この作品は、現在発売されておりますPSP及びPS vita用ゲーム、ダンガンロンパシリーズの非公式二次創作となっております。二次創作が苦手な方、また理解の無い方の閲覧は御遠慮ください。
『ダンガンロンパ』『スーパーダンガンロンパ2』等シリーズのネタバレが含まれております。
モノクマを除き登場するキャラはオリジナルキャラとなっておりますが、他の作品と肩書き等が被ってしまっている可能性があります。人によっては気分を害してしまう恐れがありますが予めご了承ください。
流血や殺人等、グロテスクな描写を含みます。苦手な方はご注意ください。
重い空気が充満する学級裁判。
みんながやり切れない思いに胸を痛めていると、この空気を作るきっかけになった人物である成宮君が死んだ魚のような目でモノクマの方を見る。
「早く処刑を行ってくれ……覚悟は出来た」
『うっぷっぷっぷ! ワックワックドッキドッキ! オシオキタ~……あ!』
「……どうした?」
『ごめ~ん。あの壺の弁償なんだけどさぁ、まだ足りなかったよぉ!』
「なにが足らぬと云うのだ。しっかりお前が云うだけの額は払ったではないか?」
『あの壺ってさ、ボクが丹精込めて作った物なわけじゃん? それを壊された時、ボクの綿菓子のようなハートがズタボロにされたんだよね』
「……何が云いたい」
『だからさ、慰謝料だよ慰謝料! ボクのべっこう飴のようなハートがブレイクしちゃったわけよ。精神的苦痛だなんだいろいろ受けちゃったわけよ。でも、君にはそれを払うだけのお金はもうないわけよ。この意味……わかる?』
「?」
『子供が払えない分は親に支払ってもらわないとね……命で』
親の命。
その言葉に成宮君の瞳に光が灯る。だがその光は希望に満ちたものではなく、絶望に満ちたものだった。
「な、なんだそれは!? 父上は関係ないだろう! そもそも命で支払うとはどういう意味だッ!!」
『世の中お金で解決しない事もあるんだよ! あ、今の名言っぽくない?』
「ま、待ってくれ! 俺はオシオキを受けるそれで良いではないか! な、なんなら父上の分まで俺がこの身で受ける! だから……だから父上に手は出さないでくれ! 大切な家族の命まで奪わないでくれぇッ!!」
『それじゃあ改めて始めるよ! オシオキタ~イム!』
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」
GAME OVER
ナルミヤくんがクロにきまりました。おしおきをかいしします
鎖に引きずられ、穴に落とされ、このまま死ぬのか思いきや、そこに広がるのはなんともファンシーな場所だった。
色とりどりの電飾に照らされた眩しい部屋にはたくさんのぬいぐるみが敷き詰められ、周りがガラス張りな事を除けば絵本の世界にでも紛れこんだような気にさせられた。
「こいつらのおかげで、俺はあの高さから落ちてもケガを負わなかったのか……」
左手を目の上にかざしながら、自分が落ちてきたであろう穴を見上げていると、このファンシーな世界とは不釣り合いな円盤状の機械が目に入る。
「なんだ、あれは……?」
円盤状の機械にはここと同じか、それ以上の電飾が施され、左右から伸びた銀色のアームが不気味な輝きを放っていた。
「あの機械はどこかで……おお?!」
当然大きく揺れた為にバランスを崩し、敷き詰められたぬいぐるみの上に手をついてしまう。
覚束ない足取りでなんとか立ち上がると、背後でなにかが蠢く気配を感じた。
「これは……まさか!?」
振り変えると、上空にあったはずの円盤が降り下ろされていて、銀色のアームが自分の足元にあったぬいぐるみの脇腹を貫いていた。
脇腹から泡のように溢れる白い綿。
もしバランスを崩していなかったら、そこに溢れていたのは自分の腸だった事だろう。
己の臓物が溢れ出るのを想像し、自然と脇腹を押える手に力が入る。
「こんな所で殺されてたまるか! 俺は戻るんだ。戻って、父上を奴等から救い出すのだ……!」
母を早くに失くした幼い俺を、男手一つで養う為に夜遅くまで働いていた父上。
自然とすれ違いが多くなり、会話をする時間もどんどん減っていく中、その詫びにと買ってくれたのがあの超合金ロボだった。
――早く一人前になって父を楽にしてあげたい。
その一心で勉学に励み、その傍ら始めた株が偶然成功した事で俺は一躍大金持ちとなった。
それからというもの父と共に金持ち生活を堪能し、ここぞとばかりに様々な物を買い占めていたら、いつの間にか超高校級の収集家とまで呼ばれるようになっていた。
だが一度欲に溺れた者というのはなんとも惨めだった。
あれだけ仕事熱心で倹約家だった父が、毎晩ギャンブルと女遊びに耽る駄目人間となり、その姿に落胆した俺は、通帳だけ手渡して父上を家から追い出してしまった。
それから父を思い出す物は全て捨てた。
捨てたつもりだったのに、あの超合金ロボだけは何故か捨てる事が出来なかった。
この超合金ロボがあれば良い。
大好きだった頃の父上との思い出がここにあるんだ。
あんな男は父上ではない。
あれは偽物だ。レプリカだ。出来の悪い粗悪品だ。
そう思っていたハズなのに……。
人を殺してまで守ろうとしたハズなのに……。
気付けば……その超合金ロボの事をすっかり忘れていた。
「来い! 引き裂けるものならやってみろ! そのアームが壊れるまで、絶対に逃げ続けてやるッ!」
しばらくの静止の後、狙いを定める様にアームを広げた円盤が電飾を輝かせながら頭上に振り下ろされる。
俺はそれを避ける。 躱す。 避ける。
金色に輝くスーツや高級な革靴を脱ぎ捨て、身軽な格好になった俺はアームの攻撃を全て紙一重のところで逃れる。
呼吸は荒く、シルクのシャツは汗で張りつき、肩まで伸ばした自慢の金髪も原型を留めていないだろう。
鼓動が速くなり、全身の血流が沸騰しているかのように体が熱い。
これならいける。
この調子なら、俺は逃げ切る事が出来る!
数年ぶりに会う父上はどんな姿になっているだろうか。
未だに女とギャンブルに溺れているのだろうか?
金を使い尽くし、どこぞの公園でホームレスでもしているのだろうか?
どうだっていい。父上に会えるのなら、全ての私財を投げ打ったって構うものか!
おお、右のアームがグラついている!
次の攻撃を退ければあのアームはきっと壊れる! そうなれば、後は時間の問題だッ! さあ来い! 早くそのアームを降ろすの……だ?
何故だ。
何故足が動かない。
まだ俺の体力は十分にある。打ち身はあるが、動けない程ではないはずだ。一体なにが……なっ!?
足元を見ると、そこには屍のようになった無数のぬいぐるみが蠢いていた。
俺がアームから退く為に犠牲になっていたぬいぐるみ達が、俺の足を掴んで離そうとしない。
「頼む! その手を離してくれ! 俺はこんな所で死ねないのだ!? ここから出たらお前達の供養は必ずする! だから! 頼む! 頼むからッ! 頼むから離してくれええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!」
鋭利なアームが成宮の体を挟む。伸ばす。引き裂く。
ガラス張りのファンシーなその場所は、一瞬で臓物だらけの地獄絵図となった。
『エクストリィィィィィィィィィィィィィィィム!!!!』
「きゃああああああああああああああああああああああああ!!!!」
「嫌……こんなのって……」
「うぅ……ッ」
ボク達の目に映ったもの、それは、巨大なアームによって切断され、血塗れのぬいぐるみの上に転がる赤黒い肉塊だった。
寺踪さんの時とは違い、残酷に処刑される姿を生々しく見せ付けられたのだ。
過度のストレスに耐えきれなくなったボクの脳が、悶え苦しむように全神経を掻き毟って胃の奥の物をぶち撒けろと催促をする。
でもボクは耐えなければならない。
こうなる事をわかっていて成宮君を指名したのだから、楽な道に逃げていいわけがない。
『ん~♪ この感じ堪らないよ! どうどう? 絶望した? みんな絶望したよね?』
「なんで、こんな事するのよ……」
『はあ?』
「なんでこんな事するのかって云ったのよ!? 確かにあいつは寺踪さんを殺した! それは許せる事じゃない! でもだからって、ここまで残酷な事しなくてもいいじゃないッ!」
ハミちゃんの悲痛な叫びが学級裁判の場に響き渡る。
だがそれは、モノクマの心を動かす事はなかった。
『なんでもハンデもないよ。人を殺したんだよ? 当然の報いだとボクは思うけどねぇ?』
「だからそういう事を聞いてるんじゃ――」
「そこまでにしましょうハミちゃん様」
興奮しながら掲げられた拳を生田君が背後から掴む。
「……なによ。殺すって云ったでしょ?」
「それはいつでもお待ちしています。ですがハミちゃん様、今は引くべきかと」
「なんでよ! こいつは、こいつは……ッ!」
背後で紳士的に微笑む生田君を尻目に睨みながら、ハミちゃんは掴まれていないもう片方の手でモノクマを指差す。
「確かにこの雑巾の事は俺も不快です。今すぐにでも海の藻屑にしてやりたい所ですが……云っている事は間違っていません」
「なによ……あんたも成宮君が死んで当然だと思っているわけ!?」
「ええ。俺からすればY染色体を持っている者は全員死んでも構わないと思っていますが……おっと、話が逸れましたね。俺が云いたいのは、今その言葉を、あなたが云うべきではないと云う事です」
「どういう意味よ」
「もうお忘れですか? ハミちゃん様も、理由はどうあれ俺達を皆殺しにしようとしたではありませんか」
まるで世間話をするかのように云う生田君の言葉に、ハミちゃんは顔を青くしながら瞳孔を開く。
「もちろん、あれは自分が疑われない様に精一杯抗った故と云うのはわかりますよ。無様にも生に縋る姿はとてもヒトらしくて素敵でした。ですが、そこのプランクトンや俺が死ぬだけなら構いませんが、他の女神達まで巻き添いにされるとなっては話は別です」
歪な刃に何度も心を抉られたハミちゃんは、何も云い返せない悔しさに唇を噛みしめてそのまま俯いてしまった。
「わかっていただけたようで嬉しいです」
ハミちゃんとは反対に爽やかな笑顔を浮かべる生田君は掴んでいた拳をゆっくり離すと、女性陣一人一人に一礼しながら一人エレベーターに乗り込んだ。
皮肉にも突き付けた刃を倍返しされる事になった彼女にボクはどういう言葉を掛けるのが正解かわからず、生田君の背中を睨む事しか出来ない自分の無力さに嫌気がさした。
『茶番は終わった? じゃあ改めて感想を……どうどう? 絶望した? 絶望したよねぇ?』
「もう……あっち行っててよぉ」
『え?』
「指原さん、しっかりするなっちー!」
「あわあわあわあわあわあわあわあわ」
どうしてあいつは不思議そうに首を傾げているのだろう? あんな映像を見せられて、ボク達が喜ぶわけないじゃないか。
ボクが疑問を浮かべていると、珍しく眉間に皺を寄せた紫中君がへたり込む玉村さんの顔を覗いていたモノクマに冷たい言葉を放つ。
「みんな君の相手をしている余裕はないんだよ。早く消えてくれるかな」
『……ハァ、ここまで邪険に扱われたさすがのボクも傷付くよ……なんてね! 紫中君のお望み通り、ボクはここでドロンさせてもらうよ! バイバ~イ』
煙に紛れて姿を消すモノクマ。
奴がいなくなったのを確認すると、今にも倒れそうな顔をした深海さんが当たり障りのない言葉をみんなにかける。
「み、みんな……とりあえず、戻ろ? ここにいても仕方がないよ」
「せやな、これ以上ここにいたら、わいらまでおかしくなりそうや」
「チッ、朝っぱらからいろいろ起き過ぎなんだよ……」
気力を振り絞りながら乗り込むみんなに続くようにボクもエレベーターに足を運ぶ。
今日はもう寝てしまおう。
昨日一睡もしていないんだ。きっとすぐに眠りにつけるさ。そうして目が覚めれば、またいつも通りの朝を迎える事が出来るのだから。
3階に上がるエレベーターは、降りた時よりも長く感じた。
無数の液晶モニターから溢れる光だけが照明となった薄暗い部屋。
それをバックに佇むモノクマは、テーブルを挟んでとある人物と向かい合っていた。
「おつかれ~。まさか彼が事件を起こしてくれるとは思わなかったよね~」
「 」
「もう、気が早いなぁ。まあいいけど……はいどうぞ」
「 」
「なんだか顔色が悪いよ? もしかしてアイツラに同情したりしてないよね?」
「 」
「うぷぷ。そうだよね! 余計な心配しちゃったよ」
「 」
「え? まだ大人しくしていて良いよ。出番が来たら呼ぶからさ。あ、コーヒー飲む?」
「 」
「そう? じゃあおやすみ~」
「 」
手渡され袋を持ち、ゆっくり扉を開けて、とある人物は薄暗い部屋を後にする。
バックのモニターに映る12人の少年少女。
この者達の運命を嘲笑うかのように、モノクマは、ひたすらに微笑む。
「うぷぷぷ。良い事思い付いちゃった……」
ダンガンロンパミラージュ~絶望の航海~
chapter1
絶望は僕等の手の中 end
残り乗客数 13人
『超合金 ザンコクーガ』を手に入れた!
成宮金次郎が大事に保管していた超合金ロボ。
両腕から発射されるドリルと、仲間との絆エネルギーから放出されるビームが多くの子供と大きなお友達を釘づけにした。