「クの国? ……また、随分といきなりね」
ドレイクからの依頼を受けた日の夜。
夕食を食べながら、俺はマーベルにクの国に行く件を話していた。
夕食の味はそこそこで、十分に満足出来るものではないが、そもそもバイストン・ウェルでは調理技術がそこまで発達していない。
貴族が出席するパーティとかで出される料理ならかなり美味いんだが、そういうのではなくメイドが用意する料理となればこんな感じなのも仕方がない。
香辛料とかそういうのがもっとふんだんにあれば、また話は違うのかもしれないが。
ファンタジー世界のバイストン・ウェルとホワイトスターと繋がっている日本とかとを比べるのが間違ってるんだろうが。
「ああ。クの国はドレイクと友好関係にあるらしくてな。オーラバトラーについての研究も行っているらしい」
「それが目当て?」
「それもあるが、正確にはクの国の国王、ビショットがどういう人物なのかを俺の目で見てきて欲しいということだな」
「何でわざわざアクセルに?」
「バイストン・ウェルの人間ではなく、地上人でもない……異世界からやって来た俺の目から見て、ビショットがどんな人物なのかというのを聞きたいんだろうな。その報酬として、ゲドとドラムロが2機ずつ、ダンバインを1機、それと空飛ぶ軍艦のオーラシップ1隻を支払うというのは、どうかと思うが」
実際には、この報酬には俺が今まで獲ってきた恐獣の報酬も入ってるんだろうが。
今まで俺とマーベルで獲ってきた恐獣の数はかなり多い。
それを考えれば、この報酬もそこまで破格って訳じゃない……のか?
「それは、また……随分と高い報酬ね。それにアクセルがビショットを見ても、ドレイクには特に何も利益はないでしょう? いえ、アクセルが見たビショットがどういう人物なのかを聞けるというのは、大きいかもしれないけど」
「俺もそう思わないでもないけど、ドレイクには何か意味があるんだろうな。それと、今まで俺とマーベルで獲ってきた恐獣の代金代わりというのも含まれてそうだ」
「ああ、なるほど」
そちらの意見には、マーベルも納得出来たのだろう。
納得したように頷く。
「でも……アクセルのサーバインや、私のダンバインはもう報酬で貰ってるわよ? そうなると、少し貰いすぎなような気がするんだけど」
「その辺は、ドレイクが俺やマーベルと縁を切りたくないというのが大きいんだろうな」
「アクセルはともかく、私も?」
「マーベルは実感がないのかもしれないが、現在バイストン・ウェルで確認されている唯一の聖戦士だぞ?」
地上人という事であれば、ショットやゼットがいる。
だが、この2人はあくまでも技術者だ。
……いや、ぶっちゃけ聖戦士と技術者のどっちが有用なのかとなると、大きい目で見た場合、それは間違いなく技術者だったりするんだが。
ただし、バイストン・ウェルにおける聖戦士という称号はちょっと馬鹿に出来ない。
そんな聖戦士のマーベルだけに、ドレイクとしては俺と同様是非手元に置いておきたい人物だろう。
これが俺と一緒に行動しているのではなく、別々で行動していた場合は、それこそバーン辺りを使ったハニートラップを仕掛けたりとか……場合によっては、ドレイクの愛人にするといったような提案もあったかもしれない。
もっとも、マーベルの性格を考えればそんな提案に乗ったりはしないだろうが。
そういう意味では、実際には違えど、よく俺と男女の関係にあるというのを納得してくれたな。
とはいえ、これってメイドからの情報でドレイクに嘘だと連絡がいってそうなんだよな。
何しろ、男女の関係にある俺とマーベルが同じ家に住んでいるのに、ベッドとかそういうのは夜の情事の痕跡が何もないのだから。
家事をしているメイドが、その辺を疑問に思ってもおかしくはない。
とはいえ、それをどうにかする為に……なんて真似は出来る筈もない。
「どうしたの?」
「いや、何でもない。クの国についてちょっと考えていただけだ」
まさか、本当に考えていた事を説明出来る筈もなく、そう誤魔化しておく。
幸い、非常に厄介な女の勘という能力は発動しなかったのか、マーベルが俺に疑問の視線を向けたりはしない。
とはいえ、この件をこのまま考え続けると女の勘が発動しかねない。
それを思えば、話題を逸らした方がいいか。……ついでに確認しておく必要もあるしな。
「それで、クの国に関してだが、向こうに行く時にマーベルも一緒に行くかもしれないって風には言ってきたけど、どうする?」
「え? 私も?」
思い切り意表を突かれたかのような、マーベルの言葉。
マーベルにしてみれば、クの国に行くのは俺だけだと、そう思っていたのだろう。
実際、ドレイクも最初に話を持ってきた時は、そのつもりだったんだろうし。
ただし、ドレイクにしてみれば俺もそうだがマーベルがクの国に行くというのは大きなメリットがある。
俺という異世界の存在はともかく、マーベルの場合は聖戦士だ。
その上で、聖戦士用のオーラバトラーであるダンバインに乗っている。
ダンバインは一目でゲドの系列機だというのは分かるだろうが、同時にゲドとは色々と違っている場所も多い……つまり、新型機であるという事を如実に示せるのだ。
まぁ、ダンバインは聖戦士用に開発されただけあって、外見からもゲドとは格が違うと、そう理解出来るが。
そして、俺のサーバインはそんなダンバインよりも更に格が違うというのが、一目で分かってしまう。
ともあれ、マーベルは自分で思っている以上に有益な存在と思われているのは間違いない。
この先……そう、例えばドレイクがシルキー・マウの力を使って地上から新たな人物を召喚するといった真似をすれば、聖戦士が増える可能性もある。
とはいえ、召喚出来た人物全員が聖戦士なのかどうかというのは、疑問だが。
それでも、相応の人数が召喚されるという事になるのは、大きい筈だった。
「そうだ。マーベルに来て欲しい理由は色々とある。ドレイクにしてみれば、自分の所に聖戦士がいるというのをビショットに知らしめるという理由もあるだろうし」
ただ、この場合はあくまでも自分の所にいるというだけであって、自分の部下という扱いではないのが大きい。
実際にマーベルはドレイクの部下という訳ではなく……そう、ドレイクの同盟者である俺の女という扱いになっている筈なのだから。
もっとも、その辺について追求すれば、マーベルの機嫌が悪くなりそうではあったが。
「色々って、他には?」
「他に? そうだな。何だかんだと、俺がマーベルと一緒にいると気が休まるってのが大きいな」
「そう」
何故か照れた様子を見せるマーベル。
あ、これは……もしかして俺が女としてのマーベルを欲していると勘違いしたのか?
いや、けどここでそれはどうこうって言っても、実は違っていたりしたら気まずくなるだけだし。
「分かったわ」
少し沈黙した後で、マーベルはそう告げる。
「そう言って貰えると俺も嬉しいけど、いいのか?」
「ええ。クの国……正確にはルフト領以外の場所も見てみたいし。エルフ城は見たけど、あそこはちょっと特別だし」
「まぁ、それは否定しない」
フラオンの治める、アの国の首都たるエルフ城。
そのエルフ城はフラオンの圧政によってかなり厳しい状況になっている。
そういう意味では、やはりクの国の首都を見てみるのはいいかもしれないな。
ましてや、ドレイクが認めるくらいには有能な相手なんだろうし。
「でしょう? だから、ちょっと興味があるのも事実なのよ。それに……アクセルがいない間、この家に私1人でいるのは、ちょっと広いしね」
一応メイドもいるのだが、メイドの場合は別にこの家で暮らしている訳ではない。
あくまでも自分の家から通っているだけにすぎないのだ。
であれば、今まで俺と一緒に暮らしてきたマーベルが、この家を広いと思うのは当然だろう。
「そうだな。じゃあ、近いうちに出発すると思うから、いつでも行けるように準備しておいてくれ」
「ええ。……とはいえ、特に持っていくような荷物の類がないんだけど」
「俺の空間倉庫に収納出来るのが大半だしな」
呟く俺の言葉に、マーベルは頷く。
空間倉庫のある俺はともかく、マーベルはバイストン・ウェルに来た時は特に何も荷物らしい荷物を持ち込んでいない。
その後も、色々と買い物はしているらしいが、それは服とかの生活用品が大半で、なければどうしようもないというものではない。
「さて、それなら話は決まったな。とはいえ、今日すぐに行くってわけじゃないし、マーベルはダンバインでの操縦とかに慣れておいてくれ」
聖戦士として紹介する以上、当然の話だがマーベルが乗るダンバインについても紹介する必要がある。
であれば、ダンバインの操縦技術も大きな意味を持つ事になるだろう。
もっとも、今でもマーベルの操縦技術はかなり高いのだが。
それでもこれから先の事を考えれば、操縦技術が高いに越した事はない。
「分かったわ。ちなみに、クの国にもオーラバトラーはあるの?」
「ないだろうな。少なくても俺はドレイクからあるとは聞いていない。……そうなると、クの国よりもギブン家の方がオーラバトラーの開発については進んでいる訳だ」
「ギブン家? 何で急にギブン家が?」
俺の呟きに、戸惑った様子を見せるマーベル。
そう言えば、ダーナ・オシーの一件については話してなかったか。
「実は今日、サーバインの性能テストで森に行った時、ニー・ギブンと思われる人物が操縦しているオーラバトラーに襲撃されてな。そのオーラバトラーは、ゲドでもドラムロでも、勿論ダンバインでもなく、初めて見る機体だった」
そう言い、森での一件を話していく。
とはいえ、これがバーンの仕業かどうかは分からないので、その辺は適当にぼかしてだが。
ほぼバーンの仕業で間違いないんだが、証拠らしい証拠がないんだよな。
そうである以上、ここで迂闊にバーンの仕業だとは言わない方がいい。
下手にマーベルがバーンに対して敵意や警戒心を抱くと、面倒な事になりかねないし。
「そう。ギブン家でもうオーラバトラーを……それは凄いわね」
「そうだな。だから、ダーナ・オシーは鹵獲しておいた」
「鹵獲したの?」
「ああ、正直なところ、ドレイクが開発した以外では初めてのオーラバトラーという意味で非常に貴重な機体だが、純粋に性能だけを考えると、そこまで高くはない。ダンバインやサーバインは勿論、ドラムロよりも性能は低いと思う。ゲド以上ドラムロ以下といったところか」
とはいえ、オーラバトラーというのは機体の性能も重要だが、MSとか以上にパイロットの能力が影響する面が強い。
であれば、パイロットによってはダーナ・オシーもドラムロと互角に戦えるといったことは出来てもおかしくはない。
「それにしても、クの国でもまだオーラバトラーを開発出来ていないのに、ドラムロよりも性能が低いとはいえ、国王でもない領主が開発するなんて……凄いわね」
「そうだな。とはいえ、ムーラの件もある。ダンバインの開発にも関わったドルプル達がギブン家に亡命した以上、オーラバトラーを開発する事は不可能じゃない」
それでもドラムロに及ばない性能を持つダーナ・オシーしか開発出来なかったのは、単純に設備の差だろうな。
大々的にオーラバトラーやオーラボムを製造して売っているドレイクに比べて、ギブン家の者達はそこまで大々的に施設を用意出来ない。
……下手に施設を用意した場合、そこにドルプル達がいるのを見つけられると問題になるのは間違いないのだから。
そうならない為には、やはり秘密裏に工場を作る必要があり……そして秘密裏である以上、大々的な設備には出来ない。
まぁ、他にもドルプル以外の技術者が少なくて、ダンバインのような手間の掛かる機体を開発するのは難しいという問題もあったのかもしれないが。
「そう言われると、そうかもしれないわね」
少しだけ残念そうにしているのは、ムーラの件があるからだろう。
この家でメイドとして働いていたムーラとマーベルは、同じ女同士という事でそれなりに友好的な関係だった筈だ。
そうである以上、そのムーラが裏切ったというのは……色々と思うところがあってもおかしくはない。
「まぁ、そんな訳でギブン家もオーラバトラーを開発した以上、これからは向こうも色々とルフト領にちょっかいを出してくる可能性がある。このバイストン・ウェルにおいて、オーラバトラーというのは強力な兵器だしな」
一応ドロとかもあるが、ドロでオーラバトラーに対抗するのは難しい。
あ、でもダーナ・オシーは機動性を求めて装甲とかは薄かったから、ドロのフレイボムを何発も命中させることが出来れば、対処は可能かもしれないな。
そんな風に思いながら、俺はマーベルとの会話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1400
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1648