「うおおおおおおおおっ!」
そんな雄叫びを上げて、騎士が長剣を振り下ろしてくる。
その一撃をゲイ・ボルクで弾き、手首で回転させることにより、穂先を相手の顔面に突きつける。
「そこまで!」
それを見た審判が、そう叫ぶ。
これで30……いや、31だったか? そのくらいの連勝だ。
普通なら、模擬戦とはいえそれだけ身体を動かせば息も切れ切れになってもおかしくはないのだが、俺の体力はその程度でどうにかなるようなものではない。
恐獣狩りを優先するのが決まったのはよかったのだが、この場合の問題は案内役が今日はいなかったことだ。
それに恐獣と一括りにされているものの、オーラバトラーの素材として使える恐獣は限られている。
恐獣だからといって、なんでもかんでも確保すればいいというものではない。
そんな訳で、どの恐獣を倒せばいいのかといったことを教えてくれる者も一緒に行く必要があり……その辺の調整の関係で、残念ながら今日決めて今日恐獣狩りに行くといった事は出来なかったらしい。
そんな訳で、俺のもう1つの仕事である騎士との模擬戦を行っていたのだが……それはそれで、厄介なんだよな。
いや、騎士との模擬戦そのものは、こうして勝ち続けているのを見れば分かる通り、そこまで問題ではない。
問題なのは、バーンだ。
俺との模擬戦で負けたのがよほど悔しかったのか、明らかに俺に敵意を向けている。
それでもその敵意が実際には表に出ないのは……さすがと言ってもいいだろう。
だが、表に出さないだけに、いずれそれが爆発するといったような可能性もある訳で、その辺を考えると今のうちに爆発して貰った方が手っ取り早いと思うんだが。
そんな風に考えていると、次の相手が俺の前に立つ。
バーンと並んで俺に敵意を向けている、ガラリア。
正直なところ、バーンが俺に敵意を向けるというのは理解出来る。
バーンはドレイクの腹心的な立場にあり、他の騎士達を纏めている存在だ。
そんなバーンにしてみれば、自分よりも強い相手がドレイクと親しいというのは、許容出来ない面があるのだろう。
……その上、俺は異世界の国の王という事になっており、それが余計にバーンに自分の地位を奪われるといったような忌避感を抱かせる。
だが、それはあくまでもバーンだからだ。
ガラリアは、そこまで地位が高くない。
……勿論それは地位が低いという訳ではないのだが。
バーンには及ばずとも、騎士の中では上位に位置する存在であるのは間違いない。
それでも、俺にそこまで敵意を向ける必要はないと思うんだが。
考えられる可能性としては、純粋にドレイクに忠誠を誓っており、そんなドレイクの側に俺がいるのが許せないとか、そんな感じか?
それならそれで納得出来ない訳でもないのだが。
「始め!」
その言葉と共に、ガラリアは俺に向かって走ってくる。
力ではどうしても男に勝てないと理解している為か、ガラリアの攻撃方法は速度に重点を置いたものだ。
ゲイ・ボルクの一撃を長剣で防ぐといったような真似をすれば、その一撃は自分の身体を痺れさせる、もしくは一撃で押し切られると理解しているからこその行動だろう。
とはいえ、その速度はあくまでもバイストン・ウェルの人間としては素早いといった程度だ。
ゲイ・ボルクで攻撃をするのではなく、まずは相手に攻撃させる。
速度を重視しているだけあって、ガラリアの攻撃は一撃の威力ではなく連続攻撃を重視したものとなっている。
次々と放たれるそれらの攻撃だったが、俺はそれを次々に回避し続けていく。
そして……気が付けば1分程の間、ずっと攻撃を回避し続けていた。
ガラリアにしてみれば、1分といった程度の時間ではなく、もっと長く……それこそ永遠の時間のようにも感じられただろう。
ガラリアの攻撃が続き……そして息が乱れた一瞬を逃さず、ゲイ・ボルクを振るう。
キィンッという甲高い金属音と共に空中を舞う長剣。
その気になれば、長剣の刃を切断するといった真似も出来たのだが、模擬戦でいちいち武器を壊すといったような真似をしても、それはある意味で無駄だ。
「な……」
自分の眼前に突きつけられたゲイ・ボルクの穂先を見て、信じられないといったような表情を浮かべるガラリア。
ガラリアににしてみれば、自分が一方的に攻めていたところから、何故こうもあっさりと逆転したのか、分からなかったのだろう。
「それまで!」
審判がそう声を上げ、模擬戦が終わる。
「速度はなかなかだったが、一撃の鋭さが足りないな」
「くっ!」
一応アドバイスしたつもりだったのだが、何故か睨まれてしまう。
とはいえ、模擬戦をやっている以上はしっかりと相手の悪い癖とか説明する必要がある。
「一撃の鋭さだけで相手を倒すというのなら、もっと徹底的に速度を上げろ。相手と打ち合うといった事はせず、敵の攻撃は全てを回避するようにな」
「……承知した」
不承不承といったように、俺の言葉に頷くガラリア。
その後も何人かとの模擬戦を行い……最後に俺の相手として出て来たのは、予想通りバーンだった。
その表情は厳しく引き締まっており、それだけ俺との模擬戦を真剣に……いや、それ以上に強い意思で戦おうとしているということを示している。
とはいえ、今こうして俺と戦うにしても、1日や2日で急激に実力が上がる筈もない。
それでもこうして俺と正面から戦うとなると……それだけ、前に俺に負けたのが堪えたといったところか。
元々バーンはドレイクの腹心といった立場である以上、そんな自分が負けたというのが決して許せない。
そのように思っても、おかしくはない。
……だからといって、今の状況でバーンが出来るのは訓練を真面目にやって少しでも自分の腕を磨く事だろうが。
ただ、オーラバトラーがこのまま発展すれば、いずれ騎士の戦い方はユニコンに乗って戦うのではなく、オーラバトラーに乗って戦うといった感じになると思うが。
とはいえ、それがいつになるのかは分からない。
少なくても、ゲドはバイストン・ウェルの人間で操縦出来る奴を探すのがかなり難しい。
俺……はともかく、マーベルと同等のオーラ力を持っている奴なんて、バイストン・ウェルにはそういないだろうし。
「始め!」
審判の言葉が周囲に響くと同時に、バーンは長剣を手にこちらとの間合いを詰めてくる。
ガラリアの時と同じく、まずはバーンの攻撃を待つ。
俺が機先を制しようとした時に、バーンがどんな反応をするのかを見てもよかったのだが……やはりここは、今までの連中と同じような対応をさせて貰おう。
バーンも、俺が最初は防御に回ると判断してか、俺に何もさせないようにしようと、次々と攻撃を繰り出してくる。
その一撃はガラリアが放つ一撃に比べれば幾分か遅い。
しかし、その一撃に込められた威力は間違いなくガラリアを上回っている。
個人としての能力もガラリアを上回っているし、部下を指揮する能力に関してもガラリアよりも上らしい。
……ただ、こっちはガラリアが話にならないといったような感じらしいので、比べる事も出来ないが。
ガラリアの場合は余裕がないというか、自分が手柄を立てる事を最優先にするらしいんだよな。
女の騎士だからって事も関係しているのかもしれないが、そんな性格だけに決して下の者から慕われている訳でもない。
「アクセル王、どうしたのですか!? このままでは私が勝ちますよ!」
防御に専念していたところ、不意にそんなバーンの声が周囲に響く。
バーンにしてみれば、自分が一方的に攻撃をしているのでそんな声が出たのだろう。
さて、そうなるとこちらもいつまでもやられ続けるという訳にはいかないな。
「そうか。なら、反撃するぞ」
そう告げ、袈裟懸けに振るわれた長剣をゲイ・ボルクの柄で弾き、そのまま手首を動かすことにより、石突きでバーンを吹き飛ばす。
「ぐっ!」
距離を取ったバーンに、ゲイ・ボルクを手に口を開く。
「自分が攻めている立場だからって、こっちが反撃してこないとでも思ったのか? 自分が一方的に攻撃されているということは、相手が反撃の機会を待っているという可能性があるということも考えろ」
「……分かりました」
俺の言葉に納得したわけではなかったが、バーンも今の自分の動きから色々と不味かったということは理解しているのか、頷く。
そうして、もう少しバーンの悪い場所を示し……模擬戦は終わるのだった。
模擬戦が終わると、俺は約束通り機械の館に向かう。
ちなみに、機械の館というのは……言わばオーラバトラーの製造工場的な存在の名称で、当然の話だが俺が向かっている場所以外にも複数存在している。
それでもやはりドレイクの本拠地だけあってか、ラース・ワウにある機械の館が一番巨大なのは間違いない。
そんな機械の館に向かっていると、ゲドが1機動いているのが分かる。
オーラソードを手に地上を歩いているその様子は、恐らくマーベルが乗っているのだろうという事は容易に予想出来た。
以前よりもスムーズではあるが、それでもゲドの動きに癖があるのは間違いない。
この辺、基本的にイメージで動かす割合が大きいオーラバトラーだけに、操縦の癖を直すといったような真似は出来ないんだよな。
もっと操縦に慣れてくれば、その辺も多少は改善されるのかもしれないが。
「これは、アクセル王」
機械の館の側でオーラバトラーの筋肉……つまり、恐獣の筋肉で、正確にはオーラマルスと呼ばれているらしいそれをチェックしていた男が、俺を見て頭を下げてくる。
「ああ、気にするな。仕事を続けてくれ。……それにしても、これがオーラマルスか。本当にオーラバトラーは恐獣の素材で出来ているんだな」
「ええ、そうですね。ただ、恐獣の素材をそのまま使ってるんじゃなくて、素材に手を加えて加工した物ですけどね。それでも生きてる辺り、恐獣というのは凄いです」
「そういうものか。……ん? 生きてる? 素材にしても生きてるのなら、それこそ長い間オーラバトラーを使っていれば、その部分は腐ってくるんじゃないか?」
素材となっても生きているとはいえ、それはあくまでも素材だ。
そうである以上、長期間……具体的にどれくらいの時間なのかは不明だが、それでも暫く使っていれば、その素材は腐るんじゃないのか?
そんな俺の疑問に、男は笑みを浮かべて首を横に振る。
元々技術者とかそういうのには、他人に説明するのが好きという奴も多い。
見たところ、この男もそんな感じなのだろう。
……問題なのは、そういう連中って基本的には自分の知識をひけらかすのが好きなだけで、相手に理解出来るように教えるのは難しいといったところだが……幸い、この男は違ったらしい。
「オーラコンバータの機能の1つに、そのような生体部品を生かすといった機能があるんですよ。……正確には色々と細かい説明があるのですが、取りあえずそのように覚えておいて貰えればいいかと」
その説明により、オーラコンバータがあればオーラバトラーに使われている生体素材は腐るといったようなことがないのは理解出来た。
勿論、腐らないからといって整備の必要がないといった訳でもないんだが。
それ以外にも、コックピットには小さなセンサーのような物が埋め込まれており、それによって操縦する際のイメージの補強を行っているらしい。
正確には、操縦している時の身体の動きとかによってイメージの補強をしているといった感じらしいが。
そうしてオーラバトラーについての詳しい――あくまでも俺にとってはだが――説明を聞いていると、男は小さく息を吐く。
「どうした?」
「いえ、オーラコンバータに必要なオーラ力の影響で、バイストン・ウェルの者ではどうしてもオーラ力が足りないんです。お館様が確保しているエ・フェラリオの力があれば、地上人を呼び寄せることが出来るらしいのですが……」
「エ・フェラリオ? それは街中とかにいるのを何度か見たミ・フェラリオとは違うのか?」
「はい。ミ・フェラリオというのは、掌くらいの大きさしかない種族です。ですが、エ・フェラリオは人間と同じくらいの大きさを持ちます」
「……それは、また。フェラリオという名前がついてるのに、随分と大きさが違うな」
そう言いつつも、このバイストン・ウェルがファンタジー世界である以上、そのくらいの事はあってもおかしくないのだが。
恐獣とか、そういう連中もいるんだし。
にしても……この男の話を聞く限りでは、そのエ・フェラリオとやらが地上から人間を召喚する能力を持ってるようだが……俺はともかく、マーベルが転移した場所には誰もいなかった。
今の話を聞いて、もしかしたらそのエ・フェラリオがマーベルを召喚して俺を巻き込んだと思ったのだが、どうやらそれも違うらしい。
あるいは、ドレイクの下にいるエ・フェラリオとは別のエ・フェラリオがマーベルを召喚したのかもしれないが。
後でそのエ・フェラリオと話す事が出来たら、その辺を聞いてみよう。
そう思いながら、俺はオーラバトラーについて色々と聞くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637