翌朝、俺は城に行く前にダンバインの訓練をしているという場所に顔を出す。
今日襲撃に行くのに、今日初めて訓練をするってのは普通なら考えられないよな。
「アクセル王、マーベル、一体どうしてここに?」
影のゲートで転移してきた俺とマーベルに気が付いたのか、ドラムロの調整をしていたガラリアは驚きながらこっちに近付いてくる。
ガラリアの俺を見る目には、以前までと違って不審の色はない。
魔法を教えたり、マーベルとの付き合いの延長線上でそれなりに話すようになったおかげだろう。
とはいえ、だからといって俺に好意的なのかと言えば、その答えは否なのだが。
最初の好感度がマイナスだったがようやく0になり、そしてようやくプラスに転じ始めたといったところか。
「トッド達が今日ガラリアと一緒に出撃すると聞いてな。……それで、どんな具合だ?」
「聖戦士と呼ばれるだけの事はあるかと。初めてオーラバトラーに……それもダンバインという機体に乗ったというのに、3人共十分に動かせています。ただ、トカマクが他の2人に比べれば劣りますね」
ガラリアの言葉に、空を飛んでいる3機のダンバインに視線を向ける。
その中の1機、深緑色の機体だけが飛行高度が他の2機に比べて低いし、空中で動かす機体制御もかなり稚拙だ。
オーラロードを使って召喚された以上、トカマクも聖戦士としての資質は間違いなく高い。
にも関わらず、ああしてダンバインの操縦が拙いところを見ると、オーラ力が足りないからダンバインの性能を発揮出来ないといった訳ではなく、オーラバトラーを操縦する上で重要な想像力の方が問題なのか。
この辺に関しては、結局のところアドバイスするのは難しい。
本人の実力だったり、それ以外だとアニメや漫画、ゲームとか、そういうのであれば、想像力とかで対処出来そうな気もするんだが。
あ、でもアニメや漫画じゃなくて、映画とかでも見ていればどうにかなりそうか。
ともあれ、想像力というのは今まで自分がどんな経験をしてきたのかというのが影響している。
実際にショウやトッドは見るからに上手い具合にダンバインを操縦出来ているのだから。
それを考えれば、トカマクはやはり他の2人に1歩遅れていると言ってもいい。
「ガラリア、トカマクのことをよく見ておいた方がいい。あの動きから考えると、場合によってはあっさりとギブン家の連中に殺されるかもしれないぞ」
「分かっています。いざという時は、私が守ることになるでしょう。ドラムロにはそれだけの力がありますから」
俺の言葉に、そう言ってくるガラリア。
昨夜話したドレイクは、死んだら死んだで構わないといったような様子だったんだが、ガラリアの様子からするとその辺は聞いてないのか?
だとすれば、ドレイクは俺にだけ言ってきたところか。
つまり、ドレイクにとっては公にするべきことではない、と。
もっとも、今の状況を思えばドレイクもそんな事を公言出来ないのだろうと思うが。
「それにしても、てっきり昨日の流れから考えるとバーンがギブン家を攻撃するのかと思ったんだけど。ガラリアが出るとは思わなかったわね」
マーベルの視線にガラリアは微妙な表情を浮かべる。
ガラリアにしてみれば、昨夜の園遊会では深追いしたことに後悔をしているのだろう。
いや、この場合の後悔というのは深追いした事ではなく、深追いしたことによって敵の反撃を受けてしまった事か。
とはいえ、功に逸るというのはガラリアの性格というか……性質? うん、性質のようなものだ。
それを思えば、昨夜のガラリアの深追いを止めるような真似は出来なかっただろう。
ゼットが止めていれば、もしかしたら止まったかもしれないが。
「お館様も最初はバーンに任せようとしたらしい。だが、昨夜の騒動ではバーンが動くよりも私の方が早く動いたというのが評価されたらしい」
ガラリアの台詞から考えると、多分今回の指揮をガラリアが執るようにドレイクに進言したのはバーンなんだろう。
バーンが何を考えてそのような真似をしたのかは分からないが。
バーンにしてみれば、ガラリアを自分の影響下に戻したいと思ったのか。
とはいえ、ガラリアが俺と敵対的な存在だったのは間違いないが、別にバーンに従っていた訳ではない。
いや、自分の上司という意味では従っていたのだろうが、バーン個人の部下という意味では従っていた訳ではないのだ。
であれば、ガラリアがバーンの行動に決して好意的に思わないのは間違いない。
それでもギブン家に攻撃をするというのが自分の手柄になると、ガラリアは今日の仕事を引き受けたのだろうが。
その中には、昨日はいいようにしてやられた事に対する報復という意味もあるのだろう。
「他の連中もいるから昨日のような事にはならないと思うけど、一応気をつけろよ」
「そうします」
ガラリアは功に逸るといったような事がなければ、かなり優秀な人材なんだが。
しかし、本人はそれを直そうとはしない。
いや、もしくはそれが自分の一部だと判断しており、だからこそ気にしていないのか。
「でも、トッド達の様子を見て、それでギブン家も攻撃するんでしょう? かなり大変じゃない?」
「そうだな。せめてもの救いは3人全員を見なくてもいいといったところか」
ガラリアの視線が向けられているのは、トカマクの乗っているダンバインのみだ。
その気持ちは十分に理解出来た。
3人の中で一番死にやすいのは、トカマクだろうし。
ギブン家の方でも、倒せるべき敵は倒したいと思うのは当然だろう。
多分、トカマクはニーと戦っても負けるぞ。
とはいえ、それはダンバインが非常に高いオーラ力を必要とするからの話であって、それに対してニーが乗っているのはバイストン・ウェルの人間でも普通に操縦出来るダーナ・オシーだ。
オーラ力では間違いなくトカマクの方が強いのだろうが、オーラ力の強さが戦力の決定的な差ではないといったところか。
ダーナ・オシーよりもダンバインの方が性能は高いのだろうが、問題なのはその高性能を使いこなせるかどうか。
もっとも、ニーの方が強いというのは、あくまでも今の状況での話だ。
トカマクが戦いを経験して成長すれば、その時は聖戦士としてニーでは勝ち目がなくなるだろう。
問題なのは、トカマクがそこまで生き残れるかどうか。
「トカマクにしてみれば、この戦いを生き延びることが出来れば1つの壁を越えたと言ってもいいだろうな。問題なのは、今日の戦いで生き残れるかどうかだろうが。……ガラリア、それはお前に掛かっているぞ」
「分かっています」
そう返事をしてくるガラリアだったが、本人としてはあまり気が進まないのだろう。
若干不満そうな色がある。
ガラリアにしてみれば、自分で直接ギブン家を攻撃して手柄を挙げたいと思っていたらしい。
「ねぇ、ちょっとアクセル。あれ、大丈夫だと思う?」
マーベルのその言葉に一体何が? と思ってその視線を追うと、3機のダンバインは空中で機体を動かすのに満足したのか、地上に向かって降下してきていた。
それは問題ない。
オーラバトラーはパイロットのオーラ力や周囲のオーラ力によってオーラコンバータを動かしているとはいえ、そうなれば当然オーラ力を大きく使ってしまう事もあるし、もしくは集中力が続かない可能性もある。
これからギブン家の襲撃に行くのだから、余計に消耗は抑えた方がいい。
しかし、地上に降下してくるのはいいのだが、その中の1機……トカマクの機体だけが、着地する体勢を取るのに苦戦していた。
ショウとトッドのダンバインは、特に何の問題もなくスムーズに地上に降りてきているのに対すると、トカマクの機体は空中で大袈裟な程に身体を動かしていたのだ。
これは……下手をすると、着地に失敗して地面にぶつかるぞ。
そんな俺の懸念とは裏腹に、空中でバランスを崩したダンバインは手足を全て使って何とか着地する事に成功する。
土下座……いや、土下寝? これもちょっと違うな。腕立て伏せをするような体勢になって何とか地面に着地したのだ。
やっぱり、トカマクの操縦技術は色々と危険だな。
「ガラリア」
「分かっています」
表情を変えずに言葉を返してくるガラリアだったが、本人は明らかに不満そうな様子だ。
とはいえ、トカマクは初めてオーラバトラーに乗ったのだから、多少の不満はしょうがない。
そんな風に考えていると、馬車に乗ったショットが姿を現す。
ガラリアがいるんだから、ゼットも来るのかと思ったが。
ゼットはゼットで色々と忙しいらしい。
恋愛惚けはしていられないといったところか。
「アクセル達も来てたのか」
「ああ。何しろ、聖戦士の初出撃だからな。それに、俺が仕事に行く前にちょっと顔を見せておこうと思ったんだよ」
「ああ、ダーナ・オシーか」
オーラバトラーの最高責任者だけあって、ショットも俺がダーナ・オシーを奪ってくる件についてはドレイクから聞かされていたらしい。
普段は冷静なショットだが、やはり未知のオーラバトラーには興味があるのか言葉に少し熱が入っている。
とはいえ、ギブン家に亡命――という表現がこの場合正しいのかは分からないが――したのは、元はショットの部下だった連中だ。
当然ショットもそのような者達がどのようなオーラバトラーを作るのかというのは大体予想出来ているだろうし、昨夜の園遊会で直接見てもいる。
だが、それでもやはり実物を見たいと、そう思ってしまうのは技術者としての業といったところか。
実は空間倉庫の中にダーナ・オシーが1機完璧な状態で存在しているってのは、言わない方がいいよな。
「うむ。昨夜見た限りでは、ダンバインは勿論だが、ドラムロにも及ばないようには見えた。だがダンバインとはまた違う意味でゲドの後継機である以上、興味を持つなという方が無理だろう?」
「最初のオーラバトラーのゲドだけに、そこから発展させたことで開発期間を縮めるといったような目的もあったんだろうな」
と、そんな風に会話をしている中にトッドが入り込んできた。
「オーラ力だっけ? それで動くってのは、乗っていて何となく分かる気がするな。あれをあんたが作ったんだろう?」
へぇ、その辺を理解出来るというのは、なかなかに鋭い。
パイロット候補生で、戦闘機とかに乗った経験があるというのもそうだが、やはりそれ以上にオーラバトラーに乗る才能を持ってるって事なんだろうな。
「慣れれば、パワーアップもするっていうの?」
続いてショウがそう尋ねる。
こっちもまたトッドと同様にオーラバトラーのパイロットとして、高い才能を持っているのだろう。
「勿論だ。オーラバトラーの力をコントロールするのは、人の生体エネルギー……それがオーラ力だ。元々オーラコンバータにはそのような性能があったが、特に聖戦士用に開発されたダンバインは、その性能に特化していると言ってもいい」
ショットの言葉に嘘はないと判断したのだろう。
ショウはそれ以上はダンバインについて尋ねるような真似はしなかったが、次にガラリアに視線を向けて口を開く。
「それで、俺はいつ地上に帰れるんだ?」
「私に聞かれても困るな。だが、今のショウ殿はあくまでも地上人であり、聖戦士候補であっても聖戦士ではない。本当の意味で手柄を挙げて聖戦士と認められれば、お館様もその辺を考えるだろう。もっとも、その時に地上に戻りたくなっているかどうかは分からないが」
「それ、どういう意味だよ」
自分が地上に戻れる時に戻らないという選択をするといった言葉が面白くなかったのか、ショウは不満そうな表情を浮かべる。
「手柄を挙げれば、相応の地位が得られる。当然そうなれば多くの利益もある。それを考えて、その上で地上界に戻りたいと言うのであれば私も止めるつもりはありませんが」
「そうだな。昨日バーンにもカリフォルニアくらいの土地は貰えると、そう言われたのだろう? 地上界で生きていれば、そのよう機会はあるまい」
ガラリアの言葉にショットが続き、それを聞いたトッドとトカマクの2人は興味深そうな表情を浮かべていた。
それに対して、ショウの方はそちらにはあまり興味を示してはいない。
この辺は育ちだったり性格だったり色々とあるんだろう。
そんな中でも、地上に戻りたいと思っているのだろう。
強い上昇志向や、もしくはこの時代の地上界にあるのかは分からないが、異世界に召喚されて冒険をするといったような漫画とかがあって、それに興味を持っていたりすれば、多少話は違ったのかもしれないが。
「ともあれ、どうするにしてもまずは活躍をしてからでしょう。地上人の方々、そろそろ出撃をしたいが、よろしいか?」
そんなガラリアの言葉に、トッド達は頷いてダンバインのある方に向かう。
ガラリアもまた、俺に一礼してから自分のドラムロのある場所に向かった。
「では、私は機械の館に戻ろう。アクセル、ダーナ・オシーを楽しみにしてるよ」
ショットもまた、そう言うと馬車で去る。
「で、俺はこれからギブン家に行く訳だが。マーベルはここに残るって事でいいのか?」
「ええ。あの3人が無事に帰ってくるところを見ておきたいから」
そう告げるマーベルに頷き、俺はその場から影のゲートで立ち去るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650