ミの国の王都を略奪した者達の処刑は終わった。
自分の国の兵士であっても、略奪をすれば処刑する。
それをミの国の住人に知らしめた事により、住人の感情はそう悪くないものとなる。
勿論、それでもドレイク軍が侵略軍なのは間違いない。
であれば、ドレイク軍をあっさりと受け入れるとは思えなかった。
ただし、ミの国の敗北は既に規定事項だ。
そうなると、自分達にとって最善の結果はどうなのかというのを、ミの国の住人も考える必要が出て来る。
それ以外でも、ドレイクに協力を約束した反乱軍が動いているというのも大きいし、フラオン軍の行動を止められなかったというのも、ミの国の住人には思うところがあるのだろう。
結果として、処刑から数日もしないうちにドレイク軍に降伏した方がいいという意見を持つ者が増えていく。
「結局、ドレイクが上手い具合にやったって事か」
「そうだな。俺を反乱軍に派遣したのも、効果を発揮してるし。……そう言えばアクセル、俺の領地の件はどうなったんだ?」
ナムワンの食堂で、俺とトッドが暇潰しにそんな会話をしていた。
現状、特にドレイク軍が動く様子もないので、待機となっているのだ。
ドレイク軍の兵士も、一応休息という事になっていて、それなりの数が王都で出歩いているのだが……今のところ、特に問題らしい問題は起こっていない。
この辺も公開処刑の効果だろう。
ドレイク軍の兵士でも妙な真似をすれば殺されると判明しているし、かといってミの国の住人がドレイク軍の兵士にちょっかいを掛けるといった真似はしない。
「考えてみるとは言ってたけど、どうだろうな。ミの国の件を考えると、やっぱり色々と特殊な感じだし。そういう意味では、トッドの出番であってもおかしくはないと思う。……ちなみに言っておくけど、多分トッドがミの国をそのまま領地として貰っても、実際に領地を運営するのはドレイクの手の者だぞ?」
「おい、待て。それってつまり、俺にはお飾りになれってのか!?」
「お飾りじゃなくて、象徴とかそんな感じだろ? そもそも、そういうのが嫌だった場合、トッドは自分で運営出来るのか? 領地の運営だぞ? それも地上式ではなく、バイストン・ウェル式で」
「ぐっ、そ、それは……」
俺の言葉にぐうの音も出ないトッド。
いや、ぐって言ってはいるけど。
実際に俺が言ってる事は間違っていない。
トッドに領地経営出来る手腕があるのならまだしも、トッドは結局のところ地上人の軍人でしかない。
そんなトッドが過不足なく領土の運営を行うというのは、まず不可能だ。
もし自分の思い通りにミの国の運営を行うとすれば、それこそトッドの考えを理解する人材から育てる必要があるだろう。
あるいは、アレン達を使うか。……無理だな。
アレン達本人も決して承諾しないだろうし、もし万が一アレン達が承諾しても、ドレイクがそれを許可しないだろう。
ドレイクにしてみれば、聖戦士というのは自分が自由に出来る最大の戦力なのだから。
バーンも更迭されてしまった今となっては、尚更だ。
ガラリアが怪我から復帰すれば、その辺も多少は違ってくるかもしれないが。
ちなみに、ドレイクが自由に出来ない最大戦力となると、俺とマーベルの存在があったりする。
それはともかく。
現状でトッドがミの国の領主になっても、それはあくまで象徴的な存在でしかない。
それでも、その税収はそれなりにトッドの懐に入ってくるのだ。
その金額が具体的にどれくらいなのかは、俺にもちょっと分からないが。
だが、ミの国は小国ではあるが、その小国そのものが自分の領地になるのだから、相応の金額になるのは間違いなかった。
少なくても、トッドが満足出来るだけの金額であるのは間違いないだろう。
もっとも、人の欲望というのは際限がない。
このミの国で得られる収入に満足すれば、人によってはもっと欲しいと思うかもしれないが。
それはそこまで悪い事ではない。
それこそ、もっと金が欲しいと思ったら、領地を発展させればいいだけなのだから。
まぁ、そうなるまでは、トッドがバイストン・ウェルでの領地経営について学び、そこに地上の統治方法とかを使うなら、それが出来るように……といった具合に、色々とやらなければならないのだが。
「その辺はゆっくりとやっていけばいいだろ。トッドはまだ若いんだ。寧ろ、その年齢で領主になるのも……いや、もしかしたらバイストン・ウェルでは珍しくないのか?」
「ゆっくりって言ってもよぉ。……アクセルは何かそういうのに便利な方法は知らないのか? 異世界の王なんだろ?」
「そう言われてもな」
確かに俺は異世界の王だし、シャドウミラーには魔法とかも存在しているし、ワイバーンもいたりするので、バイストン・ウェルのようなファタジー要素を持っている。
同時に、PTを始めとして科学も高度に発展しており、そういう意味ではトッドのいた地上世界と同様でもある。
そういう点で、トッドが俺に助けを求めるというのは、不自然ではない。
ないのだが……基本的に俺は、シャドウミラーの運営に関しては政治班に任せていたしな。
その事を踏まえた上で言うのなら……
「やっぱり信頼出来る部下がいるってのが、一番大きいだろうな。そもそも、1人で何でもやるってのは、色々と無理があるし」
「……部下か」
「ああ。俺のシャドウミラーも、影響力はともかく、人数的には決して大国とは言えない」
いやまぁ、メギロートやバッタ、量産型Wなんかを国民に入れてもいいのなら、結構な数にはなるが……普通は入れないだろう。
あるいは機械生命体とかそういうのは……それはそれで、ナノマシンとかと同じく完全に信頼するってのは難しいんだよな。
「ふむ。つまり、結局は部下か」
「そうなるな」
結局のところ、最終的に行き着くのはそこになってしまうんだよな。
そんな風に話していると……
「トッド殿はいますか? ……ああ、ここにいましたか」
兵士の1人が食堂に顔を出して周囲を見回し、トッドの姿を見つけて安堵した様子を見せる。
「おう、どうした?」
「お館様がお呼びです」
「ドレイクが? ……どう思う?」
まるで俺とトッドの話を聞いていたかのようなタイミングで呼び出されたことに、疑問を抱いたのだろう。
そう尋ねてくるが、俺は首を横に振る。
「さすがにこのタイミングは偶然だと思うぞ。とにかく、ドレイクを待たせるのも何だし、行った方がいいんじゃないか? ここで時間を掛けても、意味はないと思うし」
「そうだな。分かった、行ってみるよ」
そう言い、トッドは兵士と共に食堂から出ていく。
俺はそれを見送り、一応といった様子で食堂の中を見回す。
食堂にいたのは、別に俺とトッドだけではない。
反乱軍の者達は王都が生まれ故郷という者もいるので、ナムワンから下り王都に行ってる者もいるし、ナムワン担当になっているドレイク軍の兵士もそれなりにナムワンから下りて王都に足を運んでいる。
だが、それでも結構な人数がまだナムワンに残っており、食堂にもそれなりに多くの者がいて、俺が見回すのに気が付いて不思議そうに視線を向けてきたり、先程のドレイクから呼ばれているという件で何があったのかといったような疑問の視線を向けてきている者もいる。
そのような視線をスルーし、俺がやったのは……盗聴器の類がないのかというのを確認する事だ。
トッドはああ言ったものの、それでも万が一という事がある。
まぁ、可能性はかなり低いけど。
何しろ、ここに盗聴器を仕掛けているという事は、ドレイクが俺に諜報戦を仕掛けてきたのと同じようなことを意味しているのだから。
ドレイクにしてみれば、俺と敵対する事だけは避けたい筈だ。
ましてや諜報戦ともなれば、気配遮断と転移魔法を持つ俺は、それこそいつでも好きなだけ情報を奪取する事が出来るのだから。
そうである以上、ドレイクに勝ち目はない。
ドレイクがそんな自爆まがいの事をしたりはしないだろう。
だとすれば、やっぱり今回の一件は偶然だったと、そう思った方がいいだろう。
「まぁ、その辺は気にする必要もないか。……さて、そうなると暇になった身としては、どうするか。いっそ、俺も王都に行ってみるか?」
呟くと、意外とそれもいいかも? と思う。
ミの国を混乱させるという意味で、俺は結構ミの国の中を動き回ったりはしていた。
だが、何だかんだと王都に入った事はないんだよな。
ぶっちゃけ、破壊工作をするのなら機械の館だったり、ダーナ・オシーを操縦しているパイロットよりも、王都……いや、城に直接破壊工作をした方がいいと思うんだが。
いや、城の中にまで潜入出来るというのを考えると、いっそピネガンを暗殺したり誘拐したりした方が手っ取り早かったと思う。
ドレイクにしてみれば、そんな真似をしたら俺に大きな借りを作る事になるので、余程の事がない限りそんな風に頼んできたりはしないと思うが。
ともあれ、今こうしてここにいても暇だし……そうだな、やっぱり王都にでも行ってみるか。
そう判断すれば、俺は即座に行動に出る。
ナムワンもドレイクの軍と一緒に王都のすぐ側に停泊している以上、影のゲートを使えば、王都の中に入るのは難しい話ではない。
そうして王都の中に入ると……
「やっぱり、大分寂れているな」
ミの国がフラオンを追いだしてドレイクが国王となったアの国と戦争状態になっているのは、多くの者が知っていた筈だ。
ましてや、そんな戦いが始まるまでミの国は内乱状態だったのだ。
それもただの内乱ではなく、フラオン軍、正規軍、反乱軍と三つ巴の。
そのような状況では、それこそ王都であっても人が少なくなるのは当然の事だった。
……いや、それを考えると、今でもこのくらいの人数が残っているのは驚くべきことなのかもしれないな。
この辺りは、ピネガンが国民に慕われていたというのも大きいのだろう。
ただ、それも限界がある以上、王都からそう離れていない場所で行われた乾坤一擲の戦いでも負けてしまったのだから、余計に人がいなくなったのかもしれないが。
それでもドレイク軍や反乱軍がいるおかげで多少なりとも活気が戻っているというのは、皮肉だな。
本来なら、ドレイク軍は敵国だ。
そうである以上、敵国の兵士を相手に商売するといったような事は珍しい。
それでもこうしてきちんと……積極的に商売をしているのは、ドレイクが略奪を行った兵士を公開処刑にした効果だろう。
あれを見て、王都の住人はドレイク軍の兵士に略奪のような真似をされる心配がないと判断し、ドレイク軍の兵士も自分が同じような真似をすれば同じように公開処刑されてしまうと、そう判断して横暴な真似をすることはない。
ある意味、これも共存共栄と言ってもいいのか?
まぁ、今の状況を思えばそんな風に認識してもおかしくはない……と思う。
とはいえ、そのように人が少なくなって寂れていたのだから、物資の類もそう多くはない。
兵士が宴会をやって騒ごうにも、酒場には酒や料理が全くない……訳ではないだろうが、それでもかなり少ないのは間違いなかった。
「まぁ、殺伐とした雰囲気じゃないだけマシか。……そう思わないか?」
「ちっ、気が付いていたのかよ」
俺に声を掛けられたアレンが、面白くなさそうな様子でこっちに近付いてくる。
「どうした? 1人なのか? ジェリルとフェイは?」
「あのな、別に俺達はいつも一緒って訳じゃねえよ。ジェリルはトカマクを引っ張って、王都の中に来ている筈だ。フェイはブル・ベガーの方に残るって言ってたな」
「ふーん。で、アレンは一体何をしに王都に?」
「ちょっと暇潰しにな。アクセルはどうだ?」
「俺もそんな感じだ」
トッドがドレイクに呼ばれた件について話そうかとも思ったが、ここでそれを話すと色々と不味いか。
これでトッドがミの国を領地として得るなんて事を知ったら、アレンはどう反応するんだろうな。
まぁ、ここでその件を言わなくても、後々ドレイクから発表はあるだろうが。
もっとも、それを聞いたアレンがどう反応するかは分からないけど。
「どうした?」
「いや、何でもない。それより、アレンはこの王都で何か面白そうな場所を知らないか?」
「そう言ってもな。俺だって何度も来てるって訳じゃないぞ。それに……今は、分かるだろ?」
アレンは、活気はあるものの、物資の類が不足しているようなことを言っているのだろう。
「そうだな。なら、俺は適当に歩いてみるけど、アレンはどうする?」
「俺か? ……そうだな。俺も今はやりたい事もないし、アクセルと一緒に行くよ」
そんなに暇なら、ブル・ベガーにいればいいんじゃ?
そう思ったが、それはそのまま俺に返ってくることでもある以上、反論は出来なかったりする。
「分かった。なら、適当に見て回るか」
そう言い、俺とアレンは男2人で街中を見て回るという、傍から見たら微妙に思えるような行動を行っており……そうして20分くらいが経過した時、それは起きた。
曲がり角から、誰か走って曲がってきたのだ。
結構な勢いである以上、このまま俺が回避するとアレンにぶつかって、怪我をしかねない。
そう思い、俺がその少女を受け止め……その少女は、勢いよく俺にぶつかって、被っていたフードが脱げ、桃色の後が跳ね上がっているといったような妙な髪型を見せるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680