転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2859話

「何だと!?」

 

 本陣の中に、そんなバーンの声が響く。

 まぁ、当然だろう。ギブン家の攻撃によって本陣が大きなダメージを受け、その状況を建て直していたら、実はそれが陽動であったと知らされたのだから。

 その上、現在ギブン家はギブン領を捨ててどこか――恐らくはミの国――に逃亡する準備をしていたと聞かされれば、バーンにとって叫ばずにはいられないといったところか。

 もしジェリルがショウと戦ってみるといったような事を主張せず、このままギブン家を放っておいた場合、気が付いたら実はもうギブン家の全員が脱出しており、後には何も残っていないなんて事にもなりかねなかった。

 それを思えば、脱出の直前とはいえ、逃亡の準備を知る事が出来たのはバーンにとって幸運だったんだろうが……本陣の立て直しを優先するという判断をしたバーンにしてみれば、失態以外のなにものでもない。

 とはいえ、それを決めたのはバーンだし、ギブン家に攻撃をすると決めたのはジェリルだ。

 そうなれば、どうしてもバーンの手落ちが目立つ。

 ……いやまぁ、まさかギブン家の面々がギブン領を捨てて脱出しようとしているとは、全く思っていなかったのだろうが。

 そして結局……

 

「出せる戦力は全て出せ! このままギブン家に脱出されたとなれば、私の顔が立たん! 地上人の方々は……」

「難しいだろうな」

 

 アレンがそうバーンに言う。

 そしてアレンの視線の先を追うと、そこではオーラ力を限界近くまで使い切り、ぐったりとしていてトカマクにあれこれと世話を焼かせているジェリルや、ドレイクの兵士に世話を焼かせているフェイの姿がある。

 バーンと話しているアレンも、見るからに消耗はしていないらしいが、それでもそれなりに疲れているのは間違いないらしく、顔には疲労の色がある。

 この様子だと、アレン達を出すのは難しいだろうな。

 だとすれば、出撃出来るのは……

 アレンとバーンの話を聞きながら、少し離れた場所でビランビーの最終調整をしているトッドの方を見る。

 どうやらあの様子を見る限り、トッドは出撃する気満々らしい。

 そんなビランビーから少し離れた場所では、ガラリアのバストールもまた準備を進めている。

 今の話を聞いて、こちらもまた十分やる気になっていたのだろう。

 トッドがやガラリアの性格を考えれば、そんな風に認識することはそう珍しくはない。

 いや、寧ろそれが当然といったような感じすらするだろう。

 そして……バーンとしても、そんなトッドやガラリア達の様子を見れば、何とかしなければならないといった焦燥感に襲われるのも、また当然の事だった。

 

「分かった。ならば動かせる戦力だけでギブン家を討つ! トッド・ギネス、そちらは大丈夫だな!?」

 

 離れた場所でビランビーの調整をしているトッドに声を掛けるバーン。

 そのトッドは大丈夫だと示すように大きく手を振る。

 そんな様子を見ていると、やる気満々といったところか。

 アレンのお守りを俺に押し付け、その結果俺から借りを作ったトッドだったが、そういう意味でその借りの分は十分利益が出たのだろう。

 とはいえ、俺とマーベルがいない状態でショウのダンバインに勝てるかどうかとなれば、また話は違ってくるが。

 

「バーン、今回の戦いは俺達が出る必要はないな?」

 

 アレンとの話に割り込んでそう告げると、バーンは即座に頷く。

 

「はい。アクセル王には既に十分手を貸して貰いました。そうである以上、こちらとしてもそれ以上の事を希望したりはしません。この後は、私達の戦果の報告をお待ち下さい」

 

 そう告げるバーン。

 口調ではこちらを敬っているように思えるが、その目に浮かぶ色は違う。

 今回の戦いに俺とマーベルが参戦するのは、絶対に許せないといったような、そんな様子だ。

 まぁ、上手くいけば自分達だけで手柄を挙げられるんだから、それに俺とマーベルといった外様を参加させたくないと思うのは当然だろう。

 とはいえ、ショウを侮るような事をすれば、痛い目を見るのはバーンなのだろうが。

 ただし、バーンは今まで何度もショウと戦っている。

 それだけに、油断をするような事はないと思うんだが。

 

「分かった、だが、ギブン家の方も撤収作業は命懸けでやっている。それを考えると、下手な攻撃をした場合は、逆襲されるぞ」

 

 窮鼠猫を噛む。……このバイストン・ウェルにおいては、それと似たような言い回しがあるのかどうかは分からない。

 しかし、それでも撤退しようとしているギブン家が攻撃されたりした場合、必死に攻撃してくるのは間違いないだろう。

 向こうにしてみれば、ここで負ければ避難しようとしている仲間達全員が死んでしまうかもしれないのだから、遮二無二になって戦うのは当然の事だった。

 

「分かっています。では、出撃の準備をしなければならないので、これで失礼します」

 

 そう言うと、バーンはアレンを無視して俺に敬礼をすると、走り去る。

 俺と長い間話していたくなかったというのもあるのだが、それ以上に言葉通り今の状況では少しでも早く出撃の準備をしたいと、そう思っての事だろう。

 

「バーン、随分とアクセルに対抗心を抱いてるみたいだな」

 

 走り去ったバーンを見送ると、アレンは俺に向かってそう言ってくる。

 まだバーンと会ってからそう時間が経っていないアレンでも、そう認識出来るという事なのだろう。

 アレンも軍人だったので、その辺りの機微には聡いといったところか。

 

「最初は対抗心じゃなくて、怪しい奴って感じだったんだけどな」

「……怪しい奴?」

 

 俺の口から出た言葉が意外だったのか、アレンの表情には驚きの色がある。

 当然だろう。まさかそんな言葉が出てくるとは思ってもいなかったのだろうから。

 

「ああ。考えてみろ。トッドやアレン達は、ドレイクの意向によってシルキーが地上から召喚した。けど、マーベルはシルキーではない別のエ・フェラリオが召喚した地上人だ。おまけに、その地上人と一緒に自称異世界の王という存在がいたんだぞ?」

 

 普通に考えれば、それを怪しむなという方が無理だろう。

 とはいえ、ドレイクは俺という存在と対等な同盟を結んだ。

 それは俺の言葉を信じたというよりは、気配遮断や影のゲートといったような、バイストン・ウェルの人間にとっては防ぐのはまず不可能なような、暗殺に向いた技能を持つ俺を敵に回す危険性を考えてというのが正しいのだろうが。

 しかし、バーンにしてみればだからこそ俺の存在を危険視した。

 俺の存在を危険視したという意味では、ガラリアもそうだったが。

 だが、ガラリアの場合はマーベルと接する上で間接的に俺とも接して、今ではそれなりに友好的な関係を築いている。

 そうである以上、現在はバーンだけが俺を危険視しているといった感じになっていた。

 この先、一体どうなるのかは正直なところ俺にも分からない。

 だが、このままだとバーンだけが孤立していくような気がするんだが、その辺は俺が特に考えるような事でもないか。

 あるいは、バーンが孤立してドレイクにも見放され、最終的には側近の座から降ろされるといったような事になるかもしれないが、そうなったらそうなったで、多分次にドレイク軍を率いる事になるのはガラリアだろうし。

 実際、オーラバトラーの操縦技術という点では既にガラリアはバーンを上回っている。

 とはいえ、部下の指揮能力という点ではどうしてもバーンの方がガラリアよりも上だったりするんだよな。

 

「そういうものなのか? まぁ、それはそれで構わないけどよ」

 

 本陣はまだ完全に復旧したといった訳ではないのだが、それでも多くの者が出撃準備で忙しそうにしている。

 このままだと下手をするとギブン家を逃がしてしまうと思っているからこその行動だろう。

 このまま本陣を復旧させたとしても、肝心のギブン家がいなくなってしまえば洒落にならないだろうし。

 

「ともあれ、俺はもうここでやるべき事は終わったから、そろそろ戻る。お前達はどうする?」

 

 俺とマーベルはドレイク軍の指揮下にある訳ではなく、あくまでも同盟者といった扱いだ。

 そうである以上、無理にここに残る必要もない。

 また、バーンからも戦闘には参加しなくてもいい……いや、寧ろ戦闘に参加しないで欲しいといったような事を言われた以上、このままここに残る必要はない。

 ここが本陣である以上、何かあった時の為に防衛戦力を残しておいた方がいいのは間違いないが、俺がそのような真似をする必要もないだろう。

 バーンもその辺は考えてるだろうし。

 とはいえ、ギブン家の様子を見る限りでは今の状況で不意を突いて再度ドレイク軍の本陣を攻撃するといったような余裕はないだろう。

 

「俺達か? あー……どうだろうな。バーンからは何も言われてないし。けど、このままここにいてもな。オーラ力を回復させる為にも、しっかりと休んだ方がいいだろうし」

 

 アレンのその言葉は、決して間違ってはいない。

 実際にオーラ力を回復するには、そうして十分な休息をしてリラックスをする……といったような事が最善なのだから。

 これが例えば俺がオーラバトラーを使っている魔力であれば、スキルの効果で時間が経てば勝手に回復してくれる。

 その回復速度と俺の持つ魔力量を考えると、アレン達とは違ってオーラバトラーをいつまででも動かせるという事になる。

 ある意味で、これも永久機関か?

 もっとも、いつまでも操縦出来るのは間違いないが、当然ながら俺の集中力が限界に来たりすれば、オーラバトラーの操縦は出来るが、性能を最大限に発揮するといったような真似は出来なくなる。

 

「そうか。なら、どうする? 俺達と一緒に帰るか? ラース・ワウに戻るのなら、影のゲート……転移魔法を経験させてもいいぞ?」

「魔法……魔法か。興味深いけど、今はちょっといい。今の状態で魔法を経験しようものなら、一体どうなるか分からないしな」

 

 少しだけ残念そうにしながらも、そう告げるアレン。

 ジェリルやフェイ、トカマクといった者達にも尋ねてみたが、全員が俺の提案に対して首を横に振る。

 俺の事を知ってからまだ短いアレン達はともかく、トカマクとはそれなりに付き合いも長いんだし、素直にこっちの提案に乗ってもいいと思うんだが。

 まぁ、それでも無理にとは言わない。

 アレン達が魔法を体験したくないと言うのなら、それはそれで構わない。

 

「分かった。なら、ナムワンは置いていくから、それを使って帰ってこい。ナムワンを使えば、ここからラース・ワウまでもそんなに時間は掛からないだろうし」

「悪いな、そうさせて貰うよ」

 

 そう、アレンが言ってくる。

 何だかんだといいつつ、アレンがジェリルとフェイの2人を従える……というのはちょっと大袈裟か? ともあれ、リーダー格のような存在となってるのは少し不思議だな。

 とはいえ、別にジェリルの能力が高いからといって、それは必ずしも人を率いるのに向いているといった訳ではない。

 そういう意味なら、結局のところアレンが一番リーダーに向いているんだろう。

 

「マーベル、そんな訳で俺達は一足先に戻るぞ」

 

 そうマーベルに言うと、マーベルも異論はないのか頷く。

 

「そうね。今回の一件は色々と大変だったし……ここはゆっくりと休みたいところだわ」

「そんな訳で、俺達は帰る。お前達のオーラバトラーはナムワンで一緒に運べばいいだろうから、心配するな」

 

 サーバインとダンバインのみを空間倉庫に収納してそう言うと、改めて驚かれる。

 

「分かっていても、アクセルのその力は反則的だよな」

 

 羨ましそうに言うアレン。

 他の面々も、言葉にはしないが同意するように頷いてはいた。

 とはいえ、その気持ちは分かる。

 空間倉庫はある意味で俺が使っている魔法以上に便利な代物だし。

 ただ、アレン達にしてみれば空間倉庫も影の転移も、多分同じように魔法として認識されてるんだろうな、とは思う。

 

「似たような能力を持つマジックアイテム……魔法の道具とかは、あるけどな」

 

 例えば、魔法球とか。

 持ち運びするのはかなり難しい代物だが、魔法球の中には城を入れたりといったような事も普通に出来る。

 それに魔法球の場合は、内部の時間の流れをある程度自由に変えられるといったような事も出来るし。

 とはいえ、当然だがそんな魔法球だけに値段も非常に高価なのは間違いない。

 少なくても普通に生活している程度の財力しかない場合、購入するのは難しいだろう。

 

「ドレイクの下で活躍して、そういうのを入手出来たらいいんだけどな」

「無理だろ」

 

 アレンの言葉を即座に却下し、同時に勘違いを理解する。

 

「俺が言ったマジックアイテムってのは、バイストン・ウェルで入手出来るんじゃなくて、俺の国が接触した魔法が使われている世界で売ってる奴だからな」

 

 その言葉に、アレンは思い切り肩すかしをくらったような表情となる。

 アレンにしてみれば、今までの話の流れからバイストン・ウェルにも似たようなマジックアイテムがあると、そう思っていたのかもしれない。

 ただ、バイストン・ウェルはファンタジー世界ではあるが……魔法の類となると、殆ど存在しないんだよな。

 エ・フェラリオの召喚の件もあるので、皆無って訳じゃないんだろうが。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1550
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1678

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