俺とマーベルがラース・ワウに戻ってきた日の夜……俺の家にはガラリアとトッドがやって来ていた。
トッドは食事をしに、ガラリアは魔法の練習の為にやって来たのだが、そんな中で食事をする事となり、そうなれば当然のように今日の戦いについての話となる。
「結局ギブン家を逃がしたのか」
「……はい。ナムワンの何隻かには、それなりに大きな被害を与えたのですが」
「ショウの野郎が馬鹿みたいに強かったんだよな。……もしかして、アクセルがあいつと戦った事で、向こうの技量を上げてるんじゃないか?」
へぇ、今まではショウの事をジャップと呼んで、ある意味で馬鹿にするというか、格下に見ていたんだが。
とはいえ、それも当然か。
そうして格下に見ていた相手に対し、トッドは大きく負け越しているのだから。
ましてや、今回の戦いはショウにしてみれば仲間を逃がす為の戦いだ。
自分が負ければ、今まで以上に仲間に……ましてや、戦闘員ではない者達にも被害が出るのだから、ショウが実力以上の力を発揮してもおかしくはない。
「まぁ、俺やマーベルの存在がショウの能力を上げているというのは、間違いない事実だろうな」
ショウはギブン家において最強の戦力だ。
そうである以上、どうしても俺やマーベルが戦場に出た場合、ギブン家としてはショウをこっちに向かわせる必要がある。
ショウもそれが分かっているからこそ、必死に訓練をしているのだろう。
実際にショウの技量はかなり上がってきており、今の状況を考えればこの先ますます強くなっていくだろう。
また、ショウの乗っているのがダンバインだというのも、この場合は始末に悪い。
パイロットのオーラ力によって機体が強化される……機体性能が上がるという特性を持つオーラバトラーだけに、今のショウには最適な機体なのだ。
「こうなると、トッドのダンバインが奪われたというのは痛いな」
その言葉に、パンを口に運んでいたトッドが動きを止める。
トッドにとっても、あの時の一件は大きな失敗であると理解していたのだろう。
実際問題、多少の損傷はあるのかもしれないが、ダンバインが丸々1機そのままギブン家に渡ってしまったというのは、結構痛い。
乗れるのはショウしかいないから、ダンバイン2機を相手にする必要がないとはいえ、同じダンバインである以上、当然のように予備パーツとしても使える。
つまり、どうにかしてショウの乗るダンバインにダメージを与えて撤退に追い込んだとしても、その予備パーツを使ってすぐにまた戦線に復帰してくる訳だ。
とはいえ、ギブン家にはダンバインの開発に関わった技術者が亡命しているし、ダンバインの現物もあり、性能が低いとはいえダーナ・オシーという独自のオーラバトラーを開発する技術力がある。
その辺の事情を考えると、ギブン家ならダンバインの予備部品を製造することは出来るだろう。
だが、ダンバインはかなり希少な恐獣の素材とかを使っている以上、自分達が最初から作るとなると、当然のようにコストが掛かる。
だからこそ、トッドの機体を奪われたのは大きな意味を持つのだ。
「でも、ギブン家が逃亡したのはやっぱりミの国方面なんでしょう? なら、恐獣の本場とも呼べるリの国から遠ざかったんだから……今あるトッドの機体分の予備パーツを消耗させてしまえば、問題ないと思うけど」
マーベルのその言葉は、本人的にはトッドを慰めるつもりだったのかもしれないが、実際には追撃の一言のように思える。
とはいえ、マーベルの言ってる事は決して間違ってはいない。
バーン達の攻撃によって逃げ出したギブン家だが、その進行方向はミの国の方面だったらしいし。
そしてミの国と話題になったリの国との間には、ドレイクと友好的な関係にあるクの国や、ドレイクが支配する事になったアの国があるのだ。
勿論、このバイストン・ウェルにおいては、恐獣の存在があるので領土の全てを把握するなどといった真似が不可能である以上、クの国やアの国を通り抜けてリの国と接触するというのも不可能ではないだろう。
ましてや、ギブン領に残った面々もいる。
そういう連中は逃亡したギブン家と行動は共にしなかったが、だからといってギブン家を見捨てた訳ではない。
このままギブン領に残ってロムンやニーのようなギブン家の者達から何らかの役割を任されているといった可能性は、否定出来ない。
そういう連中が独自にリの国と連絡を取って取引を行い、恐獣の素材を用意するといった事を考えると、迂闊に放っておくような真似も出来ないだろう。
ギブン家が住民から嫌われていれば、そういう心配をしなくてもよかったんだが。
「ともあれ、だ。ギブン家がアの国から逃げ出したという件もあって、取りあえずこれでアの国はドレイクの支配が決定的になった訳だ」
「でもよ、アの国の領主の中には、ギブン家と友好的な奴もいたんだろ? そっちはどうするんだ?」
「トッドの言いたい事も分かる。実際、今までギブン家と親しかった何人かの領主は、ドレイクの指示に従ったりしていなかったんだしな。だが、こうしてギブン家が逃げ出してしまった今となっては、そういう領主もドレイクに従うしかないだろ」
ドレイクに従っていなかった領主達は、もしかしたらギブン家がドレイクに勝つと、そう思っていた……もしくは賭けていた者達だろう。
分の悪い賭けだと知ってはいたのだろうが、それでもドレイクが嫌いだったり、今までの付き合いだったり、それ以外にも何らかの理由だったり。
そんな諸々からギブン家が勝つと思っていた者達にとっても、ギブン家がアの国から逃げ出したというのは大きな意味を持つ。
……分の悪い賭けか。キョウスケ辺りがいたら、どうなっていたんだろうな。
「そういう人達は、これから厳しい事になるでしょうね」
「当然だろう。お館様に最初から味方をしていた者達と、ギブン家がアの国から逃げ出すまで全く協力しなかった者達。その両者を同じ待遇にするというのは、示しがつかん」
マーベルの言葉に、ガラリアは当然といった様子でそう告げる。
ドレイクに長い間仕えているガラリアだけに、マーベルの言葉には当然そうだろうという思いがあってもおかしくはない。
「まぁ、ガラリアも落ち着けって。ともあれ、これでアの国はドレイクが支配したことになるんだろ? だとすると、次はアクセルやマーベルが暗躍していたミの国になるんじゃないか?」
「暗躍って言い方は人聞きが悪いな」
トッドの言葉にそう返す。
とはいえ、実際に暗躍という言葉が相応しい状況だったのは間違いないのだが。
「普通、アクセルやマーベルがやっている事を客観的に見た場合、それは暗躍って言うんだよ」
「……ともあれ、ミの国に送り込んだ毒が効果を発揮するには、もう少し時間が掛かるだろうな」
「あ、話を誤魔化した」
そう言ってくるトッドの言葉は取りあえず無視しておく。
フラオンという毒が効いてくるのは、もう少し時間が掛かる。
ただし、その毒を促進させるギブン家の戦力がミの国に入ったとなると、待つ時間は予想より短いかもしれないな。
ギブン家の戦力を手に入れたフラオンは、間違いなくミの国で騒動を起こす。
我が物顔で自分の要求をピネガンにしている様子が、容易に思い浮かべられる。
ピネガンも、そんなフラオンを相手にいつまで客人といったような扱いが出来るのか。
普通に考えた場合、排除するといったように考えてもおかしくはない。
とはいえ、もしそうなればフラオンも黙ってはいないだろう。
そもそも、アの国を追い出されてミの国のピネガンに頼ったのだ。
もし今の状況でミの国から追い出されれば、行く場所がない。
なら、横暴な態度をしなければいいと思うんだが、昔から王族として甘やかされて育ったフラオンにしてみれば、そんな真似は出来ないのだろう。
「なら、どうするのですか?」
ミの国は暫く放っておく方がいいと言ったのが気になったのか、ガラリアはそんな風に俺に尋ねてくる。
ガラリアにしてみれば、出来れば早いところ自分で敵を倒したいのだろう。
それなりに手柄は立ててるんだから、そこまで気にする必要はないと思うんだが。
「ミの国の方で大きな騒動が起きるまでは、アの国を落ち着かせるといったところだろうな。ドレイクにしてみれば、ギブン家と親しかった領主の方にも手を回す必要が出て来るし」
「それは……」
若干不満そうな様子のガラリア。
「ガラリアも、バストールはまだ完全に完成したって訳じゃないんだろ? なら、ミの国に攻め込むまでは、そっちの調整をしっかりとやった方がいいと思うけどな。それに、領主の中には意地でもドレイクに従おうとしないような奴もいるかもしれないし。そういう連中がいれば、出撃もあるかもしれないぞ」
「なら、俺の出番もあるのか? 俺のビランビーは、ガラリアのバストールと違って万全の状態だぜ」
トッドの言葉に、ガラリアは面白くなさそうな表情を浮かべる。
ただし、これはある意味で仕方がない。
ビランビーはダンバインをベースに開発されているのに対し、バストールはほぼ0から開発したのだから。
それ以外にもビランビーのオーラ増幅器は、以前からショット達が開発していた代物だ。
それに対して、バストールのオーラ増幅器は今までショットと開発していた物と違い、ゼットが新たに開発した新型だ。
そう考えると、寧ろそのような状況でバストールの先行試作機……いや、量産試作機か? ともあれ、バストールが完成している時点で普通に凄いと思う。
「その辺は、どうだろうな。トッドの場合は聖戦士だ。ドレイクの立場としても、重要な戦いだったりするならともかく、領主が……それもそこまで力のない領主が逆らったからって、聖戦士を出すかどうかは微妙なところだろう」
それに、トッドに自覚があるのかどうかは分からないが、今のトッドはドレイクが有する地上人の中で聖戦士筆頭といったような位置にいる。
地上人筆頭ではないのは、ショットとゼットがいる為だ。
何だかんだと、聖戦士よりもオーラバトラーを開発したショット達の方が、重要度という意味では上だろうし。
「ふんっ、そうかよ」
俺の言葉が不満だったのか、トッドは面白くなさそうに呟く。
「落ち着け、トッド。領主と戦う時は私の出番かもしれないが、アクセル王の仰る通り、トッドは聖戦士としてミの国との戦いでは間違いなく出番はあるだろう」
ガラリアの言葉に、トッドは少しだけ気分を切り替えたのか頷く。
実際には、もし領主との戦いでガラリア達が負けるといったような事があれば、もしかしたらトッドを始めとした聖戦士達にも出番は来るかもしれないが……ただ、その辺の領主を相手に、ガラリアが負けるとは思えないんだよな。
何らかの手段でギブン家が……ショウが力を貸すといったようなことになっていれば、また話は別かもしれないが。
だが、そのショウもギブン家と共にミの国に向かった。
そうである以上、ショウが領主に味方をするというのは微妙だろう。
それ以前に、そもそも領主がアの国の国王となったドレイクに反旗を翻すかどうかというのも、また微妙だが。
普通なら、ドレイクを相手に逆らっても無意味だと、そう理解する筈だろうし。
「ともあれ、ギブン領の制圧が終わっても忙しいのは変わらない訳だ。……あるいは、ギブン領制圧前よりも忙しいなんてことになる可能性も否定は出来ないぞ」
「う……それは……」
トッドが微妙に嫌そうな表情を浮かべる。
オーラバトラーを使った戦いならともかく、それ以外の場所で忙しいというのは出来るだけ避けたいと、そう思っての反応だろう。
戦いそのものよりも、戦後処理の方が大変だというのはそれなりに聞く話だ。
そうである以上、ドレイクの下にいるガラリアやトッドが大変な目に遭うのはおかしな話ではない。
ちなみに俺とマーベルはドレイクの同盟者ではあるものの、ドレイクの指揮下にある訳ではないので、そういう忙しさは特に気にする必要もない。
ドレイクからの依頼でもあれば、また少し話は変わってくるのかもしれないが。
ただ、反乱を起こした領主の討伐や、ガロウ・ランの盗賊達の討伐といった依頼ならあるかもしれないが、ドレイクの立場として俺達にそれ以外の仕事……具体的には領地を治めるような仕事を頼んだりといった事はないと思われる。
ガロウ・ランの盗賊達相手というのも、面倒臭いものがあるが。
向こうもドレイクの領地にはオーラマシンがいるせいで行動しにくくなって逃げ出したというのはあるだろうが、それはあくまでもドレイクの領地だけだ。
それ以外の領地では、まだ普通に存在している。
アの国全域からガロウ・ランの盗賊達を排除するのは、相当な時間が掛かるだろう。
……出来れば、そういう連中を戦力に組み込む事が出来ればいいんだが。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1550
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1678