地面に倒れていたのは、3人。
全員がオーラロードを通ってバイストン・ウェルに来た衝撃で、気絶している。
マーベルもそうだったし、トッドやトカマクもそうだった。
その辺の事情を考えると、やっぱりショウは色々と特別な存在だったのは間違いないんだな。
とはいえ、そのショウがギブン家に亡命したのはドレイクにとって最悪の出来事だったが。
そんな風に思いながら、俺は気絶している3人に視線を向ける。
3人揃ってうつ伏せになっているので、顔を見る事は出来ない。
だが、3人の髪の色は分かりやすかった。
黒、茶髪、赤。
見事に3人別々の髪の色をしているな。
「あの3人が、新たな地上人……」
俺の隣に座っているマーベルが呟く声が聞こえてくる。
マーベルは優しい性格をしている。
それだけに、地上から召喚……言い換えれば無理矢理連れてくるという事に、思うところがあるのだろう。
ましてや、現在ドレイク軍はギブン家を相手に圧倒している。
そんな状況で、無理に地上人を召喚するという事に思うところがあってもおかしくはない。
あるいは、実はドレイク軍の戦力が足りず、その結果として新たな戦力を求めたという事であれば、また違ったのだろうが。
「聖戦士の3人を、寝室にお連れせよ! くれぐれも丁重にだ!」
ドレイクの指示に従い、兵士達が地面に倒れている3人に近付いていく。
なお、シルキーは地上人の召喚で力を使い果たしたのか、ユニコンの牽く馬車に乗って闘技場を去っていった。
このまま水牢の部屋に戻って休むのだろう。
そんな風に思っていると……
「何だと!?」
不意にそんな声が響く。
その声を発したのは、俺達より1段下にある地上人用の席に座っていたトッドだ。
自分達も召喚された儀式という事で、酒を飲みながら興味深そうに儀式を眺めていたのだが……何故か、急にそんな叫びを発したのだ。
トッドが見ている……いや、睨み付けている方に視線を向けると、そこにいたのは倒れていた地上人の1人。
うつ伏せになって倒れていたのを、運ぶのに際して仰向けにした状態だった。
「トッド、どうした?」
そう尋ねるも、トッドには全く聞こえた様子がない。
何だ? あの茶髪の男だけに意識を集中してるとなると、原因は他の2人じゃなくてあの茶髪の男なんだろうが。
そもそも、こうやって一度に3人が召喚されたからといって、その3人が顔見知りという可能性は低い。
事実、トッドが召喚された時もショウは日本、トッドはアメリカ、トカマクはソ連から転移してきたのだから。
それを考えれば、やはりあの3人も別の場所から転移してきた可能性が高い。
だとすれば、あの茶髪の男がトッドの知り合いだったとか?
可能性としては有り得るが、地上界の人数を考えると奇跡的な確率だろう。
もしかして、俺は何か勘違いしてたのか?
この世界の主人公は、当然だが日本人のショウだと思っていた。
しかし、このバイストン・ウェルにトッドの知り合いが召喚されたとなると、もしかしてトッドがこの世界の主人公なのか?
ショウが日本人だからと思い込んでいたのだが……別に日本人以外が主人公というのも、数は少ないがそれなりにある。
具体的には、ネギま世界のネギなんかはイギリス人だし。
「アレン……何で奴がここに……」
そんなことを考えていると、トッドの口から出た言葉で我に返る。
アレンと、そう言ったのか?
その名前は、俺にも聞き覚えがあった。
トッドが俺とマーベルにオーラバトラーの訓練をして欲しいと言ってきた時に、出た名前だった筈だ。
トッドにしてみれば、ライバル……いや、向こうはパイロット候補生のトッドとは違い、既にパイロットとして活躍していた筈だ。
それを思えば、ライバルではなく乗り越えるべき壁といったところか。
そんな人物が来たからこそ、トッドは俺の声も聞こえない程にアレンという人物に集中していたのだろう。
とはいえ、これは俺にとってもそう悪い話ではない。
トッドはアレンという人物のお陰で、殻を1枚割る事が出来るかもしれないのだから。
もっとも殻を割れない場合、アレンにあっさりと追い越される可能性もあるのだが。
少なくても、アレンはトッドよりも戦闘機の操縦技術という点では上にいるのだから、その可能性もない訳ではないだろう。
そんな風に考えている間に、アレンを含めた3人はそれぞれ闘技場から運び出される。
ちなみにちょっと確認した感じだと、残り2人は黒髪は男で赤髪は女だった。
黒髪の方はアジア人っぽい感じだったが……ただ、ソ連のトカマクも俺は最初アジア人と認識してたんだよな。
その辺を考えると、決めつけるのは難しいだろう。
赤髪の方は白人っぽい感じだったが。
俺が新たな地上人について考えている間、いつのまにかドレイクの演説が行われていた。
「見ての通り、アの国には新しく3人の聖戦士がやってきた! これこそが、儂がアの国の国王に相応しいという事の証だろう!」
召喚した以上、地上人がやって来るのは当然だと思うが。
それにショウの件もある。
ドレイクのやり方が気にくわないと、アの国を出奔するという可能性は否定出来なかった。
もしそんな事になった場合、ここまで自信満々に聖戦士を呼んだといったドレイクの面子は丸潰れだ。
しっかりと意思確認をして、ドレイクの下で働くかどうかというのを約束させてから、聖戦士云々というのは公表した方がいいと思うんだが。
とはいえ、そうしたい気持ちは分からないでもない。
今日の園遊会には、多数の領主達が集まっているので、今のうちに自分の力を見せつけておきたいのだろう。
最悪、新たな地上人3人のうちの誰かがドレイクに手を貸さないといったような事を口にしても、それを隠し通せると思っていてもおかしくはない。
実際に地上人ではあっても、バイストン・ウェルで1人でどうにか出来るといった訳ではないだろう。
「あの聖戦士により、アの国はこれから間違いなく栄えることは決まったと思ってもいい!」
『わああああああああ!』
ドレイクの演説……もしくは扇動か? ともあれ、ドレイクの言葉によって多くの従者達が大声を上げる。
闘技場の中はそんな声で盛り上がり、聖戦士の召喚というドレイクのパフォーマンスは見事に成功するのだった。
園遊会が終わった日の夜、俺は何日かぶりにラース・ワウにある屋敷にやって来ていた。
今はドレイク城の寝泊まりをする事が多くなっているのだが、今日はラース・ワウに来たのだからと、こっちで泊まっていたのだが……
「で? 何の用件だ? まぁ、何となく分かるけど」
俺はそう言い、テーブルの向こう側にいるトッドにそう尋ねる。
トッドは俺の言葉に、何かを言おうとするものの、結局それ以上は何も言えなくなる。
そして数分の沈黙。
俺にしてみれば、わざわざこのままトッドが話すのを待っているのも面倒なので、その沈黙を破るように口を開く。
「アレンだったか?」
「っ!? 何でそれを知っている!?」
トッドにしてみれば、何故俺がその名前を知っている? といったところか。
「何でも何も、以前お前が言ったんだろ」
トッドが俺とマーベルにアレンの名前を教えたのだから、知っているのは当然だった。
だが、トッドは俺の言葉に首を横に振る。
「違う! 何故ここでアレンの名前を出すのかって事だ!」
「気が付いてなかったのか? シルキーが地上人を召喚した時、茶髪の男を見てお前はその名前を口にしたんだぞ? だから、あの茶髪の男がアレンという人物だと判断したんだが」
「……俺が?」
惚けているといった訳ではなく、本気でそんな風に疑問を口にしている。
どうやらあの時にアレンの名前を口にしていたのは、自分でも気が付かないうちの出来事だったらしい。
まぁ、それだけアレンの存在に驚いたって事なんだろうが。
「そうだ。しっかりとアレンの名前を口にしていたぞ。その様子だと、自分では全く気が付いていなかったみたいだけどな」
「ぐ……それは……」
俺の言葉に、トッドは悔しそうに言葉に詰まる。
トッドにしてみれば、自分がそこまでアレンを意識しているのを俺に知られるというのは、面白くなかったのだろう。
とはいえ、そうであると知られてしまった以上はもう気にする必要はないかと気分を切り替えたのか、改めて口を開く。
「オーラバトラーの訓練を頼む」
以前、トッドに頼まれて一時期オーラバトラーの訓練をしていた。
実際にそれなりに充実した訓練だったのは間違いないし、現在トッドがドレイク軍の中で評価されているのは、トッドの聖戦士としての才能もそうだが、その時の訓練が大きな意味を持っているのも事実だ。
だが、その訓練もトッド達がギブン家の討伐に参加してからは、俺達が別行動を取るようになり、当然のように中止されていた。
また、実戦というのは訓練の何倍もの効果を発揮するというのは、よく言われているし、多数の実戦を潜り抜けてきた俺の経験から考えても決して間違いではない。
そういう意味では、トッドは間違いなく以前俺と訓練していた時よりも操縦技術は上がっているのだろうが……それでも、今の状況を思えば少しでも自分の技量を上げたいと思うのだろう。
「そう言われてもな。正直なところ、こっちも以前と違って色々とやるべき事があるんだ。トッドに構っていられるような余裕はないぞ?」
これは決して嘘でも何でもなく、間違いのない事実だ。
現在俺とマーベルは、ミの国の内部で混乱が起きるように動いている。
フラオンの一件もあるので、大々的に動くというよりは噂を流したりとかそんな感じでの行動だし、それ以外にもミの国にあって人のいない機械の館にある製造機械とかを奪ったり……といったような真似をしている。
それだけに、俺とマーベルがトッドの頼みを聞くのは少し難しいのは間違いなかった。
「それは……」
トッドも俺やマーベルがそれなりに忙しく働いているのを理解している為か、無理に言ってくるような真似はしない。
「結局のところ、実戦が一番技量を上げるのにいいのは間違いないんだ」
「けど、実戦だけだと駄目ってのも間違いないんだろ?」
そう言うトッド。
その言葉も決して間違ってはいない。
実戦が一番技量を上げられるというのは事実だが、同時に実戦だけで上げられる技量にが限界があるというのも事実だ。
しかし、俺が見たところではトッドの技量が上がっているのは間違いないが、同時にまだその域に達していないというのも、間違いのない事実だった。
その辺の事情を考えると、今はまだトッドも実戦に集中した方がいいというのが、俺の意見だ。
「ギブン家の討伐を完了すれば、ドレイクもミの国の牽制に兵士を回せるようになるだろうし、俺もある程度暇になるんだが」
本来なら、そこまで必死になってドレイクの依頼をこなすというのはどうかと思わないでもない。
だが、今回のミの国の件に関しては、しっかりと報酬を……それもなかなり大きな報酬を貰っている。
オーラバトルシップという報酬を。
防御力を重視して、機械の館を搭載するという、色々な意味で特殊なオーラバトルシップ。
もっとも、オーラバトルシップの数自体が多くない以上、俺のオーラバトルシップが特殊だというのは正確がどうか分からないのだが。
そんな大きな報酬を貰う以上、こっちもミの国の一件で手を抜くといったような事は考えていない。
ここで手を抜くなんて真似をした結果、ミの国が妙な行動をして、それがアの国に被害を与えるなんて事になったら、洒落にならないし。
「なら、俺もそっちに連れていってくれ! それならいいだろ!?」
トッドのその言葉は、俺にとってはかなり予想外だったのは事実だ。
だが、考えてみればそれはそれでありなのか?
客観的な情報として、トッドの技量は間違いなく高い。
聖戦士ならではの高いオーラ力と、地上ではパイロット候補生だったという事もあり、オーラバトラーの操縦にも慣れるのが早かったし、操縦する上での度胸もある。……若干慎重な様子を見せたりするところもあるが、それも見方によっては好意的に見る事が出来る。
そういう意味では、下手な兵士を連れていくよりもトッドなら十分戦力になるのは間違いのない事実だ。
個人的には、トッドのその提案は俺にとって悪いものではない。
勿論、ミの国に現在どれくらいの戦力が残っているのかというのは、俺にも分からない。
だが、多くの戦力と戦う事になった場合、こっちの数が多ければ有利に戦うことが出来るというのは、間違いのない事実だった。
「ふむ、なるほど。俺達と一緒にか。……けど、俺達と一緒に来ても、一緒に戦うといった事は出来るが、模擬戦をやれるかどうかは分からないぞ?」
「それでもだ! アクセル達と一緒に戦っていれば、それだけで見えてくるものが違う筈だ!」
そう断言するトッド。
マーベルに視線を向けると、こちらもまた仕方がないといった様子で頷く。
「分かった。ただし、ドレイクが許可を出したらだ」
そう、告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1540
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1676