、勝手に自殺した指原が悪ィだけじゃねぇかッ! 悲劇のヒロインぶってんじゃねぜぞボケッ!」

「そ、そうだよ! そんなのありえないよ!」

「自分を責めるのはよくないよ……不幸が重なっただけだよ」

 意気消沈するハミちゃんにみんなが希望の声を投げかける。

 でもそれは、奴の何気ない言葉によって打ち消された。

『果たしてそうかなぁ?』

「あ゛あ?」

『この現代において、言葉も立派な凶器だよ。ほら、誰かの他愛ない一言で自殺する人なんていっぱいいるじゃない。ニュースとかでやってるでしょ? そんな時、みんな口を揃えてこう言うんだよ。そんなつもりはなかった。本気にすると思わなかった。俺は悪くない。あいつが弱いのが悪いんだ。……うぷぷぷ! 結局は人のせいにして自分の罪から逃れたいだけなのにね。君達だって二回も学級裁判を経験していればわかるでしょ? 言葉って云うのは時にどんな物理的な凶器よりも破壊力がある……ってね♪』

「知るか! 人のせいにして何が悪ィんだ! 細けぇ事は俺にはわかンねぇ。けど、勝手に背負いこんで勝手に死ぬそいつらが悪ィに決まってんじゃねぇかよ! 嫌ならやり返せば良いんだ! それが出来ねぇならさっさと逃げる。それで良いンじゃねぇのかよッ!?」

『うぷぷぷ。君は骨の髄までイジメっ子なんだね太刀沼クン。そういうところは嫌いじゃないよ?』

「ウゼェんだよ! いいか垣子? テメェは悪くねぇ。悪いのは全部指原だ。だから自分を犠牲にするなんてカッコ悪ィ事はやめろ。な? 何なら俺様がパーッと――」

「ありがとう太刀沼君。でも、それ以上はやめて。自分が情けなくなってくるから」

「……なんだよそれ。なんなんだよそれはよぉッ!!!?」

 ハミちゃんから手を離し、パニックを起こしたかのように頭を掻きむしる太刀沼君。

 そんな彼を嘲笑うかのように、モノクマは鼻息を荒くしながら事を進める。

『さあさあ! みんなは一体誰に投票するのかな? 今回に限り、合っていようが合っていまいが投票数の多い人をオシオキします! うぷぷぷ! あ〜楽しみだなぁ! 楽しみだなぁ!! 一体どんな結果になるのかなぁ〜? うぷぷぷ! うぷぷぷぷ!』

 みんな投票ボタンに手をかけるも、その顔は困惑したままだった。

 それもそうだ。こんなどっちつかずの投票じゃあ、罪の意識に囚われてしまう。

 これならまだ真実が明らかにならなかった方が……。

「皆、僕の話を聞いてもらえるかな?」

「紫中君?」

「今回の学級裁判は異質だ。ルールに則るなら、本来ならありえない結果だと思う」

 紫中君の言葉にみんなの表情に影が差す。

「でもね。こうなったのは僕達全員の責任だ。遊木君にしたって、指原さんにしたって、ハミちゃんにしたって、花子さんにしたって、僕達がもっと早くに気付いてあげられていたら、こんな事にはならなかったと、僕は思う」

「難しい話してんじゃねぇよッ!? 責任ってなんだよ……知らねぇよ……。ならどうすれば良かったってんだよ!? なあ! 紫中ァッ!?」

「残念だけど、太刀沼君のその問いには誰も正しい答えを出せないよ。でも、だからこそ、逃げちゃダメなんだ。どんな形であれ、選択して、どんな結果が出たとしても、全て背負う事が、僕達の犯した罪に対するせめてもの罪滅ぼしになるんだ」

 そう云うと紫中君は、無言で投票ボタンを押す。

 誰を選択したのかはわからない。でも、それが引き金になったかのように他のみんなも次々にボタンを押した。もちろんボクも。

 スロットが嫌な音で鳴き始める。

 僕達の顔が次々と流れるその時間はとても長く感じた。

 そして、そこに揃ったのは…………。

 

 


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