ラース・ワウにやってきた日の夜……俺の姿は、ドレイクの居城にあった。
正確には、ラース・ワウというのはドレイクの住んでいるこの城……いや、屋敷か? ともあれ、そんな場所ではあるのだが、この辺はエルフ城と同じ感じだ。
ラース・ワウが、ドレイクの住処と周辺の街の共通した名前となっている。
そんなラース・ワウの中を、影のゲートを使って転移してきた俺は気配遮断を使って歩いていた。
エルフ城であっても、魔法なりなんなりを使って気配遮断を察知するといったような真似はされなかったのだ。
それを思えば、ラース・ワウでも気配遮断を使った俺の姿を見つける事は出来ないだろう。
……とはいえ、完全に安心するといった真似は出来ない。
エルフ城では何も問題がなかったが、このラース・ワウではオーラバトラーやオーラボムといったような兵器を開発している。
だとすれば、もしかしたら気配遮断をしている俺の姿を見つける事が出来るかもしれない。
あくまでもそういう可能性であって、実際にはどうなるか分からないというのが正直なところだが。
ともあれ、領主のドレイクがいる場所となれば……普通に考えれば、やはり上の階とかだよな。
領主だけに、そういう認識になるのは正しいだろう。
そうして移動を始め……何人かの兵士とも遭遇するが、当然向こうは俺の姿を認識するといったような真似は出来ていない。
その事に安堵しつつ、俺はドレイクの姿を探す。
日中に聞いた情報によると、ドレイクには妻と娘がいるらしい。
娘はともかく、妻と一緒の寝室にいられるとちょっと面倒な事になりそうな気がする。
それだけではなく、ドレイクとその妻がいわゆる18禁的な行為をしていれば……うん、取りあえずその辺は考えないようにしよう。
いや、別に妻じゃなくても愛妾とか愛人とか……うん、今はその辺は気にしない方がいいな。
そんな風に考えながら城の中を進み……やがて、1つの部屋に辿り着く。
そこにいたのは、禿げている……というか、剃っているのか? ともあれ、禿頭の男。
それなりに広い部屋だったが、明かりのランプがあるのは窓辺にある為か部屋の全てを照らしてはいない。
この部屋の様子からして、あの禿頭の男は相応の地位にいる者……それこそ、ドレイクであってもおかしくはない。
そんな男は、窓の外を眺めつつ酒と思しきものが入ったコップを口に運んでいる。
さて、どうするか。この男がドレイクなら、姿を現してもいいんだが。
取りあえず何らかの情報でもないかと、部屋の中に入る。
そして男に近付くと……テーブルの上に紙があるのに気が付く。
何だ? と思ってその紙を見ると、どうやら地図らしい。
これは俺にとってもありがたいな。
今の状況を考えると、少しでも情報は多い方がいい。
それに、アの国がどんな立地条件なのかも分からない以上、出来るだけしっかりとその辺の情報は仕入れておきたいところだ。
そう思いながら、地図を覗き込む。
……この世界、以前に地球人が来た事があるのか、普通に文字は読めるんだよな。
この世界特有の文字という訳でもないらしい。
ともあれ、そんな訳で地図を見ると……アの国の場所に驚く。
まず、アの国を含めて周辺の国は……そうだな、アラビア半島的な感じの形になっている場所にあるらしい。
そしてアの国は地図で見れば右側が海に面しており……それはいいのだが、下にハワの国とケムの国という2国があり、海に面していない左側にはリの国とクの国がある。そして上にはミの国があり、そのミの国の上にラウの国があり、そこから大陸に続いている形だ。
そしてアの国の海を通して反対側……何となくCの形になっている場所の大陸側にはナの国というのがあるな。
この地図を見る限り、ナの国ってのは結構な大国らしい。
いや、大国という点ではラウの国も十分に大国なんだが。
それ以外の国は、国土の広さという点では大体同じくらいだ。
……もっとも、国土の広さが同じであっても、そして大国であっても、国の中にきちんと街や村といった人の住む場所を作れるならまだしも、山だったり川だったり森だった湖だったり……そんな場所だけが広がっていたりする場合は、国土が広くても国力は弱いのだろうが。
勿論、そういう場所も切り開いたり埋めたり……といったような真似をすれば、国力を高める事は出来るだろうが、難易度が高いのは間違いない。
取りあえずこの地図を見て分かった事は……アの国ってかなり危険じゃないか? という事だ。
周辺を5つの国に囲まれているというこの状況は、それこそどこから攻められてもおかしくはない。
その上で、アの国の国王がフラオンのような愚王だと……ぶっちゃけ、滅びるのは時間の問題だと思う。
もしかして、ドレイクがオーラバトラーを開発したのは、その辺が理由なのか?
そんな風に考えていると、禿頭の男が飲んでいた酒をテーブルの上に置き、改めて窓の外を見る。
何か思うところはあるんだろうが……こちらとしても、いつまでも黙って見ているような真似は出来ない。
取りあえず接触してみるか。
そう考え、男の目の前で気配遮断の使用を止める。
それでも男は自分の考えに集中していた為か、最初は俺の存在に気が付いた様子はなかった。
だが……そうして何らかの考えが纏まった瞬間に顔を上げ、俺と視線が合う。
ビクリ、と動きを止める男。
その気持ちも分からないではない。
この部屋には自分だけしかいなかった筈なのに、気が付けばそこに俺の姿があったのだから。
特にこの男は、俺の予想が当たっていればドレイク・ルフトの筈だ。
つまり、この領の領主という立場にあり……本来なら、自分の安全にはかなり気を遣っている筈だった。
そんな状況で、気が付けば自分の前に俺のような存在がいるのだから、それで驚くなという方が無理だろう。
「……誰だ?」
たっぷり1分程の時間が経過し、ようやく男が口を開く。
「アクセル・アルマーだ」
「……アクセル・アルマー?」
まさか俺が馬鹿正直に名乗るとは思っていなかったのか、男は数秒沈黙し……やがて何かを思い出すかのような様子を見せる。
とはいえ、今の状況で俺の名前を知っている者はこの世界においてマーベルを含め少数でしかない。
男がそんな様子を見せても、俺の事を理解出来る筈がなかった。
「残念ながら、こっちには昨日来たばかりだからな。……その前に一応聞いておくが、お前の名前は?」
「儂の城に侵入しておきながら、儂を誰か知らぬと申すか」
儂の城。
その言葉から、やはりこの男がドレイク・ルフトで間違いないらしい。
「ドレイク・ルフトか」
「うむ。それでお主は誰の手の者だ? ギブン家か? それともフラオン王か?」
これで情報がまた1つ……いや、2つ。
前もって聞いていた通り、ドレイクとギブン家は決して良好な関係ではないらしい。
そしてフラオンの名前も出した事から、味方と思っていないと。
まぁ、フラオンの場合は明確な敵意という訳ではなく、そこまで信頼していないといった感じのようにも思えるが。
「外れだ。別にお前の命を狙いに来た訳じゃない」
「……では、何故このような夜更けに儂の部屋に姿を現す? それも突然だ。……ガロウ・ランか?」
「それも違うな。俺は単純にお前という存在を見定めに来ただけだ。オーラバトラーなんて代物を、このファンタジー世界で開発した男をな」
正確には、オーラバトラーはドレイクが開発をしたのではなく、部下に開発するように命じたというのが正しいんだろうが……
「ファンタジー世界? ゼットが以前そのような……お主、地上人か?」
地上人?
異世界人じゃなく、地上人。
しかも『ちじょうじん』じゃなくて『ちじょうびと』か。
この地上人というのは、もしかしてこの世界でのマーベル達の呼び名か?
にしても、地上人……だとすれば、この世界は地下にあるのか?
「地球の人間を地上人と言うのなら、俺と一緒に行動している奴は地上人かもな。だが、俺は地上人ではなく、正真正銘異世界の存在だ。……異世界という概念は理解出来るか?」
ファンタジー世界だけに、異世界という概念を理解出来るかどうかも怪しかったのだが……それでも、ドレイクは頷く。
「うむ、理解している」
これはドレイクが特別頭がいいのか、それともこの世界においても異世界という概念は一般的なのか。
その辺の事情は俺にも分からなかったが、それでも理解出来ることは……今の状況において、話が早いという事だ。
「俺はその異世界からやって来た。シャドウミラーという国の……そうだな、分かりやすく言えば、王だな」
実際には王という立場ではないのだが、王や大統領、主席、皇帝……どれが俺の立場に相応しいんだろうな?
そんな疑問を抱きつつも、ドレイクの反応を待つ。
……が、当然の話だったが、ドレイクがこちらに向けてくる視線には疑惑の色しかない。
とはいえ、俺がドレイクの立場であっても、恐らくは同じような対応をするだろうから、ドレイクを責めるような真似は出来ないが。
何しろ、普通に考えて20代に見える俺が1国の王というのは普通考えられないだろう。
ましてや、王だというのに護衛の1人も連れずにいるのだから、ドレイクが信用出来る筈がない。
「まぁ、俺の言葉を信じられないという気持ちは分かる。だが……俺が1人なのは、1人で何があっても大丈夫だと認識されてるからだ。それに、王であってもある意味お飾りの王だからな。戦いならともかく、普段の時は仕事は部下に任せきりだ」
「……そのような真似をして、部下が国を乗っ取るという心配はしなくてもよいのか?」
「その辺は大丈夫だろ。……ぶっちゃけ、今の状況でそんな真似をしても意味はないし」
シャドウミラーという国は、非常に特殊な国だ。
そもそも、上層部の人数が少ない。
いや、純粋に国民そのものがそこまで多くないといった方が正しいか。
精霊の卵に所属しているエルフ達を合わせても、とてもではないが国……どころか、地方の1都市、いや市……までいかないか。街よりも規模は小さいから、村とか集落とかその辺の人数しかない。
その上で殆どの者が非常に個性的で、今の状況で纏まっているのがある意味で奇跡だというのは皆が知っている。
もし誰かがシャドウミラーを纏めようとしても、それは非常に難しいだろう。
……それでもどうしてもシャドウミラーの代表になりたいという者がいたら……ぶっちゃけ、任せてもいいと思わないでもない。
勿論、シャドウミラーを上手く運営していけるというのが大前提だが。
何しろ、今のシャドウミラーは色々な世界と繋がっている。
下手な事をすると、その関係そのものが壊れてしまってもおかしくはない。
護衛の1人もいないのは……ぶっちゃけ、俺だからということで護衛の必要がないと判断されてもおかしくはない。
「……ふむ」
俺の様子に何を感じたのか、ドレイクは小さく呟く。
「取りあえず、お主……アクセルだったな? アクセルの話は分かった。それで、異世界の王が何故儂の所に?」
「オーラバトラーを見たからだな。まさか、こんな科学技術も殆ど発達していないような世界で、人型機動兵器を開発出来るとは思わなかった。つまり、このルフト領には何かあると思った訳だ」
「なるほど。確かに、儂はお主以外にも2人の地上人を匿っている。その2人が共に技術に明るい者達であり、それによってオーラバトラーが開発出来たのは事実だ」
どうやら、ルフト領に来たのは決して間違いだった訳ではないらしい。
それにしても、技術者が2人揃ってか。何だか作為的なものを感じるな。
……とはいえ、この世界の原作の事を考えれば、ある程度そんな感じになってもおかしくはないのかもしれないが。
「地球……いや、地上か。その地上に帰れる方法はあるのか?」
「今のところはないな。儂の所にいる地上人達も、だからこそ地上に戻らずにいる。待遇がいいというのもあるのだろうがな」
技術者であれば、このファンタジー世界に興味を抱いてもおかしくはない。
その興味でオーラバトラーを開発したというのは、かなり腕のいい技術者なんだろうが。
そういう意味では、シャドウミラーに引き抜きたいという思いもある。
その技術者達にしても、ファンタジー世界で働くよりはシャドウミラーの技術者として働いた方が、労働環境はいいだろうし。
少なくても、ホワイトスターにはガロウ・ランのような存在はいない。
……技術者としてやりすぎると、茶々丸とかが敵に回るが。
それ以外にもエヴァと生身の戦闘訓練をしたりとか、そういうのもやる必要がある。……実は何気にハードル高そうだな。
そんな風に迷っていると……不意に、ドレイクが真剣な様子で口を開く。
「お主……アクセル・アルマーだったな? 儂の同盟者にならんか?」
「……は?」
あまりにも突然の言葉に、俺は驚きの表情で間の抜けた声を発するだけだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637