転生とらぶる   作:青竹(移住)

2861 / 4298
2739話

 城の中には、当然の話だが騎士が訓練を行うような場所が幾つも存在している。

 バーンを始めとした騎士達は、このような場所で仲間同士戦い、腕を磨いているのだろう。

 そんな訓練場の1つで、俺はバーンと向かい合っていた。

 周囲にはドレイクがおり、他にも多くの騎士や文官がいる。

 ……それどころか、謁見の間にいたよりも明らかに見物人の数が多い。

 これは、バーンの指示か、それともドレイクの指示か。

 ともあれ、俺という存在に……正確には俺の持つ強さに興味を持っているのは間違いない。

 

「アクセル王、防具をどうぞ。それと、武器はどうしますか?」

「そうだな。防具はいらない。武器は……模擬戦用の刃を落とした武器を使うのか?」

 

 俺に聞いてきた兵士は、防具をいらないという言葉に驚いた様子を見せたが、すぐに首を横に振る。

 

「いえ、武器は普段使っている物と同じです」

「そうか。なら、武器はこっちで用意した物を使わせて貰う」

 

 そう言い、俺は空間倉庫から赤い槍……ゲイ・ボルクを取り出す。

 ざわり、と。

 周囲で見ていた者達の多くがざわめく。

 それは、ゲイ・ボルクという槍が一目で異様な存在だと理解したからか。

 それとも、空間倉庫という能力そのものに驚いたのか。

 ぶんっ、と。

 俺が振ったゲイ・ボルクは圧倒的な存在感を持って周囲の注目を集める。

 

「俺はこれでいい。後は向こう次第だが?」

 

 そう告げ、長剣を手にしたバーンを見る。

 バーンもまたゲイ・ボルクか空間倉庫かは分からないが目を奪われていたものの、俺の言葉で我に返ったのか、口を開く。

 

「ア、アクセル王。それは……?」

「俺の愛用の武器だ。かなりの逸品だぞ?」

 

 実際、これは嘘ではない。

 アイルランドの大英雄、クー・フーリンが使っていたゲイ・ボルクなのだから。

 それこそこの槍と互角に渡り合える武器というのは、そう多くはない。

 ……いや、聖杯戦争の事を考えれば、もしかしたらFate世界にはそんな武器が他にもある可能性は否定出来なかったが。

 このバイストン・ウェルもファンタジー世界である以上、伝説の武器とかそういうのは普通にある可能性もあるが……バーンの持っている長剣がその手の武器のようには思えない。

 

「ゲイ・ボルク……と言っても、分かる可能性があるのはマーベル、ショット、ゼットの3人だけか」

 

 アイルランドの英雄である以上、地上について知らない者であれば、ゲイ・ボルクについて知る筈もないだろう。

 実際、マーベル達はそれぞれ聞き覚えがあったのか反応していた。

 ゲームとかアニメとか漫画とか小説とか、そういうのに詳しければ、ゲイ・ボルクは有名なだけに出て来てもおかしくはないんだが。

 あ、映画とかでも出て来てもおかしくはないな。

 

「さて、やるか。……安心しろ、怪我はさせないようにするからな」

「なっ!? ……分かりました。では、アクセル王のお手並み拝見!」

 

 その言葉と共に、バーンが長剣を手に俺に向かってくる。

 審判とかそういうのをまだ決めてもいないんだが……いやまぁ、俺は常在戦場と思っているので、問題はないのだが。

 こちらとの間合いを詰めようとするバーン。

 ゲイ・ボルクを使ってそれを阻止する事も出来たが、今回の戦いはあくまでも俺の実力を他の者達に知らせる為の戦いだ。

 そうである以上、バーンに攻撃をさせないで一方的に完封するのはどうかと思い、こちらから攻撃をしないで待ち受ける。

 すると、バーンはそんな俺の態度に不満を持ったのか、間合いを詰めながら厳しい視線を向けてくる。

 

「はぁっ!」

 

 鋭い気合いの声と共に、長剣が振るわれる。

 バーンはドレイクに俺との戦いを希望するだけあってか、その一撃は鋭いものがあった。

 とはいえ……それでも、俺を相手にするには全く足りない。

 バーンの一撃を、あっさりと回避する。

 バーンの表情に浮かぶのは強い驚愕。

 まさか自分の一撃をこうも簡単に回避されるとは思わなかったのだろう。

 

「どうした? 今の一撃で終わりか? なら、こっちから攻撃するが」

「ぬぅっ!」

 

 俺の言葉で我に返ったようにバーンは再び長剣を振るう。

 ……いや、俺だから問題はないが、バーンの持つ長剣は刃がそのままで、触れば普通に斬れる奴だろ?

 なのに、そんな一撃を俺に向かって放つのは……ドレイクと同盟を結ぼうとしている相手に対して、それはどうなんだ?

 そんな疑問を抱くが、バーンにしてみれば俺という存在はドレイクにとって害でしかないと思っているのだろうから、この行動はある意味で当然か。

 

「きゃあっ!」

 

 バーンの動きを見てか、マーベルの悲鳴が周囲に響くが……そんなマーベルの悲鳴を聞きながら、ゲイ・ボルクを振るう。

 キンッという金属音と共に……バーンの持つ長剣は刀身半ばで綺麗に切断されていた。

 

「……な……」

 

 その光景はバーンにとっても予想外だったのだろう。

 驚きで出せる声もその程度しか出せない中……ゲイ・ボルクの穂先で長剣の刃を切断した俺は、そのまま手首の動きだけでゲイ・ボルクを回転させ、次の瞬間にはその穂先をバーンの顔に突きつける。

 

「どうする? まだやるか?」

「……武器が違いすぎる!」

 

 俺の言葉にそう叫んだのは、バーン……ではなく、女の騎士だ。

 謁見の間で、バーンと同様に不審の視線をこちらに向けてきた女。

 謁見の間にいた騎士の中では、ただ1人の女。

 この世界はファンタジー世界であるというのも関係してか、かなりの男社会だ。

 そんな中で謁見の前に集められる……つまりドレイクの信頼が厚いというのは、かなりの優秀さを持っているのは間違いないのだろう。

 とはいえ、そんな人物がまさか俺に向かって今の勝負は武器の差だというのは……これは優秀は優秀であっても近視眼的な意味での優秀というか、特定の範囲内でだけ優秀といったような感じか?

 まぁ……言ってる事は決して間違いではないのだが。

 バーンが持っていた長剣と俺の持っていたゲイ・ボルク。

 両者の武器の格の差は、それこそ誰が見ても明らかだ。

 見たところ、バーンはドレイクの騎士の中でも1番偉い人物のように思える。

 そしてドレイクはアの国の中でもオーラバトラーを開発したという事もあり、かなりの資産を持つ。

 そんなドレイクでも側近と言うべきバーンに与えるのが魔法剣といったものではなく普通の剣だとすると……これは本当にこの世界には魔法は存在しないのか?

 

「アクセル王の持つこの槍が素晴らしい逸品であるのは、私にも分かります。ですが、今のガラリアの言葉通り、武器の差が激しすぎますな」

 

 女の騎士……ガラリアという名前らしいが、その言葉を受けてバーンは俺にそう言ってくる。

 まぁ、バーンの立場としてはここで大人しく俺に負けを認めるといったようなことが出来ないのは理解出来るが。

 ドレイクの方はどうだ?

 そう思って視線を向けると、向こうもそれに気が付いたのだろう。少し困った様子で口を開く。

 

「アクセル王には申し訳ないが、バーンの頼みを聞いてやってはくれまいか。バーンは武においては我が領内でも最強の男。それだけに、武器の差で負けたと思われてしまっては、他の者に示しがつかん」

 

 さて、これはどういうつもりだ?

 俺が本当に武器の力だけで勝ったと思っているのか、それとも別の理由か。

 ただ、ここで武器の力だけで勝ったと思われるのは、後々面倒な事になる。

 バーンも、どこまで本気で言ってるのかは分からないが、それでも俺の実力ではなく武器の差で負けたといったような事になった場合、色々と思うところもあるだろう。

 

「分かった。なら……」

 

 ゲイ・ボルクを空間倉庫に収納し、何も武器を持っていない状態……つまり、素手になる。

 当然の話だが、槍が一本消えたのだ。

 ゲイ・ボルクを出した時と同じように、多くの者が驚愕の声を上げていた。

 それを聞きながら、俺はバーンに向かって口を開く。

 

「これでいい。武器を持ってなければ、武器の差云々といったようなことは気にしなくてもいいだろう? なら、これで戦わせて貰う」

「……アクセル王、確かに私は武器の問題があるかもしれないと言いましたが、それでも武器を持たずに素手で私と戦うというのは、こちらを侮りすぎでは?」

 

 バーンがこちらに向かって気分を害した様子でそう告げてくる。

 武器を持てば武器の差がと言い、持たなければ侮るという。

 これは一体、どう判断すればいいんだろうな。取りあえず……

 

「心配しないで掛かってこい。俺は槍も得意だが、素手での戦いも得意だ。正直なところ、長剣とかを使って戦うよりも素手の方が強いと思うぞ」

 

 これは事実だ。

 長剣なんてのは……あ、でもペルソナ世界では何気に使われていたな。

 まぁ、それはともあれ、俺が素手での戦いを得意としているのは、間違いのない事実だ。

 そんな俺の自信満々な様子がバーンにも理解出来たのだろう。

 やがて強い意志を込めた目で俺を見ると、距離を取って最初に模擬戦が始まる前の位置まで戻る。

 

「もう一度、お願いします」

「ああ。……じゃあ、号令を頼む」

 

 バーンに頷き、兵士にそう告げる。

 兵士の方は本当にこのままもう一度戦ってもいいのか? と思っていた様子だったが、ドレイクがやれと短く告げると、素直に合図をする。

 

「始め!」

 

 その言葉と共に再び模擬戦が始まるが、今度は先程と違ったようにバーンから攻めてくる様子はない。

 素手の俺がどう動くのかを見定めているといったところか。

 バイストン・ウェルには、もしかしたら素手で戦う武術の類はないのかもしれないな。

 まぁ、兵士とかになれば普通に武器を持てるみたいだし、その影響かもしれないが。

 この世界はファンタジー世界なのに魔法はないし、何らかの特殊な能力もない。

 いや、もしかしたらあるのかもしれないが、今の状況ではまだそれが知られていないとかか?

 

「まぁ、いい。そっちから来ないのなら、こっちから行くぞ」

 

 そう告げ、瞬動を使う。

 一瞬にして俺の姿はバーンの右に移動しており、バーンの顔面には拳が突きつけられている。

 それが向こうにはとてもではないが理解出来なかったのだろう。

 バーンが自分に拳を突きつけられているのに気が付くまで、たっぷり10秒近くも掛かった。

 

「うおっ!」

 

 そして自分に拳が突きつけられていると気が付くと、慌てて後方に跳ぶ。

 

「分かったか、ちなみに……」

 

 そんなバーンを見やり、俺は地面に向かって拳を放つ。

 本来なら、ここは騎士達が訓練を行う場所であり、地面は強固に踏み固められているのだが……次の瞬間、俺の拳は地面に半径2m程のクレーターを作り出す。

 しん、と。

 俺の生み出したクレーターを見て、誰も何も言わなくなる。

 それは俺の能力の一端を知っているマーベルやドレイクも同様だった。

 あの2人が知ってるのは、言わば魔法的な能力だったしな。

 だとすれば、ここまで直接的な身体能力があるとは思っていなかったのだろう。

 あ、でもマーベルの場合は横抱きにして結構な長距離を走ったんだから、俺の身体能力についてある程度理解していてもおかしくはないのか。

 

「さっき拳を止めないと、この威力の拳がバーンの顔面に突き刺さっていた。……ちなみに、これでも全力じゃないんだけどな」

 

 そう言うと、バーンは見て分かる程に顔色が青くなる。

 バーンにしてみれば、もし俺が攻撃を止めていなければその顔に今の一撃が突き刺さっていたのだ。

 それを思えば、あのように顔色が青くなって当然だろう。

 

「で、どうする? まだ模擬戦を続けるなら、俺はそれでも構わないけど」

「い、いや、もう結構です。アクセル王の強さはこの目でしっかりと見せて貰いましたので」

 

 慌てたようにバーンがそう言ってくる。

 どうやら、ようやく自分がどのような存在を相手にしているのかを理解したらしい。

 とはいえ、スライムを使っていない、刈り取る者やグリを召喚していないし、炎獣を使用していないし、白炎を使用していないし、各種魔法を使用していない……うん、こうしてみると全く本気を出して戦っていなかった訳だな。

 そんな風に納得しつつ、ドレイクに視線を向ける。

 

「ドレイク、これでいいか?」

「うむ。アクセル王の素晴らしい実力を目に出来て、儂は嬉しく思う」

 

 この辺、バーンとドレイクの器の違いだよな。

 ドレイクも勿論俺という存在に色々と思うところはあるんだろう。

 だが、それを表情に出すような真似はせず、最初からこの結果は分かっていたといったような態度だ。

 俺が力を見せてから、多少なりとも時間があったというのも大きいのだろうが。

 

「なら、俺の実力を疑う心配はないな? ……報酬として、オーラバトラーを貰うという件も?」

「うむ。それもゲドだけではなく、ショットやゼットは新型機を開発している。それらも、これからこちらの要望を聞いたら報酬として渡そう」

 

 予想通りの展開に、俺は笑みを浮かべて頷くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。