ドレイクにフラオンからの要請――という名の命令――が来てから、5日。
いよいよギブン領に攻める日となった。
既にフラオンが派遣した軍勢はギブン領とルフト領の近くまでやって来ており、もうすぐ戦いは始まる。
ちなみに、俺がいるのはラース・ワウ……ではなく、その戦場から少し離れた場所にあるドレイク軍の陣地だったりする。
本来なら、俺は今回の戦いに参加する予定はなかった
それでもこうして戦場の近くにやって来ているのは、ドレイクからもし何かあったら仕事を頼みたいと言われているというのもあるし、場合によっては……本当にこれは運に左右されるが、もしかしたらゼラーナを確保出来るかもしれないという思いがある。
「アクセル王、機体の調子はどうだ?」
部下からの報告を聞いていたドレイクが、そう尋ねてくる。
ドレイクは元々強面の顔だし、頭も剃っている。
その為、傍目からは悪人のようにしか見えないな。
もっとも、この世界の原作の主人公のショウがギブン家に亡命したというのを考えると、もしかしたらドレイクは原作で敵だった可能性は否定出来ないが。
「俺のサーバインは問題ない。マーベルのダンバインも今は調整中だ」
この辺りも、サーバインとダンバインの性能の違いといったところか。
サーバインはメンテナンスフリー……というのは少し大袈裟だが、それでもダンバインよりはメンテナンス回数は少なくてすむ。
それだけパイロットとして操縦するのは厳しい機体なのは間違いないが。
「そうか。……もしかしたら、アクセル王に出て貰う事になるかもしれん。そのつもりでいてくれ」
「何か報告でもあったのか?」
部下からの報告を聞いて、その報告を持ってきた部下がいなくなってから、即座にこのような事を言ってくるのだ。
それを考えれば、今の報告で何か重要な事があったと思うのは当然だろう。
何よりも、ただでさえ強面のドレイクの顔が、今は眉が顰められており、より強面になっている。
つまりはそれだけ面白くない報告があったという事なのだろう。
「フラオン王から派遣されてきた軍隊なのだが……」
「何だ? 練度が低すぎて話にならないってのか? それくらいは予想していただろ?」
だからこそ、肉壁に使った方がいいんじゃないかと、そう提案していたのだ。
にも関わらず、何故ここで俺に仕事を頼みたいと言うのか。
それが分からず疑問を抱いて尋ねると、ドレイクは大きく息を吐いてから口を開く。
「援軍の中にフラオン王の姿がある」
「……それは、また……」
ドレイクの言葉は、俺にとってこれ以上ない程に予想外だった。
フラオンが援軍を出してくるというのは分かっていたし、こうして現在は実際に出されている。
だが、それでもまさかフラオン本人がやって来るというのは、予想外でしかない。
普通に考えれば、フラオンはアの国の国王だ。
そんな人物が戦場に立つというのは、正直なところ理解出来ない。
いやまぁ、自分の事を棚に上げるなと言われれば、反論出来ないのだが。
「何だってフラオンが自分で? 少なくても俺が知ってる限りだと、自分で戦場に立つような性格をしているとは思えなかったぞ?」
そもそも、身体付きもかなりひ弱で、とてもではないが鍛えているとは言えない。
そんな人物が、何で戦場に立つ?
あるいは、これがアの国が攻められていて不利な状況で、兵士や騎士の士気を上げる目的でというのなら、納得も出来る。
いや、フラオンの性格を考えるとそんな真似は出来ないか?
「目立ちたいのだろう。あるいは自分に逆らえばギブン家のようになると、そう周囲に知らせたいのか。ともあれ、今の状況を考えると面倒な事になったがな」
そう言い、ドレイクは座っていた椅子から立ち上がる。
「どうするんだ?」
「フラオン王が来ている以上、儂が挨拶に行かない訳にはいかないだろう。少し行ってくる」
「そうか。護衛は必要か?」
「いらん。誰か騎士を連れていく」
バーンとガラリアの名前が出なかったのは、現在ギブン領の近くでいつでも攻められるように待機しているからだろう。
あ、でもフラオンが来ているという事は、フラオンの軍勢を肉壁にするってのは出来なくなったのか?
まさかフラオンがいる状態で、肉壁にする訳にはいかないだろうし。
「分かった。まぁ、気をつけろよ。ギブン家がいつ襲ってきてもおかしくないしな」
ドレイクが護衛の騎士数人と移動しているところで、ギブン家が奇襲してくるという可能性は否定出来ない。
というか……考えてみれば、それが最善の選択じゃないのか?
俺を護衛として連れてかないとドレイクが言ってるし、バーンやガラリアのように腕の立つ騎士はギブン家との戦いに備えて離れている。
そして、もしドレイクが殺されるような事があれば、ルフト領を継ぐのはリムル……になるのだが、そのリムルもいない。
いやまぁ、もしリムルがルフト領にいてもその場合はその場合で間違いなく面倒になるんだろうし。
俺を悪しきオーラ力の持ち主と認識しているだけに、捕らえようとしたり、場合によっては殺そうとしたりするだろう。
俺以外の地上人達も、リムルを相手にした場合は決して未来は明るくない。
特にオーラマシンを開発したショットやゼットは、俺よりも酷い扱いになってもおかしくはなかった。
とはいえ、現在リムルはいない以上、それはそれでいい。
ドレイクが死に、リムルがいないとなると……その場合、ロフト領を治めるのはルーザという事になる。
ショットやゼットのようにオーラマシンを開発した者達はともあれ、ルーザに憎まれている俺にしてみれば、明るい未来はない。
俺もルーザの支配するルフト領にいたいとは思えないし、かといってギブン領に行くのもごめんだ。
そうなると、残っているのはクの国か。
ビショットとは友好的な関係を築いてるし、アルダムというオーラバトラーを開発出来るだけの技術力もある。
そういう意味では、亡命先としては悪くない。
まぁ、ドレイクが死ななければ、そうなったりはしないのだが。
ドレイクの後ろ姿を見送りながら、そんな事を考える。
ともあれ、俺がドレイクの護衛になるというのは、フラオンと接触する可能性があるので止めておいた方がいい。
いやまぁ、フラオンの性格を考えれば、服の件を覚えているかどうかは微妙だが。
いや、そもそも服の件があっても俺とマーベルがフラオンと直接会った事はない。
気配遮断を使って、フラオンの姿を一方的に眺めた事はあったが。
ともあれ、そんな理由からフラオンは俺達の顔を知らない。
あるいは、俺達が服を売った店だったり、泊まっていた宿とかで話を聞いて似顔絵とかを作っている可能性は否定出来ない。
だが、その絵がどこまで精巧なものなのかは分からないし、フラオンの愚王っぷりを考えると、もし絵を見ていても既に記憶から抹消されていてもおかしくはなかった。
そういう意味では、いっそドレイクと一緒にフラオンを見に行ってもよかったのかもしれないな。
とはいえ、フラオンは愚王でもアの国がそれなりにきちんと運営されているというのを考えると、フラオンの部下には有能……とまではいかないのかもしれないが、それなりの人材がいると考えてもいい。
そしてそれなりの人材なら、もしかしたら俺とマーベルの似顔絵を覚えている可能性もある。
ただし、似顔絵があるというのはあくまでも予想でしかない。
もしかしたら、俺とマーベルが売った服で十分に満足し、それ以後は俺とマーベルは放っておかれている可能性も皆無という訳ではない。
こういうのを何と言うんだったか……微レ存?
ともあれ、その可能性がある以上、俺がドレイクと一緒に行くのは止めた方がいいか。
ただし、そうなると俺はやるべき事がなくなってしまう。
機体の調整は、サーバインの場合は万全だ。
他の面々がいるのなら、サーバインを使って模擬戦をしてもいいんだが、主な面々は既にギブン領の境界線近くに出張っている。
俺達がいるこの場所も、ギブン家からそう遠くない場所ではあるんだが。
それでも最前線となる予定の場所からは、それなりに離れている。
「アクセル、ドレイクがどこかに出掛けたようだけど、どうしたの?」
ダンバインの調整が終わったのか、こっちに近付いてきたマーベルがそう尋ねてくる。
もう少しで戦いが始まるというこの状況で、ドレイクがどこかに出掛けた。
それに疑問を持ったのだろう。
「何でも、エルフ城から来た援軍の中にフラオンがいたらしくてな。そうなると、ドレイクの立場としては挨拶をしておく必要があるらしい」
「……フラオン王が?」
俺の言葉は、マーベルにとっても意外だったのか、驚いた様子を見せる。
まぁ、フラオンの事を多少なりとも知っていれば、そんな反応になってもおかしくはないか。
マーベルは実際にフラオンの姿を見た事はないのだろうが、それでも街中の噂を聞けば、フラオンがどんな人物なのかというのは大体理解出来る。
普通なら噂というのは多少なりとも話す者の感情が混ざったりしてもおかしくはない。
にも関わらず、街中で流れている噂はかなり的確にフラオンを正しく表していた。
「ああ、何を考えてそんな真似をしたのかは分からないがな。いや、多分自己顕示欲からの行動だとは思うんだが」
フラオンの性格からすると、そのくらいしか思い浮かばない。
実は何か深い思慮の末だとか言われても、とてもではないが納得出来るものではなかった。
「でも、戦場よ?」
「別に戦場に来たからといって、最前線で戦うなんて真似はしないだろ。ドレイクだってそんな感じだし」
俺の言葉に納得した様子を見せるマーベル。
だが、フラオンの場合は何の根拠もなく自分なら大丈夫だと、そう思い込んで最前線に出るといったような真似をしかねないのが怖いんだよな。
馬鹿というのは、時々こちらが予想出来ないような行動をする事があるのだ。
「そうだといいわね。……でも、これでフラオン王が連れて来た軍は、士気が高いんじゃない?」
「どうだろうな。普通なら士気が高くなるんだろうが」
ファンタジー世界のこのバイストン・ウェルにおいて、自らが仕える主君が自分達と同じ戦場に立つ。
それは、現代戦を知っているマーベルにしてみれば、少し考えられないものだろう。
何しろ、それはマーベルにしてみれば大統領が戦場に出るといったようなものなのだから。
バイストン・ウェルがファンタジー世界であるからこその要素。
……いやまぁ、忠誠があるかどうかはともかくとして、シャドウミラーでも戦闘になればそのトップの俺が真っ先に敵陣に突っ込んでいったり、それどころか今回のようにゲートで未知の世界に転移するといったような事をしてるのだが。
ただし、俺とフラオンの間には大きな違いがある。
元々は特殊部隊の実働班を率いる者として……そして多くの戦いを経験した俺と、生まれた時から王として育てられたフラオンの違いは大きい。
というか、王として育てられた結果が今のフラオンなら、それこそフラオンを育てた乳母とか教師とかは、もの凄い無能だよな。
ともあれ、フラオンがそのような人物であるというのは、多くの者に知られている。
そんなフラオンが戦場に出て来たからといって、それで兵士達の士気が上がるかと言われれば……微妙なところだろう。
とはいえ、フラオンの周囲にはそれを言える人物はいない。
もしいれば、そもそもこんな状況にはなっていないだろうし。
「フラオン王が来たのなら、敵の攻撃の壁にするというのは難しいんじゃない?」
「だろうな。ともあれ、その辺はドレイクが交渉してくる筈だ。フラオンが戦場に来たとはいえ、後方にいるのなら肉壁にするのは問題ないだろうし。それどころか、一番槍は武人の誉れって事で、フラオンが見てるのなら余計に前線に出るといったような真似をする可能性も否定は出来ないしな」
典型的な武人といったような者がいれば、それこそフラオンの見ている前で自分から望んで最前線で戦う事を希望してもおかしくはない。
そういう武人が、あくまでもフラオンの下にいればだがな。
「どうなると思う?」
「フラオンが率いてきた軍隊は、人数だけは多い。中にはゲドを操縦出来るパイロットもいるらしいし、フラオンが自分の実力を見せつける為に……といったような事を考えてもおかしくはない。というか、その可能性はかなり高いだろうな。それに……ギブン家の方でも、まさかフラオンを倒すといった真似は出来ないし」
ギブン家が何故ここまでドレイクを敵視し、それどころかテロ染みた攻撃をしてくるのかまでは分からない。
分からないが、それでもフラオンを殺したりすれば、アの国の中に味方は本当にいなくなってしまう。
ギブン家としては、それだけは避けたい筈だった。
あ、でもそうなると……もしかしたら、ドレイクにしてみればこの戦いでフラオンが死んでくれた方が都合がいいのか?
そんな風に考えながら、俺はドレイクが戻ってくるまでマーベルと話を続けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1410
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1650