「ねぇ、アクセル。こっちの機械も収納する?」
「ああ、頼む。無理なようなら、俺がそっちに行くけど」
「大丈夫よ。見掛けより重くないし」
マーベルがそう言い、オーラバトラーに使うオーラマルスを伸ばしたり縮めたりする機械を持ってこちらに近付いてきたので、それを空間倉庫に収納する。
あの機械はそれなりに重量があったと思うんだが、それでも問題なく運ぶ事が出来るのは、マーベルの身体能力がオーラ力によって強化されてるとかか?
もしくは、素の状態で高い身体能力を持っている可能性もあるが。
そんな風に考えながら、機械の館にあったオーラバトラーを製造するのに必要な機械を次々に空間倉庫へ収納していく。
ミの国の兵士や反乱軍と遭遇しないかと思って空を飛んでいたのだが、その途中でこの機械の館を見つけ、念の為に調べてみたところ、誰もいなかった。
恐らく以前にも見つけたように、機械の館を建てはしたものの、使えるだけの技術者の数が揃っていないのだろう。
ダーナ・オシーの予備機でもあるかと思ったのだが、そのような物もなかった。
本当に建てただけで、将来的に何かあった時に使おうと思った場所なのだろう。
そんな訳で、俺はこれ幸いと機械の館にある各種製造ラインの機械を外しては空間倉庫に収納していた。
ミの国のピネガンとしては、オーラバトラーを始めとしたオーラマシンを製造するのがこれから先は必要になると判断したのだろう。
その判断力は、決して間違いではない。
だが、機械の館があってもそれを使いこなす者がいなければ意味はない。
そういう意味で、この機械の館は俺にとって拾いものだったが。
機械の館にある各種機械を収納していると……ふと、こちらに近付いてくる気配を感じ、マーベルに声を掛ける。
「マーベル、お客さんだ」
「ミの国の兵士?」
「どうだろうな」
機械の館の近くにある林に、ダンバインとサーバインは駐機姿勢で置いてある。
とはいえ、林は完全にオーラバトラーの姿を隠してくれる訳でもないので、上空を飛んでいるダーナ・オシーが見つけたという可能性は否定出来ない。
いっそ空間倉庫に収納しておけばよかったか?
そう思ったが、今更だろう。
「ともあれ、出迎えるとしようか。敵なら倒してしまえばいいし、敵ではないのなら俺達に何らかの用事があるんだろうし」
俺達に用事があるというのなら、それは恐らく反乱軍だろう。
そう思って待っていると……
「アクセル殿でしょうか?」
機械の館の中に入ってきた人物が、そう尋ねる。
相手に敵意や殺気の類がないのを見れば、俺の予想は当たったのだろう。
「ああ。反乱軍か?」
「は。アクセル殿にお目に掛かれて光栄です」
反乱軍において、俺の事はどういう風に伝わってるんだろうな。
何だか微妙に話を聞くのが怖いような……
まぁ、今はそんなことより、本題に入っておくか。
「俺について知ってるって事は、ドレイクの協力の件について聞きにきたのか?」
「はい。アクセル殿に会うようなことがあったら、その辺りの事情を聞くようにと言われております」
「なるほど。その件については分かった。だがその前に、俺が前に遭遇した連中に聞いた件はどうなっているのかを聞かせて欲しいな。ピネガンを玉座から追い落とした後で、どうするか」
あの時は結局それについての話は聞く事が出来なかった。
とはいえ、ラウの国と取引をしていた商人とかが反乱軍の主な面子だとすれば、大体の予想は出来るが。
ただ、俺と接触した奴は商人でも何でもなかったので、その辺が分からなかったみたいだが。
「ドレイク殿がピネガンを追い払って下さるのなら、このミの国をドレイク殿に治めて貰いたいと思います。フラオン王と戦っている現状、ドレイク殿も地盤はあった方がよろしいでしょうし」
何を言ってるんだ? と思ったが、そう言えばここはバイストン・ウェルで、情報の伝達速度は遅かったな。
まぁ、それでもまさか1日でエルフ城が陥落するとは、思ってもいなかったのだろうが。
つまり、反乱軍の連中はまだドレイクが下剋上を成功させてアの国の国王になったという件を知らないのだろう。
その辺を教えてもいいのかどうか迷ったが、考えてみればその辺りの情報を教えないと、どうしようもないのは間違いないと判断する。
「情報が少し遅いな。既にアの国はドレイクがエルフ城を占領したぞ」
「なっ!?」
信じられないといった様子の声を出す男。
普通に考えれば、こういう反応になるのは当然だろう。
だが、オーラバトラーやオーラシップといったオーラマシンには、それだけの力があるのは間違いない。
「ともあれ、お前達がドレイクに国を渡すというのは分かった。……お前達の事を考えれば、それが一番いい判断だろうな」
元商人達だけに、小さな組織……反乱軍とかならともかく、もしピネガンを追い出してもミの国を運営するのは難しい。
あるいは、野心家であればそのような事も考えるかもしれないが、他の商人がそれを許容しないのだろう。
「そう言って貰えると助かります」
俺の言葉に安堵して、男は笑みを浮かべる。
「ドレイクがお前達に協力するのは間違いない。その最初の一手として、フラオンをミの国に追放した」
「……は?」
俺が何を言ってるのか、分からない。
そんな思いから、男の口からは間の抜けた声が漏れる。
「ん? フラオンが無能な愚王だというのは、ミの国でも知ってるんじゃないか?」
「それは、まぁ」
商人の言葉から、やはりフラオンの無能っぷりは周辺諸国にも広がっているのかと、そう理解する。
いや、商人だからこそ情報は大事だと判断しているのかもしれないが。
「フラオンが来れば、ピネガンはそれを受け入れないという選択肢はない」
「……そうですね。ピネガン王の性格を考えれば、そうなるでしょう」
「いや、性格もそうだが、状況的にだな。元々ミの国がフラオンに協力したのは、ラウの国のフォイゾンとの間に仲裁に入るというのが理由だった筈だ。だが、アの国という地盤を失った今のフラオンには、とてもではないがそんな力はない」
「なら、何故ピネガン王はそんな状況でもフラオン王を受け入れるしかないんですか?」
「ラウの国のフォイゾンは、伝統を大事にする。それこそ、幾らフラオンが無能だから……そして国を追い出されたからといって、フラオンがアの国の王族の血を引いてるのは間違いない事実だ。そして伝統を大事にするフォイゾンだからこそ、ピネガンがフラオンを切り捨てるといった真似は許容出来ない」
ただでさえ国交断絶している以上、ここでフラオンを切り捨てるといった真似をすれば、ラウの国との国交回復はまず不可能だ。
ピネガンとしては、それは許容出来ないだろう。
何もこれは、フォイゾンの娘にしてピネガンの妻であるパットフットの事を思って……というだけではない。
フラオンが追放されたという事は、アの国は既にドレイクの物になったと考えるべきだ。
実際には、まだギブン家がしぶとく抵抗しているので完璧ではないのだが。
そしてミの国がもう一つ接しているクの国は、ドレイクと友好関係を持っている。
勿論、国家間に真の友情はないと言われるように、ビショットも最終的にはクの国の利益を考えるだろうが、アの国とミの国のどちらと手を組むのが国の利益になるのかと考えれば、当然ドレイクの支配するアの国だ。
そんな訳で、ミの国が頼れる相手というのはラウの国しかないのは間違いない。
そしてフォイゾンが伝統の類を重視する以上、アの国の王家の血を引くフラオンという存在を切り捨てる真似は出来ない。
しかし、そうしてフラオンを切り捨てる事が出来ないとなると、また別の問題が出て来る。
そう、最初こそ多少はピネガンに遠慮するかもしれないフラオンだが、ピネガンが自分を切り捨てられないと知れば、その要求はどんどん跳ね上がっていくだろう。
何しろフラオンはアの国でも住人達からかなりの税を取っていたのだ。
ショットやゼットから聞いた話によると、このバイストン・ウェルという場所は非常に豊かな場所で、不作の類もないから基本的に食うに困るといったことは……ない訳ではないだろうが、それでもかなり少ないらしい。
にも関わらず、フラオンがアの国で住人から奪っていた税金は、限界……あるいは限界以上の代物だったらしい。
その辺を考えると、フラオンがミの国でどういう風に振る舞うのかというのを予想するのは難しい話ではない。
そして、当然だがそのような事になれば、それを止めることが出来ないピネガンに不満も集まるだろう。
その辺りの説明をすると、反乱軍の男は納得した様子を見せる。
多分、フラオンを匿う事によってピネガンに対する他の者の信頼が崩れていくというのが気に入ったのだろう。
それだけピネガンに対する恨みは強いといったところか。
もっとも、そうなるとそうなったで、結構悪いところもあったりする。
具体的には、フラオンが本性を出すまで……いや、本性を出したとしても、最初のうちはピネガンも色々と言うので、ミの国の住人にしても少しは様子を見るといったところか。
そんな訳で、フラオンの件が表面化するには一定の時間が掛かる。
……とはいえ、我が儘一杯に育ってきたフラオンだ。
ミの国に来て一段落すれば……それこそ翌日にでも、すぐに騒ぎそうな気がするが。
「そんな訳で、ピネガンには暫くフラオンの世話をして貰って、こっちに集中出来ないようにする。その間、俺達は不規則に出没してミの国にある基地とかを攻撃したりする感じになると思う。お前達には暫く派手な動きはしないで貰って、物資を集めるとか、オーラバトラーの部品を集めるとか、そんな感じで動いて欲しい。それと、フラオンを匿ったピネガンに対する噂を流すとかだな。勿論、最初はそこまで派手な噂じゃなくて、大丈夫か? といった噂にしてくれ」
最初からピネガンを責めるような噂を流した場合、それに違和感を抱く者も出て来かねない。
そういう連中が噂の大元を探るといったような真似をした場合、反乱軍に辿り着くといった可能性は十分にあるのだ。
だからこそ、最初はピネガンが悪い! といったような噂ではなく、国を追い出されたフラオンを庇うような真似をしたら、ドレイクが支配する新しいアの国に攻められるのではないか? といったような噂を流す方が効果的だ。
「ぬぅ……ですが……」
俺の言葉に、素直に男は頷かない。
反乱軍にしてみれば、ピネガンは憎むべき相手だ。
それだけに、最初から徹底的に責めるような噂を流して貶めたいのだろう。
それは自分達の中にある恨みを晴らさせる為……だけではなく、少しでも早くフラオンの件でピネガンを責める事によって、ミの国からピネガンを追い出そうとしている……といったところか?
「急いては事をし損じる。これは地上界の言葉だが、今のお前達にはそう間違っていないと思うぞ」
そう言われ、渋々……本当に渋々とではあるが、納得した様子を見せる。
「分かりました。ただし、そういう風に上に進言はしますが、それを聞いてくれるかどうかというのは、こちらでも分かりません。それでも構いませんか?」
結局のところ、この男も反乱軍の中では上層部という訳ではないので、俺からの忠告は結局仲間に話すだけしか出来ない……といったところなのだろう。
「ああ、それで構わない。ただ、下手に先走った場合、その噂の出所を突き止められて、結局はお前達の存在が知られるかもしれないから、それは覚えておいた方がいい」
ピネガンは、ラウとの関係に関しては国益よりも自分の感情を優先させたという意味では能力に疑問符が付くものの、国内の政治に関してはかなりの辣腕家らしい。
実際、小国のミの国でダーナ・オシーを50機近くもギブン領に派遣し、その上でミの国の内部にはまだ結構な数の戦力が残っているのだから、尚更の事だ。
あるいは、ピネガンがその事に気が付かなくても、ピネガンの側近辺りが噂の不自然さに気が付くという可能性は否定出来ない。
その辺の事情を考えると、反乱軍の連中には上手い具合にやって欲しいものだ。
そんな俺の気持ちを理解したのか、男は上にしっかりと伝えると言ってくる。
「それと……そうだな、連絡手段がないのは困る。お前達の本拠地を教えろとは言わないが、どこか連絡のつく場所はないか? そっちも、俺と接触するのに毎回探し回るのは大変だろ?」
ミの国は小国だが、それでも国は国だ。
そうである以上、サーバインとダンバインで空を飛んで移動している俺達に接触するのは、そう簡単な事ではない。
前回と今回こうして接触出来たのは、ある意味で運が関係しているのだ。
そう思えば、やはりどこかしっかりと影響の出る場所を用意しておいて欲しいと、そう思うのは当然だった。
「分かりました。では……ちょうどいいですね。ここから東に向かえば、それなりの規模の村があります。そこにある酒場は反乱軍の協力者なので、そこで話して貰えば」
「分かった。そうだな。なら、月の大魔王。それを俺の名前にしておくか」
「……月、ですか? はぁ、まぁ、分かりました」
男はそうして頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1540
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1676