シルキーの力を使った召喚……それによってバイストン・ウェルにやって来た地上人の姿は、3人。
てっきり1人だけだと思っていただけに、驚くのは当然だろう。
召喚でやって来るのが1人だけだと思っていた理由は、マーベルの件があった為だ。
マーベルが召喚された時、俺以外にいたのはマーベルだけだった。
それはつまり、エ・フェラリオの力で召喚出来るのは1人だけだと思っていたのだ。
ショットとゼットという2人の地上人がいたが、これは2人同時に召喚されたのではなく、1人ずつ2回に渡って儀式を行い、バイストン・ウェルに召喚したのだろうと思っていたんだが……予想外だったな。
「シルキーを水牢に戻してやれ」
建物の中から見下ろしていたドレイクの指示に従い、倒れそうになっていたシルキーを兵士が連れていく。
一応丁寧な扱いになっているのは、やはりマーベルの目を気にしての事だろう。
実際、ドレイクの言葉を聞いたマーベルはシルキーの方に視線を向け、そこで丁寧に扱われているシルキーを見て満足そうにしていたし。
ともあれ、シルキーが運ばれていくのを見てから、改めて気絶している3人の地上人に視線を向ける。
……いや、その前に少し離れた場所にあるバイクに視線を向けるべきか?
恐らくはこの3人の中の誰か……というか、ヘルメットを被っている格好からして、その人物が乗っていたバイクなのだろう。
もしかしてバイクに乗っている最中にバイストン・ウェルに召喚されたのか?
だとすれば、かなり危険だな。
いやまぁ、召喚された時にバイクは動いていなかったから、危ないといった様子はないのだろうが。
ヘルメットを被っている男は、どんな顔をしているのか分からない。
だが、他の2人は典型的なアジア人が1人に、金髪のアメリカ人。
いやまぁ、金髪だからといってアメリカ人とは限らないのだが。
それこそ、イギリスだったりロシア――この世界の地上だとソ連らしいが――だったり、他にも金髪の人種が住んでいる場所は多い。
その辺りの事は、起きてから……いや、もう起きるか。
ヘルメットを被っていた男の手が小さく動いたのを見て、そう判断する。
そして上半身を起こした男は、そのままヘルメットのバイザーを上げた。
何が起きているのか、全く理解出来ていない様子で周囲を見る。
いやまぁ、普通に生活していた状況で、まさかバイストン・ウェルというファンタジー世界に召喚されるとは思いもしないだろう。
寧ろ冷静に現在の状況を確認しようとしている辺り、それなりに有能な証といったところか。
と、そんな中で不意に夜の空を光っている何かが飛ぶ。
「フェラリオだ!」
「ギブン家の奴か!」
そんな会話が周囲に響いた。
どうやら、一瞬見えた光はフェラリオで、ギブン家に所属……いや、フェラリオの性格を思えば、協力しているといったところか。
そんなフェラリオを見て、兵士達が弓を手に構えて周囲を探す。
だが……既にフェラリオの姿は夜の闇に塗れて消えている。
にしても、もし本当に今のフェラリオがギブン家に協力しているのだとすれば、ドレイクが聖戦士となりえる地上人を……それも3人も召喚に成功したという情報は、ギブン家に知られてしまった事になるな。
それはちょっと厄介だな。
「なぁ……聞こえているか?」
不意に聞こえてくるそんな声。
声のした方に視線を向けると、そこには召喚された3人のうちの金髪の男がこちらを見ていた。
何故俺に……もしくは俺の隣にいるマーベルに声を掛けたのかは、分からない。
あるいは本能的なもので、俺やマーベルがバイストン・ウェルの人間ではないと判断したのか。
だが、外見だけで俺とマーベルをバイストン・ウェルの人間ではないと判断するのは、難しいんだがな。
この世界に転移してきた時ならともかく、今となっては俺もマーベルもバイストン・ウェル風の……ファンタジー風の、と言い換えてもいいかもしれないが、そんな服装となっている。
そうである以上、俺とマーベルを外見だけで自分の同胞と認識するのは難しい筈だ。
いやまぁ、マーベルは男の同胞かもしれないが、正真正銘の異世界から来た俺はそういう意味でも同胞ではないのだが。
「何だ?」
「これは、一体何が起きている? 俺は基地にいた筈だ。それがこんな場所にいるなんてのは、おかしいだろ?」
「だろうな。簡単に言えば、お前達はこのバイストン・ウェルというファンタジー世界に召喚された訳だ。映画とかでもそういうのはあるだろ?」
この時代にどのような映画があるのかは分からないが、ファンタジー映画とかはあってもおかしくはない。
とはいえ、この時代はともかく世界にそういう映画があるのかどうかといった事は分からないが。
しかし、幸い金髪の男は俺の言葉に納得したらしい。
もしかしてそういう映画を見た事があるのかもしれないな。
「そんな事が……」
「現在の自分がどこにいるのかを思えば、納得するしかないと思うけどな」
にしても、この男は基地と言ったよな。
つまり、軍人か?
いやまぁ、軍人ではなくても基地で働いているような者もいるだろうから、基地から来ても軍人ではないという可能性も否定は出来ないんだが。
この世界の騎士と地上界の軍人。
そんな2人が戦ったらどうなるか見てみたい。
もっとも、銃火器の類がない以上はこの男の方が負けると思うが。
「それで……」
「取りあえず今は大人しくしておけ。この状況でお前に構ってばかりはいられない。色々と聞きたい事はあるだろうが……いや、そうだな。その前に名前くらいは聞いておくか。俺はアクセル・アルマー。こっちはマーベル・フローズンだ」
「トッド・ギネス」
短く自分の名前を名乗った男……トッドに頷くと、バーンとガラリアの2人と話をしている、ヘルメットを被った男の方に視線を向ける。
ちなみに最後の1人は未だに気絶したままで、目が覚める様子はない。
「アクセル、向こうが少し険悪な様子よ? 止めた方がよくない?」
マーベルの言う通り、バーンとガラリアの2人と向き合う男の雰囲気は間違いなく険悪な代物だ。
元々が強制的にこのバイストン・ウェルに召喚されたのだから、召喚された方にしてみればそのように思ってしまうのもおかしくはないだろう。
元々俺がドレイクのように離れた場所でこの光景を見ているのではなく、すぐ側にいたのは、こういう時の為だ。
そう思ってふと視線を建物の方に向けると、既にそこにはドレイクどころかルーザやリムルといった面々の姿もない。
ドレイクにとっては、念願の地上人の……いや、聖戦士の獲得だ。
もう少し喜んでもいいと思うんだが。
ともあれ、今はまずバーン達を止める方が先か。
「いいな? 大人しくしていろよ? ここでは地上界の理屈は通じない事が多い。……マーベル、俺はバーン達をどうにかしてくるから、お前はトッドにバイストン・ウェルについて説明してやってくれ」
「ええ」
「助かる」
トッドは取りあえずこっちを敵視するといったような真似はしていない。
ある程度話が通じるというのが分かったというのもあるが、元々慎重な性格でもあるのだろう。
まぁ、基地にいたって話だったし、そう考えれば軍人だから納得も出来ない訳ではないが。
とはいえ、普通の軍人が強制的に転移させられて混乱して暴れたりしない辺り、聖戦士の素質を持っているのかもしれないが。
バイストン・ウェルについて説明を始めたマーベルをそのままに、険悪な雰囲気で言い争っているバーン達の方にいく。
先程まではバーンとガラリアがヘルメットの男と言い争っているように思えたのだが、今はガラリアはゼットの隣に移動してバーン達の言い争いを眺めていた。
「その辺にしておいたらどうだ? そっちのヘルメットの奴も、今はいきなりで何が起きたのか分かってないんだろう? なら、まずは現状を把握した方がよくないか?」
「断る! 何で俺がいきなりこんな場所に連れてこられて、その指示に従わないといけないんだ!」
ヘルメットの男は、苛立ち混じりに叫ぶ。
この状況を思えばおかしくはないが、それでも少し頭に血が上りすぎだろう。
トッドの事があるからこそ、余計にそう思えるのかもしれないが。
「いい加減に大人しくしなければ、こちらとしても力ずくで進めさせて貰う」
俺とヘルメットの男のやり取りに割り込むように、バーンがそう言う。
バーンにしてみれば、ここで俺に助けられる……正確には干渉されるのは、面白くないのだろう。
だからこそ、こうして無理矢理にでも話を収めようとしたのだ。
どうする? とそう思った一瞬、ヘルメットの男は素早く前に出た。
何らかの格闘技を習っているのだろう。その動きは一般人よりも明らかに上だ。
それこそ、ドレイクの部下でも普通の兵士であれば倒すことが出来ただろう。
だが……バーンは、元々騎士の中でも最強の人物だ。
それでいて、未だに騎士達と俺の訓練は続いており、オーラバトラーの模擬戦は受けないバーンだったが、生身での模擬戦は寧ろ積極的に挑んでくる。
結果として、バーンの生身での戦闘力は俺が最初に会った時に比べると明らかに上がっていた。
顔面に向かって放たれた拳を回避し、カウンターの一撃を放つ。
ヘルメットに向かって放たれた一撃は、本来ならバーンの拳にダメージを与えてもおかしくはない。
しかし、バーンの拳が放たれたのは、ヘルメットではあってもバイザーの部分。
そしてヘルメットの男はバイザーを上げていたので攻撃を防げる筈もなく、バーンの一撃によってあっさりと気絶するのだった。
「バーン! やりすぎだ!」
気絶した男を前に、ガラリアが叫ぶ。
今の一撃はかなりの威力だったしな。
下手をすれば顔面の骨を折ったりといった事にもなりかねない。
このバイストン・ウェルはファンタジー世界だが、回復魔法なんて便利なものはない。
いやまぁ、俺の空間倉庫にはネギま世界とかペルソナ世界で入手した回復薬があったりするのだが。
「この者はオーラロードに乗るだけの力の持ち主だ。手加減をすれば、私がやられていた」
気絶した男を見て、バーンが呟く。
にしても、真っ先にバーンに喧嘩を売る男か。
見た感じだと日本人のようだし、もしかしてこの男がこの原作の世界の主人公なのかもしれないな。
トッドとこのヘルメットの男と一緒に転移してきたもう1人の未だに気絶したままの男も外見的には東洋人だから、そっちが主人公という可能性も……いや、ないか。
それでもバーンの言葉を使うのなら、オーラロードに乗ってバイストン・ウェルに召喚されるだけの素質は持っている訳で、そう考えるとこの男も聖戦士に相応しい実力は持っているのかもしれないが。
「地上人達を部屋にお連れしろ。だが、決して外に出すな。それとそちらの地上人の兜は脱がせておけ」
バーンの指示に従い、兵士達はそれぞれ行動を始める。
兜……ヘルメットを脱がせると、そこにあったのは日本人らしい顔。
気絶している男2人は、兵士が複数で連れていく。
そんな中で、マーベルから色々と話を聞いていたトッドは、唯一自分の足で歩いて兵士達と共に移動した。
その表情に不安そうな色があまりないのは、元々の性格もあるだろうが、ある程度マーベルからバイストン・ウェルについての話を聞く事が出来た為だろう。
勿論、この短時間でバイストン・ウェルについての全てを完全に聞いたとは思えない以上、大雑把な内容だけだろうが。
「で、トッドはどうだった?」
「やっぱりアメリカ軍に所属していたみたいね。正確には空軍のパイロット候補生だったみたい」
「へぇ。だとすれば、オーラバトラーの操縦も期待出来るかもしれないな」
オーラバトラーの操縦は、イメージの力が大きな意味を持つ。
そういう意味では、パイロット候補生として空を飛ぶという行為に慣れているだろうトッドは、オーラバトラーを使った空中戦は得意な可能性が高い。
とはいえ、マーベルを見れば分かるように、そういうのはなければないでどうにか出来たりするんだが。
「そうね。ただ、この状況に適応しすぎているというのが、少し気になるけど」
「そうか? この状況に適応出来ているってのは悪い話じゃないと思うけど。にしても、色々と特徴的な3人が召喚されたな」
いきなりバーンに喧嘩を売る男に、適応性が高いトッド、結局最後まで起きることがなかった男。
バイストン・ウェルに召喚されたという点で、普通にどうこうしろって方が無理なのかもしれないが、それでもそういう相手を選んで召喚したのではないかと思うくらいだ。
とはいえ、強いオーラ力を持っている相手を召喚するという事は、そういう相手を選んで召喚しているというのも間違ってはいないのかもしれないが。
ただし、マーベルはそういう意味では普通の女なのは間違いない。
「何?」
俺の視線に気が付いたのか、マーベルがそう尋ねてくるが、俺は何でもないと首を横に振る。
「新たな地上人が3人……これでまた、色々と大きな動きがあるのかもしれないと、そう思ってな」
その言葉にはマーベルも考えるところがあったのか、頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650