ビランビーが、ダンバインに向かってオーラソードを振るう。
そんなビランビーに対し、ダンバインは機体を後方に下げることで呆気なく回避し、自分の前をオーラソードが通りすぎたところで、前に出る。
オーラソードを振るった直後だっただけに、ビランビーはダンバインのオーラソードを回避するような事は出来ず……
「そこまで!」
訓練場に俺の声が響き、模擬戦は終了する。
トッドをミの国まで送ってから、数日。
現在は特に急いで何かをやる必要もなく、俺とマーベルはいつも通りの日々を送っていた。
いつも通りとはいえ、俺とマーベルの場合はその日で結構変わったりするのだが……ともあれ、今日はアレン達3人の模擬戦が行われていた。
「ふん」
少し離れた場所で、ジェリルが不満そうに鼻を鳴らすのが聞こえてくる。
ジェリルにしてみれば、ライバル視しているマーベルが模擬戦とはいえ自分達に勝っているのが気にくわないといったところなのだろう。
フェイの方も、今の模擬戦の動きをしっかりと見ており、自分が戦う時の事を考えている。
ジェリルとフェイが地上にいるのを見れば分かるように、現在ビランビーに乗ってマーベルのダンバインと模擬戦を行っていたのはアレンだ。
ちなみに最近はジェリルと一緒にいることも多いトカマクだが、現在はいない。
アの国とミの国の国境付近に出撃している。
とはいえ、それはあくまでもパトロール的な意味でだ。
ミの国に行ったフラオン軍が、アの国に戻ってこないとも限らない。
それに、ギブン領は既にドレイクの手によって占領されたが、今でもギブン家を慕っている者はいる。
そういう連中が、まだドレイクに見つかっていない機械の館でダーナ・オシーの部品を作って、ミの国にいるギブン家に届ける……といったような真似をしている可能性がある。
それに対処する為の見回りだ。
場合によっては、ミの国に行ったゼラーナがギブン領にダーナ・オシーの部品を受け取りにやってくるといった可能性も否定は出来ないのだが。
そんな訳でパトロールは重要だったりする。
ギブン領の探索についても、それなりに行われているらしいので、それが終わればギブン領の機械の館も全て接収するなり破壊するなり出来るので、多少は安心といった事になるんだろうが。
ただ、場合によってはギブン領に残った者達が独自に機械の館を建設してダーナ・オシーの部品を作るといったような事をしないとも限らない。
「強いな、さすが始まりの聖戦士と言われるだけはある」
ビランビーから下りてきたアレンが、そんな風に言う。
それは、少し意外な光景だった。
アレンの性格を思えば、自分に勝った相手に対し、素直にこのような事を言うとは思っていなかったのだ、
こんな短時間で性格が変わる訳でもないし……そうなると、何か考えているのだろう。
具体的に何を考えているのかは、俺にも分からないが。
アレンの事だから、何となくどういうのを考えているのかというのは、想像出来るけど。
多分、自分にとって利益になるような事を考えているとか。
例えば……そうだな、マーベルを口説こうとしている?
考えてみれば、マーベルというのはこのバイストン・ウェルにおいて大きな意味を持つ人物だ。
始まりの聖戦士、そして最強の聖戦士。それだけではなく、美人であるというのも大きい。
そういう意味では、マーベルはアレンにとっては格好の獲物といったところか。
トッドから聞いた話によると、アレンは女好きだって話だし。
……まぁ、女好き云々で俺がどうこう言えるような事ではないのだが、それでもマーベルがアレンに口説かれているというのは、面白くない。
面白くない? 俺はそう感じたのか? それはどういう意味での面白くないだ?
現在、マーベルが唯一俺と親しい関係にあるから、そんな風に認識したのか。
それとも、俺がマーベルに女として好意を抱いているからこそ、そのように思ったのか。
「アクセル? どうしたんだ?」
と、俺がマーベルについて考えていると、不意にフェイがそんな風に尋ねてくる。
「いや、何でもない。ちょっと考え事があってな。それで、どうする? 次はフェイとジェリルのどっちがマーベルと戦う?」
「ちょっと待ちなよ」
俺の言葉に、急に割り込んで来たのはジェリル。
俺を見る視線から、何となく何を考えているのかは理解出来た。
だが、それでもまずはということで、事情を聞いてみる。
「どうした?」
「あたしはマーベルじゃなくて、アクセル、あんたと戦いたいんだけどね」
やっぱりか。
ジェリルの性格を思えば、この行動はそこまでおかしな話ではない。
元々ジェリルは短気というか、非常に好戦的な性格をしている。
そんなジェリルにしてみれば、自分よりも強いトッドやマーベルが揃って勝てないという俺に戦いを挑んで来てもおかしくはない。
実際には、以前にも何度か模擬戦をやってはいるのだが……それでも、ジェリルは俺に勝負を挑もうとしているのだろう。
「ジェリルがやる気なら、それはそれで構わないな。……ただ、一応聞いておくが、本気だな?」
「当然だ。あたしはアクセルにも勝ってみせる」
そう断言するジェリル。
この好戦的な性格……それと同時に、向上心に満ちた性格というのは決して悪くはないんだが。
「ジェリルが本気なら、分かった。いいだろう。けど、後でトカマクに八つ当たりはするなよ」
トカマクの場合、ジェリルの八つ当たりも喜んで受けそうだが。
そういう意味では、ジェリルとトカマクって相応しい組み合わせなのかもしれないな。
「それは、あたしが負けると決まってるかのような言い方で、面白くないね」
「そうだな。俺が勝つのは多分間違っていないと思うぞ」
「……その高く伸びた鼻、へし折ってやるよ」
俺の言葉が余程気にくわなかったのか、ジェリルは獰猛な笑みを浮かべて自分のビランビーに向かう。
ちなみに当然の話だが、ビランビーはビランビーであっても、それぞれパイロットによって設定とかが変わってくるし、素材という点でも同じ物はないので、どうしても個人の専用機といった感じになる。
恐獣と一口に言ったところで、その数は多い。
それこそ同じ恐獣であっても、素材の部位は個体によって違う。
技術者達の手によって、出来るだけ同じ性能になるように調整はされるだろうが、それでも結局は機械の部品ではなく恐獣の素材を使っての調整である以上、どうしてもその辺りは大きく違ってくる。
その為、例えばアレンのビランビーにジェリルやフェイが乗って、その性能を十分に発揮するといった真似は難しい。
それでも一定の性能は発揮するのだから、他人が乗っても動かないといった訳ではない。
そんな訳で、俺に本気で勝とうとしているジェリルは、当然のように自分のビランビーを用意させるのだった。
訓練場にて、俺のサーバインとジェリルのビランビーは向かい合う。
機体の製造された順番から考えれば、俺のサーバインはビランビーよりもかなり古い。
何しろ、ダンバインよりも古いのだから。
だが……例え機体が製造されたのがビランビーより前であっても、サーバインの場合は非常に希少な素材をふんだんに使っており、それこそ乗る者には相応の力を求めるといった、そんなオーラバトラーだ。
能力としては、最新鋭オーラバトラーのビランビーが相手でも十分に渡り合えるだけの性能を持つ。
本来なら、模擬戦をやるのなら俺もビランビーに乗るのが一番いいんだが、俺の場合は普通のオーラコンバータを使えないしな。
それはゲドと……少し前に行った、バストールの件でもはっきりとしている。
「じゃあ、始めるぞ。……来い」
『行くよ!』
俺が来いと言うや否や、ジェリルの操縦するビランビーは真っ直ぐこちらに向かって走ってくる。
そうしたやり取りであっても、以前と比べるとジェリルの操縦するビランビーの速度は増していた。
この辺りは、やはり実力が以前と比べて増しているといった事なのだろう。
とはいえ、それでもまだトッドに及ばないくらいの実力でしかないのだが。
サーバインのコックピットに向かって、真っ直ぐ突きを放つジェリル。
それは、まさに全力の一撃と表現するに相応しい程の一撃。
というか、この攻撃を回避しなかったら、本気でコックピットを貫かれるのは間違いない。
俺を殺す気で行っている模擬戦……いや、これを本当に模擬戦と表現してもいいのか?
その辺は、正直微妙なところだとは思う。
当然ながら、俺もそんな一撃を正面から受けるといったような真似をする筈もない。
横に動いて突きを回避し……
「へぇ」
ジェリルが突きを放った体勢のまま、強引に腕を動かしてこちらに向かい、横薙ぎの一撃を放ってくる。
突きからの横薙ぎとなると、腕に掛かる負担は間違いなく大きいのだが……ジェリルにしてみれば、そのくらいの一撃は当然といった感じか。
だが、甘い。
突きを放って止まった状態からの一撃だけに、相手の意表を突いた上でならともかく、十分に観察された状況では、その程度の攻撃が通用する筈もない。
『くっ!』
ジェリルにしてみれば、この攻撃が回避されるというのは予想外だったのか、驚きの声を漏らし……だが、それでもまだ勝負はついてないと、攻撃を続ける。
オーラソードを握っていない方の手をこちらに向け、ショットクローを放つ。
「甘い」
その言葉と共に、サーバインの持つオーラソードはショットクローのワイヤー部分を切断する。
「ショットクローは色々と便利な武器だが、単発ではそこまで効果はないぞ」
打突武器として使えたり、敵の身体に絡ませて動きを封じたり、振り回して盾代わりにしたりと、色々な使い方が出来るショットクローだが、だからこそ使う時は相手にその狙いを悟られないようにする必要がある。
もしそれが出来ない場合は、今のようにあっさりと弾かれてもおかしくはない。
『ぐっ!』
ショットクローが弾かれたことに苛立ちを見せつつ、再度こちらに向かってオーラソードを振るってくるジェリルのビランビー。
その一撃をあっさりと回避し……だが、ジェリルもそれは理解していたのだろう。
特に動じた様子もなく、蹴りを放ってくる。
ビランビーはダンバインの後継機だけあって、当然のようにその足には鋭い……相手がオーラバトラーであっても容易に破壊することが出来るような威力の爪を持つ。
そんな一撃は、もしサーバインに当たったら間違いなく大きな被害を受けるだろう。
そういう意味では、ここで蹴りという攻撃を選択したジェリルの攻撃は、決して間違ってはいない。
あるいは、攻撃的な本能を持つジェリルの才能が発揮されたのか。
ただし……
「意表を突くのなら、もっと上手くやることだな」
後ろに下がって目の前をビランビーの蹴りが通過したところで、サーバインの手でビランビーの踵を持ち上げ、そのまま力を入れて大きく上に向けて押してやる。
ジェリルにしてみれば、自分の蹴りが回避されたと思った瞬間、勢いよく吹き飛ばされたといったところだ。
当然のようにバランスを崩し……それでも空中でオーラコンバータを使って何とかそのまま崩れ落ちないようにする。
この辺りの能力は、聖戦士として召喚されるだけはある。
あるいは、何度かの実戦を経験した上で、こうした行動を身に着けたのか。
その辺りの事情は俺にも分からなかったが、ともあれ技量を上げたのは間違いない。
空中で態勢を整えたジェリルのビランビーは、そのままこっちに向かって急降下してくる。
落下速度も加えた、強力な一撃を放つつもりだったのだろうが……それもまた、甘い。
「回避された時に、その状況ではどうにもならないだろうに」
呟くと同時に、俺はサーバインを後方に向かって跳躍させる。
そうなれば、当然の話だが俺のいた場所……ジェリルの狙っていた場所には誰もいなくなる。
『ちょっ!』
恐らく、ジェリルは俺が攻撃を受け止めると考えての行動だったのだろうが、甘かったな。
サーバインの姿がなくなり、地面に向かって真っ直ぐに降下していくビランビー。
当然下は地面になっており……
『このおっ!』
このままでは、ビランビーが地面に激突すると判断したのだろう。
ジェリルは地面に向かって、思い切りオーラソードを振るう。
その一撃によって、落下速度を可能な限り殺そうと、そう考えたのだ。
幸い、その考えは上手くいき、ビランビーが地面に激突することは避けられた。
だが……
「こういう時は、チェックメイトとでも言えばいいのか?」
地面にオーラソードを振り下ろした状態のままで動きを止めたビランビーの背後に回った俺のサーバインは、ビランビーの背中にあるオーラコンバータにオーラソードの切っ先を突きつける。
俺がその気になれば、それこそ次の瞬間にはビランビーのオーラコンバータは破壊され、その先にあるコックピットのジェリルも刺し殺されているだろう。
『畜生……あたしの負けだよ』
ジェリルもこの状況では強がりを言うような真似も出来ず、素直に負けを認めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1550
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1678