予想通り、エルフ城は既にドレイク軍によって攻撃を受けていた。
予想外だったのは、既にエルフ城が陥落寸前だったという事だろう。
勿論、まだ完全に陥落をしているといった訳ではないのだが、それでもいつ陥落してもおかしくはない。
「これは、また……」
「随分と早いわね」
エルフ城を見て驚く俺に対し、隣のマーベルも意外といった様子を隠さずにそう告げてくる。
「多分、昨日の戦いが原因だろうな。マーベルとバーン達によって、フラオン軍は徹底的に叩かれた。それによって、フラオンには殆ど戦力が残ってなかったんだろう」
ましてや、俺が聞いた話によるとフラオンは残っていた軍を纏めるような事はせず、自分の腹心――もしくは取り巻き――達と共にさっさと逃げてしまったらしいし。
戦力を纏めていれば、多少はどうにか出来たかもしれないが。
戦場に残された戦力の大半は、結局ドレイクに降伏して捕虜になるか、それぞれ好き勝手に逃げ出している。
あるいは、昨日の今日でドレイクがエルフ城を攻めるのではなく、もう少し後で攻めるといったような真似をしていれば、フラオンもアの国の他の領主達に連絡して戦力を集めるといったような真似が出来たかもしれないが。
当然だが、ドレイクもその辺を考えての行動だったのだろう。
「ともあれ、エルフ城に関しては俺達は何もする事はない。それより、ドレイクにミの国の反乱軍について知らせる方が先決だ」
「そうね」
俺の言葉に頷くものの、マーベルの視線はなかなかエルフ城から離れない。
マーベルにしてみれば、エルフ城にいるフラオンは突然自分達を指名手配して捕らえようとした相手で、更には自分達の存在を理由としてドレイクに騙し討ちをした相手だ。
とてもではないが、好意的な感情を抱けというのは無理だろう。
「マーベル、行くぞ」
そんなマーベルを見ているのが面白くなく、半ば無理矢理その手を取って引っ張って行く。
俺の行動に驚いた様子を見せたマーベルだったが、それでも次の瞬間には口元に笑みを浮かべると、抵抗せずに戦場の外で待機しているナムワンに向かって進む。
そして、ナムワンに近付くとドレイクの兵士が近付いてくる俺達に警戒の視線を向けるが、それでもすぐにその警戒を解く。
俺とマーベルは、ドレイク軍の中でも有名だからだろう。
「ドレイクはナムワンの中か?」
「は!」
「そうか。なら通るぞ」
そう言い、ドレイクが乗っているナムワンの中に入っていく。
「ちょっと、アクセル。その……もう手を離してもいいんじゃない? 兵士達に見られてるわよ?」
照れたように告げてくるマーベル。
その言葉で、そう言えばまだ手を繋いだままだったかと、そう思い直す。
「悪いな」
「いいわよ、別に謝らなくても。……嫌じゃなかったんだから」
照れ臭そうにするマーベルと共にナムワンの中を進み、特に迷う様子もなくブリッジに向かう。
何しろ、ナムワンというのは基本的に同じ形をしている。
それだけに、ナムワンを持っている俺にしてみれば、このナムワンもどこに何があるのかというのは理解出来た。
勿論、このナムワンはドレイクが乗っている以上、現在のドレイク軍の旗艦といった扱いだ。
だとすれば、普通のナムワンとは違うところも多々ある可能性は否定出来なかったが……それでも、艦内の構造は俺が使っているナムワンと違わなかった。
「ドレイクに取り次いでくれ。ミの国の件で少し問題が起きたと」
「は!」
ブリッジ前の扉に護衛として立っていた騎士は、俺の言葉に頷いてブリッジに続く扉の中に入っていく。
そして30秒もしないうちに戻ってくると、中に入るように促される。
もう少し時間が掛かると思ったんだが。
まぁ、エルフ城を見る限りでは、ドレイクが必死になって指示をするといったような事も必要なさそうだし。
そう思えば、ドレイクも暇をしていたところに俺達がやって来たのだから、そういう意味ではタイミングがよかったのだろう。
「アクセル王、ミの国の件で問題が生じたとか?」
ブリッジに特別に用意されたのだろう立派な椅子に座っているドレイクが、俺とマーベルを見るとそう言ってくる。
「ああ。でも安心しろ。問題と表現はしたが、別に俺達やドレイクにとって悪い意味での問題ではない。寧ろ、ドレイクにとっては望ましい問題と言ってもいいと思う」
「ふむ?」
俺の言葉に、意表を突かれたような様子を見せるドレイク。
問題が起きたという伝言だっただけに、何か自分に不都合な事でも起こったのかと思ったのだろうが、実際に俺に会ってみれば望ましい問題だといったように言ってきたのだ。
ドレイクにしてみれば、驚くのも当然だろう。
「結論から言えば、俺とマーベルに対してピネガンに不満を持つ集団……反乱組織という表現が正しいのかどうかは分からないが、とにかくそんな集団の者達が接触してきた」
「ほう。……ラウの国との問題か」
俺の言葉だけで、反乱軍などという者達が存在する理由を理解出来たらしく、ドレイクがそう呟く。
ドレイクにしてみれば、ミの国の中でも不満を抱いている者達の最大の理由は、やはり国王たるピネガンの駆け落ちだと理解するのは当然だったらしい。
いやまぁ、ラウの国との国交断絶を考えれば、そんな風に認識されるのは間違っていないだろうが。
「ああ。で、その連中がピネガンをミの国から引き下ろすのに手を貸して欲しいと、そう言ってきた」
その言葉に反応したのは、ドレイクではなく周囲で話を聞いていた者達だ。
まさか自国の国王を引きずり下ろそうとするとは、思いもしなかったのだろう。
もっとも、それを言うのならドレイクは現在進行形でフラオンのいるエルフ城を攻撃しているのだから、何故そこでお前達が驚く? といった風に疑問を感じたりもするのだが。
「なるほど。それで、もしピネガン王を玉座から下ろすのに協力した場合、ミの国は儂の領土になると?」
そう尋ねるドレイクは、質問をしているのではなく、実際にそのようになるのだろう? といった様子で確認を求めている様子だった。
今までの話の流れから考えると、そのように思っても無理はない。無理はないのだが……俺はそんなドレイクの言葉に対し、首を横に振る。
「いや、その辺ははっきりとしていない。恨みからか、とにかくピネガンを追い出すことだけを考えていて、その後にどうするのかは何も計画がない様子だった」
「……は?」
ドレイクの間の抜けた顔というのは、珍しい。
ただ、そんな風にドレイクが思ってしまうのは俺にも十分に理解出来てしまう。
普通なら、自国の王を追い払うといったような行動に助けを求めて来た場合、その後にどうするのか、もしくはどうしたいのかという事の展望くらいは持っていてもおかしくはない。
だというのに、協力を求めてきておきながらその辺を全く考えていなかったのだから。
「ちなみに言っておくが、その辺を考えていなかったのはあくまでも俺に接触してきた奴だけだぞ。そいつが所属している組織では、今後ミの国をどうするのかといった事を考えている可能性はある。……それでも、その辺が分からない奴を俺に接触させてきたという点に疑問はあるが」
「うむ」
ドレイクも俺の意見には賛成だったのか、低い声で頷く。
普通、手を結びたい……いや、向こうの戦力的には手を結びたいというよりは、手を貸して欲しいという相手に対して、自分達がこれからどうするのかという将来性を全く考えていない人物を接触させるのは、どうかと思わないでもない。
あるいは、バイストン・ウェルではそれが普通なのかもしれないが。
その辺の事情はともあれ、相手が利用出来る存在なのは間違いない。
「向こうがどんな考えを持ってるのかは分からないが、ともあれ、連中の戦力はともかく、ミの国の情報を入手出来るという時点で、こっちとしては利用する価値があると思うけどな。ドレイクの考えとしては?」
俺個人なら、戦力はともかく情報という点で連中はそれなりに役立つと思う。
何より、ミの国の機械の館がどこにあるのか……どこにどのくらいの戦力があるのかといったような情報を入手出来るだけで、大きな意味を持つし。
「情報は、確かに重要だ。特にミの国とこのような状況になるとは思っておらず、情報そのものはそこまでないからな」
「オーラバトラーとかは売らなかったのか?」
「ナムワンを数隻売ったし、ドロをそれなりに。後はゲドを数機……といったところか」
「へぇ、それはまた」
ミの国は、小国だ。
それこそ、国力的な意味では場合によってアの国どころかルフト領にすら負けてもおかしくはないのでないかと、そう思ってしまう程の。
そんなミの国であるにも関わらず、まさかそれなりにオーラマシンを買っていたとは思わなかった。
特にナムワンだ。
今回のエルフ城攻略に使ったのを見ても分かるように、戦艦として使うのではなく、戦力を輸送する輸送艦としても使用可能だ。
ナムワンで戦力を運んだ場合、地上を移動するのに比べると圧倒的な行軍速度を得る事になる。
特にバイストン・ウェルはファンタジー世界である以上、補給物資を運ぶのは馬車を使ったりといったような事も珍しくはない。
これが他の世界なら、トラックとか列車とか航空機とか、そういうので補給物資を運ぶ事も出来るのだが。
まぁ、ショットやゼットがいるし、現役の軍人のトッドや元軍人のトカマクもいる。
その辺を考えると、いずれ将来的にはトラックのようなオーラマシンが出来るといった可能性も否定は出来なかったが。
「国民に慕われるだけあって、有能な人物なのは間違いないんだな。……それでも自分の恋を叶える為に、ラウという大国を敵に回すのはどうかと思うが」
駆け落ちなどしなくても、それこそラウの国王フォイゾンにミの国の実力を示し、ミの国と縁を深める為に婚姻を……といった風に出来れば、国交断絶といったような事にはならなかっただろうに。
俺が知らないだけで、そうしなければならない理由があったのかもしれないが。
具体的には、ピネガン以外の人物との政略結婚の準備が進んでいたとか。
ともあれ、その辺は今の俺が特に考えるような事でもない以上、気にする必要はないか。
「儂にとっては、ピネガンがそのような人物でよかったと思うがな」
俺の言葉に対し、ドレイクはそう告げる。
実際、ドレイクにしてみれば敵対する相手なのだから、そう思うのは当然だろう。
本人が優秀であるという点で厄介なのは間違いないが、もしミの国の後ろにラウの国がついているとなれば、色々と面倒な事になってしまったのは間違いない。
それでも、既に動き出してしまったドレイクの立場としては、動きを止めるといったような事はもう出来ないだろうが。
何しろ、現在進行形でアの国の国王のフラオンが立て籠もっているエルフ城を攻撃しているのだから。
いや、攻撃しているどころか向こうの防衛戦力が少ないだけに、そう時間が経たないうちに城を攻略することになるのは間違いない。
そう思い……ふと、考えつく。
「ドレイク、これは提案というか思いつきなんだが、フラオンを意図的に逃がすというのはどうだ?」
「……何だと?」
唐突に話題が変わった事もそうだが、それ以上に俺の口から出て来た言葉が意外だったのか、ドレイクは数秒沈黙した後でそう言ってくる。
いや、それでも数秒の沈黙程度だったのはドレイクだからこそか。
他の面々は、俺の言葉に唖然とした様子を隠せていないのだから。
俺の隣のマーベルは、何故か特に驚いた様子がなかったが。
そんな中で、ドレイクはこちらにしっかりと視線を向けて口を開く。
「それで、どういう意味があってそのような真似をする?」
「簡単に言えば、フラオンは味方にいると厄介だが、敵にいればこちらに有利になるからな。もしドレイクがエルフ城を落としてもフラオンを逃がした場合、亡命政権……って言葉が理解出来るどうかは分からないが、ともあれどこかに逃げるのは間違いない」
「ふむ、そう言えば以前そのような事を言っていたな。あの時は、まさかこのような事になるとは思わなかったから、話半分で聞いていたが。こうして改めて聞くと、悪くはない」
もう権力闘争はこりごりだと思うような奴であれば、そのままどこかの山奥で隠遁生活をするとかするかもしれないが、俺が知ってる限りフラオンはそんな殊勝な真似は出来ない。
それこそ、自分が王だった時と同じような生活を逃げ込んだ先でも当然のように要望するだろう。
そしてこの場合、逃げ込む先として一番可能性が高いのはミの国だ。
何しろ、ドレイク軍を倒す為にミの国と協力しているのだから。
ギブン領という可能性も否定は出来ないが、残念ながらギブン領は現在ドレイク軍によって攻められている以上、逃げ込むといったような事になれば、それこそフラオンの自殺行為と言ってもいい。
であれば、やはりここはミの国に逃げ込むだろう。
そう説明すると、ドレイクは頷く。
「そうなると、ミの国ではフラオンを持て余すだろうな」
「ああ。だが、腐ってもフラオンも王だ。ピネガンとしては、そう簡単に放り出す訳にはいかないだろう」
そんな俺の言葉に、ドレイクは少し考え……やがて頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1525
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1673