ナムワンに戻ってくると、当然のようにそこではガラリアが待っていた。
目敏いな。俺とマーベルがそれぞれゲドを鹵獲したのを、見ていたんだろう。
とはいえ、マーベルの場合は四肢を切断したのでろくに相手は動けないが、俺はショットクローのワイヤーを関節に巻き付け、それで相手の動きを封じている。
だとすると、少し気を抜けばまたゲドが暴れる可能性があるのだ。
「マーベル、取りあえずお前の持っているゲドのコックピットからパイロットを引き出して貰え」
そう言ってから、格納庫にいるガラリアに声を掛ける。
「ガラリア、ゲドのパイロットは捕虜としてお前に引き渡す。だが、ゲドは俺が貰う。それで構わないな?」
『いいのですか?』
こちらに向かって言葉を発するガラリアの表情には、驚きの色がある。
ガラリアは、まさか捕虜達がすんなりと自分達に引き渡されるとは思っていなかったのだろう。
俺にしてみれば、捕虜がいても役に立たないのだから、ガラリアに渡すのはそうおかしな話ではないだろうに。
それにこれでガラリアに恩を売れるのなら、俺としては寧ろ願ったり叶ったりといったところだ。
「構わない。ビショットと商談する際にも、何らかの条件にはなるだろうし。そっちで勝手に使ってくれ」
『感謝します』
短い感謝の言葉を口にすると、マーベルが捕らえていた四肢が存在しないゲドに早速向かう。
ゲドに乗っていたパイロットは、現在の状況では何をしようとも意味はないと判断したのか大人しく降伏した。
これは俺にとっても予想外の結果だったと言ってもいい。
何しろ戦闘らしい戦闘にはならなかったのだから。
だが、問題なのは俺が捕らえたゲドだ。
マーベルが捕らえたゲドと違って、普通に四肢が存在しており、ショットクローのワイヤーが外れたり、そこまでいかなくても少し緩めば普通にゲドが暴れるといったような事になりかねない。
しょうがない、か。
「ちょっと待ってろ。パイロットを弱めてくる」
それだけを言い、ナムワンから少し離れた場所に移動し……そして、サーバインの性能を活かしてショットクローで縛られたままのゲドを振り回す。
本来なら、ゲドも相応の性能を持っており、このような状況でもオーラコンバータを全開にして防ぐといったような真似をすれば、こちらの思い通りになるといったような事はない。
しかし、俺が乗っているのはサーバインなのだ。
ダンバインのプロトタイプにして、性能という点では希少な素材を惜しげもなく使っているし、何よりも俺の魔力を最大限に活かす事が出来るオーラコンバータを装備している。
振り回されるゲドが何とか抗おうとするものの、俺の乗るサーバインはそんなのは全く関係ないと言いたげにゲドを振り回す。
激しく振り回されるゲドのパイロットは、当然だがただですむ筈もない。
あれだ。SEED世界で開発されて、シャドウミラーでも使われているPS装甲。
実弾が命中してもPS装甲そのものは破壊されないが、衝撃はパイロットにも十分に伝わるといったような奴。
実際には色々と細かいところは違うが、機体に被害を与えないようにしてパイロットにダメージを与えるといった意味では同じと言ってもいい。
そうしてある程度の時間が経過したところで、回転を止める。
ショットクローのワイヤーが関節に巻き付いている以上、長時間振り回すといったような事をした場合、最悪ゲドが破壊されてしまいかねない。
せっかくゲドを無傷で入手したのだから、そのゲドを破壊するといったような真似はしたくないと思うのは当然だった。
そんな訳で、加減は必要だろう。
最悪、パイロットも死んでしまいかねないし。
ナムワンに戻り、慎重に……それこそ、ゲドが動いたらすぐにでも行動に移れるように準備しながら、ガラリアに声を掛ける。
「ガラリア、いいぞ。ただし、くれぐれも注意しろよ。何かあったらすぐにこっちで行動に移るからな」
『分かりました』
そう言い、ガラリアは部下に指示をしてゲドに近付いていく。
慎重に動いているその様子は、ガラリアがゲドの性能を十分に知っているからだろう。
オーラバトラーとしては最初に開発された機体であり、性能という点ではサーバインやダンバインは当然の事、ドラムロやダーナ・オシーにも及ばないゲドだったが、それでもオーラバトラーはオーラバトラーだ。
俺のように生身でも相応の強さを持っているのなら、ゲドを相手にしても対処出来るかもしれないが、バイストン・ウェルの人間が生身でゲドをどうにかするのはまず不可能だ。
ドレイクの部下として、ガラリアはゲドについて深く知っている為に慎重に行動しているのだろう。
結果として、その判断は慎重にすぎた。
俺が振り回した事により、ゲドのパイロットは気絶していたのだ。
そこまで激しく振り回したつもりはなかったんだが、随分とだらしないな。
そんな風に思ってしまってもおかしくはないだろう。
ともあれ、ガラリアは安堵した様子を見せながら部下に命令して気絶した兵士を連れていかせる。
『アクセル王、感謝します』
「気にするな。こっちはゲドを確保出来たから、問題ないしな。ああ、そうだ。感謝の気持ちがあるのなら、マーベルが切断したゲドの手足を拾ってきてくれると嬉しい」
『了解しました』
ガラリアは俺の言葉にそう頷くと、すぐに他の部下に指示を出す。
それを見ながら、俺はサーバインのコックピットから下りる。
元々、ナムワンにはオーラバトラーを6機しか搭載出来ない。
そういう意味では、今まで搭載されていたのはサーバインとダンバインだけだったのだが、それ以外にもガラリア率いる部隊が運用するドロがある。
だからこそ、1機の完璧な状態のゲドと、四肢が存在しないゲドは、何気に格納庫の中で邪魔になっていた。
こういう時、しみじみと空間倉庫の能力があった事を嬉しく思うよな。
『おおおお』
いきなり消えたゲドの姿に、近くにいた者達は驚きの声を上げる。
中には、俺が空間倉庫の能力を持っているのを知っている者もいるだろうし、そこまで驚く必要もないと思うんだが。
バイストン・ウェルの人間にしてみれば、何度見ても驚くべき光景といったところか。
それでも何度も繰り返し見ていれば、そのうち慣れてくるとは思うんだが。
「これで場所は空いたな、そっちのマーベルが破壊した方のゲドは、ガラリアの部下が手足を持ってきたら、纏めて収納するからそのつもりでいてくれ」
「私が破壊したって言い方は、正直どうかと思うんだけど」
不服そうな様子を見せるマーベル。
女の身としては、やはり自分が壊したといった表現は面白くないのだろう。
マーベルの場合はお淑やかって感じじゃないと思うんだが。
そんな疑問を抱くが、それを口にするような真似はしない。
もしそんな真似をしたら、それこそマーベルの機嫌を損ねるのは確実だからだ。
「次からは気をつける。それより、こっちの被害はどれくらいだ?」
部下に指示を出し終え、こちらに戻ってきたガラリアに尋ねる。
敵襲の報告があってからかなり素早く出撃したが、それでも当然ながら俺達が出撃するまでにはある程度の時間が掛かっている。
ましてや、向こうは身体能力に長けているし、ユニコンに乗っているガロウ・ランの盗賊達だ。
その展開速度という点では、間違いなく素早い。
もっとも、ゲドの一件を見れば分かるように、敵の中にはガロウ・ランだけではなくクの国の貴族が背後にいる可能性は非常に高い。
貴族と盗賊では、どうしてもその動きには差が出て来てしまう。
実際に俺達が出撃してガロウ・ランを倒してから少しして、それでようやくゲドが姿を現したのだから。
「そうですね。死者は10人弱、怪我人はその数倍といったところです」
「やっぱりそれくらいの戦死者は出るか。こっちも急いで出撃したんだがな。そうなると、ナムワンの周辺を警戒するのは、艦内から行うべきだと思うか?」
「それは、どうでしょう? 艦内からの見張りとなると、どうしても死角が出来ます。ガロウ・ランの能力を考えれば、その死角から攻撃してくるという可能性は否定出来ません」
いっそ、スライムや炎獣を使うか?
そう思ったが、俺の手札を大々的に知らせるのは問題だろう。
炎獣も、今のとこはマスコットキャラ的な存在と認識されてるし。
取りあえず、ナムワンの警戒に関してはガラリアの部下に任せるしかないといったところか。
「分かった。なら、そっちは任せる」
「はい。今度はもっと素早く反応させて貰います」
そう言い、ガラリアは俺の前から立ち去る。
早速部下に命令を出しに行ったのだろう。
こうして見ると、何だかんだとガラリアってやっぱり有能なんだよな。
自分の手柄だけを考えているといったところから抜け出せれば、間違いなく有能な人物になるんだろうけどな。
バーンの方がドレイクに重用されているのも、その辺りが関係しているのだろうし。
だからといって、長年染みついた性格はそう簡単に変える事は出来ないのだろうが。
それを変えるとしたら、ゼットの……
「愛だな」
「え? ちょっと、アクセル。何を急に言ってるの?」
「ん? ああ、悪い。ちょっと考えてただけだよ」
「それが愛について? 言っておくけど、ガラリアには決まった人がいるわよ? 正確にはまだ進展中といったところだけど」
どうやら、マーベルもガラリアとゼットの事については理解していたらしい。
ガラリアもゼットも、お互いに異性慣れしてるようには見えない。
ガラリアは自分の父親の名誉を回復する為に集中してきた感じだし、ゼットの場合は元々が技術畑一辺倒であまり女慣れしているようには見えない。
考えてみれば、よくガラリアとゼットという全く似合いそうにない2人が順調に進展中というところまでいけたな。
「ゼットだろ、知ってるよ。よく2人で話しているところとかも見るしな。俺が言った愛ってのは、ゼットとガラリアの愛だよ」
「ふーん。ならいいわ」
俺の言葉に本当に納得したのかどうかは、分からない。
だが、それでもマーベルはそれ以上追求してくる様子はなかった。
マーベルにしてみれば、取りあえず俺がゼットとガラリアの仲を裂こうとしている訳ではないと知り、安心したのだろう。
俺がどういう風に思われてるのか、少し知りたいよう気がしないでもないが。
ただし、恋人10人以上と同棲している身としては、そちら方面で素直に信じられなくても、仕方がないと思ってしまうが。
「ともあれ、今回の件でそう簡単に俺達を襲ってくるといったような真似はしにくくなった筈だ。だとすれば、ケミ城到着まではあまり警戒する必要はないかもな」
「露骨に話を逸らしたわね」
呆れの視線を向けられるものの、それは気にしないで話を続ける。
「敵にしてみれば、ゲドは相当高価な代物だ。それを2機も失った以上、次の戦力を用意出来るかどうかは分からないし、用意出来たとしてもゲドやドロといったオーラマシンは難しい筈だ」
話を続けると、マーベルもこちらの話に付き合う気になったのか頷いてくる。
「そうね。クの国の国王ですら、一度の取引で購入出来るゲドやドロはナムワン1隻に搭載出来る分だという話だし。今回は私達がいるから、それにプラスして幾らか多くはなってるみたいだけど」
「つまり、それだけ高価な訳だ。そんなオーラマシンが破壊されたんだから、それこそクの国の貴族であっても、そう簡単に入手は出来ない筈だ。経済的にも痛いのは事実だろうな」
ゲドやドロが1機どのくらいの値段で売られてるのかは、俺にも分からない。
だが、貴族であっても安い買い物でないのは間違いないだろう。
そんなオーラマシンが、俺達を襲撃すると破壊されたり、場合によっては鹵獲されてしまうのだ。
それを考えれば、ビショットという国王に思うところがあっても、そう簡単に戦力を出すといったような真似は出来ない筈だった。
「だとすれば、再襲撃はないと思ってもいいのかしら。なら、楽なんだけど」
「今回と同じ敵からの再襲撃はないと思ってもいい。……問題なのは、別の相手からの襲撃はあるかもしれないってところだろうけどな」
今回の襲撃が1人の貴族によるものだった場合、それこそ別の貴族がまた襲撃してくるといった可能性は決して否定出来ないのだ。
であれば、一度襲撃に対処したからといって完全に安心出来るといったような事はまずないだろう。
「あると思う?」
「なければいいと思う」
マーベルにそう返す。
どうせ襲撃するのなら、個別に襲ってきて戦力を小出しにするのではなく、戦力を集中させた方がいいのは間違いない。
バイストン・ウェルというファンタジー世界でも、戦力の分散は各個撃破されるだけだと理解するだろうし。
「そうね。なければいいわね」
マーベルも俺の言いたい事は理解出来たのか、そう言葉を返すのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650