転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2774話

 ナムワンにある部屋の中。

 ガラリアが艦長に頼んで用意して貰ったその部屋の中には、俺、マーベル、ガラリアの3人がいた。

 そしてマーベルとガラリアは、初心者用の魔法教本を一緒に読んでいる。

 ぶっちゃけ、必要なのは教本と杖だけなので、俺がここにいる意味ってあるのか? と思わないでもない。

 だが、もし万が一何らかの理由で魔法が発動して暴発したりした場合、それをどうにかする者は必要だろう。

 それが俺なのだ。

 もっとも、それは魔法が暴発したりしない限り特にやるべき事はないのだが。

 

「まずはこの火の魔法から使ってみるとしよう。マーベル、その杖を貸してくれ」

「ええ、いいけど。本当に大丈夫なの?」

 

 マーベルが心配そうに言うのは、初心者用の杖は基本的に子供の玩具的な外見だからだろう。

 実際に子供が使った場合は、遊んでいて壊すといった事も珍しくないらしく、だからこそ簡易な……言い換えれば安っぽい素材を使って作られていた。

 

「問題ないとは言い切れないけど、それでもこれで魔法を使うのならしょうがない」

 

 ガラリアもやっぱりこの杖で練習するのは不満なんだろうな。

 とはいえ、それしかない以上はやるしかない訳で。

 

「プラクテ ビギ・ナル……火よ灯れ!」

 

 そう呪文を唱えてみるが、杖の先端……星型の飾りには何の影響もない。

 そして、真剣な表情だっただけに顔が赤く染まるガラリア。

 うん、やはりガラリアも何となく恥ずかしかったのだろう。

 これで魔法が成功していれば、多少はその恥ずかしさも緩和されたのかもしれないが。

 生憎と、ガラリアの魔法は成功しなかった。

 魔法少女と言えば、アメリカ人のマーベルは理解出来るか?

 いや、そもそも魔法少女もののアニメが流行ったのっていつなんだろうな。

 マーベルのいた地上の日本では、この時期にもう魔法少女というのが存在したのかどうか。

 とはいえ、その魔法少女云々というのが分からなくても、照れるというのは間違いのない事実なのだが。

 

「じゃ、じゃあ次は私がやってみるわね」

「……」

 

 マーベルの言葉に、ガラリアは無言で魔法の杖を渡す。

 その気持ちは分からないでもない。

 今の状況で口を開ければ、それこそ恥ずかしさのあまり叫び出したくなってもおかしくはないのだろう。

 ガラリアは下手に生真面目な性格をしているだけに、今のは完全に黒歴史になったのだろう。

 それに関しては、色々と思うところがない訳でもなかったが、魔法を使えるようになるまでは訓練あるのみだ。

 それこそ、繰り返し魔法を使おうとするしかないのだ。

 何度も魔法を使っていれば、恥ずかしさにも慣れてくるだろうし。

 マーベルもガラリアと同じく魔法を使おうとして呪文を唱えるが、火が生み出されることはない。

 

「ねぇ、アクセル。手本を見せてくれない?」

「手本って言われてもな。俺の場合はお前達とはちょっと違う方法で魔法使いになったからな」

 

 俺は混沌精霊で……言ってみれば、身体は魔力で出来ているようなものだ。

 だからこそ、料理とかは幾ら食べても即座に魔力になって身体に吸収され、食いすぎて腹が痛くなるといったような事もない。

 そんな訳で、今の俺にとって魔法と詠唱を唱えて使うものではなく、身体を動かすのと同じ感覚で使えるような行為だ。

 初心者のガラリアやマーベルと同じような魔法を使う……といった感じには、出来ない。

 

「アクセル王、本当に魔法を使えるのですか?」

 

 俺が魔法を使わないのを見てか、ガラリアが疑惑の視線を向けてくる。

 ガラリアは魔法を習うという意味で、今は仕方がなく俺と行動を共にしている。

 だからこそ、心の底から俺を信じるといったような真似は出来ないのだろう。

 

「俺が使う魔法は、何度か見てる筈だけどな」

 

 空間倉庫とかは、正確には俺の魔法ではなくスキルだ。

 だが、客観的に見た場合は、それも俺の魔法といったように思えるだろう。

 いっそ、刈り取る者を召喚するか?

 いや、ただでさえガラリアは俺を警戒してるのに、ここで刈り取る者を召喚なんかしたら、それこそ決定的な事になってしまいかねないような気がする。

 ガラリア辺りなら、寧ろそれを証拠として俺がドレイクに牙剥く相手だと、そう認識する可能性もあるし。

 

「それでも、見たいのよ。それが何らかのヒントになって、私達も魔法が使えるようになる可能性はあるでしょ?」

 

 マーベルにそう言われ、少し考えてから炎の魔法ならと指を白炎と化してから炎獣を生み出す。

 それを見たマーベルとガラリアは、当然のように驚く。

 いや、ガラリアは食堂で見たのに、何でまた驚くんだ?

 それだけ炎獣という存在は驚愕の対象といったところか。

 

「可愛いわね、これ。……ねぇ、アクセル。一応聞くけど危険はないの?」

「ないぞ。危害を加えようとすれば、話は別だが」

「こんな可愛い子に、そんな真似出来ないわよ」

 

 そう言いながら、マーベルはリスの炎獣に手を伸ばし……ふと、尋ねる。

 

「この子、白い炎で出来てるみたいだけど、触ってもいいの? 火傷をするとかない?」

「心配するな。その辺は何も問題ない。触っても火傷をしたりはしないから」

 

 俺の言葉に安心したのか、マーベルはリスの炎獣にそっと手を伸ばす。

 炎獣は、特に警戒した様子もなく跳躍し、マーベルの掌の上に着地した。

 

「きゃっ! ……あら、この子、重さは殆どないのね」

「魔法の炎だしな」

 

 そもそも、燃料となる物はともかくとして、炎に重さはあるのか?

 ましてや、白炎は普通の炎ではなく魔法の炎だ。

 そうである以上、重さの有無というのは微妙なところだろう。

 

「可愛い」

 

 その呟きは、マーベルの口から漏れたのではなく、ガラリアの口から出たものだ。

 これがマーベルが言ったのなら、素直に納得することも出来たのだが、まさかガラリアの口からそんな言葉が出るとは思わなかった。

 これは多分、食堂で見た時は可愛いという思いはあっても口にする事は出来なかったんだろうな。

 食堂にはそれなりの人数がいた。

 そんな中には、当然だがガラリアの部下もいただろう。

 ガラリアの性格を思えば、そんな部下がいる場所で可愛いなどといった事は、とてもではないが口に出せなくてもおかしくはない。

 もっともそれを言うなら、警戒心を抱いている俺の前でそんな言葉を口にしてもいいのかといった問題もあるのだが。

 友人のマーベルがいるから、その辺は問題ないと、そう判断したのか?

 だとすれば、それはそれでこちらとしても構わない。

 というか、マーベルを通して俺に対する警戒心や反感をどうにか出来るかと思えば、それこそ寧ろ望むところと言ってもいい。

 勿論、実際にはそう簡単にいったりはしないのだろうが。

 

「喜んで貰えて何よりだ」

「っ!?」

 

 先程の可愛いという言葉は、半ば無意識のものだったのだろう。

 だからこそ、俺の言葉を聞いたガラリアは我に返り、鋭い視線をこちらに向けてくる。

 そんなガラリアの視線を向けられながら、俺は素知らぬふりをしながら口を開く。

 

「さて、魔法を実際に見せた訳だが、これで何らかのヒントになってくれるといいんだが」

 

 俺の言葉で、ガラリアとマーベルは再び魔法の練習を始める。

 ガラリアだけは、自分の失言を悔やんだ様子を見せてはいたが。

 だが、それでもガラリアは俺に何かを言うよりも魔法の訓練を優先させた。

 ガラリアにしてみれば、もし魔法を習得出来たら大きな力になると判断しているのだろう。

 実際にその判断は間違っていない。

 例えば魔法の中でも初歩の攻撃魔法たる炎の矢。

 これは属性によっては火矢の代わりになったりするし、相手を痺れさせる雷の矢だったり、速度が速い風の矢だったり、貫通力が高い岩や氷といったように非常に汎用性が高い。

 ちょっと変わったところでは、千鶴が使う回復魔法が込められた魔法の矢がある。

 矢が突き刺さった状態のまま回復していくといった様子は、何も知らない者にしてみれば完全に理解不能だろう。

 また、属性以外にも魔法の矢は魔力の大きさや術式の変更によって一度に生み出せる数を増やすといった真似も出来る。

 まぁ、それはあくまでも魔力とかそっち関係が重要なので、習得してすぐにそういう魔法を使えるといった訳ではないのだが。

 

「アクセル、その……アクセルみたいに炎のリスを作るとか、そういうのはどのくらいで出来るようになるのかしら?」

 

 マーベルが、ふと魔法の練習を止めてそう尋ねてくる。

 マーベルにしてみれば、先程の炎獣はそこまで気に入ったのだろう。

 とはいえ、炎獣を生み出せるようになるとなれば、一体どれだけ魔法の技術を磨けばいいのかは、俺にも分からない。

 俺の場合は、混沌精霊となったことで炎獣を自由自在に操れるようになった。

 だが、それはあくまでもイレギュラーな事態であり、普通の魔法使いが俺と同じように炎獣を使えるようになるのかどうかと言われれば、正直なところ分からないとしか言いようがないのだ。

 そもそも、俺の炎獣と同じような魔法を再現出来るかどうかも分からない。

 取りあえず、ちょっとやそっとで炎獣を生み出すといった真似は不可能だろうが。

 

「炎獣は、こう見えてかなり難易度が高い魔法だ。それこそ、俺独自のというか、俺が持つ特性で使えているような魔法と言ってもいい。この魔法をそっくりそのまま使えるようになるかというのは……そう簡単には無理だろうな」

 

 真実と嘘を混ぜて説明する。

 とはいえ、全てが嘘という訳ではない。

 魔法の実力を上げていけば、将来的に炎獣と全く同じ魔法を使うような真似が出来てもおかしくはない。

 とはいえ、そのような魔法を開発するとなると、ちょっとやそっとの魔法でどうにか出来るようなものではないだろうが。

 それこそ、ネギ辺りとかなら何とか出来るかも?

 あ、でもネギの場合は風や光といった属性の魔法は得意だが、炎の魔法はそこまで得意ではない。

 そう考えると、ネギでも炎獣の魔法を開発するといった真似は不可能か?

 と、似て非なる魔法を使えるのを思い出す。

 

「炎獣の魔法は難しいだろうが……似た魔法に、こういう魔法はあるぞ」

 

 そう告げ、呪文を口にする。

 実際には、今の俺なら呪文の詠唱がないままにどんな魔法でも発動出来るのだが、この魔法はマーベルとガラリアに見せる為の魔法である以上、しっかりと詠唱も聞かせておく必要があった。

 

『火精召喚……槍の火蜥蜴1柱!』

 

 その呪文と共に、火蜥蜴……いわゆるサラマンダーが1匹姿を現す。

 いつもならもっと大量に召喚するのだが、今回の魔法はあくまでもそういう魔法があるというのを見せる為の魔法である以上、単純な詠唱ではあったがそれでも詠唱を聞くというのは大きな意味を持つ。

 問題なのは、その詠唱を聞いたからといって、すぐに同じ魔法を使えるかと言えば、それは否だ。

 サラマンダーの召喚そのものは、そこまで高難易度という訳ではない。

 だが、火よ灯れの魔法も自由に使えないようでは、結局のところどうしようもないというのは間違いない。

 

「……格好いいとは思うけど、可愛くはないわね……」

 

 サラマンダーを見て、マーベルがしみじみと呟く。

 その気持ちは分からないでもない。

 炎獣はリスだった事もあり、愛らしい姿をしていた。

 それに対して、サラマンダーの方は……とてもではないが、可愛いとか愛らしいとかいう感想は出て来ない。

 格好いいといった言葉が出て来てもおかしくはないのだが。

 

「その辺はしょうがない。どうしても炎獣を召喚したかったら、必死に魔法の技術を磨く必要があるな」

 

 そう言い、指を鳴らしてサラマンダーを戻す。

 一瞬前まで、確かにそこにはサラマンダーの姿があった。

 にも関わらず、それは一瞬にして姿を消した。

 マーベルやガラリアにしてみれば、それこそ何が起きたのか全く理解出来なかった……といったところか。

 実際、魔法は理屈とかを理解していない限り、どうしようもないというのは間違いのない事実なのだから。

 

「さて、こんな感じな訳だ。生憎と俺と相性がいいのは炎と影の魔法だけだが、ガラリアやマーベルならもっと別の属性と相性がいい可能性があるな」

 

 マーベル何かは聖戦士だけに、光の精霊と相性がよくても特に驚くような事はない。

 ガラリアは……その性格から、闇と相性がいいような気がするな。

 まさか、闇の魔法でガラリアも人間から人間以外の存在に姿を変えたりはしないよな?

 もしそんな風になったら、それこそゼット辺りに恨まれるといったようなことになってもおかしくはない。

 少なくても俺はそんな風にはなりたくない以上、ガラリアにはもっと他の精霊と相性がいい事を祈るだけだ。

 

「うーん……難しいわね」

「うむ。これは本当に出来るのか疑問に思ってしまう」

 

 マーベルとガラリアが呪文を唱えながらも、苦戦している。

 その辺に関しては、今の状況で俺が何を言っても恐らく説得力はないだろうし。

 そんな風に思いながら、俺は2人が魔法の練習をするのを眺めるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1400
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1648

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